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山内えり議員の賛成討論
2020.3.3 : 令和2年第1回定例会

 ただ今から、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第21号第6項、陳情第53号第2項、陳情第84号、陳情第90号に賛成する立場で討論を行います。

 4つの陳情は、補助26号線と東武東上線が交差する計画について、区として街の将来に責任を持って取り組むこと、東上線高架化によって影響のある線路の南側住民への周知徹底と説明会開催を求めるものです。
 また、補助26号線整備、東上線高架化、大山駅前広場計画による大山地域の環境悪化を懸念し、その環境の変化に対する検証を行う事とその結果によっては、計画の見直しや撤回を行うこと及び、東上線高架化について、拙速に事業認可申請を行わない事、用地測量にあたって、強制的に行わないよう東京都に対して意見書の提出を求めるものです。
 東京都と板橋区は東上線大山駅付近の高架化、関連する側道、駅前広場に関して昨年12月20日、都市計画決定を強行しました。

 陳情に賛成する第1の理由は、大山駅付近の高架化による影響について、周知も説明責任も欠いていることです。
 これまで、区が示してきた資料には線路南側の地域への影響は見て取れません。2019年3月に発行した「大山駅付近のまちづくりのお知らせ」に掲載している地図でも南側への影響は示されていません。
 区は、素案説明会の際、壁に掲示したといいますが、案内もなければ、ほとんどの参加者が記憶にないほどの掲示でした。そもそも、素案説明会に参加しなければ見ることはできません。また、都市計画審議会の資料で配布したといいますが、住民からすればそれは閲覧しに行かなければ見ることができないもので、住民に示したことにはなりません。この二つを持って、示してきたというのはあまりにも乱暴です。
 結果的に、線路南側の住民は、都市計画決定後に配布された「都市計画決定の建築制限について」というお知らせで、東上線の高架化によって自分の住宅がひっかかるかもしれないことを知ることになりました。周知徹底どころか、知った時にはすでに都市計画決定されていたのです。
 住民にとっては、どんなにわずかであっても、土地や建物が削られることは今後の生活を大きく左右する問題です。南側だけでも30~40件近くに影響があるにもかかわらず、説明責任を果たさなかった東京都と板橋区の責任は重大です。
 また、陳情が求めているのは、決定する前の説明です。「不採択」を主張した委員は、「願意がかなっている」といいますが、都、区、東武鉄道が開催した2月2日、3日の二日間の説明会は、あくまで「用地測量等説明会」で、住民要求がかなったものとは到底言えません。
 影響のある住民へ図面も配布されずに、都市計画決定したこと自体が、説明責任を欠いていると言わざるを得ません。

 第2の理由は、補助第26号線整備、東上線高架化、大山駅前広場計画等よる大山地域の環境悪化による懸念がまったく払拭されていないからです。
 まず、補助26号線整備によって立ち退く人たちが戻る場所として建てられる「再開発ビル」による景観、日影、ビル風による住環境悪化、急激な人口増による保育施設や学校の不足、既存コミュニティーの消滅への懸念です。
 高層住宅が建設されることによる人口増で、学校や保育園が不足することに対し、区は、担当部署と連携していくとしていますが、それは、大規模建築物を建てる際に事業者が子育て支援施設について担当部署と協議するもので、まちづくりとして協議するものではありません。
 他区では、大きい住宅を造る際には、事業者に事前の届け出をさせ、学校・保育園・学童クラブが必要かどうか、担当の部署と協議し、整備費の一部を事業者に対して拠出することを求めている事例もあります。区として計画による公共的な施設の必要量も把握せず、「各部署と連携する」だけでは、不安は解消されません。
 また、現在の住人や商店が立ち退くことで、既存のコミュニティーは大きく変化することは明らかです。区の、権利変換によって開発ビルに「1件でも入ればコミュニティは引き継がれる」という認識はとんでもありません。
 しかも、補償内容は明らかになっておらず、結果的にどれだけの人が開発ビルに入れるのか、現時点ではわかりません。
 また、東上線大山駅付近の高架化と駅前広場整備による景観、日影、騒音、振動や排ガスなどの環境悪化やプライバシーの侵害などへの懸念です。
 東京都が行った環境影響評価は、騒音調査について、高さ1.2メートル地点での予測値しか住民には示されていません。区は、10m、15m地点で現況値を上回っているために都へ対策を求めたといいますが、防音壁の高さも未定で、ロングレールなどの対策が、どれほど騒音を抑えられるかは把握されていません。現況値を上回っているという情報も住民には知らされず、対策後は見守りますというだけでは、そこに暮らす住民にとって納得できるものではありません。
 また、線路に隣接する居住者は、電車を利用する人から見られているという不安を払拭できません。区は、「駅から見えない構造にする」こと、「駅の間は高速で走るためプライバシーに問題はない」としています。しかし、駅近くになれば電車の走行スピードも下がります。東京都や東武鉄道の「ご理解いただきたい」という言い分を区が代弁している場合ではありません。
 さらに、駅前広場整備によって、1日あたり、1,000台の交通量が見込まれています。今まで住宅や商店だったところに車が走るようになれば、新たな環境悪化につながることは明らかです。しかし、区は、「環境の問題がでてきた場合には対応する」という考えです。その環境変化に対して、現状の数値も測定していなければ、整備後の測定も予定していません。問題が発生しているかどうかを区自身が把握する手段を講じないのに、住民が安心できるはずがありません。

  賛成する第3の理由は、用地測量が強引に行われることはあってはならないことです。
 用地測量にあたって、東京都は各家庭を訪問する際、補償説明で2人、測量説明で2人の最大で4人の男性が訪れています。補助第26号線の用地測量を断った地権者の中には、「義務だから協力してほしい」と言われた方もおられます。断ることさえ勇気のいることにもかかわらず、大勢での訪問には恐怖を抱きかねません。区議会としても意見を出すべきです。

 そもそも、補助第26号線の整備については、商店街への影響に対する疑問が出され、駅高架化に至っては、素案説明会の時から反対する声が広がり続け、駅前広場計画と合わせれば約2000件も意見が提出されています。「納得を得て進める」と言ってきた前提は、もはや崩壊しています。
 住民合意が図られているとは到底思えない状況の下で、区も都も立ち止まることなく、ただただ、計画を推進することだけが行われてきたため、住民から繰り返し陳情が提出されてきました。にもかかわらず、駅立体化では「地下方式」を求める地元要望を東京都に伝えるどころか、都市計画審議会では強引に「了承を得る」という進め方をし、拙速に都市計画決定を行わないよう求めてきた地域住民の声に耳を傾けることなく年度内に都市計画決定するという区の姿勢に怒りや不満の声が沸き上がるのは当然です。
 商店街がこの計画によってどう変わるか、その調査を商店街まかせにする姿勢は無責任です。
 以上、述べたようにこれまでの大山地域に関連するあらゆる計画は、区長が表明する「誰一人置き去りにしないSDGs」の立場とは全く相反し、多くの住民を置き去りにしていると言わざるを得ません。住民合意が得られない下で、用地測量や拙速な事業認可申請を行うべきではありません。以上の理由で、本陳情の採択を求め、討論を終わります。