ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第6号2019年度板橋区一般会計補正予算及び議案第7号同国民健康保険事業特別会計補正予算、議案第8号同介護保険事業特別会計補正予算、議案第9号同後期高齢者医療事業特別会計補正予算に反対する立場から討論を行います。
一般会計では、財政調整基金に12億5259万円、公共施設整備基金に36億63万9000円、義務教育施設整備基金に49億67万7000円などが積み上げられることが、最も際立つ最終補正です。2019年度末の基金合計は805億5227万円となり、2018年度末の691億8808万4000円から113億6418万6000円も積み増す結果です。
地方自治体として歳入にふさわしい仕事をしたのかが問われる予算執行だと言わざるを得ません。
反対する第一の理由は、厳しい区民の暮らしに寄り添っていないことです。
昨年10月から消費税が10%に増税され、区民の暮らしは、ますます厳しさを増しています。
こうしたなか、今回の補正予算が広がり続ける格差に対応すること、区民の暮らしを支えるための手立てを行ったかどうかが問われています。
2018年度から始まった国保の都道府県単位化により、保険者努力支援制度が導入されました。その評価によって交付額が異なり、保険者である自治体は徴収強化せざるを得ない状況です。今年度は、昨年12月時点で非課税世帯も含めて430件の差し押さえが行われています。また、今年2月1日時点で1162世帯に10割自己負担となる「資格証明書」が送付され続けています。
公的医療保険制度の中で、収入に占める負担割合が最も高く、収入のない子どもにまで保険料をかけているのは国保だけです。せめて多子世帯への保険料軽減を区独自でも行うなどの方向が示されるべきでした。
厳しい区民の暮らしに寄り添った相談業務の強化と保険料を引き下げる区独自の施策の実施こそ必要であり、容赦のない差し押さえはやめるべきです。
介護保険事業特別会計では、6億4944万円を準備基金に積み立てています。当初の予定より多い積立額です。介護給付費準備基金残高はこの積み立てで20億円を超えました。被保険者一人あたり約1万5千円にもなり、保険料を返すべきです。全額第8期の保険料軽減に充てることを強く求めておきます。
後期高齢者医療事業特別会計では、75歳以上の約1万3500人が1割負担から2割負担となりました。これは、消費税10%への引き上げに合わせて国が実施した均等割額への軽減特例が廃止されたためです。区は、非課税世帯の介護保険料が軽減拡大となるので、負担増にはならないと言いますが、介護保険制度と後期高齢者医療制度の軽減となる基準の前提条件が異なっているため、介護保険料の軽減拡大の対象とならない被保険者がうまれています。
また、消費税10%への引き上げ分を加味するなら負担増となることは明白です。
有病率が高い75歳以上の方が安心して医療を受けられるよう、区独自の軽減策の実施こそ必要です。
障害者福祉費では、自立支援給付経費における「施設訓練給付」で1億9494万円の減額補正となりました。障害者の就労移行の見込みに見合う実績がなかったためとしていますが、その背景に障害者の雇用を受け入れる側の体制が不十分だったことがあります。そもそも障害者の雇用率が上がったために実績が伸びると甘く見込んだ結果です。雇用率の上昇に見合う実績へ伸ばすために区独自の支援策を求めます。
また、地域生活支援事業経費における「日中一時支援」で、1148万9千円の減額補正となりました。これは、若葉小跡地のゆめの園の日中一時支援の需要があったにもかかわらず昨年7月で閉所したためです。「採算が合わない」という法人の理由でした。
区は、報酬改定を行ったと言いますが、障害者福祉現場における職員の処遇の低さが最大の要因と考えます。区で独自に上乗せするなど支援を強化することが必要でした。
生活保護費では、生活保護法施行扶助費が2億5千万円の減額補正となりました。区は、単身世帯が増え、2人以上の世帯が減ったためと言いますが、一昨年10月からの生活扶助費最大5%引き下げが行われていることが影響しているのではないでしょうか。さらに今後2年かけて引き下げが続くことになっています。特に高齢者では、単身、世帯ともに増え続けています。高齢者の貧困が深刻化されている今、区独自の施策が必要です。
保育では、地域型保育事業経費で、2億8427万円の減額補正となりました。そのうち、2億57万7千円は小規模保育です。3歳児以降の保育の保障がないことへの不安から入園児が減少していることが大きな原因です。欠員が出ていても事業所への財政保障がなければ事業所はつぶれてしまいます。未充足に対する保障を行うべきです。
産業経済費では、プレミアム付商品券事業経費で、4億65万2千円の減額補正となりました。対象となる非課税者6万8千人のうち、73%にあたる、約5万人が申請しませんでした。この制度は、消費税率の引き上げに伴う景気の下支え策として子育て世帯と低所得者向けに行われたものですが、実態に合っていなかったことが原因です。区として何らかの支援策を講じるべきでした。
反対する第2の理由は、住民不在の区政運営です。
大山駅周辺のまちづくりに関しては東上線高架化や関連する側道計画、駅前広場計画など住民合意が図られないまま、都市計画決定を行った責任は重大です。
少なくとも線路南側の住民へ説明会を都市計画決定前に実施すべきでした。
高島平グランドデザインでは、URとの覚書や協議の内容は一切公開されず、住民参加の枠組みは未だ保障されていません。それどころか高島平緑地の木の伐採については現地説明にとどまり、説明会すら実施されていません。予算を増額してでも住民との協議の場を作るべきです。
あいキッズは、2019年度3校の事業者選定が行われ、高島第5小学校では事業者が変更になりました。保護者からは選定過程が不明確、保護者への説明が不十分なうえ、意見が反映されていないという批判の声があがっています。放課後の子どもたちの育ち、生活を保障するという重要な施策が安定的な保育の継続を保障する仕組みになっていないことは問題です。あいキッズは子どもたちの成長発達を保障する場でなければなりません。学校、地域との連携、災害時の対応を含め、仕組みの再検討が必要です。
反対する第3の理由は、悪化する働き方の是正に取り組んでいないことです。
職員の働き方の改善が求められているなか、人件費は大幅な減額補正となっています。
時間外勤務については本人による申請と上司の許可による管理に留まり、職員が何時間働いているのかという実態を把握していません。過労死ラインの時間外の削減は当然のこととし、サービス残業を含む区職員の働き方について、ありのままを把握すべきです。
教育費における学校施設開放経費で、土日の校庭を開放する「子どもの遊び場」事業で、人が確保できず、事業が行えていない学校が7校ありました。
また、教育支援センターでは、言語聴覚士、SSWの欠員が続き、補充されませんでした。抜本的に処遇改善を図るべきです。
反対する第4の理由は、実施すべき事業が行われていないことです。
一つは、入札不調が相次いでいる点です。不調の原因の多くが「配置予定技術者」がいないことにより、入札参加者がいない状況です。それは、各現場に必ず設置しなければならない「現場監督」の不足です。現場監督は、仕事量も多く人材が育っていないことが指摘されています。区として実態を把握し、人材育成への支援を強化しなければ、続く「入札不調」は解消できません。
また、区は、契約規模が小さいことや、橋りょうなど限定したメーカーしか対応できない工事については、他の工事とセットにして工事規模を大きくして発注することなどを検討するとしていますが、結果として中小業者に仕事が回らなくなることがあってはなりません。
同時に、予定価格と最低制限価格との幅が狭いことも不調の原因と考えられます。令和元年度板橋区入札監視委員会の審議結果によると、270件の案件に対し最低制限価格を割り込んだ入札が78件あったことが報告されました。予定価格の積算について、入札価格との乖離を分析し、入札不調を減らす努力が必要です。
資源環境費では、熱帯環境植物館運営経費で9289万円の減額補正となりました。
この理由は、今年度行う予定の外壁改修工事を見送ったためとしています。区は、元々内部の改修工事を来年度行うこととしていましたが、安全性の観点から休館期間を設けて外部工事と内部工事を同時に行うことが望ましいと判断。加えて今年度は25周年という周年行事があったためとしています。事前に精査、検討しておけば防げる問題であり、検討不足と言わざるを得ません。
反対する第5の理由は、予算の執行方針です。
減額補正の主な理由は、契約差金です。
予算の流用は、適切に行われるべきですが、年度当初に明らかになる契約差金は最終補正で落とすのではなく、年度途中の補正で減額にし、必要な事業に活用することは認められています。
台風15号、19号を受け、風水害対策が不十分であることが改めて浮き彫りになりました。災害時でも人権やプライバシーが守られなければなりません。しかし、避難所におけるプライベートルーム等の確保、シャワールームの活用、十分な職員配置とはなっていません。避難のあり方、避難所運営、災害備蓄品、連絡手段、要配慮者への対応など、緊急かつ必要な事業を行うことは可能でした。
また、住宅補修緊急支援事業は、罹災証明発行件数57件に対し、66件の見込みで緊急的に始まりましたが、2月19日現在、10件の申請で締め切りは3月13日までとなっています。手続きや申請の時期を考えれば、期間を延長し、対象となる方が漏れないよう支援を行うべきです。
気候変動による地球温暖化の影響で、毎年同様の災害が起こる可能性は否定できません。
区民の命、財産を守る最大限の取り組みを進めるべきです。
緊急かつ必要な事業を行う努力よりも、年度初日の依命通達の「可能な限りの収入確保と徹底した支出の縮減に努めること」を全庁に徹底した結果、113億円を超える余剰金が基金に積み上げられたことは問題です。
最後に、国保会計において、地方自治法に反する事務処理が行われていた点です。
今回の最終補正において、3款国民健康保険事業納付金で、本来、保険給付費でしか許されていない項を超えての流用が行われていたことが明らかになりました。
東京都は、昨年2月に正式の金額を通知しており、6月の補正予算に計上することは可能でした。わかった時点で事実を明らかにすべきであり、なによりこうした事実が組織内で共有できていなかったことが重大です。予算の流用に対する認識を共有し、今後に活かすべきです。また、事務処理を誤ったことがわかるよう、決算書に明記することを強く求めておきます。
改めて区民本位の区政を、区民の命と暮らしを守ることを最優先にする区政運営を強く求めて、2019年度の各会計補正予算に反対を表明して、討論を終わります。