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吉田豊明議員の反対討論
2017.10.26:平成29年第3回定例本会議

2016年度東京都板橋区「一般会計歳入歳出決算」及び「国民健康保険事業」、「介護保険事業」、「後期高齢者医療事業」の各特別会計の歳入歳出決算に対する反対討論

 ただ今から、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、報告第1号2016年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算及び報告第2号国民健康保険事業、報告第3号介護保険事業、報告第4号後期高齢者医療事業の各特別会計の歳入歳出決算の認定について、反対する立場から討論を行います。
 2016年度板橋区一般会計決算は、約43億3千万円の黒字です。国民健康保険事業特別会計は約30億1千万円、介護保険事業特別会計は約10億1千万円、後期高齢者医療特別会計は約1億1千万円のそれぞれ大きな黒字決算です。
 一般会計の歳入は、決算ベースで29億6,944万円の増収です。増収の主な要因ついて、区は、雇用・所得環境の改善と経済の緩やかな回復と言いますが、最も増加した納税義務者は、課税所得200万円以下の区民です。パートやアルバイトなどの非正規雇用が増加し、高齢者も働かなければならない状況です。しかも、区民一人当たりの所得は、年間1万3千円増えたものの、物価が上がり、保険料や税などの負担増で、実質マイナスです。区民の暮らしが改善されているとは言えません。
 
 決算認定に反対する第1の理由は、板橋区の施策が区民に寄り添い、区民の暮らしを支えるものになっていないことです。
 高齢者の貧困についてです。
 高齢者の納税義務者は、5年間で5ポイント以上増え、年金収入が削減される中、働かざるを得ない高齢者が増えています。さらに、各種保険料が引き上げられ、暮らしがままならず、高齢者の生活保護世帯は、2009年度4072世帯から2016年度6669世帯へと急増しています。高齢者の自立した暮らしのためには、保険料の負担軽減や家賃助成などの経済的支援が不可欠です。
 ところが、区は、高齢者福祉電話を廃止し、いこいの家の入浴事業を週4回から2回へと削減しました。介護予防のスペースに変更するという理由で、いこいの家でサークル活動を実施している登録団体の多くがその活動の場を失うことになりました。入浴事業等の縮小により年間の利用者数は、前年度比で約半分から三分の一にまで減っています。ふれあい館も入浴等が有料化されたため、利用する高齢者が減りました。本来、高齢者福祉施設は、高齢者の社会参加の点でも、また介護予防の点でも、重要な役割を担う施設です。高齢者の利用をいかに多くするかを施策の中心に据えるべきでした。

 次に障害者施策についてです。
 「障害者差別解消法」が施行され、「障害者権利条約」のもと、その精神を生かした障害者施策が、板橋区には求められています。しかし、区は、福祉園や福祉作業所の老朽化を放置してきました。最優先で整備すべきです。特にまえの福祉作業所と加賀福祉園ついては、対策は待ったなしです。

 次に、医療と介護です。
 2016年度の板橋区の国民健康保険の保険料額は、減額世帯を含め計算すると、12万4854円で、前年度比2518円の負担増です。窓口負担が10割になる資格証世帯は、低所得層に多くを占め、保険料が上がり続ける中では、医療難民が増え続くことになります。ところが、2016年度決算は、歳計剰余金が約30億円にもなっており、保険料を引き上げる必要はありませんでした。毎年上がる保険料を払うことが厳しい実態に対して、資格証発行、差押えはやめるべきです。特に3特別会計は、区民の命に直結する保険事業であることから、滞納整理にあたっては特別の配慮が必要になります。個々の実情を踏まえず、債権を納税課に一元化することは、あってはならないことです。

 特別養護老人ホームの待機者では、非課税世帯ほど待機年数が長くなっています。さらに、利用料が倍の2割になった途端、ショートステイ利用が減らされ、家族への負担が大きくなるなど、介護を抑制せざるを得ない「保険あって介護なし」の状況を生みだしました。新総合事業が始まり、区独自の緩和型の導入によって、事業所、利用者双方に必要な介護を保障できない事態が生まれています。

 後期高齢者医療制度では、保険料が改定され、均等割額・所得割率とも引き上げられ、約5割強の人が負担増となりました。減額措置が廃止されれば、大量の医療難民が発生することは必至です。減額措置を恒久法とするよう国に求める必要があります。

 続いて、子どもの施策についてです。
 子どもの池は、2016年度に舟渡3丁目公園が廃止されました。地域の子どもたちや園庭のない保育園の園児にとっての夏の楽しみを奪うことは、あってはならないことです。
 待機児童対策では、区は、1170人の定員増を図りました。しかし、2017年5月の時点で、希望する保育園に入園できない子どもは、985人に上ります。計画が不十分だったと言わざるを得ません。また、認証保育園の保育料助成金の上限が引き上げられましたが、認可保育料との格差はなお大きく、差額への助成に踏み出すべきでした。また、保育士への処遇改善も区独自の上乗せも行われていません。
 子どもの貧困対策は喫緊の課題です。私たちは、直接支援となる経済的負担の軽減の拡充と実態調査を求めてきました。しかし、新たに実施された経済的支援は、未婚ひとり親家庭に対する寡婦控除のみなし適用のみです。子どもの貧困対策として、経済的支援に踏み出すべきでした。
 子どもの居場所の問題では、児童館が乳幼児親子主体の施設へ移行され、小学生の事業がなくなりました。0~18歳までの利用と活動を保障し、トータルサポートこそ行うべきです。
 あいキッズでは、利用人数に対し、一人当たりスペースが十分確保されず、安全面で不安のある施設が10数か所あり、改善が求められます。また「利用区分が分かりにくい」「補食のあり方」への疑問・不満の声も少なくありません。職員配置においても、区の基準は低すぎます。制度の再構築を検討すべきです。

 次に教育についてです。
 義務教育における私費負担のあり方が問われています。区は、各学校での負担について、実態を十分に把握していません。入学準備にかかる費用や中学校のクラブ活動費など、就学援助制度でも賄い切れていないのが実態です。無償化こそ進めるべきです。
区立小学校において、特別支援教育の巡回指導が始まりました。実際、年度途中に児童数は増えましたが、教員数は増やされず、現場は厳しい状況に置かれています。また、指導を行う教室も専用室ではなく、共有している学校も多く、十分な環境とは言えません。
 緊急要望の改修費の残額は、小・中合わせて7000万円を超えています。小中学校では多くの要望が見送られています。中には、フェンスの劣化や柵の設置など、安全面での対応が必要な要望も含まれています。義務教育施設整備基金には33億円の積み増しが行われています。契約差金や基金積み立ての一部の活用で、実施することが充分可能でした。
 教員の働き方も大きな課題です。厚生労働省が定める「過労死ライン」を上回る教師は、小学校で33.5%、中学校で57.6%にのぼります。区は、巨費を投じ校務支援システムを導入しましたが、効果はごく一部にとどまっています。教育現場が求める必要な教職員を正規で配置することが求められます。
 
 次に、産業支援についてです。
 町工場の倒産、休廃業が続いています。区の職員が直接事業者の声を聞き、施策に生かすとともに、継続的な支援が必要です。しかし、区の産業経済費は、予算でさえ0.7%と低い上、決算では0.6%と一貫して下落傾向です。「中小企業従業員処遇改善サポート事業」は、国の補助事業が終了したとたん、事業は終了しました。これでは、支援の継続性が担保されません。有効な事業であるならば、区独自の事業とすべきです。事業者が経営を継続できるよう、本腰の支援が求められます。
 区内商業の現状も深刻で、商店の廃業が止まりません。2014年に95あった商店会は、15年には94、16年には92まで減りました。他区でも始まっている個店への直接支援が急務です。

 決算認定に反対する第2の理由は、防災の名で開発優先のまちづくりが進められている点です。
 区は、2014年に「大山まちづくり総合計画」を策定し、区主導でクロスポイント周辺地区の市街地再開発事業を進めてきました。再開発の形の上での主体は、「準備組合」ですが、実質的推進主体は、板橋区そのものです。この事業の問題は、第1に、防災を理由に、補助26号線ありきで進められ、道路事業推進の起爆剤として位置づけられました。しかし、周辺の木造住宅は、置き去りにされました。高層マンションが建てられ、さらに26号線が開通すれば、大山ハッピーロード商店街は、分断され、今あるまちのにぎわいは大きく損なわれます。東上線の立体化は目途さえついていません。区は、新たなにぎわいの創出といいますが、そうなる保証はどこにもありません。第2に、地権者の合意のみで進められてきたことです。そこに住む住民やそこで営業する商店など、まちのコミュニティを担ってきた人々が、その過程に参画しなければ生き生きとしたまちは造れません。
 本来あるべき防災対策は立ち遅れたままです。がけ・よう壁助成は、実績0です。危険なブロック塀対策では、文書指導83件に対し、改善されたのは3件だけで、マンション耐震化助成では11億円もの不用額を生みだしました。防災対策が進まない原因は、助成を受けてもかかる費用の大きさです。さらなる公的支援の充実が求められます。

 決算認定に反対する第3の理由は、職員定数の削減により、職員の超過勤務、過重労働が慢性化していることと、それに対する抜本的改善が図られていないことです。
厚労省が定める超過勤務の上限は、年360時間とされています。これを超える職員は、91人もいます。さらに、過労死ラインとされる月80時間を超えた職員は66人、100時間を超えた職員は29人もいます。この10年で職員定数は352人減っており、過重労働の原因が職員定数の削減であることは明らかです。さらに、残業を申告できない実態が告発されおり、公務労働において残業代未払いなどは、絶対にあってはなりません。
 同時にしらさぎ保育園の民営化、国保窓口業務の委託化、学校給食調理と用務の委託化が進められ、管制ワーキングプアが拡大しています。
 土木事務所の業務委託化の検討が開始されました。日常の業務は、道路や側溝、街路樹などの維持管理を行っており、直営だからこそ、区民の陳情、苦情に臨機応変に対応できます。災害時に現場を熟知している職員の存在は重要であり、正規職員が採用されなければ、区政の劣化が進むばかりです。
 ホタル生態環境館の問題を巡って、裁判の和解金2800万円余りが支払われました。区の管理責任が問われます。なおかつ、事件の全容が区民の前に明らかにされていないことは重大です。

 決算認定に反対する第4の理由は、区民への負担増、サービス削減で浮いたお金を「基金」にため込む姿勢です。
 2016年度基金残高は、525億円です。基金に積み立てられた金額は、区民への負担増、サービス削減だけでなく、施策からの不用額を絞り出し、捻出されたものです。
 基金及び起債の活用方針が策定されました。「義務教育施設整備基金」「公共施設等整備基金」の活用方針では、具体的な計画は一切明らかにされず、過去の数値をもとに算出されたものに過ぎません。しかも財政調整基金の目標額は、予算規模に合わせて青天井に上がり続ける、積立計画ありきの方針です。区民の納得は到底得られません。

 以上述べてきたように、2016年度の区政運営は、区民と職員の深刻な現状には目をふさぎ、区民の真剣な声には耳を傾けず、ひたすら再開発と基金の積み立てを推し進めるもので、地方自治の本旨とは相いれないものです。日本共産党板橋区議会議員団は区民の暮らしと営業を応援し、区民の声を活かす区政へ切り替えることを強く求めます。以上をもって、決算に対する反対討論を終わります。