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竹内愛議員の代表質問
2017.03.07 : 平成29年第1回定例会(第3日)

 ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表し、施政方針に対する代表質問を行います。
 初めに、平和についてです。
 核兵器禁止条約の交渉会議が、いよいよこの3月27日から始まります。世界で唯一の核兵器による被爆被害を受けた日本国はもとより、世界中に核廃絶を願う声が広がっていることを示すものです。しかし、日本政府は、今回の交渉会議への参加を正式に表明しておらず、その動向が注視されています。本年2月10日には、日本被団連など国内の平和団体13団体が、日本政府に対し交渉会議への参加、禁止条約締結に積極的に貢献することを要請しました。政府はこれまで自らの役割として「核保有国」と「非保有国」との橋渡しであることを強調してきました。核兵器の非人道性、戦後70年以上が経過してもなお苦しむ被爆者やその家族がいること、二度と核兵器を使用させてはならないということを被爆国として訴えていくことが求められています。交渉会議の成功のため、決議の採択のために、その役割を果たすべきです。国の姿勢を後押しするためにも、国民的な活動を広げることが重要です。
 私たちは、区長に対し、核廃絶のための具体的な行動として、日本被団連が呼びかけた「ヒバクシャ署名」の推進を繰り返し求めてきました。区長は、「平和都市宣言の立場で今後も取り組んでいきたい」と述べています。区として、核廃絶に向けた取り組みの充実と、ヒバクシャ署名への捺印を含め、区長がその先頭に立つことを大いに期待するものです。
 そこで質問いたします。平和都市宣言を掲げ、核廃絶を目指す板橋区が独自の平和事業に取り組んでいることを区内外に伝えていくことは重要な活動と考えます。発信の方法を常に改善・工夫をしていただきたい。ホームページの活用や庁舎を訪れた人が平和都市宣言を掲げていることがわかるような表記を工夫するなど、あらゆる方法で常に発信していく姿勢を示していただきたいが、区長の見解を伺います。

【区長】それでは、竹内 愛議員の代表質問にお答えいたします。
 最初は、平和事業のさらなる発信についてのご質問であります。
 平和事業の取り組みにつきましては、区のホームページで常時紹介をしているほか、事業を実施する際にはトップページにイベント情報として周知をしております。今後の新たな取り組みとしましては、文化会館で行っております平和のつどいにおける中学生平和の旅体験発表の様子を、ホームページで動画配信することを検討しております。平和行政の課題の一つとして、戦争体験等が徐々に風化し薄らいでいくことが挙げられているため、今後も平和事業の積極的なアピールに努め、気運の醸成と認知度を高めていきたいと考えております。

 次に、暮らしと経済についてです。
 まず、景況と財政見通しについて質問します。
 政府は、「景気は緩やかに回復している」と言います。しかし、多くの国民に回復の実感はなく、個人の消費も伸びていません。
 厚生労働省の「勤労統計」によると、安倍政権発足直前の2012年11月と昨年12月との比較で物価上昇を差し引いた実質賃金は、年収で18万円も下がっています。消費税8%増税、社会保障の負担増などの影響で国民生活が疲弊し、暮らしにゆとりのない人や預金のない人が増大しています。
 また、総務省「労働力調査」では、この10年で正規雇用は85万人減少する一方、非正規雇用は281万人増加し、労働者全体の4割に迫る状況です。非正規雇用の増加と比例し、年収200万円以下が24%、年収300万円以下が40%と低所得層も増加しています。これでどうして回復などと言えるでしょうか。現政権が進める経済政策が破綻していることを示すものです。
 ところが、区長は、施政方針の中で、「雇用と所得の改善」、「緩やかな回復」とし、区民生活の困難さへの言及はほとんどありません。不安要素として挙げているのは、「海外経済の弱さ」や「各種交付金の減収」で、区民生活に関することは、「個人消費」は力強さを欠いた状況と記載があるだけです。区長は、区民生活に対する危機感はないのでしょうか。区長の認識を伺います。

【区長】次は、区民生活の厳しさについてのご質問であります。
 厚生労働省が2月6日に発表しました毎月勤労統計調査によりますと、物価変動の影響を除いた平成28年通年の実質賃金が0.7%増加したことが公表されております。また、区民1人当たりの所得金額につきましても、リーマンショックの影響を受けた平成24年を底に、その後、改善の方向にございます。政府は、企業に対し、働き方改革とあわせて賃上げの要請をするなど、国民所得改善に積極的に取り組んでおりまして、今後の推移を注視していきたいと考えております。

 若者や女性の2人に1人が非正規雇用という状況で、晩婚化が進み、結婚や出産の希望があっても経済的な理由からかなえられないという現実が広がっています。今の状況から、区の基本構想が目指す未来が描けるでしょうか。現在の課題を是正しなければ、希望の未来など描けません。区長は現状をどのように改善すると考えるか、区長の認識を伺います。

【区長】次は、現状の改善についてのご質問であります。
 未来をよくするための一つとして、あすを担う子どもたちの健やかな成長を支えることであると考えます。区といたしましては、いたばし子ども夢つむぐプロジェクトとして、全庁的な推進体制のもと、質の高い教育環境の整備や生活支援等を総合的に展開していく考えであります。特に、学習支援事業による高校卒業資格を取得することで経済的自立を促していくことが肝要と捉えております。そして、板橋区基本計画2025を着実に進め、「未来をはぐくむ緑と文化のかがやくまち“板橋”」を実現していくことが大切であると考えております。

 当初予算における産業経済費は、構成比率0.8%と若干の増額となりました。主な内容は、赤塚庁舎の組織改正によるものです。農政事業が拡充されたことは重要ですが、中小事業者支援が充実と言えるものは見受けられません。
 国の新年度予算では、中小企業支援の新規事業が盛り込まれています。しかし、対象となる企業は、国が「稼げる企業」と認定した限られた事業所にのみです。また、区の今年度最終補正予算では、産業戦略経費として目玉事業として盛り込んだ企業誘致は3,000万円の予算が全額減額補正となっています。今、区内中小事業者に求められているのは、事業の発展だけでなく、経営の維持、技術の継承です。人材育成や後継者支援、運転資金への融資、固定費への助成など、区内の事業事業者のニーズに沿った事業が求められます。区内中小事業者への支援について、区長の認識を伺います。

【区長】次は、中小事業者への支援についてのご質問であります。
 板橋区では、産業振興構想2025を策定し、事業継承を含む産業の基盤整備や産業融資への利子補給など、区内産業の振興のためのさまざまなサポート体制の整備に取り組んでいるところであります。また、補正予算で減額した企業誘致につきましては、対象事業者の拡大や対象工場の面積要件の緩和などを進め、使いやすい制度に改善をする予定であります。さらに、産業振興公社におきましては、各企業が行う新製品や新技術の研究開発への支援の充実を図るとともに、営業力強化や販路拡大に向けた取り組み等を支援しているものであります。今後も、時代のニーズや区内企業のニーズに的確に応えるため、産業振興公社と連携をしながらさまざまな取り組みを実施し、中小企業をサポートしていく考えであります。

 次に、「人口減少」、「超高齢化社会」を乗り越えるために質問します。
 区は、将来の課題として「人口減少」、「超高齢化社会」の到来を挙げています。現状では、区が予想していた推計を上回る人口の増加が見られます。しかし、その多くが他地域からの流入によるもので、社会全体として人口減少に歯どめがかかっているわけではありません。
 日本の人口減少は、不安定雇用の拡大などによる経済的な理由や長時間過密労働などによる疲労が主な要因と言われています。将来の見通しどころか、日々の生活さえままならない状況では出生率を改善することはできず、人口減少に歯どめをかけられません。また、人口減少は超高齢化社会を招き、将来の社会保障の負担が増大することも懸念されています。
 兵庫県明石市では、人口増加の目標数を設定し、出生率では1.5から1.9へ引き上げを目指す宣言をしています。目標達成に向け、第2子以上を出産できるよう具体的な支援策を打ち出しています。人口減少や超高齢化社会を乗り越えるためには、人口増加の目標を持つことが必要と考えます。
 現在、区が目標としているのは、人口増加の目標とは言えません。社会増に期待するだけでなく、自然増、つまり出生数の増加を軸とした目標を定めることを求めます。区長の認識をお示しください。

【区長】次は、将来の人口推計についてのご質問であります。
 平成28年1月に策定いたしました板橋区人口ビジョン及び総合戦略2019では、社会増減だけではなく自然増減も踏まえ、施策の効果があらわれた場合の目標とすべき人口として、平成72年までの人口推計を行っております。自然増減の推計に当たりましては、国の推計と同じく出生率の代替として安定的な数値が得られる子ども女性比を用いておりまして、区の子ども女性比が国の推計値よりも約5%高い現状を将来にわたって維持することを目指していたところであります。目標とすべき人口に向けて、基本計画2025と整合を図った総合戦略も用意をしておりまして、自然増と社会増の両面から人口増を目指す取り組みを着実に進めていきたいと考えております。

 区が人口ビジョン策定にかかわって実施したアンケートでは、若い人の一番の不安は、家計や将来の経済的負担です。今の生活、そして将来への不安、それはいずれの世帯にも共通した不安でもあります。経済的な不安は負担の軽減を図ることが最も有効と考えます。今、中間層にまで広がっている「生活が苦しい」、「将来が不安」という声にどのように応えるのでしょうか。新たな現金給付事業は行わないとする方針を撤回し、区民の暮らしを支えるために経済的支援の拡充の施策の柱に据えることを求めます。

【区長】次は、経済的支援の拡充を施策の柱に据えることについてのご質問であります。
 板橋区では、さまざまな政策課題に対しまして、自助、共助、公助の考えに基づき施策を実施しております。経済的支援につきましては、子どもの医療費助成や心身障害者福祉手当など、個々の区民ニーズを踏まえ実施をしてきたところであります。今後とも、区民の意向を確認しつつ、政策課題に対しまして実効性のある手法を選択し、施策を実施していく考えであります。

 次に、働き方の見直しと職員定数についてです。
 大手広告代理店・電通の女性新人社員の過労自殺問題は、日本の長時間労働の深刻な実態を浮き彫りにしました。昨年10月に厚生労働省が初めてまとめた「過労死白書」によると、2011年度からの5年間の脳や心臓疾患の労災認定件数のうち、9割以上の人が過労死ラインである月80時間以上の時間外労働を行っていました。今、国に求められていることは、「過労死」や「過労自殺」を生む長時間過密労働をどのようになくしていくかであり、雇用や労働環境の抜本的な改善です。
 安倍総理も「長時間労働規制」や「同一労働同一賃金」を検討する「働き方改革実現会議」を設置し、「長時間労働を是正し、非正規という言葉をこの国から一掃します」と宣言しました。ところが、会議では長時間是正と言いながら、「過労死ライン」を超える時間外労働を認める内容が検討されるなど、国民の期待に応えるものとは言いがたいものです。これでは長時間労働の是正にも雇用の改善にもつながりません。悲劇を繰り返さないためにも、日本の産業や経済のためにも、抜本的な改善が必要と考えます。
 そこでまず、社会全体における雇用や労働環境の改善の必要性について、区長の見解を求めます。

【区長】次は、雇用や労働環境改善の必要性についてのご質問であります。
 正社員になりたくてもかなわないなど、特に若者の雇用環境においてご本人の希望とのギャップがあることや、長時間労働の削減、年次有給休暇等の取得促進など、一人ひとりのニーズを踏まえた納得のいく働き方を実現するための改善の必要性については、認識をしているところであります。

 新年度の区職員定数は3,476名です。各所管課からは150名もの増員が求められていましたが、増員は55名にとどまり、減員が上回っています。しかし、この間、経験ある職員の退職に体制が賄えていないことによる事故やミスも発生しています。職員の偏った残業や管理職のなり手がいないこと、男性職員の育児休暇取得率の低迷は過重な業務の反映と受けとめるべきです。職員の意識改革、職場風土の改善だけでは解決できません。
 こうした点から、区職員の定数削減は区が行うべき労働環境改善と相いれないと考えます。労務軽減のための委託化は、管理や指導も難しく、区の責任も曖昧になる上に、区としてのノウハウも蓄積されません。職員の削減方針を改め、必要な人員の確保により業務を軽減すること、管理職を含め労働環境を抜本的に改善すべきと考えます。区の職員定数の削減と労働環境の改善の関係性について、区長の認識を伺います。

【区長】次は、区職員の労働環境改善と職員定数についてのご質問であります。
 区職員の定数につきましては、新規事業や事業量の増大、または業務改善、委託化等による業務量の増減にあわせ、人材の最適な配分と配置に努めているところであります。No.1プラン2018「行財政経営計画」編におきましては、適正な職員定数の維持を掲げておりまして、業務量に鑑み適正に査定をした結果を定数条例で定めております。今後も、選択と集中の観点から限られた人材を効果的、効率的に配分し、さらなる執行体制の強化を図るとともに、労働環境の改善に努めていきたいと考えています。

 官製ワーキングプアの是正も待ったなしの課題です。区が直接雇用する非常勤職員は、正規職員の3分の1にまで迫っています。特別職での採用としながら、実際には正規職員と同じように業務を担っている職員も少なくありません。同一労働同一賃金の実現が叫ばれる中、国も是正に向けた取り組みを進めようとしています。
 政府が発表した「同一労働同一賃金のガイドライン案」では、管理職コースの新卒正社員により、その社員に仕事を教えている熟練パート労働者の賃金が低くてもよいという内容が示され、さらに評価のほとんどが経営者の裁量に任されています。こうした点から、「賃金差別容認ガイドライン」との批判の声が上がっています。  一方、ILOが推奨する同一労働同一賃金は、客観的な指標に基づく職務評価の方法を示し、公正な処遇を目指す内容です。区が進める非常勤職員の処遇改善は、ほかの先進国では既に運用さているILO推奨の「同一労働同一賃金」の方向性を念頭に進めるべきと考えます。区長の認識を伺います。  

【区長】 次は、区非常勤職員の処遇改善についてのご質問であります。
 昨年12月に政府から同一労働同一賃金ガイドライン案が示されておりまして、今後の法改正等を踏まえ、民間事業者における同一労働同一賃金が進められていくと考えております。一方において、区非常勤職員については、地方公務員の臨時・非常勤職員制度の見直しの検討が進められているところでありまして、制度の改正にあわせて対応していきたいと考えています。
 なお、我が国も加盟するILOが推奨する同一労働同一賃金の処遇との整合につきましては、政府の動向等に注視をしていきたいと考えています。

 委託化の拡大は、官製ワーキングプアを広げる要因でもあります。公務における委託や指定管理事業者のもとで働く、労働者の働く環境や処遇を区として把握すべきと考えます。区長の見解を伺います。

【区長】 次は、委託や指定管理事業における労働環境についてのご質問であります。
 指定管理者制度導入施設につきましては、指定管理者制度導入施設のモニタリング・評価に関する基本方針に基づき、労働環境の把握を行っております。また、業務委託におきましては、事業者に対し、労働関係法令の遵守など労働環境の整備を求めておりまして、適切に行われていると認識をしております。

 次に、LGBTへの理解促進を求めて質問します。
 今年1月から、LGBTも含めた男女雇用機会均等法のセクシャルハラスメント対策指針が新たに施行されました。LGBTは、性的少数者の総称として、少しずつ社会での認知が広がってきました。しかしながら、当事者の方々は日常生活の中で現在もさまざまな差別や偏見に苦しんでいます。性的少数者ということを理由にした差別や偏見を社会全体でなくしていくためには、理解を深めるための具体的な取り組みが重要です。既に一部の民間企業では、LGBTへの配慮を掲げ、採用や人事で差別しない取り組みも進んでいます。また、職員への理解促進の取り組みを実施する自治体も生まれています。
 国においては、新年度から国家公務員人事管理運営方針に、性的少数者への差別解消に向けた配慮規定を盛り込む方針が示されました。
 板橋区においても、庁内外の理解が進むよう、まず区とする差別解消に向けた取り組みを実施していただきたい。区職員の人事に関する方針において、性的少数者への差別解消に向けた配慮規定を明記することを求めます。区長の認識をお示しください。

【区長】次は、性的少数者への差別解消に向けた庁内外への理解促進についてのご質問であります。
 LGBTなどの性的少数者への理解促進につきましては、差別解消や防止に向け、官民ともに動き始めている状況でありまして、配慮すべき人権の一つであると認識をしております。区ではこれまでも多様な差別解消に向けて取り組んでおりまして、性的少数者への差別解消につきましても、研修などを通じ、職員の理解が進むよう取り組んでいく考えであります。

 次に、いのち・暮らし守る社会保障を求めて質問します。
 安倍内閣は2015年の骨太の方針で、社会保障予算の「自然増」を毎年5,000億円に抑える方針を決定し、新年度予算でも自然増の予算が大幅に削減されています。その内容は、後期高齢者医療の低所得者への保険料軽減措置を縮小し、保険料負担をふやすこと、高齢者の医療費や介護利用料の自己負担限度額の引き上げなどが含まれています。加えて、消費物価が0.1%下落したことで、4月以降の年金や児童扶養手当、被爆者手当なども支給が0.1%引き下げられます。さらに、70歳から74歳の医療費窓口負担2割化は、73歳まで拡大されます。これらの削減や負担増により、必要な医療や介護が受けられない、受けにくくなるとの懸念が広がっています。制度を維持することを理由に、国民の命や暮らしが犠牲になることを認めることはできません。区民の福祉向上を図るという自治体の最も重要な役割を担う立場から、「予算削減止めよ」と声を上げるべきではいませんか。区長の認識を伺います。

【区長】次は、国に対し予算削減中止の声を上げることについてのご質問であります。
 国に対する要望として、子育て支援の充実や生活保護制度の充実・改善、障がい者施策の充実などの福祉関連にとどまらず、医療体制の充実・整備、予防接種関連の多様な要望を、区長会だけではなく全国市長会を通じて国に意見を上げております。今後も、区長会や全国市長会と一体となって意見を上げていく考えであります。

 政府は、社会保障充実の財源に消費税増税分を充てるとしてきました。ところが、充実に必要な経費1.8兆円に対し、増税分は1.35兆円にとどまっています。それ以外は、さきに述べたとおり、これまでの施策を削って振り替えるということです。削られる事業に必要ないものはありません。これで充実と言えるでしょうか。国が区民の福祉を脅かすなら、区として区民の命や暮らしを守るべきです。区民の命や暮らしを守るために、医療や介護にかかる経済的な負担を軽減する施策を求めます。

【区長】次は、医療の区独自軽減施策の実施についてのご質問であります。
 平成29年度国民健康保険事業特別会計予算におきましては、保険料の上昇の抑制等により生じる赤字を補填するため、一般会計から45億6,000万円を超える法定外繰入金を計上しております。また、国民健康保険につきましては、保険料率や減免基準等に係る23区統一基準を定めておりまして、区独自で負担の軽減を図ることは困難であると考えています。
 次は、介護の区独自軽減施策の実施についてのご質問であります。
 介護保険におきましては、介護サービス利用料の負担については国の軽減制度や東京都独自に対象を拡大した軽減制度があるほかに、保険料につきましても、現行の負担軽減に加え、国の軽減制度が消費税率10%引き上げ時に拡充される予定となっております。これらに加えて、さらに一般財源を投入して負担軽減策を実施することにつきましては、厳しい財政状況のもと、超高齢化社会を目前に控えて、慎重にならざるを得ないと考えています。また、介護給付費が年々増大し、一般会計からの繰入金も多額にのぼっている中におきましては、財政規律の保持という観点からも困難であると考えます。したがいまして、区独自で負担軽減に係る施策を新たに実施することは、現在のところ予定してないところであります。

 次に、保育・子育て支援の充実を求め質問します。
 まず、子どもの貧困についてです。
 子どもの6人に1人が相対的貧困と言われ、さらにひとり親家庭では約6割もの世帯が貧困状態に置かれています。こうした状況を受け、全国の自治体では貧困の実態を把握するため独自の調査を実施する動きも広がっています。
 東京都は昨年8月、都内の4自治体に在住する小学5年生、中学2年生、16歳から17歳の子ども本人と保護者に対する「子どもの生活実態調査」を実施しました。その中間のまとめによると、回答があったうち2割の世帯が生活困難にあることが示されました。調査項目等の違いにより厚生労働省の貧困率とは単純比較はできないとしていますが、都内の子どもの5人に1人が貧困状態という衝撃的な内容です。いずれの項目も生活困難の度合いに差が生じていると分析しており、世帯の経済状況がそのまま子どもの生活に反映していることがわかります。子どもの貧困対策に一層の危機感を持って対応すべきと考えます。今回の東京都の調査結果に対する区長の認識を伺います。

【区長】次は、東京都の「子供の生活実態調査」についてのご質問であります。
 東京都の子供の生活実態調査においては、子どもの生活困難を低所得、家計の逼迫、子どもの体験や所有物の欠如の3つの要素に分類し、いずれかに該当する場合、「生活困難層」と定義をしております。調査結果の中間のまとめにおきましては、2割以上の家庭が生活困難層に該当されておりまして、生活困窮の状況や子どもの学び、生活、健康などの各項目において生活困難度による差が見られるなど、実態がきめ細かく報告がなされております。今後、調査結果を詳細に分析し、板橋区における子どもの貧困対策に活用してまいりたいと考えています。

 大阪市でも5歳児、小学5年生、中学2年生の全世帯の親と子に対する調査を実施しました。回収率を上げるため学校や保育園、幼稚園等を経由し配付・回収を行った結果、小学5年生では8割の回収率となったということです。
 区は、新年度予算でひとり親家庭に対する生活実態調査を行う予算を盛り込みました。調査はひとり親世帯から1,000世帯を抽出するとしています。区内のひとり親世帯は、平成28年3月末時点で、児童扶養手当を受給している世帯が3,795世帯、平成22年の国勢調査から見ると全体で5,000世帯を超えると推測されます。ひとり親世帯の調査について、対象を全世帯に広げることが可能と考えます。また、子ども自身が返答できるよう、保護者と子ども、別々の調査を実施すべきと考えますが、区長の認識を伺います。 また、困難を抱える家庭はひとり親世帯に限られたことではありません。大阪市方式を参考に、全世帯調査の実施を求めます。

【区長】次は、実態調査のあり方についてのご質問であります。
 ひとり親家庭の経済状況、生活実態はより厳しい状況にございまして、区として優先的に施策を講じる必要があると考えております。このため、平成29年度におきましては、ひとり親家庭から統計上、有効な手法として1,000世帯を抽出し、実態調査を行う考えであります。またあわせて、これまで区が実施をしました一般区民生活実態調査や子育て世帯を対象としたニーズ調査をはじめ、東京都による子供の生活実態調査なども有効に活用し、ひとり親世帯に限らず、支援を必要とする子どもの生活実態に即したきめ細かい施策・事業につなげていきたいと考えています。

 子どもの貧困対策は、新年度に策定する子ども・若者支援計画の重点施策として盛り込むことが示されました。一方で、「お金がない」という直接的な要因を解決するためには、経済的支援の充実が必要でもあります。この点では、新たな取り組みはほとんどありません。子どもの貧困対策として経済的支援の拡充を重点政策として据えるべきです。区長の認識を伺います。

【区長】次は、経済的支援の拡充についてのご質問です。
 子どもの貧困対策における施策・事業の実施に当たっては、これまで行ってまいりました経済的支援に引き続き、取り組むとともに、教育の機会均等や相談体制の連携・強化などを重点に実施をすることといたしました。今後は、さらに実態調査を踏まえて事業の拡充を図っていきたいと考えています。

 次に、保育園待機児童対策と保育の充実についてです。
 働く親にとって保育園に入園できないことは、死活問題です。仕事と育児かの選択を迫られ、仕事をあきらめざるを得ない人や、働かなければ生活できない人など、一人ひとりの状況は本当に深刻です。待機児童の解消に向け、全力を挙げていくことが求められます。
 今年4月の保育園入園に向け区に申し込みがあった人のうち、第1次審査の結果、不承諾となった人は昨年比9名減少し、1,237名となります。申し込み数の約3割に上ります。二次募集に向けた空き数は530名で、去年より231名分多く空きが確保されており、待機児童は減る見通しとしています。
 しかし、歳児別で見ると、不承諾数に対し空き数が少ないゼロから3歳児では、不承諾数1,189名に対し、空き数は小規模園を含めても163名分しかありません。7.3倍もの倍率で、特に厳しい1歳児においては66倍にも上ります。これでは待機児ゼロには、ほど遠いと言わざるを得ません。保育園の待機児童が発生するのは、入園を希望する人に対し受け入れる保育園が足りないからです。
 私たちは、これまで繰り返し需要の見直しを求めてきました。本当に待機児ゼロを目指すというなら、就労の実態や希望、また希望する保育園の入所を前提とした整備計画にするべきです。現状でも未就学保護者の5割がパートやアルバイトを含め、何らかの仕事についています。さらに、保育園に預けられれば働きたいという人を含めれば、より多くの方が保育園を必要としています。実態との乖離を解消するためには、需要を正確につかむ必要があります。保育園整備計画は、就労の実態や希望を軸にした需要に基づき策定されるべきと考えます。区長の見解を伺います。

【区長】次は、保育需要についてのご質問であります。
 子ども・子育て支援事業計画における需要量につきましては、保育施設を利用している児童だけではなく、待機児童も含めたものとしております。今般の見直しにおきましては、過去10年における需要率の増加を踏まえ、さらに上乗せした率で計算をしておりまして、計画上の需給バランスは確保されているものと認識をしております。

 政府は、保育園待機児童対策を理由に、保育の規制緩和を進めてきました。ゼロ歳から2歳までを保育する小規模保育所では、3歳の壁への対策として、5歳児まで預かるという緩和も進めています。また、保育士不足の対策は、長く勤務し経験を重ねても処遇が変わらず、抜本的な解決に至っていません。それどころか、保育士が集まらないなら無資格で補充するということさえ拡大されています。規制緩和による対策は質の低下を招き、子どもの安全・安心な保育に一層の不安を広げます。区が行う待機児童対策は、規制緩和によるものでなく、保育の質を下げないよう求めます。区長の見解をお示しください。

【区長】次は、規制緩和によらない保育の質の堅持についてのご質問であります。
 国では、待機児童対策として小規模保育所での5歳児までの受け入れ延長を検討しているほか、保育士の特例配置などの基準緩和を行っているところであります。区では、施設基準や職員配置基準について旧都基準を維持するなど、保育の質を落とさないよう配慮を行ってきたところでありまして、今後も安心・安全な保育の確保のため、慎重に対応していきたいと考えています。

 子育てにかかる経済的負担は、世帯収入にかかわらず重いと感じていることが区のアンケート調査でも示されています。現在の子ども・子育て支援制度内の保育施設については、応能負担となっていますが、それでも収入に対する保育料負担は軽いものではありません。また、新制度に移行し、収入はふえないのに保育料が値上げとなった世帯も出ています。新年度には、保育料の検討が行われます。保育料の多子軽減が拡大されていますが、もととなる保育料が値上げになるのでは意味があります。これ以上の引き上げを行わないこととあわせて、引き下げを含めた負担軽減を図ることを強く求めます。

【区長】次は、保育料の見直しについてのご質問であります。
 保育料は4年ごとの見直しを基本としておりまして、次回の見直しは平成30年度となっております。現在、保育に要する経費の動向や経済状況の分析に取り組んでおりまして、その状況を踏まえて保育料の見直しを検討していく考えであります。
 なお、本年度は年収360万円相当以下の世帯を対象に保育料の多子軽減を実施し、負担軽減を行ったところであります。

 区立保育園の新たな民営化方針が示されました。今後、建て替えが必要となる場合には民営化を検討するとしています。一方で、区は区立保育園として小規模保育所や家庭福祉員との連携保育の実施や障がい児保育の充実等も含め検討する方針です。現状でも、小規模保育所及び家庭福祉員あわせて79か所であり、区立保育園26園を大きく上回っています。連携保育は3歳児の受け入れを確保することや給食調理、日常や緊急時の対応も行います。現在の区立園数でも非常に厳しいと考えます。連携保育の実施など区立保育園の重要な役割を果たすためには、これ以上の民営化を行うべきではありません。区長の見解を伺います。

【区長】続いて、民営化についてのご質問であります。
 区立保育園の民営化は、板橋区公立保育園のあり方を踏まえ、施設の老朽化に伴う建て替えの際には原則、民営化を検討していくものと考えております。

 次に、児童相談所についてです。
 区は、平成33年度開設を目指し、新たに児童相談所を設置する計画を進めています。区の計画では、現在、子ども家庭支援センターが担っている相談事業を含め、相談機能は全て児童相談所で実施するとし、現在の児童相談所の役割や機能を拡充することも示しています。しかしながら、現行の児童相談所の人員体制でも賄い切れず、過重になっていることが問題とされてきました。区は、人口4万人に1人という国の基準に基づき人員配置を行うとしています。これは1人の職員が何人の児童や世帯を担当するかという基準でありません。そのため、現在の子ども家庭支援センターでも非常勤を含めても1人の職員が100件以上の相談に対応する状況です。本来、ほかのケースワークのように、職員1人当たりの担当件数で配置人数を定めるべきです。これまで以上の対応を行うとするならば、児相の現行基準を上回る配置が必要と考えます。人員配置の予定数の増員を求めます。区長の認識を伺います。

【区長】次は、児童相談所に関連いたしまして、職員の増員についてのご質問であります。
 昨年の法改正によって児童福祉司の配置基準が見直され、人口4万人に対して1名に体制が強化されました。国は、虐待対応の業務量が全国平均より高い場合は上乗せを行うこととしておりまして、区の児童相談所におきましても、実績と法定数を踏まえ、適正な配置を検討していきたいと考えています。

 世田谷区では、児童相談所の設置に向けた検討について、外部の専門家委員を含めた検討会を設置しています。子ども家庭支援センターの設置によって、一定の相談や子育て支援は区としての経験を土台にすることはできますが、これまで行っていない親子分離や家庭への立ち入り、一時保護所の運営など、新たな権限、責任を担うことになります。児童相談所という重要な役割を果たすためには、庁内検討会だけでは不十分と考えます。今後の検討に際し、外部専門家委員を含めた検討会を設置すべきと考えます。区長の認識を伺います。

【区長】次は、外部委員の選任についてのご質問です。
 板橋区では、児童相談所の移管に向け、平成25年度から区組織の関係部署による検討会を設置し、区の方針の検討や組織横断的な調整を進めております。今後、専門的な検討課題につきましては、必要に応じて外部の意見を聞く機会なども設けたいと考えています。

 次に、教育についてです。
 まず、学習指導要領改訂についてです。
 文部科学省は、今年2月14日、幼稚園教育要領及び小中学校の学習指導要領の改訂案を発表しました。幼稚園は2018年度、小学校は2020年度、中学校では2021年度から全面実施となります。学習指導要領は児童・生徒に教えるべき最低限の学習内容を示したもので、今回は大きな改訂となります。これまでなかった前文が加筆され、「国を愛する態度」や「公共の精神」「道徳心」を重視する理念が示されています。これは第1次安倍政権で改悪された「教育基本法第2条」に基づく内容で、現政権の意向を色濃く反映するものとなっています。
 これまでの指導要領は「何を学ぶか」を示すものでしたが、改訂された指導要領は「何を」、「どのように」学ぶかという指導方法や学習評価まで規定しています。学習指導要領には強制性があり、学校や教員、子どもたちを一層強く縛ることが懸念されています。
 東京大学の小森陽一教授は、「教育の目的が個人の人格の完成から、国家や企業の要請にこたえる人材育成に転換するものであり、指導要領の人間観を変質させるもの」と批判しています。  そこでまず、教育指導要領の改訂案に対する教育長の認識を伺います。
 あわせて、学校現場が萎縮することなく、子ども一人ひとりの成長や発達を支えるための実践に取り組むことができるよう保障することを求めます。

【教育長】初めに、学習指導要領の改訂に対する教育長の認識についてのご質問ですが、次期学習指導要領案の小中学校社会科の目標にある「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力」は、日本と世界の生活・文化の多様性を理解する力や、地球規模の諸課題や地域的な諸課題の解決に向けて時間的・空間的など多様な視点から考察する力であり、新しい時代に必要となる資質・能力の一つであると認識しています。この資質・能力は、板橋区教育ビジョン2025で示す「未来を担う人に必要とされる資質・能力」にも通じるものと考えています。今後も、全ての教職員が、板橋区教育ビジョン2025で示す「めざす人間像」や資質・能力を踏まえ、学習指導要領に基づいた教育活動を行ってまいります。

 厚生労働省は、今回示された幼稚園教育要領改訂案との整合性を図るとして、保育指針の改訂案を発表しました。いずれも3歳以上の幼児に対し、「国旗・国歌に親しむ」ことが初めて明記されています。具体的には、「行事において国旗に親しむ」、「国歌、唱歌・わらべ歌や我が国の伝統的な遊びに親しむ」と盛り込まれています。このことが日の丸への敬礼や君が代の斉唱を強制することになるのではないかとの懸念が出ています。幼児期という未成熟な成長段階であること、特に保育園は教育だけでなく保護者にかわって保育する福祉施設であることから、専門家からは、「過度の押しつけになってはならない」との意見が上がっています。
 こうした懸念が広がっていることに対し、厚生労働省も「国旗掲揚や国歌斉唱を強制するものではない」との見解を示しています。保育園や幼稚園での活動に対し、強制や押しつけることはすべきでないと考えます。区長の見解を求めます。

【区長】次は、文化や伝統への親しみについて、学習指導要領改訂に関係するご質問であります。
 幼稚園教育要領と保育所保育指針の改訂案におきましては、周囲の環境に探究心などを持ってかかわり、生活に取り入れていく力を養うための一つの内容として、園内外の行事で国旗に親しむことを掲げているほか、文化や伝統に親しむ際には、伝統的な行事や国歌などに親しみ、社会とのつながりの意識を養うことを掲げております。児童のこうした力を養うことにおいては強制を伴うものではないと考えておりますが、現在はパブリックコメントにおいてご意見を募っている段階でございまして、改訂されました段階において取り組みについてを検討してまいりたいと考えています。

 今回の改訂案により、小学校では3年生からの英語教育導入と5、6年生の英語教科化、プログラミング教育の必修化、社会科での領土に関する学習の追加など、授業時数及び学習内容の増加が行われます。しかしながら、少人数学級の拡大など、教職員数の増加は行われません。現状においても教職員の負担が重く、多忙化解消が喫緊の課題とされています。にもかかわらず、教育条件の改善が行われないことは重大な問題です。教育条件の改善なしに、教育の充実はあり得ません。国に対し、教職員定数の是正を求めるべきです。教育長の認識を伺います。

【教育長】次に、教育環境の改善についてのご質問ですが、文部科学省では、次期学習指導要領の改訂の基本的な考え方について、現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成するとしています。小学校での授業時数増加となる第3、4学年の外国語活動及び第5、6学年の外国語科につきましては、円滑な実施ができるよう、次期学習指導要領の趣旨の説明及び実践事例や教材等の情報の提供を計画的に進めていくとともに、教員の指導力の育成も進めてまいります。教員の定数につきましては、東京都の公立学校教職員定数配当方針に基づき配置しており、国や東京都の動向を注視するとともに、全国都道府県教育長協議会等を通じ、加配等について要望してまいります。

 今回の改訂案で最も影響を受ける教科は、小学校英語です。3、4年生で年間35時間、5、6年生では現行の時間数から倍の年間70時間が増加します。特に4年生以降は時間割が限界となるため、授業日の増加や始業前の15分授業などで対応することになり、教員や子どもの負担が心配されています。
 また、先日発表された調査によると、英語が「嫌い」、「どちらかというと嫌い」と答えた中学校の生徒は、前回調査時より2.2ポイントも増加しています。英語教育の専門家からは「小学校での入門期の英語指導は最も難しく、英語課程を専攻していない教員が教えるのは相当な負担であること、テストや成績評価によって、英語嫌いが小学生に広がる懸念も払拭できないとして、拙速な導入は危険だと指摘しています。  小学校の英語の教科化により学校現場での負担が増大すると考えます。実施するのであれば、少なくとも専任の英語教員が必要と考えますが、区の見解を求めます。

【教育長】次に、小学校の英語の教科化についてのご質問ですが、本区では、中学校卒業までに実用英語検定3級程度の力を持つ子どもを50%以上にすることを目指して、英語教育の充実を進めているところです。具体的には、小学校において、第1学年から外国語指導員、ALTを活用した授業の実施、全普通教室に導入した電子黒板を使用したデジタル教材の活用等を進めています。また、教育支援センターでは、小学校の教員を対象にした英語学習の指導法に関する全10回にわたる研修を実施しており、今後もさらにその内容、方法等を充実させていく予定です。今後は、板橋区版「英語村」の開設に向けた準備を進めるとともに、専任の英語教員が配置されなくても、次期学習指導要領で導入される外国語活動、及び外国語科の指導が円滑に実施できるよう準備を進めてまいります。

  次に、教科書採択についてです。
 新年度は、新たに特別の教科となる道徳の小学校の教科書採択が行われます。教科書の採択は、教科用図書検定調査審議会で合格した検定教科書から選定され、採択地区協議会や区民の意見を踏まえ、最終的には板橋区教育委員会において、5人の教育委員が採択し決定します。
 ところが、平成27年度の教科書採択をめぐり、一部で不適切な関係があったことが発覚しました。  文部科学省は、昨年3月、各都道府県教育委員会教育長にあて、「教科書採択における公正確保の徹底等について」通知を出しています。教科書は、学校現場で使用し、子どもたちは、その教科書をもとに学びます。教科書選定は、子どもと教員にとって非常に重要なことであり、十分な調査、審議を保障することが求められます。
 そこで質問いたします。
 まず、採択に当たり、段階を経て検討・協議される学校現場からの意見は尊重されるべきと考えます。教育長の見解を伺います。

【教育長】次に、教科書採択に関しまして、現場教職員の意見の尊重についてのご質問ですが、教科書採択は教育委員会が実施するため、学校の教職員が直接採択にかかわることはありません。なお、教職員などの現場の意見につきましては、各学校における調査研究、及び学校の教職員を委員とする教科用図書調査委員会の調査報告としてまとめられ、最終的に教育委員会に答申されております。

 また、選定や採択過程のさらなる透明性の確保が必要であり、区民の関心を高めることも重要です。
 そこで、より区民に開かれた選定にしていくために、教科書閲覧会場の拡充を求めます。教育長の見解をお示しください。

【教育長】次に、教科書閲覧会場の拡充についてのご質問ですが、教科書閲覧会場は板橋区教育支援センター内の板橋区教科書センターと、別の区施設の合計2か所で開催を予定しており、東武東上線と三田線沿線に1か所ずつ設ける予定です。展示期間中、できるだけ多くの閲覧を可能とするため、支援センター内の教科書センターを土日も開館して対応しております。教科書見本本につきましては、文部科学省により各自治体への配布数が決められております。同じ時期に教員向けの学校展示も行う必要があり、前回採択時の実績では、教科書展示会に割り当てられる最大数は2セットであったため、2か所以上の教科書閲覧会の実施は困難でありました。

 次に、学校統廃合についてです。
 さきの本会議において、板橋第九小学校及び向原中学校を廃校とする議案が賛成多数をもって可決されました。私たちは、現状において、学校統廃合は行うべきでないと考えます。それは、一学校の問題にとどまらず、地域はもとより、区内全域の教育行政そのものが問われているからです。学校適正規模及び適正配置審議会が示した答申においては、望ましい学級規模は20名から30名程度とされています。これを全校に適用すると、区が言う過小規模校は発生しません。また、板橋区の小学校の平均児童数は1校当たり686名で、特別区平均を大きく超えています。一部で発生している大規模化の解消も求められています。こうした状況から見ても、区内の学校数は多過ぎるどころか、地域によっては不足する状況もあります。また、区はこれまで、地域に開かれた学校づくりを進め、学校は教育施設にとどまらず、地域コミュニティの中心的役割を担ってきました。
 教育行政は、子どもたちの教育環境の改善を図ることが最も重要な仕事です。どの学校、どの地域でもよりよい教育が受けられるよう、条件整備を進めるべきであって、地域や学校、子どもたちや保護者に大きな負担を生じさせる統廃合を進めるべきでありません。教育長の認識を伺います。

【教育長】最後に、学校統廃合についてのご質問ですが、いたばし魅力ある学校づくりプランは、学校施設の老朽化と学校の適正規模及び適正配置について、一体的に取り組んでいくための計画でございます。学校施設の老朽化に対応した改築や大規模改修などにつきましては、区立学校の適正規模、適正配置の確保とあわせて推進していく必要があると考えています。現在、いたばし魅力ある学校づくりプラン第2期の検討を行っておりますが、区内の人口が増加しているため、児童・生徒数の将来の推計を注視しながら、区立学校の教育環境の向上を図るためのプランとなるよう検討を進め、必要な時期に区議会に報告してまいります。  いただきました教育に関する質問の答弁は以上でございます。

 次に、基金計画と公共施設整備についてです。
 昨年6月に議会に示された「公共施設等の整備に関するマスタープラン」に基づく個別整備計画は、発表された後、集会所の廃止などをめぐり、区内各地域から「凍結」や「撤回」を求める声が上がりました。
 私たちはこれまで、公共施設のあり方は、区民と共同して検討すべきと提案してきました。個別整備計画が地域住民に受け入れられていない現状を改めて認識すべきです。そもそも、個別整備計画が必要だという理由は、人口減少社会の到来を見据えた区有施設の総量の削減、縮小です。この根拠として示されたのがLCC予測です。予測による試算では、平成25年度から37年度までに必要となる年度当たりの平均費用は約118億円としています。
 しかし、この試算は、総延べ床面積に対する総額であり、施設種別ごとではありません。施設はそれぞれ目的に応じた設置基準があり、総床面積での試算では実際のコストとの差が生じるものと考えます。個別整備計画の前提となっているLCC予測の試算を施設種別ごとに行うべきと考えます。区長の見解を求めます。

【区長】次は、施設種別ごとのライフサイクルコスト試算についてのご質問であります。
 ライフサイクルコスト試算においては、施設別に改築・改修の単価や時期等、一定の条件を設定した上で、個々の建築物の改築・改修費用を積み上げ、年次ごとの需要予測を試算しているところであります。今後も、適切な時期にライフサイクルコスト試算を行い、持続可能な区政のために活用したいと考えています。

 基金活用方針では、義務教育施設整備基金や公共施設等整備基金について、10年間の活用見込み額が示されています。その額はあわせて500億円に上ります。しかしながら、何に幾らかかるのかという試算は示されていません。また、財政調整基金は基本的には一般会計に繰り入れないとしています。今後、都市整備事業も目白押しで、児童相談所の設置も計画されています。にもかかわらず、実際の施設整備に係る経費も示されず、基金の繰り入れも行わないとすれば、区民生活にかかわる施策への影響は否めません。
 議会での質疑の中で、区は一般施策に影響しないと答弁しました。影響しないとする根拠と、基金の根拠となる整備計画と必要な試算額を示すべきです。区長の見解を求めます。

【区長】次は、基金積み立ての根拠についてのご質問であります。
 今般の「基金及び起債の活用方針」は、バブル経済の崩壊後、20年以上にわたっても義務教育施設をはじめとした公共施設の改築や大規模改修が進んでいない状況に鑑み、景気変動に左右されず普通建設事業を確実に執行するために策定をしたものであります。また、財政調整基金は、年度間の財源変動により施策の継続に支障を来さないために活用するものであります。平成29年度の予算を編成するに当たりましても、特別区交付金や消費税などの税に連動する交付金などの急激な落ち込みに対応するため、基金繰り入れを行うものであります。
 なお、各施設の整備費を明らかにすることは、今後の公正な入札に支障を来すこととなるために、お答えは控えさせていただきたいと考えております。

 最後に、ホタル生態環境館をめぐる問題についてです。
 ホタル生態環境館元職員との裁判について、残業代未払いの件、免職取り消しの件について、議会での議決が行われました。私たちは、ホタル生態環境館をめぐるさまざまな疑惑について、区として明らかにすることを求めてきました。区は、裁判を理由に、議会での説明や解明に消極的な姿勢でした。ホタル生態環境館は、これまでに多額の税金を投入し、区として進めてきた事業であり、区政にとって重大な問題です。しかし、2件の裁判における和解勧告を通じ、私たちは、裁判では全ては明らかにならないことを改めて認識しました。
 ホタル生態環境館において何が行われていたのか、元職員は何をしてきたのかという全ての事実を、区が明らかにし、区民に説明することが区の責任を果たすことになると考えます。区長の見解を伺います。
 最後に、本年度をもって退職される全ての職員の皆さんに敬意を表し、私の代表質問を終わります。(拍手する人あり)

【区長】次は、ホタル生態環境館をめぐる問題についての最後のご質問であります。
 ホタル生態環境館をめぐる問題に関しましては、これまで「板橋区ホタル生態環境館におけるホタル等生息調査報告書」や「板橋区ホタル生態環境館のあり方検討結果」、また、「板橋区ホタル生態環境館のホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について(報告)」など、一連の報告をしてきたところであります。さらに、今回、区の責任を含めた「ホタル生態環境館に関する検証報告書」をご報告させていただいたところであります。今後、しかるべき時期において、ホタル飼育業務委託に係る件について報告させていただきたいと考えております。