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大田伸一議員の一般質問
2016.11.24 : 平成28年第4回定例会(第1日)

 最初に、住宅問題と福祉行政について質問いたします。
 若者世代にも高齢者世代にも、子育て世代にも貧困が広がっています。若者が親と同居せざるを得ない状況や、耐震性のない賃貸住宅から引っ越しできない高齢者、重い住宅ローンを抱え、切り詰めた生活をせざるを得ない子育て世帯がますますふえています。
 今年3月、閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」に、住宅セーフティネットとして住宅確保要配慮者の居住の安定の確保が盛り込まれています。住宅政策実施のかなめは地方自治体です。社会的必要にこたえた実績の上がる施策を展開しなければなりません。
 区長に質問いたします。
 第1に、板橋区居住支援協議会の住宅窓口は、相談時間が毎週木曜日1時30分から4時30分までで、1日3名の予約優先制となっており、対象世帯は60歳以上の高齢者世帯、障がい者世帯、ひとり親世帯となっています。内容は、不動産業者による物件情報の提供と高齢福祉部門との連携業務です。実績は、平成27年10月から28年3月までの報告では、相談件数52件、入居は12件となっており、うち高齢者世帯10件、障がい者世帯2件です。見守り相談業務は27年度は見送りになり、モデル事業の空き家・空き室等を活用した居住支援も応募団体がなく、28年度は見送りになっています。まず、窓口相談の開設日と開設時間帯が少なく短過ぎます。したがって、対象人数も限らざるを得なくなっています。不動産業者がより参加できるように条件を引き上げることで、開設日と開設時間帯を拡大すべきです。また、モデル事業を成功させるためには、豊島区居住支援協議会のように、ソフト的な経費を助成するインセンティブの要素が必要です。インターネットでも、区内の物件情報を発信できるようにし、関連相談ができる区の窓口案内を充実すべきです。相談窓口があることを、地域センターをはじめ、各関連施設等でも広報を強めるべきです。区長の見解を伺います。

【区長】大田伸一議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、最初に居住支援協議会についてのご質問であります。
 居住支援協議会で設置しております相談窓口の利用状況につきましては、時期的な増減もございますが、週1回1日3人の予約の枠で、過不足のないレベルであると認識をしております。窓口運営のあり方につきましては、相談窓口運営会議を定期的に開催し、改善へとつなげております。
 モデル事業につきましては、社会的な意義に鑑み行ってまいりましたが、事業用物件の確保や法令による制限等といった課題をすぐには解決できないことから、協議会の本来の目的である住宅確保要配慮者への支援の取り組みを優先的に行っているところであります。
 相談窓口の周知につきましては、協議会のリーフレットやチラシを、地域センターや区内各施設のほか、協議会の関係団体などを通して配布しておりまして、今後も広報活動を強めてまいりたいと考えています。

 第2に、居住支援協議会の活性化が求められている理由は、高齢者や障がい者の居住環境が、さらに悪化する危険性があるからです。国立社会保障・人口問題研究所によると、ひとり暮らし高齢者は東京では2035年には44%になると推計しています。国土交通省に設置された安心居住政策研究会の2015年12月に実施された調査では、高齢者の入居に拒否感のある賃貸人の割合が70.2%にまで上昇していることがわかっています。これでは居住支援協議会のあっせんで入居できる人をふやすことができません。居住における障がい者差別においては障害者差別解消法が施行され、法的義務である「差別取扱いの禁止」、努力義務の「合理的配慮の提供」が課されています。国土交通省は、宅地建物取引業者に対応指針を示し、具体的な事例を挙げて差別的な取り扱いとした禁止行為を示しています。しかし、明文化されない形での入居差別はチェックできません。福祉関連部門、民間部門、専門家による対策協議を行い、板橋区として取り組みを強化・充実すべきです。区長の見解を求めます。

【区長】次は、高齢者や障がい者の居住環境についてのご質問であります。
 板橋区では協議体として、福祉部門では板橋区社会福祉協議会など、民間部門では宅地建物取引業者など、専門家では学識経験者などが参画した板橋区居住支援協議会を設置しております。協議会におきましては、窓口での相談内容や実績、実態などを把握した上で、住宅確保が困難な方が住みやすい地域づくりを目指した検討を行っているものであります。

  第3に、若者の居住支援は特別の取り組みが必要です。国民生活基礎調査の結果を見ると、男性の中で最も相対的貧困率が高いのは20代前半の21.8%であり、女性も20代前半の19.5%です。世帯タイプ別で見ると、親元から離れ単身で暮らす男性勤労世帯の4人に1人、女性では3人に1人が貧困です。国土交通省の平成25年度住宅土地統計調査の年収と家賃の関係を見ると、若者単身者の場合、年収200万円未満になると家賃負担率は4割程度にもなります。若者たちが仕事を失っても住まいを失わず、住まいを足がかりに再起できるように支援する施策が必要です。そこで、若者単身者の貧困と家賃負担の重さについて、区長はどのような認識を持っているのか見解を伺います。また、行政の相談窓口さえない現状について、改善に取り組む姿勢の有無について見解を伺います。

【区長】次は、若者単身者の貧困と家賃負担の重さについてのご質問であります。若者単身者の居住の実態につきましては、次期住宅マスタープラン策定の過程で、アンケート調査による住居の実態調査を実施しておりまして、実態が把握できるものと考えております。現在、相談窓口については、若者単身者に限定したものではないものの、生活困窮者自立支援法に基づく生活や仕事、住宅等の総合相談窓口として、グリーンホールに、いたばし生活仕事サポートセンターを設置しております。今後、若者単身者の貧困と住宅に関する相談窓口のあり方につきましては、その必要性と既存の相談窓口との連携を含めて研究をしてまいりたいと考えています。  

 第4に、家賃補助の問題です。家賃補助は、生活保護に陥る手前のセーフティネットとして非常に重要です。家賃補助の問題は見えない貧困をどう支援につなげるかという行政課題です。住宅あっせん事業だけでは足りません。住宅供給の増設予定がなく、現金給付的家賃補助を本格的に取り組まなければ貧困世帯の多くは貧困のまま取り残されるということになります。若者世代は安心できる住居がなければ、結婚もできず、世帯構成ができません。貧困の防波堤、生活再建の拠点としての家賃補助制度は自治体として必要な政策です。区長の見解を伺います。

【区長】 次は、家賃補助についてのご質問であります。
 家賃補助につきましては、経営革新の取り組みの中において、現金給付的事業であることから縮小していったものであり、財源の確保や将来の財政負担等を考慮し、慎重に検討すべきものと考えております。

 板橋区自立相談支援センターについて伺います。
  生活困窮者自立支援制度に基づき、板橋区自立相談支援センターの事業が行われています。生活困窮者の定義は、「生活困窮のおそれのある人」という大変曖昧なものです。そのため、将来的に生活困窮者を減らしていくという成果の検証もできず、調査のしようもありません。ここに根本的な問題があります。支援のメニューは経済的給付がほとんどありません。経済的に困窮しているのだから、何らかの現金で生活を支える仕組みが必要ですが、現金を支給できる制度は住居確保給付しかありません。それも実態的には住宅支援というより再就職支援で、離職者、仕事がなくなった人がハローワークに通うことを条件に、3か月分だけ家賃補助をするというものです。働いているけれども給料が低いというワーキングプアの人たちは対象にはなりません。自立支援制度のメニューの中で、全ての自治体で行う必須事項は窓口相談部門と、この住宅確保給付の2つだけで、あとのメニューは任意事業です。任意事業の1つに、一時生活支援という宿泊事業があります。これはホームレス自立支援事業を吸収したものですが、宿泊サポートのための相談、サポートでは、現場ではかなり弊害が生まれているというぐあいに、多くの課題を含んだ事業となっています。  そこで区長に質問します。
 第1に、板橋区自立相談支援センターの平成27年度実績を見ると、自立相談支援事業の新規相談件数は682件で、1か月平均56.8人です。全国の積極的な取り組み状況から想定すれば、その倍以上の新規相談件数があってもおかしくありません。委託事業者の現行の体制では、相談支援事業は、これ以上ふやすことが困難になりつつある状況です。場所も広げられません。しかし、事業目的からすれば、これでいいというわけにはいきません。自立相談支援センターを志村福祉事務所管内、赤塚福祉事務所管内という位置づけで増設を今後の検討課題とすべきです。区長の見解を伺います。

【区長】次は、自立相談支援センターの増設についてのご質問であります。
 板橋区の自立相談支援機関であります、いたばし生活仕事サポートセンターでの新規相談の受付件数は23区内では10番目に多く、プラン作成と就労支援の達成率においては東京都内の平均を上回っており、23区内では9番目となっております。
 スタッフ体制につきましては、非常勤の弁護士を含め13名おりまして、いずれも業務経験が豊富で、資格を持っている専門性の高いスタッフを配置しております。センターの増設につきましては、国庫補助の基準や今後のニーズなど、諸要素を勘案しながら長期的な視点で検討していきたいと考えています。

 第2に、生活困窮者自立支援法では、水際で確実に生活保護制度に結びつける役割を担っています。要保護状態であっても、生保申請をためらう人に対し、丁寧な説明や、必要な場合には、福祉事務所への付き添いなどの支援、またはすぐに生保にならない人にも、安心を与える支援によって、生活保護の捕捉率を高めることも必要です。努力も必要です。自立相談支援センターの福祉事務所へのつなぎを、もっと引き上げる必要があります。区長の見解を求めます。

【区長】次は、生活保護へのつなぎについてのご質問であります。
 いたばし生活仕事サポートセンターにおきましては、生活に困窮しているが生活保護は受けたくない方や、生活保護基準以上の収入等はあるが、経済面を含め生活に困り事がある方の相談を受け、包括的かつ継続的な支援に当たっているところであります。支援を行う中において、生活保護制度を利用せざるを得ない場合につきましては、生活保護の申請を促し、福祉事務所を案内しております。平成27年度は、相談者の1.7%に当たる12名が生活保護の適用となってございました。厚生労働省は、生活保護が必要な対象者については確実に生活保護につなぐよう示唆をしておりまして、今後もセンターと福祉事務所の連携を密にしてまいりたいと考えています。

 無料低額診療について伺います。
 無料低額診療事業とは、社会福祉法に定められた、医療機関が行える第2種社会福祉事業で、一定の条件のもとで生計困難者のために、無料または低額な料金で診療を行う事業です。病院の窓口負担を無料あるいは低額にすることで、お金の心配をしなくても受診につなげることができます。2014年に行われた医療機関の「手遅れ死亡事例調査」では、自覚症状の出現や健康診断で異常が指摘されてから1年以上受診せずにいた事例が47%にも上っていました。受診抑制は生計費に占める住居費や保険料負担など、病院での窓口負担の重さなど、幾つもの要素が重なり合っています。中には「医療中断死」と呼べる死亡事例もあります。高齢となって医療を必要とする区民の数はふえ続けていきます。平成27年度決算資料の後期高齢者医療保険料収入未済所得階層別人数を見ると、平成25年度と比べて年金80万円以下の階層では185人から640人へと急増しており、全体の階層合計でも347人から1,391人にふえています。そこで区長の見解を伺います。
 無料低額診療のうち、利用者の窓口負担分は医療機関が負担するため、区内では2つの医療機関しか行っていません。事業を行うには定款に定め、届け出るとともに、診療費の減免方法の明示、無料の健康相談や生活相談の実施など、幾つかの要件があります。一方、固定資産税の減免といった税制上の優遇制度は医療施設の規模に比例して大きくなります。区内には、他区に比べても大規模病院が多く、無料低額診療を拡大する必要があります。医師や行政担当者が関係機関間のネットワークを広げ、対象者となる生計困難者を救い上げることで、受診抑制による病気の重篤化、手遅れ死亡を防ぐことが可能になります。行政と医療機関の立場を超えて取り組むことを求めますが、いかがでしょうか。  

【区長】 次は、無料低額診療事業を実施する医療機関の拡大についてのご質問であります。
 無料低額診療事業につきましては、実施の意向を持つ施設が東京都へ届け出た後、当該施設の事業計画や財産状況などを審査を受け、事業実施にふさわしいなどと判断されれば、事業実施施設として登録がされております。区内の医療機関に無料低額診療事業の実施を促すことについては、医療機関に事業実施に当たっての負担を求めることになるため、板橋区医師会など関係機関に意向、状況を確認した上で、医療機関の拡大の可能性について関係機関と協議をしていく必要があると考えます。

 また、無料低額診療事業は、保険薬局や訪問看護ステーションには適用されないため、処方箋をもらっても薬代が払えず、薬を受け取れないという事態が生まれます。無料低額診療の薬代助成では、高知市、旭川市、那覇市、青森市などが行っています。高過ぎる保険料、高過ぎる窓口負担をそのままにして、この無料低額診療事業で救える命には限りがあります。しかし、生活保護を利用せずに何とか頑張りたいという人たちも多くいます。そういう人たちを支える施策を求め、薬代助成にも踏み出すことを求めますが、見解を求めます。

【区長】次は、無料低額診療事業に係る薬代の助成についてのご質問であります。
 無料低額診療事業は、国民皆保険制度が確立する以前の昭和26年に制定された社会福祉法において、当時の状況を反映し、制度化されたものであると理解をしております。現在では、制度成立当時の必要性は薄らいでいると見られるものの、DV被害者や外国人など、社会保険制度のはざまを埋める役割を担っているものと認識をしております。
 ご質問の薬代の助成につきましては、医薬分業が進んだことにより生じた問題と認識をしておりますが、国や他自治体の状況を踏まえて研究をしてまいりたいと考えています。

 指定管理者制度と窓口委託について質問します。
 指定管理者制度が始まって13年になりますが、団体の選定について、応募が1団体しかない場合など、指定管理者が競争を経ずに選ばれ、その結果、指定期間も長期にわたる施設も生まれています。複数の候補から選定することがないと、能力のない団体・企業を選ばざるを得ない、いわゆる逆選択という状況になります。例えば、今議会の議案であるエコポリスセンターは2団体が応募し、満点に対する評価達成率は83%であるのに対し、教育科学館では1団体のみで、評価達成率は78%となっています。区内事業者加算のような地域貢献も算定できません。競争性が働かないと、サービスの量と質の向上に向かう動機が減り、機会主義的な管理運営になる傾向が生まれます。最悪の場合は不正が行われる可能性が生じます。説明会、施設見学会に参加して、応募しない団体・企業の理由を明らかにして、複数による選考で競争性を高める必要があるのではないでしょうか。見解を伺います。

【区長】次は、指定管理者選定の競争性についてのご質問であります。
 指定管理者の募集に際して、応募が1団体のみの事例が発生をしており、課題はあると考えています。応募期間中に行う現地説明会等には複数団体の参加がある一方において、実際の応募につながっていない事例も見受けられております。この要因について分析をし、他自治体の取り組みも参考にしながら、改善策について検討してまいりたいと考えています。

 第2に、自己評価とモニタリングですが、例えば、公表されている図書館の管理運営業務に係る評価報告を見ると違いが明らかです。図書館流通センターの管理運営では、総合評価満点数に対する自己評価は93%達成、評価委員評価は76%です。同様にヴィアックスでは、それぞれ82%と75%、丸善・東急コミュニティー共同事業体では、自己評価62%に対し評価委員評価のほうが高く66%となっています。評価項目ごとでは、自己評価満点が2団体において圧倒的に多いのがもう一つの特徴です。評価委員評価とのギャップが目立っています。複数の図書館を持つ自治体では、一元的管理運営が当然求められています。しかし、図書館3館ごとに管理者が異なり、図書館サービスの分裂の様相を示しています。モニタリングは何のために行うかといえば、図書館法に基づく適切な図書館評価を行うためです。しかし、記録は改ざんできるし、定期的な立ち入り調査だけなら形だけ整えることもできます。管理者とは別に、利用者会議のような組織をつくって、利用者が指定管理者をモニタリングすることを加えることが有効です。見解を伺います。

【区長】次は、自己評価とモニタリングについてのご質問です。
 異なる指定管理者が同種の施設運営を担っている場合でも、一定水準の行政サービスの提供をしなければならないと考えます。区としましては、指定管理者制度導入施設のモニタリング・評価に関する基本方針を定め、毎年指定管理者の自己評価結果を踏まえて、全ての施設を同じ基準で二次評価する仕組みをとっております。評価の際には利用者アンケートを参考にしたり、評価委員会の委員に利用者を選任するなど、さまざまな意見を聞きながら、施設運営の改善に努めているところであります。

 第3に、窓口委託の問題です。働く多くは「非正規」でありながら、公務の仕事に組み込まれて、雇用された初日からマニュアルを頼りにしなければなりません。区民の生の声を聞くのは、こうした非正規の人々であって、正規の職員ではなくなりました。行政の仕事に必要なのは人権意識を持って地域住民の権利を守り擁護していく力、制度・政策を駆使して相談や困難を知恵を出して解決していく力、担当部門を超えて、みんなで力をあわせる連帯力ではないでしょうか。こうした事務は専門的な職員によって担い得るものです。一くくりに定型的な窓口業務として丸ごと外部委託すべき業務ではありません。区民にとって、接する職員は役所の職員と区別ができません。その責任・役割を果たしていくためには、安定性・継続性が必要なのは当然のことです。そのためには、賃金を大幅に引き上げるなど、労働条件の抜本的な改善を検討する必要があるのではないでしょうか。見解を求めます。

【区長】次は、窓口委託従事者の賃金等についてのご質問であります。
 窓口は区民の方々と接する重要な場として認識をしており、マニュアル等を整備し、業務が安定的に継続できるよう取り組んでおります。窓口委託の対象は、行政業務として一定の専門性が求められるものの、定型処理を繰り返す業務として、これに見合った経費を算出しております。なお、委託化した窓口で働く方々の賃金などの労働条件は、法律等に定める要件を遵守し、労使間において決定されるべきものと考えております。

 熊本地震の教訓を生かすためにで質問します。
 今年4月14日に発生したマグニチュード6.5の熊本地震は、新たに多くの課題と教訓を残すものとなりました。熊本市の災害ごみは想像を絶する量となり、歩道を埋め尽くし、さらにひどいところでは道路まではみ出しました。支援物資は滞り、行政担当者と現場責任者との認識の違いから、行政担当者は市民からの対応に追われ、実際の現場実態を把握できず、どのような指揮命令をだすのかを考える余裕すらなかったと言われています。民間に委託をしているところは実態の把握すらできなかったといいます。初動態勢については、委託契約にしていた職場等では災害時に不可欠な迅速な対応ができなかったことになり、板橋区においても、民間業者との密接な関係を日ごろからつくっておくことが教訓の1つです。区における指定管理者の災害対応は協定書に記載されているとはいえ、具体的なシミュレーションに基づく訓練を繰り返し共同で行う必要があります。区の今後の取り組みについて、答弁を求めます。

【区長】次は、熊本地震の教訓を生かすためにの関係で、指定管理者導入施設の防災訓練についてのご質問です。
 指定管理者との基本協定に盛り込むべき事項として、災害、事故等への対応がございます。地震等の災害や事故発生時のとるべき対応をあらかじめマニュアル化し、区に提出するとともに、必要な訓練を実施することとしております。各施設におきましては実際に訓練を行っており、区の総合防災訓練に参加している施設もございます。この実態に即して、事業計画の必須項目とするなど制度化を図っていきたいと考えています。

 第2に、災害時要援護者の多様な状況に応え切れなかった教訓です。多くの障がい者家族は、他人に迷惑をかけたくないために避難所ではなく、車中泊が多かったため、その家族には情報が入りにくく、物資を受け取ることができなかった。福祉事務所では、障がい者より介抱していた家族の疲労感が強く、幾度声をかけても、疲れた弱々しい声が返ってきた。障がいと高齢、障がいと病気など、ダブルやトリプルでの不自由な方への対応が、よく準備されていなかった。避難所では、障がい者やその家族の方たちは肩身の狭い思いをしている。例えば、自衛隊が避難所で風呂を設置しても、他の方の迷惑になってはと入浴をあきらめる方が多いなど、障がい者の避難や避難生活はあまり改善できず残念ですという声が多かったのです。障害者差別解消法が施行されたことから、社会的バリアの除去と合理的配慮が不可欠になりました。だからこそ、今度は重度障がい者であっても、福祉避難所だけでなく、どのような避難所でも対応可能としていく必要があります。そのための検討と災害マニュアルの見直しが必要です。見解を求めます。
 また、家族と住んでいることで在宅障がい者の支援が手薄になりがちです。在宅や車中泊の重度障がい者への避難物資の配布方法などもあわせて検討を求めます。

【区長】次は、重度障がい者の指定避難所での避難についてのご質問です。
 福祉避難所の開設は、発災後の福祉施設の安全確認や人員確保等に時間を要するために、重度障がい者であっても一旦は指定避難所へ避難することを前提としております。避難所の利用に当たりましては、個別の状況を聴取し、合理的な配慮がなされるよう、避難所運営にかかわる地域の方々と協議、検討していくとともに、早期の福祉避難所への移行ができるよう、関係機関、団体と協議、調整をしていきたいと考えます。避難所運営マニュアル等の見直しにつきましては、国や東京都の熊本地震の検証を注視し、必要に応じて行ってまいりたいと考えています。
 次は、在宅等避難の重度障がい者への避難物資の配給についてのご質問であります。
 避難所での生活は制約が大きいことから、自宅が住める状態であれば、プライバシーが確保でき、ストレスを感じることなく生活できるため、在宅での避難を推奨しております。支援物資が必要な場合には、避難所へ赴き、在宅避難者等である旨を伝え、物資の配給時間にあわせて避難所で配給を受けることになります。重度障がい者等、避難所への連絡や物資の受け取りができない場合においては、家族や地域の支援により対応するものと考えております。

 第3に、防災対策には、「自助」、「共助」、行政などの「公助」が重要だと言われています。しかし、教訓では自主防災が機能しないケースが指摘されました。災害時には、みんなで炊き出しをする、避難所の運営は住民みんなで協力していく、行う、このような基本ルールを地域防災訓練で実際に経験していないことが大きな原因ではないかと言われています。行政は区民自らこういう行動がとれるよう、日ごろからの訓練の機会を設け、必要な資材も提供し、きちんと支えることが必要です。こうしたことも公助と考えて取り組むことが必要です。見解を求めます。

【区長】次は、地域防災訓練等への公助としての支援についてのご質問であります。
 発災時に一人でも多くの命を救うためには、近隣住民同士の助け合いが大きな効果を発揮いたします。そのためにも、自分たちのまちは自分たちで守るという機運を高め、自助、共助による取り組みを促進することは区の責務であると考えます。引き続き、必要な資機材を配備するとともに、総合防災訓練をはじめ、各住民防災組織での訓練支援を行い、区民の防災意識と技術の向上を図り、地域の防災力向上を推進していく考えであります。

 学校での子どもの安全対策について質問します。
 学校での子どもの安全対策について、組体操に関しては、東京都教育委員長通知があり、板橋区教育委員会も今年4月に「板橋区における組体操等への対応方針」を通知しています。組体操の事故は、スポーツ庁によると、全国の小・中・高校での事故件数は2011年度から14年度の間、年間8,000件を超え、過去46年間で死者9人、障がいが残った子どもは92人に上っていました。板橋区教育委員会のこの通知では、慎重な検討、巨大化・高層化の回避、重篤な事故が発生した場合には、来年度の実施の全面的見直しなど、10項目が記されています。文部科学省の通知の中身は、組体操の一律禁止ではなく、確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせるというものです。しかし、症例とそれに基づく調査を行ってきた医師の指摘によれば、「指導して工夫していくとか、そのような問題ではない。組体操は、個人の力が及ばないところで土台が崩れ、上に乗った子がけがをする。その下敷きになって、土台の子どももけがをする。自力では回避できない」と組体操の中止を求めています。教育現場が萎縮するのではないかという危惧も寄せられますが、しかし、こと、子どもの危険ということに学校現場はどう向き合うかは重大な問題です。板橋区教育委員会としても、通知で終わらせず、現場との話し合いを通じて、一層の安全対策に取り組むべきではないでしょうか。見解を求めます。

【教育長】大田伸一議員の教育委員会に関する一般質問にお答えします。
 初めに組体操の安全対策についてのご質問ですが、今年度の運動会では、小学校44校、中学校9校で組体操を実施いたしました。本区では、体育指導を専門とする小中学校の校長からの意見も踏まえ、組体操を実施する際には安全を最優先に、発達段階や子どもの実態に応じた演技の内容とすること、及び指導方法を工夫することを対応方針として策定し、各学校園への周知を徹底しました。また、組体操指導を専門とする大学の教員を講師として、実技研修も行いました。さらに、事前の提出を義務づけた計画書を確認するとともに、指導主事による練習の視察も行い、必要に応じて、より安全に実施できるよう指導や助言も行っています。今後も、各校園において組体操に取り組む際は安全を最優先に、今年度の取り組みを徹底するとともに、実技研修も継続して実施し、小中学校の校長会とも意見交換を行い、安全対策を万全なものにしてまいります。
 

 また、負傷事故は組体操だけではありません。小学校における部活動を除く体育活動での負傷事故件数を独立行政法人日本スポーツ振興センターの平成26年度版データで見ると、組体操が3番目に多く6,343件、バスケットボールは9,098件、跳箱運動は1万5,221件となっています。組体操は部位別負傷割合では頭部負傷が最も高いため、特別対応方針が出されましたが、跳箱運動、バスケットボールも負傷事故を大幅に減らす指導が必要です。具体的な対応について、見解を求めます。

【教育長】次に、跳び箱運動やバスケットボールの負傷事故を減らす対応についてのご質問ですが、区立小学校において、平成27年度の独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害給付金を利用した件数は、跳び箱運動で14件、バスケットボールで15件ありました。負傷事故を減らしていくためには、教師がさまざまな危険の要因を把握し、その除去や回避の方法及び対策を徹底することが重要であります。さらに、体育科の学習内容でもある、児童自らが安全に十分留意し、危険なことは絶対に行わないという態度や行動の仕方を身につけさせる指導の徹底を図っていくことも必要です。今後も、区立小学校で行う体育科の研究授業や実技研修の成果、事故事例やその原因を共有化するなどして、跳び箱運動やバスケットボールをはじめとする体育活動での負傷事故の減少と防止に努めてまいります。
 いただきました教育に関する質問の答弁は以上でございます。

 東武東上線のホームドア設置の実現に向けて質問いたします。
 8月15日、盲導犬を連れた視覚障がい者の男性が東京メトロ銀座青山一丁目駅から転落し、電車にはねられて死亡する事故が起きました。東京視覚障害者協会の調査では、全盲者の3人に2人がホームから転落した経験があり、年に全国で一、二人が亡くなっています。視覚障がい者にとっては、駅のホームは欄干のない橋です。ホームドアは視覚障がい者の命を守り、安全歩行を保障する道具にほかなりません。今回の事故のように、点字ブロックは絶対的なものではなく、うっかり点字ブロックを踏み越えて落ちる危険性があります。国土交通省によれば、ホームからの転落事故は2014年度、3,673件発生しており、転落による人身事故は449件です。視覚障がい者の転落は80件です。健常者にとってもホームの安全は欠かせないものです。障害者権利条約第20条には、障がい者が自立して歩くための措置「個人の移動を容易にすること」を明記しています。板橋区としても、こうした立場を堅持し、積極的な働きかけをすべきです。
 そこで区長に伺います。
 国土交通省は全国に約9,500ある駅のうち、2020年までに800駅にホーム柵を設置する目標を掲げています。これでは全く不十分です。整備費用は国が100%負担して、全ての駅に可動式ホーム柵を設置する目標を立てるよう求めていただきたい。また、柵ができるまでは、駅員の効果的な配置と増員を行えるよう、国は駅員配置に対して補助制度をつくることを求めていただきたいが、いかがでしょうか。

【区長】次は、東武東上線のホームドア設置の実現に向けてのご質問であります。
 鉄道駅のいわゆるホームドアの設置は、駅利用者の安全確保の観点から必要な設備だと認識をしており、板橋区ではこれまで、ホームドアの設置について東武鉄道に要望を行ってまいりました。国に対して整備費用を全額負担し、全ての駅のホームにホームドアを設置するための目標を立てること及び、ホームドア設置完了までの間、駅員配置に対する補助制度をつくることについての要望については、今後検討してまいりたいと考えています。

 女性差別撤廃施策の充実のために質問します。
 日本政府が女性差別撤廃条約を批准して31年目になります。女性差別撤廃条約の画期的な特徴の1つは、女性差別が人間の尊厳に反すること、子の養育は男女と社会に責任があること、基本的な考え方を明確にしていることです。
 第2に、貧困をなくし、女性が経済力をつけ、平和な社会を築くなど、平等の土台づくりの重要性が押さえられていることです。いくら法律ができても、遵守義務や罰則規定がないなど、行政や企業にとって抜け道があったり、法律そのものを広く知らせ、徹底させる努力をしない限り現実には活かされません。女性活躍推進法は成立していますが、この法律は従業員301人以上の事業者に対して、女性活躍推進の行動計画を立て、届け出させ、それを一般に公表し、企業内にも周知することを義務づけています。この法律はしっかりとしたモニタリング制度がなく、企業の計画策定に女性たちが関与する仕組みもないので、現状では実効性が期待できないという声があります。しかし、同法の情報公表の項目には、職場での女性労働者の割合、男女の勤続年数の差異、賃金格差の実情も、任意項目でありますが、入っています。これらの項目は、女性労働者たちが男女間格差の是正に向けて、長い間、訴えてきた点とも重なっていて、男女格差の実態を可視化し、それを縮小させる上で活用できる可能性があります。区として、区内業者の周知を積極的に働きかけるとともに、努力義務とされる300人以下の事業者には、区として認定する制度をつくることを求めます。区内事業者の働く男女の実情を捉えることができれば、その後の施策に大いに役立ちます。区長の見解を伺います。

【区長】次は、女性差別撤廃施策の充実のためにのご質問であります。
 雇用者が300人以下の事業者でありましても、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定、届け出し、その取り組みの実施状況等が基準を満たせば、優良企業として認定をされることとなっています。また、区が実施しております300人以下の事業者を対象とする「いたばしgood balance会社賞」におきましては、以前から女性活躍推進の取り組みも評価の対象としております。
 女性活躍推進法の趣旨やその意義につきましては、区のホームページや情報誌を用いて、区内企業への周知に努めていきたいと考えています。

 板橋区平和都市宣言について伺います。
 非核自治体宣言は、核兵器の廃絶、非核三原則の遵守を柱にし、そこに盛られた非核平和の大道を示すものとなっています。それだけではなく、中学生の広島、長崎への訪問、区長の広島訪問や各地の非核平和のイベントや広報活動を意味づけ、非核平和の営みを具体的に方向づけるよりどころとなっています。
 10月27日に、国連で2017年に核兵器禁止条約を交渉する国際会議を開くことを求める決議、多国間核軍縮交渉の開始が123か国の多数で採択されました。戦後の国際政治で核兵器禁止条約の交渉開始につながる決議が採択されるのは初めてのことであり、画期的な出来事です。核兵器禁止条約に仮に核保有国が参加しなかったとしても、核兵器は人類史上初めて違法化されることになります。そうすれば、核兵器廃絶に向けて、世界は新しい段階に入ることになるでしょう。この決議の実行を通じて核兵器のない世界への扉を開く一歩にしなければなりません。
 しかし、日本政府が決議に反対の態度をとったことに、全国紙・地方紙が一斉に被爆国にあるまじき態度として厳しく批判しています。核兵器廃絶に背を向けることは核保有国の代弁者になることであり、被爆国の国民を裏切ることです。日本国憲法の平和主義は核兵器廃絶と分かちがたく結びついています。安保関連法や武器輸出、南スーダンへの駆けつけ警護、さらには改憲への道は、戦後日本の国是とも言える平和主義のあり方を大きく転換し、アメリカの戦争にあらゆる形で加担する体制を目指すものです。平和都市宣言に込められた願いと取り組みは、今後ますますその意義と値打ちを発揮すべきときです。区長の見解を求めます。

【区長】次は、核兵器禁止条約決議案に日本政府が反対したことに対する区長の見解についてのご質問です。
 国連総会において、核兵器禁止条約交渉開始の決議案が賛成多数で採択されましたが、日本を含む38か国が反対、16か国が棄権したことは承知をしております。一方、日本が提出し、現実的な道筋を示す核兵器廃絶決議も、同日167か国の賛成で採択をされておりまして、段階的な核軍縮に向け一定の成果を上げているものと感じています。取り組みの方策はさまざまではありますけれども、核廃絶という方向性は同一であり、平和都市宣言を行っている自治体の長として、今後の動向に注意をしていきたいと考えています。
 次は、平和都市宣言の意義と位置づけについてのご質問であります。
 憲法前文には、「全ての国民は平和のうちに生存する権利を有する」としております。板橋区平和都市宣言の意義につきましては、平和主義のもと、住民の福祉向上に努めることであると認識をしています。今後も、平和都市宣言の理念のもと、平和事業等を通じて区民の意識の醸成に努め、よりよい社会の実現に向けて取り組んでいく覚悟であります。

 また、それは、京都市非核・平和都市宣言にあるように、戦争準備に反対するにとどまらず、戦争に協力する事務は行わないことなどを含むことにならざるを得ません。板橋区平和都市宣言も実践的な意味内容は、こうした考えを含むと理解すべきです。区長の見解を求めます。

【区長】次は、京都市議会の非核・平和都市宣言との比較についてのご質問であります。
 京都市に関係する平和都市宣言には、京都市が宣言している平和都市宣言と、京都市議会が議決している非核・平和都市宣言の2つが存在をしております。ご指摘の京都市議会の宣言文の中の「戦争に協力する事務は行わない」との項目の意味につきましては、当時の議事録等からも確認することはできない状況にございます。宣言を行うに至った背景や経緯などの詳細は承知していないところではありますが、平和都市実現にかける思いは変わらないものと考えています。

 区民参加行政の推進のために質問します。
 行政への区民参加の根拠規定は、板橋区区民参加推進規程です。内容も区民の住民自治権を十全に規定しているとは言いがたいものです。これを改善することが必要です。
 住民参加制度と民主主義を充実させるというのであれば、区民の包括的な参加を保障し、多様な意見を聞こうとするならば、従来の制度やあり方の見直しが求められます。伝統的な諮問機関活用に関しても、非公開で恣意的な人選が疑われる運営方式から、会議の資料などの公開による委員公募の比重をより高めるなどの修正が必要です。
 パブリックコメントは行政手続法に基づく意見聴取型の参加制度と言うことができます。しかし、本来は条例化すべきものです。パブリックコメントには制度的な問題もあります。掲出期間は1か月間を標準的な規定とされていますが、区民にとってはパブリックコメントが行われていること自体に気がつかない可能性が高いのが現状です。また、一定の専門知識または活動実績のある団体からの意見聴取を考えた場合は、そのための討議が必要と考えられますが、改善のための見解を求めます。

【区長】次は、パブリックコメント制度のあり方についてのご質問です。
 区が実施するパブリックコメントの募集は、区民参加推進規程により制度化されております。平成27年度は26件の計画等についてパブリックコメントを募集しておりまして、203名の方から531件のご意見を頂戴いたしました。パブリックコメント制度については、条例の制定にこだわらず、区民参加の推進を図り、自治力アップに資する取り組みとして充実を図っているところであります。
 具体的には、平成27年度から、パブリックコメントを区のホームページから直接提出できる仕組みを導入いたしました。今年度はパブリックコメントの募集情報をより効果的に周知する仕組みについて、現在検討しているところであります。 次は、区民参加行政全般の発展についてのご質問です。
 区では、各種会議体への公募委員の参画を図るほか、基本計画策定に当たっての区民検討会や公園整備におけるワークショップの開催など、区民の区政への直接参加の機会をふやす工夫を行ってまいりました。私自身も、区長への手紙や区民と区長との懇談会において、直接区民の皆さんのご意見を伺うとともに、地域行事等にも直接出向きながら、区民の皆さんの声をお聞きし、区政に活かしているところであります。区民の方々からの直接の意見等は、議員の方々を通じて伺う意見とともに、自治体経営の根幹であると考えています。今後も、より多くの区民のご意見を聞けるように努めてまいりたいと考えています。

 来年度予算について質問いたします。
 「基本計画2025」の実現のためには、区民の福祉と暮らしの応援に積極的財政出動が必要です。区民の中に、暮らしの厳しさは日増しに強まり、中小零細業者の苦しさは、後継者が不在という状況を広げ、医療や介護の負担と、それに伴う不安は増すばかりです。教育費や子育て費用の家計に占める負担は一向に減る兆しはありません。生活保護制度を利用できない低所得の区民は、ぎりぎりまで切り詰めた生活を余儀なくされています。地方自治体が暮らしを支える施策をどこまで取り組むのかは、その自治体の姿勢を示すものです。国や東京都の補助制度のうち、それが廃止になっても、区民生活を支えるものであれば、引き続き続けることも必要です。開発経費が巨額であれば、結局、民生費に回る予算が相対的に少なくなります。今必要なのは、暮らしに回す予算を大きく引き上げることにあります。見解を求めます。

【区長】次は、開発優先型予算についてのご質問です。
 来年度の予算につきましては、現在編成中であります。編成に当たりましては、板橋区基本計画2025における9つの基本政策を着実に展開できる予算としていきたいと考えています。予算フレームにおける福祉費の伸びが鈍化したことは、雇用環境の改善などから、生活保護費が減少に転じたためであります。
 児童福祉費に関しましては、9月補正で示したとおり、待機児対策に注力をし、また、高齢者福祉に関しましても、日常生活用具や地域密着型サービス拠点施設整備の拡充を検討しているところであります。必要な福祉事業費につきましては、確実に予算化してまいりたいと考えています。

 第2に、将来の財政運営の不透明という理由から、公共施設整備計画や事務事業のさらなる効率化や部自主編成経費枠内事業などの制限を行っていますが、再開発計画、公共施設の統廃合・複合化経費が推定公表されていません。巨額な経費になると推定されれば経費削減効果が相殺されて、開発関係企業の利益のために区民の暮らしを圧迫することになりかねません。見解を求めます。また、再開発経費、公共施設の統廃合・複合化経費の推定額の公表を求めます。

【区長】次は、再開発経費等の公開についてのご質問です。
 平成27年度末に、児童相談所や板橋駅前用地開発事業などの新たな行政需要が発生したために、昨年度末に発表予定でありました財政計画を見送った経緯がございます。平成29年度予算編成にあわせ、年度末には財政計画とともに、再開発計画の経費につきましても公表していく考えであります。また、区政運営に関しましては、区民生活の安心安全を第一として行政運営を図ることにつきましては変わりがないものと考えています。

 第3に、長期的視野に立てば、区内の産業振興を地域に根ざした具体的な支援のメニューが区全体を活性化させ、増収にもつながります。区内企業、事業者とともに、効果的な支援メニューの作成とその実現に踏み出すべきです。見解を求めます。

【区長】次は、区内企業等に対する支援についてのご質問です。
 本区におきましては、これまでも区内産業の育成、伸長発展に努めてきたところであります。特に近年におきましては、ベンチャービジネスの育成などにも力を入れておりまして、昨年度に策定しました板橋区産業振興構想2025を着実に推進し、引き続き区内産業の育成に努めていく考えであります。

 第4に、区民要求を掘り起こすには、必要に応じて積極的な実態調査が必要です。外部委託が進み、区民と職員の接点は狭まっているもとでは、こうした補助的調査の重要性をきちんと区政運営に位置づけるべきです。見解を求めます。

【区長】次は、委託化と区民との接点についてのご質問です。
 窓口委託の対象は行政業務として一定の専門性が求められるものの、定型処理を繰り返す業務でもあります。標準に当てはまらない案件につきましては職員が速やかに対応することとしておりまして、区民ニーズの実態把握という意味での接点は確保していると考えます。窓口の委託化に際しましては、区民の方々からの声を確実に受けとめる仕組みを確保しながら、効果的、効率的な業務の執行に努めていきたいと考えています。

 最後に、区の平和行政はいよいよ大切です。区の平和行政を全ての世代に伝え、一緒に考え行動する力を育てることが必要です。広報のみならず、区民のさまざまな提案を盛り込み、新たな工夫で一層の取り組み強化を求めます。見解を求めます。

【区長】次は、平和行政の一層の取り組み強化についてのご質問です。
 平和行政の課題の一つとして、戦争体験のない世代が多くなり、当時、全ての人が味わった悲惨な体験が徐々に風化し、薄らいでいくことが挙げられます。世代を超えて平和について学び、考えていくことは重要であり、区民と行政が一体となって、平和な社会の実現に向け機運の醸成が図られるよう、平和事業の積極的なアピールに努め、認知度を高めていきたいと考えています。

 区民生活を破壊するTPPからの撤退を求めて質問いたします。
 次期アメリカ大統領トランプ氏は11月20日、TPP交渉からの撤退を正式に表明しました。アメリカ抜きでTPPは発効せず、このままの協定案を審議することに意味がなくなりました。TPPは多国籍企業だけがもうかるためのルールづくりです。しかし、人間あっての貿易であり、経済主権を含め、守るべきものはきちんと守るルールづくりこそ必要です。全国の農業関係者、団体、医療機関関係者など、食料、医療、その他あらゆる分野でTPPに反対を表明しています。地方自治体は、TPPにまったく無関係ではありません。区長の認識を伺います。

【区長】次は、あらゆる分野でのTPP反対の声についての区長の認識についてのご質問です。
 TPPは、成長が著しいアジア太平洋地域で、物の関税だけではなく、サービス、投資の自由化など、幅広い分野で新しい国際的なルールを構築するもので、現在は協定の承認案と関係法案が国会で議論されているところであります。対象となる個別の分野を中心に、一部に慎重な意見があることは認識をしているところでありますが、経済がグローバル化する中において、協定による新しい経済成長の可能性も一方では期待されており、区としましては、現在行われている国会審議を注意深く見守りたいと考えております。

 また、地方自治体の長として、住民生活に多大な影響のある政治問題には、少なくない長が発言を発信していますが、区長の政治姿勢について見解を伺います。(拍手する人あり)

【区長】次は、最後のご質問です。
 住民生活に多大な影響がある政治問題の区長の政治姿勢についてのご質問です。
 TPPに限らず、区民生活に多大な影響が予測される問題につきましては、区として取り組めることはしっかりと取り組み、国が責任を持つ課題については、その動向を注目し、区民福祉の向上に努めていきたいと考えます
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