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2019/10.20

大山・東上線高架化と駅前広場計画
1600の「やめて」の声に背を向ける板橋区

10月11日の本会議で、いわい桐子区議は、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第16号、17号、18号、19号、第20号第1項、2項、3項、5項、第21号第1項から5項、第40号2項、第44号2項、45号、第53号第1項の陳情に賛成する立場から以下の通り、討論をおこないました。

 本陳情は、大山地域のまちづくりと駅高架化、駅前広場等に関して「住民の声を聞こうとしない」区の姿勢に対する強い抗議として、改選後の区議会に10本以上も提出されたものです。都市計画審議会に出された意見書の多くが「拙速に進めないでほしい」と求めているにもかかわらず、区は、これまで「今年度中」としてきた都市計画決定を、「今年中」と前倒ししています。ますます、住民は不安に感じています。
 陳情項目は、①計画の見直しと白紙撤回、②拙速な決定の中止と意見書の公開、住民合意、③計画の経緯や検証内容の公開、④経済効果の検証、⑤地権者への補償など、多岐にわたっています。

 本陳情に賛成する第1の理由は、区の側に「住民合意」を形成する姿勢が欠片もないことです。
 10本以上という陳情の量とその内容が、住民の声を聞こうとしない区に対する住民の怒りとして現れていることを区も議会も、重く受け止めるべきです。
 とりわけ、東武東上線大山駅付近の高架化と側道整備、駅前広場計画は、昨年2月に突如発表され、関連する説明会は4回開催されてきましたが、それは「意見を受け止める」ものではなく単なる「説明」であり、反対意見に対しては「ご理解いただく」というものに過ぎません。そのあり様に、住民が怒りと不安を感じるのは当然です。
 都市計画案の公告・縦覧は昨年12月に行われ、意見書は、東武東上線高架化ついて東京都に334通、その側道整備に805通、駅前広場計画に871通が板橋区に提出され、合計で2,000通を超える意見書が提出されています。
 「ほぼ反対」の意見書には、「住民の意見が反映されない」「納得が得られるよう協議をしてほしい」「住民無視だ」と記されています。しかし、区も、都も立ち止まるどころか、計画が微塵も修正されず、都市計画審議会に付議されました。
 しかも、意見書は、今年9月12日の都市計画審議会までの約8か月間公開されることはありませんでした。審議会でも、有識者から「これだけの量の意見書を読み込むのに1週間では足りない。もっと早く配布を」と意見が出ましたが、区は、慣例通り審議会まで公開を拒否しつづけました。公開時期の明確なルールはなく、区の言うような、公開する時期によって「公平性を欠く」ことには繋がりません。むしろ住民合意どころか住民のに背を向ける姿勢だと言わざるをえません。

 第2の理由は、区が説明責任を果たしていないことです。
 都市計画法第3条では、行政に対し「都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない」と求めています。それは、住民に都市計画やまちづくりに参加を促すためだとされています。
 しかし、区は、鉄道立体化の「高架化」と「地下化」の検証過程も明らかにしようとしません。駅前広場に至っては、この間の陳情審議でようやく庁内内部で検討された2017年の「駅前広場の設置場所」3つの案の検討内容の資料が示されました。
 そこに示された用地取得費約70億円の根拠なども含めて未だ明らかになっていません。また、都が示した高架化は約340億円、地下化は約550億円とした総事業費の積算根拠は示されないどころか、区として東京都に根拠を示すよう一度も要求していません。それは、住民への説明責任を果たすつもりはないと言っているようなものです。
 鉄道立体化に対し、区の税金を高架化の場合でも約44億円投入する計画にもかかわらず「東京都の事業だから何もわかりません」と他人ごとのように言っている場合ではありません。東京都に厳しく要求し、住民に対する説明責任を果たすべきです。

 第3の理由は、「高架化」ありきの検討と進め方です。
 東武東上線大山駅の立体化は、商店街や町を分断する「高架化」ではなく「地下化」を求める声が高いにも関わらず、「地下化」の検証はほとんど行われていません。
 都が行った検証は、地形的条件・除却できる踏切と通行できなくなる踏切の影響・総事業費の3条件で、日影・騒音・振動・地下水などの環境的な影響について、地下と高架の場合の比較検証は示されていません。都が行った環境影響評価は、高架化した場合に、今と比べてどういう影響がでるかというものでしかありません。
 区は、2017年に検討した駅前広場の設置場所3つの案が、どれも「高架化を前提にしたもの」であることを認めています。
 また、鉄道立体化の総事業費に対する負担割合は、「協議の余地」をつくらないため、高架化の場合のみ、国42%、都30%、区13%、鉄道事業者15%とするルールがあり、地下化の場合は「協議する」といったルールになっています。しかし、大山駅の立体化に対し「地下化」の場合の負担割合について、協議すら行われていません。高架化ありきの計画だと言わざるをえません。

 第4は、都市計画審議会の審議内容と結果を、正確に、重く受け止めるべきだということです。
 本陳情に不採択を主張した委員は、都市計画審議会で「了承された」ことを根拠にしていますが、9月12日の都市計画審議会は、傍聴席が満席の中、開催され、3人の委員から議論や調査の不足を理由に「今回は、判断できない」と意見が出さました。「判断を見送る動議」は反対8、賛成8の可否同数になり、会長判断で議決が実施されたものの、6人の委員が「高架化と駅前広場計画」に反対する異例の事態になっています。
 しかし、その審議内容について、区は本会議でも委員会でも「異議なく了承した」ことを強調しています。区は「異議なく了承する」ことそのものが諮問だった言いますが、その「異議なく了承すること」に6人が反対したことを真摯に受け止めるべきです。結論のみを根拠に、本陳情を不採択にすることは、退去を迫られる住民や商店、事業者に対し、あまりにも不誠実という他ありません。

 第5に、駅前広場や補助26号線計画に伴う地元地権者への「代替地」の補償について、なんら示されず、駅前広場に至っては、更地にして寄こせという対応です。長年暮らしてきた住民や商売、事業を展開してきた人たちにとって、現在と同水準の代替地の提供もなく納得できるはずはありません。
 そもそも、「特定整備路線補助26号線」は、計画そのものが必要かどうかの検証が必要です。2017年7月に国土交通省が示した「都市計画道路の見直しの手引き」では、すでに事業認可された路線も、着手された路線も廃止を含めた見直しを行った事例が示されています。しかし、東京都は事業認可された道路を「見直し対象」から外しています。70年も前の計画で、この70年間、発展してきた所に、突如、一方的に事業が推進されてきました。そうした経過から見れば、全国の自治体が、道路建設の必要性に対し、認可済みも、未着手も「見直し」の対象として検討した姿勢は当然です。
 道路建設によって、板橋の顔とも言われる「ハッピーロード大山商店街」の約40店舗が失われます。商店街は今回の計画で、年商120億円のうち40%を損失すると指摘しています。一から計画を見直すべきです。

 最後に、東上線立体化を「地下化」していたらほとんどの陳情要求は解消されることです。
 都も区も、「地下化」した場合の土地の価格や経済効果などの検証は全く行っていません。ほかの立体化事例では、地下化したことで「土地の価格」も上がっています。
 相模原では、高架と地下に150億円の差があったものの、地下化の方が土地利用で一体的に考えられること、騒音は圧倒的に影響が小さいこと、地権者への影響が最小限に抑えられること等の理由で「地下化」を決定しています。
 失ってしまう商店街や町の魅力はお金には変えられません。「高架化」選択は、目の前の工事費や用地取得のコストのみを最優先するもので、商店街の歴史的、社会的価値を失うことになりかねません。駅高架化と補助26号線は、白紙撤回し、住民とともに新たな計画を検討すべきです。本陳情の採択を求め、私の討論を終わります。