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かなざき文子議員の反対・賛成討論
2020.3:26:令和2年第1回定例会

 ただいまから日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第1号「令和2年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号「同 国民健康保険事業特別会計予算」、議案第3号「同 介護保険事業特別会計予算」、議案第4号「同 後期高齢者医療事業特別会計予算」、議案第5号「同 東武東上線連続立体化事業特別会計予算」に反対し、議案第35号「令和2年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論を行います。

 消費税10%への引き上げの影響を受け、昨年10~12月期のGDP(国内総生産)は、マイナス7・1%となり、さらに新型コロナの打撃が世界各国に及び、世界経済が重大な危機に直面しています。
 そして、感染拡大防止によって国民の命と健康を守ることに最大の力をそそぎつつ、現下の経済危機からどうやって区民生活を守るのか、国政はもとより、各自治体の対応が問われています。
 こうした状況のもと決定される新年度予算には、厳しさが広がる区民の暮らしと地域経済を少しでも温める予算編成が、いつにもまして求められています。

 区長は施政方針の中で「令和2年度の日本経済は、国による各種政策効果により、雇用・所得環境の改善は続き、景気は回復基調が続くと見込まれておりましたが、海外経済の動向や消費税率引き上げ後の需要変動に加え、新たに新型コロナウイルスの影響などに注視する必要があると考えています」と述べ、当初予算の概要から若干の軌道修正が行われています。しかし、コロナの影響を考慮しなくても、そもそも区民の暮らしは回復基調どころか、ますます貧困と格差が広がっています。
 生活保護世帯は令和2年4月時点の見込みが1万4306世帯と、微増で見込まれています。しかし世帯類型別で平成23年と令和元年を比較するならば、全体では13.3%の世帯増ですが、高齢者世帯は53%増と、高齢者の暮らしに貧困が広がっていることがわかります。
 また、国民健康保険の加入世帯の内、保険料の滞納世帯は4世帯に1世帯となっています。年代別でみるならば、19歳から50歳未満、保険料の調定額でみるならば10万円から20万円未満までの世帯で特に払えない実態が見受けられます。
 介護保険事業でも利用料が2割、3割とあげられて以降、施設介護やショートステイなどで利用に抑制が入っていることが見受けられます。
 後期高齢者医療制度においては、新年度は保険料の改定年度となり、昨年の消費税10%引き上げに合わせて国の均等割額への軽減特例が廃止されたため、新年度も低所得者へさらに負担が広がります。

 反対する第一の理由は、こうした区民の実態に寄りそった予算となっていないからです。

 区は、国民健康保険料を引き下げるのではなく、差し押さえや延滞金徴収の再開へ力点を置いています。子どもの均等割り額を軽減するなどの対策こそすべきです。後期高齢者医療制度でも介護保険事業でも、区独自の軽減策の実施こそ必要になっています。また、生活保護世帯は1昨年の基準改定により、多くの世帯で保護費が下がっています。法外援護事業として夏季加算などを実施すべきです。
 また、子どもの貧困対策事業として81の事業があげられていますが、今、貧困に苦しむ子どもたちに手が届いていません。生保世帯の高校生はアルバイト代やお年玉も収入認定されています。制度だから、といって矛盾を解決しようとしない姿勢は問題です。また、家族の介護などを担う子どもたち、いわゆるヤングケアラーへの支援としても有効な「家事援助事業」も縮小されたままです。拡充こそ求められています。
 すくすくカードの利用率が減っていますが、子どもの貧困対策、子育て支援の施策の強化としても現金給付事業をすくすくカードの内容に入れ、改善の一つとして行うべきです。
 区民の実態をみるならば、区の行革方針「現金給付事業はやらない」という姿勢を転換し、暮らしを温める事業こそ実施すべきです。

 第二の理由は、自治体としての公的責任を果たしているとは言えないということです。

 まず、災害時などにおいて、区民の命と安全を守る公的責任についてです。
災害対策として、安全対策のためのブロック塀撤去助成にフェンス新設を加えるなどの拡充は行われていますが、集中豪雨などに備えた荒川タイムラインによる避難指示を位置づけながら、避難行動要支援者の避難先の確保もなく、避難支援プランは、在宅での人工呼吸器利用者のみで、避難方法も避難先も、計画にはありません。自助、共助を強調する前に、公的責任として、その役割を果たすべきです。プライバシー保護のためのテントの配備、個室のシャワールームの活用、避難所全体の運営の在り方など、抜本的改善をすべきです。災害時であっても、命とともに人権が守られるべきです。
 次に、区民の財産である公共施設の再編整備の進め方です。
 この間、区が開催した各エリアマネジメント計画の説明会でも、区役所周辺の施設整備に関する説明会でも、区民から出された共通の声は「区民の要望をもとに一緒に計画を作成してほしい」というものです。総量抑制という考え方を一方的に押しつけ、区民の需要を把握することもせず、ただただ経費を2割カットすることだけが優先され、その進め方は区民参画を否定するもので、その姿勢を転換すべきです。

 次は、区民の福祉の向上に直結する職員の働き方に改善がみられないということです。
 職員の勤務時間を正確に把握するシステムの導入は見送られ、盛り込まれませんでした。ある係では、2020年1月の勤務で10人の職員中6人が月45時間を超える時間外勤務が行われ、その内、1名は78時間にも及ぶことがわかりました。サービス残業の可能性も否定できない状況です。時間外勤務やサービス残業の実態もつかまず、是正できるはずがありません。
 また、土木事務所では、災害時に対応できるのは直接雇用だけだからと、新年度から一部委託から会計年度任用職員へ変更します。会計年度任用職員は、あくまでも正規職員の補助で、正規職員からの指示で仕事をするという関係です。技術やスキルを継承できるよう、必要な正規職員を増やすべきです。
 保健所と各健康福祉センターは、専門職の配置含めて体制の強化が求められていました。この間精神障害者は増え続け、予防接種事業も増え、難病対象疾病も増え、さらに新年度から本格的に自殺対策も位置づけられます。そして今回のコロナウイルス対策への対応も加わり、ますます正規の職員を配置することが急務となっています。
 住民の福祉の向上の中心ともいえる福祉事務所は、受給世帯に精神障害者など、複雑な状況をかかえた世帯が増えているにもかかわらず、いまだに87世帯に1人のケースワーカーの配置となっており、社会福祉法に定められている80世帯に1人となっていません。また、厚労省基準では一係が7名までとなっているのに、10名、9名という状況が放置されています。一刻も早く職員の配置を増やすと同時に、職場の面積など環境の改善も待ったなしです。福祉事務所の増設置含め、改善が求められています。

 次にジェンダー平等についてです。女性管理職の登用推進は目標の24%以上どころか、19.6%にとどまっています。平成27年度の20.2%も下回っています。また女性の事務系管理職10名の内、2名が退職で、新たな管理職の任用がないため、さらに後退することとなります。こうした深刻な事態を区は真剣に受け止めているのでしょうか。女性管理職の任用や育成が進まない背景には、管理職の職務、職責を含め、働き方が改善されていないことにあります。男性職員の育休取得についても、13%の目標に対し、7.9%です。日数も平均で女性の16月25日に対し、わずか23日でした。充分に育児を担う状況になっていません。改善策として「職場の理解が得られるよう」と言いますが、仕事の量を減らすための具体策、職員定数のあり方こそ見直しが求められています。

 職員は減らす一方で、拡大してきたのが「アウトソーシング」です。この30年間で委託費は3.2倍以上に膨れ上がっています。
 庁舎管理、契約課における工事・物品・委託等の契約総数のうち区内事業者は49%、区外事業者が51%です。一方、指定管理では小破修理や修繕は区内と区外に大きな差はありませんが、施設の維持管理や事業運営の再委託発注では約2倍の差が生じ、区外事業者が多くなっています。これでは区内事業者に仕事がまわりません。また区はアウトソーシングする事業は公務労働と認めながら、従事する労働者の処遇は事業者との契約に基づくものであり、介入すべきではないなどと、公的責任を放棄しています。官製ワーキングプアと言われる状況にもなんら対策を講じず、アウトソーシングの拡大をはかることは、とうてい容認できるものではありません。
 公園の指定管理者制度が始まりますが、区の事業者任せの姿勢では、地域要望からは遠ざかるばかりです。本来公園は、地域の住民、子どもたちと一緒に創意工夫をこらしてつくられるべきではないでしょうか。

 子どもたちへの公的責任はどうでしょうか。
 区は今後区立保育園を改築、大規模改修時に民営化をしていくという計画を示しました。その一方で、「公立保育所のあり方」で出されてきた地域の保育施設間のネットワークを構築し、その中心を担っていくのが区立保育園であるという「育ちのエリア」については、今後明らかにするとしています。しかし区立保育園が次々と民営化になっていくのでは、その役割を果たすことができません。地域における保育事業のさらなる充実、水準の維持のために、区立保育園はこれ以上民営化してはなりません。
 区立特養ホームについても然りです。低所得者、そして重度の要介護者を受けとめてきた区立としてのその役割は継続すべきです。民営化してはならないことを指摘しておきます。

 教育では、小中一貫教育やコミュニテイースクールの導入が進められていますが、現場の実態を踏まえたものとはいえません。よりよい教育というならば、まず教職員を増やすべきです。
 区立小中学校の不登校児童生徒が増加しています。その理由として「家庭に課題がある」としていますが、教育委員会として当事者の子どもや保護者に直接聞き取りを行っていません。一年以上学校に通えていない児童生徒の状況も把握せず、日常の学習や受験対策など、適切な支援はできません。学校や教員任せにするのではなく、教育委員会として必要な対応を行うべきです。
 またあいキッズでは、区の職員配置基準では対応できないため、事業所が独自に増員配置しています。特に正規職員の配置基準を見直すべきです。さらに大規模化も深刻です。活動室を増やし、分散させることや、一室の定員を定めるなど、子どもの安全を最優先にすべきです。
 医療的ケア児への対応が遅れています。保育園、学校での受け入れとあわせ、医療的ケア児の総合的な相談窓口、日中の支援事業や医療相談などを兼ねそえた児童発達支援センターの設置が求められています。

 反対する第三の理由は、住民本位のまちづくりとなっていないということです。

 区長は、東京で一番住みたくなる板橋をめざすと常日頃言われています。
 しかし、この間のまちづくり、再開発計画の進め方は、そこに長年住み続けている住民、地権者の暮らしをこわし、声も聞かずして強行する姿勢が顕著です。
 新年度の予算でプレス発表がされた区長のイチオシ事業は、総額約19億6千万円です。その内、大山、JR板橋駅前、上板橋駅南口、高島平地域におけるまちづくり事業が占める割合は約8割です。いかにまちづくりに前のめりになっているかが示されています。
 大山のまちづくりでは、家や土地を奪われる住民の声に背をむけ、大山駅前広場計画、東上線の高架化を都市計画決定し、さらに全国に誇るハッピーロード大山商店街が特定整備路線補助第26号線と東上線の高架化によりアーケードが分断され、工事が行われている間、歯抜け状態になる商店街の運営、事業に対し、都も区もなんら補償しないことが明らかになっています。地域経済の活性化を担い、板橋の顔として商店街を形成し、維持してきたハッピーロード大山商店街が、大きな影響を受けるにもかかわらず、対策は商店街任せで、開発だけをおし進める姿勢は許されるものではありません。

 第四は、区のお金の使い方が区民の暮らしに寄りそっていないということです。

 自治体の財政は、住民の暮らしに寄りそっているか、住民の福祉の向上が第一になっているのかが基本に貫かれるべきです。しかし、区の財政方針は「スクラップandビルド」「サンセット方式」が徹底されています。そのため新規事業は必ず3年たつと見直すこととなっています。3年間実施して、区民から評価されても、3年たって見直しで廃止になるのでは、あらたな事業を実施する意欲もそがれ、区民に寄りそった予算にもなりえません。

 新年度の予算に計上されなかった事業に「いたばし健康づくりプロジェクト」があります。この事業は健康推進課、スポーツ振興課、産業振興課と共同で実施していた事業でした。きちんと検証もしているわけでなく、所管は継続したいと申し出ていたにもかかわらず、5年事業なのでいったん廃止となったとのことです。当初から5年間事業ということはわかっていたのですから、なぜ5年目に検証を実施し、継続、あるいは拡充が必要な事業だという結果へつなげられなかったのか、見直しありきで事業の有効性、意義、効果、区民の意見 が生かされなかったと感じます。このような財政方針では、職員の意気も上がりません。効果が示された時には継続できるという担保を方針に盛り込むべきです。

 一方、区の基金の積立額は増え続けています。坂本区政が始まった平成19年度の時の基金残高は395億円でした。それが今年度末805億円にまで積み上がっています。
 新年度が始まったとたんに副区長名で出される依命通達には、「差金は使わないこと」と毎回明記されています。使わないのではなく、緊急性のある場合は使うなど、柔軟性のある財政運営にすべきです。
 そして今自治体として区がすべきことは、区民に広がる生活困窮に対応した施策の実施、住民本位のまちづくりを進め、消費税の10%増税、コロナウイルスと、廃業・倒産が余儀なくされそうな区内中小零細業者の暮らしと営業に優先してお金をかけるべきです。

 最後に、私たち会派が提出しました予算修正動議についてです。災害対策の強化、子どもの貧困対策、子育て支援の強化、高齢者の介護予防としても重要な補聴器支給事業など、住民の福祉の向上を図るためであり、切実かつ緊急性のある内容です。さらに国や東京都の補助事業、議決された事業も含まれ、すぐに実施できる事業ばかりです。国や東京都の補助金以外では、財政調整基金を財源としましたが、財政調整基金のわずか0.4%でしかありません。
 この修正動議の審議をめぐって、議会制民主主義とは、議会改革とは、が問われる状況がありました。あえてひとこと言わせていただくならば、執行機関側の賛同を修正動議に求めること自体、議会制民主主義に反するものです。

 最後になりましたが、本年の3月をもって退職されます156名の職員のみなさまに、心から感謝を申し上げますと同時に、おからだをご自愛いただき、今後ともご活躍されますよう祈念いたしまして討論を終わります。