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小林おとみ議員の反対討論
2020.3.3 : 令和2年第1回定例会

 日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第21号東京都板橋区保育所条例の一部を改正する条例に反対する討論を行います。

 本議案は、区立仲宿保育園を、2020年3月末日をもって廃止することを決める議案です。
 区立仲宿保育園は、1962年に都営仲宿母子アパートの建設と合わせて1階部分に建設され、開園から57年を迎え、現在では板橋区で最も古い公立保育園となりました。建設当初から定員42名で生後1才から就学前までの児童を育て、共働き家庭やひとり親家庭などの生活を支え、これまで500名を超える子どもたちを育ててきた歴史ある保育園です。

 反対する第一の理由は、議会や保護者、区民に対して、正しい情報を提供せず、「廃園しか選択肢がなかった」という決定だけを押し付ける区の説明は認められないということです。
 板橋区は、2018年9月28日の文教児童委員会と、同日に緊急に行われた保護者説明会において、区立仲宿保育園の翌年度の新規募集を停止することを突如発表しました。区の説明では、母子アパートの老朽化が進み2015年度から母子アパートの新規入居者の募集が停止されていること、東京都からの使用期限が2020年度末であること、東京都から今後について「検討中という回答しかいただけない」「移転や統合は困難である」というものでした。
 しかし、その後の経過でわかったことは、板橋区住宅政策課はすでに2016年11月に東京都に対して仲宿母子アパートの区への移管を申し入れていたということです。東京都と板橋区は、子育て支援施設課が仲宿保育園の新規募集停止と閉園の方向を打ち出した直後の、2018年12月27日に、まるで仲宿保育園の閉園決定を待っていたかのように、「仲宿母子アパートの譲与及び建設に関する基本協定」を締結しています。子育て支援施設課が、議会や保護者に繰り返した「東京都から回答がいただけない」という説明は何だったのか。実際には、東京都と板橋区の間で移管に関する協定締結の意思決定がすでに行われていたことは明らかではありませんか。今回の「廃園」の検討には、仲宿母子アパートを区営住宅として建て替えることを前提にした検討が行われていません。しかも、その可能性さえ議会や保護者に示さないまま決定が押し付けられています。

 反対する第二の理由は、区営住宅の建て替え計画の中で、仲宿保育園を存続させる計画を持つべきだということです。
 「板橋区住まいの未来ビジョン2025」では、4つのアタックプランの1つの柱として「未来につなぐ区営住宅の再生」が掲げられています。そこでは、「単身から高齢者、若い子育て世帯から高齢夫婦世帯まで、様々な世代が」ともに暮らす「住宅内のミクストコミュニティを育む」こと、そして、「地域共生社会の実現に向けた」「公営住宅の供給をめざす」と述べています。新しい区営住宅の建て替え計画は、この方針のもとに策定されていくわけですから、基本方針や基本計画を策定する中で、現在ある仲宿保育園を存続させて、新しい区営住宅に再生していく検討は十分にできるのです。
 区も説明していたように、現在の仲宿保育園は老朽化しているとはいえ、耐震性には問題はなく、2020年度末に東京都からの使用期限を迎えたとしても、区として譲渡を受けることがわかっていれば、区としての計画が確定するまでは使用できていたはずです。保育園の在園児の卒園時期も視野に入れながら、区営住宅の供用開始時期を検討することもできたはずです。建て替え期間中の保育をどうするのかなどについても、区は代替地がないといいますが、他の私立保育園の建て替えの状況をみれば、42名という小さな規模の保育園の代替地が本当にないのか、十分な検討がされたのか大変疑問です。また、保護者の理解を得て、工事期間中はいったん休園するという選択肢もあります。保育園を存続しながら、区営住宅の再整備方針を示し、議会や保護者、区民の理解を得ながら、丁寧な、納得できる説明をしながら進めることができたはずなのです。
 保育園を存続させることの検討が全く不十分で、「閉園」ありきの決定だったと言わざるを得ません。区は、新しい区営住宅の中に保育園を入れるかどうかは、またその時の問題で、現在のところその必要はないなどといいますが、歴史のある区立保育園には蓄積された保育の質と地域とのつながりがあります。区は保育の継続にこそ責任を持つべきです。

 反対する第三の理由は、板橋区が2017年11月に示した「公立保育所のあり方について」の基本方針に沿っていないということです。
 板橋区は、(仮称)子ども家庭総合支援センター設置を機に、地域とのつながりを生かした子育てネットワークの構築をめざしています。「公立保育所のあり方について」では、この区の方針を受けて、公立保育所の役割について「地域の保育施設間のネットワークの中心を担う」としています。そして、子ども・子育て支援事業計画では、保育事業の提供区域を、区内5地域を単位として設定していますが、「小学校就学後の子どもの育ちを見通した取り組みを行っていくために」、すでに保幼小中連携教育の枠組みとして区立中学校ごとに設定されている「学びのエリア」を基本に、「育ちのエリア」を設定するとし、切れ目のない子育て支援体制の構築をしていくとしています。
 板橋地域には7つの公立保育園がありましたが、大山西町保育園が民営化され、仲宿保育園がなくなれば5つになってしまいます。しかも板橋保育園、弥生保育園が現在民営化の対象園となっており、これらの保育園が公立でなくなったら、板橋地域に公立保育園は3つしか残りません。さらに国道17号線と環七に囲まれた西側地域、加賀中エリアでは、加賀保育園が民営化されて以降、公立保育園は仲宿保育園しかありません。
 「育ちのエリア」をどう設定するのかも示さないまま、民営化方針だけを次々にすすめ、仲宿保育園は民営化どころか廃園に追い込むというのでは、本当に地域での切れ目のない子育て支援などしていけるのか、まったく理解に苦しみます。区自らが示した、公立保育園のあり方の基本方針からも、仲宿保育園の廃園は、今後に大きな禍根を残すものになると考えます。

 最後に、在園する子どもたち、保護者の方々に大きな負担をかけたということです。
 唐突な提案に、保護者は困惑し、不安が広がり、保育の継続を求める区との話し合いに大きなエネルギーを費やすことになりました。在園途中での閉園は保護者にとっては寝耳に水の出来事でした。区は保育環境を変えない、兄妹の入園を認めるなどの対応を行いましたが、これも保護者からの強い陳情が出されたことを受けて行われたものです。区の側で十分な検討を行った結果では全くありません。また、施設の使用期限は来年の3月末ですから、今年4才児のお子さんは卒園まで仲宿保育園に通うことも可能でしたが、結局区の都合を押し付けられる形で、卒園まで1年を残して転園を選択せざるを得なくなりました。
 区は廃園を決定する大きな動機として、大山東町に2020年に新設園ができるので、仲宿保育園の子どもたちの転園先として一つの選択肢になると言っていました。この2年間で、転園することになった25名の子どもたちの転園先は、公立で板橋保育園に3名、かないくぼ保育園に5名、私立で加賀保育園7名、大和保育園3名、敬隣保育園3名、太陽の子保育園3名、にじいろ板橋2丁目保育園1名とのことで、大山東町の新設園には1人も転園希望がありませんでした。区は、あくまで全体として定員枠が確保できたということで、誰も選ばなかったのは選択の結果だと言いますが、廃園を決めた説明会では、新設園を転園先の受け皿として強調してきたことは事実ではありませんか。保護者からは、当時から、17号線と山手通りを超えて行く保育園は遠いという声が上がっていたではありませんか。この点でも、区の説明や対応は、保護者の思いや実態とはかけ離れたものであったことは明らかです。
 さらに、今回の問題の根底にあるのは、公共施設整備マスタープランと個別整備計画、さらにそれを保育分野ですすめる「公立保育所の再整備方針」と区の職員削減方針にあることを強く指摘します。
 施設の総量・総延べ床面積を抑制するなどで、約2割程度の経費削減を行うという公共施設整備方針は、公立保育園も例外ではなくその対象とし削減を迫っています。また、区の職員削減の矛先は保育園や学校などの現場にむけられています。こうした区の姿勢は、安定した保育の継続性や、切れ目のない子育て支援に逆行するものです。
 仲宿保育園の廃園は、その進め方の点でも、「未来を担う子どもたちの健やかな成長を支える」とした区の基本構想を実現するという点でも、認めることはできません。今後も地域の保育に大きな役割を持たなければならない、区立仲宿保育園の存続を強く求めて、私の討論を終わります。