2019年度 板橋区決算についての討論

討論日:2020年10月27日

ただ今より日本共産党板橋区議会議員団を代表して、報告第1号2019年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算・報告第2号同国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算・報告第3号同介護保険事業特別会計歳入歳出決算・報告第4号同後期高齢者医療保険事業特別会計歳入歳出決算及び報告第5号同東武東上線連続立体化事業特別会計歳入歳出決算の認定に反対する立場から、討論を行います。

2019年度決算の一般会計は、実質収支で55億5700万円の黒字、単年度収支でも9億5千万円の黒字となりました。また、基金は120億円が積み増しされ、過去最大規模の812億円です。4特別会計もすべて黒字となりました。『地方公共団体の財政の健全化に関する法律』に基づく、健全化判断比率でも『区財政は健全』と示されています。

反対する第一の理由は、区の行財政運営のあり方に問題があるからです。

NO.1実現プラン2021

2019年度は、区の実施計画である『NO.1実現プラン2021』の初年度です。本計画では人口減少社会を前提とし、将来の行政需要の減少を見込み、公共サービスの縮小を進めるものとなっています。区は、目指す方向性として『量より質』を掲げていますが、『量でも質でも』住民の福祉向上が図られるよう追求すべきです。

・民営化・民間委託

『2021計画』では、弥生保育園と板橋保育園の民営化が発表され、弥生保育園での保護者説明会で、4年間での民営化に反発する意見が上がり民営化時期を延期することとなりました。また、同計画では、区立福祉園及び特養ホームの民営化も示されています。区として、民営化しても『現行水準を守る』という具体的な方策が示されておらず、不安の声が上がっています。区の責任を放棄する民営化はやめるべきです。

加えて、官制ワーキングプアを生み出していることも認識すべきです。委託費には人件費も含まれていますが、決算上でもその内訳は不明です。公務労働に相応しい処遇になるよう、公契約条例の制定が必要です。

経営革新計画

契約差金や不用額の年度途中での流用を原則禁止とし、生じた額は、基金に積み立てるとしていることや新たな現金給付事業は実施しないとの方針に縛られ、区民に必要な施策を行うことができない状況となっています。コロナ禍では、生活支援としての現金給付事業が実施されています。また、児童養護施設卒園者への家賃助成制度はクラウドファンディングで行われています。区自らがその必要性を認めているなら、現金給付事業を実施しないとの方針を撤回し、区の事業として実施すべきです。

収入確保

収入確保として、公有地の有効活用や徴収強化などが進められています。

学校施設における地域開放事業は、2016年度から有料化が行われていますが、2019年度は780万円の赤字、なんと4年間で2300万円ものマイナスです。有料化により、登録団体が41件減少し、使用件数は10,115件もの減です。収入確保にも、有効活用にもなっていません。有料化をやめるべきです。

また、徴収強化では、生活再建に向けた対応についての手順や連携するための組織化は行われていません。納税者の命と暮らしをまもり、生活再建に結びつける対応こそ行うべきです。

公共施設等ベースプラン

『公共施設等ベースプラン』は、施設の総量抑制・耐用年数の延伸・区有財産の有効活用との基本方針に沿って、公共施設のマネージメントを行うものです。コロナ禍で、一部の計画が繰り延べとなりました。期間だけでなく、総量抑制方針や施設のあり方など、区民との協議の場を作り、再検討すべきです。

区が実施しているパブリックコメントの実績は惨憺たるものです。区民参加の機会を保障するためにも、せめてパブリックコメントの期間を30日間に延長し、実施していることの周知を徹底することや、説明会の開催方法などを見直すべきです。

第二の理由は、区として区民生活の実態を正しく認識できていないからです。

納税義務者の内、新たに増えた5454人の62.9%が標準課税額300万円以下であり、納税義務者全体では、59.6%、約6割が標準課税額200万円以下の低所得者です。収入状況から考えれば多くが非正規雇用であることが伺えます。コロナ禍で多くの非正規労働者が仕事を失うと言われており、非正規雇用の増加は決して安定的な税収につながると言えません。こうした実態を踏まえれば、『雇用や所得が改善している』との見方は撤回すべきです。

10月の消費税増税

また、当年は、多くの国民の反対の声を押し切り、10月から消費税10%増税が強行されました。増税以前から景気は後退しており、10%増税はさらに追い打ちをかけたことは言うまでもありません。

生活保護利用世帯の増加と保護費の削減

 加えてこの10月には、生活保護基準額の2回目の改定が行われています。消費税増税分として扶助額が引き上げられたものの、改定の影響で多くの世帯の基準額が引き下がっているはずです。区として実態把握を行うべきです。

・事業所の倒産・廃業

東京商工リサーチの調査では、2020年1月~8月までの休廃業件数は、35,800件を超えています。板橋区内の事業者に当てはめると178件、廃業を考えている事業者8.8%で見ると、1500件です。区は、様々な相談事業を通じ把握しているといいますが、今年2月の相談件数は315社であり、多くの事業者が相談窓口にさえ届いていません。

具体的な支援策が不足している

区は区財政への影響には触れるものの、このような区民生活への影響については、全く関知していません。区民生活を正しく認識することなしに、適切な支援を行うことはできません。まず、区民の暮らしの実態を把握し、具体的な支援策を講じるべきです。

第三の理由は、区が進める政策が区民の実態に則していないからです。

施設の廃止・休止  

高齢化の進行にも拘らず、区は、その居場所を奪い続けています。いこいの家での入浴事業が廃止となり、利用者が激減しています。加えて、2019年の6月には利用者が多かった大谷口いこいの家が廃止されました。代替先として民間の施設の利用が案内されましたが、一般的な交流スペースであり、いこいの家に代わる場所とはなっていません。ふれあい館でも、入浴事業の有料化で利用者が減り続けています。自宅に引きこもりがちな高齢者の外出のきっかけをつくり、他者との交流は介護予防や疾病予防の点からもこうした施設が重要であることを認識すべきです。

災害対策

2019年度は、台風15号・19号の到来など広範囲での水害が発生しました。区内では命に関わる被害は報告されていないものの、改めて避難所の職員配置や要支援者避難計画の策定が進んでいないなどの課題が浮き彫りになりました。このことは、区が、自助・共助を強調し、公助の役割を果たしてこなかったことを示しています。区民の命や財産を守るために、より具体的な想定を基にした防災計画に改めるべきです。

子育て支援と子どもの貧困対策

幼保無償化がスタートしましたが、無償化の対象が3歳児から5歳児までであることで2歳児以下の保育料の負担との格差が生じたことや一部の私立幼稚園では保育料の引き上げが行われるなどの課題が露呈しました。

2019年度は481名の保育定員の増となりましたが、区が目標とした2020年度末までに保育園待機児童数ゼロについては、達成困難な状況です。

また保育の質の確保も問われています。区は死亡事故検証委員会による報告書に基づき、『保育の質』を引き上げるとし、午睡中の見守り強化のための器具の導入などを行いました。しかし重要なことは、保育士がゆとりをもって子どもたちと向き合うことができる体制や働き続けることができる環境づくりであり、保育職員を増やし、抜本的な処遇改善を図るべきです。

『いたばし子ども夢つむぐプロジェクト』は総事業数83事業、決算額は85億5294万5千円となりました。一方で、ひとり親家庭へのホームヘルパー派遣事業の利用世帯は15世帯に留まっています。以前は中学生のいる世帯も対象としていましたが、小学生以下の子どもがいる世帯に縮小されました。子どもたちが自分のための時間を持てず、自らの未来を描くことができない社会でいいのでしょうか。目の前の貧困を解決するための具体的な支援策を含め、実効性のある事業にすべきです。

教育予算

『魅力ある学校づくりプラン』によって、学校の統廃合を推し進めています。少人数学級を前提とした学校づくりに転換すべきです。

 義務教育にかかる不用額をみると、小学校で2億136万円、中学校で1億1359万円です。主な理由として、学校施設の光熱水費等の実績減や施設改修経費の契約差金、給食回数の減による就学援助費の減額です。こうした残額を基金に積みながら、今年度は新たに購入する教員用のデジタル教科書の費用を学校令達予算から差し引くという予算を執行しました。また、学校施設の外壁工事が適切な時期に実施されず、あちこちで雨漏りが発生しています。こうした状況を生みながら、『義務教育施設整備基金』に49億1933万円もの積み立てを行ったことは問題です。今の子どもたちの教育環境を置き去りにすべきではありません。

医療や介護

コロナ対策と平時からの備え

新型コロナ感染拡大により、保健所では当初『電話が通じない』状況となり、時間外勤務も急増しました。今年度に入り体制強化として、医師や看護師の雇用や他部署からの応援などが行われたものの、通常の保健所体制が緊急事態に対応できないことが明らかになりました。区は今後も検査の民間委託等を進めていくとしていますが、緊急時に保健所としての専門的役割を果たせるよう、検査技師を始め、医師・看護師・保健師などの専門職を増員すべきです。

国保・後期高齢

2019年度は、介護分も含めると均等割で1200円の増、所得割では1.66%の増となっています。区の試算では、夫35歳で年収300万円、妻と子ども二人の4人世帯で、2009年度16万1678円が2019年度31万7931円と、この10年で2倍に膨れ上がっています。国保料だけで収入の1割以上を占める異常な高負担です。徴収強化や延滞金の徴収開始により歳入増及び収入未済額の減が図られたといいますが、高額の保険料をそのままにして、徴収を強化することは、生活困窮を生み出す要因となりかねず、減額や負担軽減こそ図るべきです。

また、後期高齢者医療保険事業では、消費税増税とセットで実施された10月からの国の特例軽減措置見直しの影響で、均等割軽減9割の方が8割軽減へと引き下げられました。これにより1万1193人の加入者の保険料額が4300円から8600円と2倍もの負担増となっています。医療が必要となる高齢者の負担を増やすべきではありません。

介護

介護保険については、『保険あって介護なし』の実態が広がっています。2019年度における未利用者の内、利用料が2~3割の所得階層で増加しています。また、保険料の滞納状況をみると、いわゆる現役並と言われる第5~7段階でも増加しており、制度開始以来引き上げられ続けている保険料及び利用料の軽減を実施すべきです。

産業・環境

産業経済費の構成比は1%となりましたが、『プレミアム商品券』事業経費を除くと、0.7%です。

消費者や小売業・商店への支援だけでなく、製造業を含めた対策として、後継者不足や事業の転換などの課題、経常経費への支援等、現状に則した対策を講ずるべきです。また、農機具購入のための補助金は、予算を使い切り、順番待ちの状況となっています。年度途中に予算の増額を図るべきでした。

資源環境費には、公衆喫煙所設置による工事費が計上されましたが、計画時点での説明が不十分であったことから設置場所への理解が得られず、結果的に別の場所へ移転することとなりました。移転のための追加費用を発生させたことは重大な問題です。

大規模再開発

都市整備費は、再開発関係及び東上線連続立体化事業基金への積み立てなどにより大幅な増額となりました。大山まちづくりに関わって、地権者の了解を得ないまま、駅前広場整備の都市計画を審議する都市計画審議会が開かれました。少なくない委員から異論が噴出したにも関わらず、採決が強行されたことは許しがたいものです。地域を分断するやり方はやめるべきです。

第四の理由は、職員の働き方が抜本的に改善されていないからです。

2019年度の時間外勤務の状況は、直ちに改善が必要な年間360時間を超える職員が71名でした。

区は、年間360時間を超える超過勤務を行ってもよいとする『他律的業務部署』を認定しています。過労死を助長するような働き方を進めることは到底容認できません。

福祉事務所では、厚労省基準が守られておらず、査察指導員の配置が不足しています。ケースワーカーの担当数も80対1を超えており、特に職員の年齢構成を見ると、20代30代が7割を占め、経験年数も3年以下が8割にも上っています。一部の職員が過重な負担を負っているのです。

教職員の『働き方改革推進プラン2021』では、『週当たりの在校時間60時間を超える教員ゼロ』を掲げていますが、現状の把握が行われていません。また、男性教職員の育児休暇取得はわずか2名となっています。校務支援システムでも業務改善の効果は低いままです。

現行の定数管理を改め、職員を増やすべきです。

第五の理由は、国保会計において不適切な流用が行われたからです。

国民健康保険事業特別会計では、予算の定めにない、項を超えての流用が行われていた事実が明らかとなりました。昨年度に適正な処理を行うことが可能だったにもかかわらず、地方自治法第220条第2項に反する決済を行ったことは容認できません。

区は、2019年度も財政が厳しいとの見解を強調し、過去最高となる基金額という結果を生み出しました。言うまでもなく、基金への繰り入れは、住民のための様々な施策を講じた上で積み立てることが認められているものです。年度を超えた安定的な財政運営のためとしても、これまで指摘してきたように、区民に寄り添う政策を行うことができたはずです。

区民のための区政運営への転換を強く求め、2019年度決算の認定に反対する討論を終わります。

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