陳情第118号「地域経済と中小商工業者の危機を打開するために物価高対策など緊急の支援策を求める陳情」に賛成する討論

討論日:2025年10月14日本会議 山内えり区議会議員

 ただいまから日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第118号 地域経済と中小商工業者の危機を打開するために物価高対策など緊急の支援策を求める陳情 委員会決定「不採択」に反対し、賛成する立場から討論を行います。

 本陳情は、物価高騰対策として、1.電気・ガス代、資材の高騰に対し負担を軽減する助成制度など直接支援策の実施、2.賃上げした事業者への直接支援制度や社会保険料の事業者負担を軽減するための支援制度創設、3.事業者の仕事おこしと地域住民の生活向上に寄与し魅力ある地域づくりにつながる商店等の改修に対する住宅リフォーム制度化、4.設備補助金など独自の中小事業者支援策の実施、5.建築物の断熱化を支援する助成制度をつくることを求めるものです。

 長引く物価高で利益を増やすことが困難なうえ、消費税のインボイス(適格請求書)による負担、重い社会保険料がのしかかり、中小企業者の営業と生活は苦境に立たされています。小規模事業者の廃業・倒産が増加し、板橋区中小企業の景況(令和7年1月~3月期)によると昨年の区内企業の休廃業・解散件数は77件に対し、本年度は302件で、うち解散が69件から295件と4.3倍に増加、深刻さが増しています。

 陳情に賛成する第一の理由は、エネルギー原材料費高騰への直接支援が必要と考えるからです。

 区の「令和6年度区内主要産業現況調査報告書」によると、「多くの企業が十分な価格転嫁ができていない状況」と記されていることからも明らかなように地域や消費者に密着している小規模事業者ほど十分な価格転嫁を行うことができず、ぎりぎりの経営を余儀なくされています。江東区では、エネルギー価格高騰の影響を受けた事業者に水道光熱費、燃料費の一部を補助する独自の支援策を実施しており、自治体として区内業者を守る姿勢が貫かれています。区の財政状況からみても板橋区にできない理由はありません。地域経済を下支えしている中小企業を直接支援すべきです。

 賛成する第二の理由は、中小企業への賃上げ支援、社会保険料の事業主負担を軽減することは急務だからです。

 労働者を雇用すれば、赤字でも負担しなければならない社会保険料の事業主負担は、経営者を苦しめています。中小企業家同友会全国協議会が今年5~6月に会員に行った経営実態アンケートによると、賃金引き上げに必要な国の支援策は、「社会保険料事業主負担の軽減」が73.4%で断トツの1位でした。人手が足りず、採用したくても人を採るためには賃金も上げなければならず、労働時間も減らしていく必要があります。岩手県は、全国に先駆けて「物価高騰対策賃上げ支援金」を実施し、賃上げを行った県内中小企業を支援。昨年12月にはさらに内容を拡充し、継続しています。雇用の7割を支える中小企業の労働環境改善は、区民生活の向上と地域経済の持続的で安定的な発展のためにも欠かせません。区として賃上げ支援に踏み出すべきです。少なくとも全国一の財政力を誇る都に賃上げ支援を求めるべきです。

 賛成する第三の理由は、建築物の断熱化を支援する助成制度、住宅リフォーム助成制度は、事業者の仕事おこしにもなり、必要だからです。

 今年4月からすべての新築住宅に断熱等級4以上の基準が義務化され、2030年には断熱等級5が義務化されます。区は、「ゼロカーボンいたばし2050」を表明し、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指すとしています。であるならば、環境政策をより前に進めるためにもR2年度まで実施していた断熱改修助成を復活すべきです。葛飾区は、既存住宅の断熱改修、高反射率塗装への助成、新築住宅の「高断熱住宅」に対する助成を行い、国または都の実施する補助金との併用も可能としています。板橋にできない理由はありません。

 住宅リフォーム助成は、板橋区が全国に先駆けて始め、大きな経済効果を生み出しました。全国では、例えば、群馬県高崎市などで魅力ある商店づくりを支援するため、まちなか商店リニューアル助成事業を実施しています。板橋区でも住宅リフォーム助成を復活して地域経済の活性化に踏み出すべきです。

 国の中小企業憲章では「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と位置付けられています。中小企業が元気になってこそ、地域が元気になり、地域経済の活性化につながります。今まさに苦境に立たされている中小企業を支えることこそ自治体の役割です。区は、2年に1度、区内主要産業の現況調査や日々の事業者との関わりのなかでニーズ調査を行ってきたと言います。しかし、第2回定例会では建設関連団体から、第3回定例会では商工団体から続けて陳情が出されるということは、この間、区が実施してきた業務改善や融資、創業者に対する家賃助成などでは周知も足りておらず、苦境に立たされている現状を打開できるところにまで至っていないからではないでしょうか。

 陳情に不採択を主張した委員から「融資頼みの支援では現状を打開できない状況というのは全くその通り」「楽観できない厳しい状況」など、認識は共通していますが、一方で「原資は税金なので区民が納得できる使い方を」と意見がありました。地域経済の担い手として、雇用を支え、住民の生活を守ってきた中小・小規模事業者が危機に直面する今、自治体が手を差し伸べるときにきています。区の産業振興条例で「区内産業振興のための施策を実施する」と示すように区内の地域経済を下支えする中小企業支援は、区の責務です。国や都の支援策を紹介し、待つのではなく、区として独自の支援策を実施し、苦境に立たされている区内業者を守るべきです。

 以上の理由から本陳情に賛成し、私の討論を終わります。

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