討論日:2024年2月29日
ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第7号「2023年度東京都板橋区一般会計補正予算(第7号)」、議案第8号「同国民健康保険事業特別会計補正予算(第1号)」、議案第9号「同介護保険事業特別会計補正予算(第2号)」、議案第10号「同後期高齢者医療事業特別会計補正予算(第1号)」、議案第11号「同東武東上線連続立体化事業特別会計補正予算(第1号)」に反対する立場から討論を行います。
一般会計は、歳入歳出とも23億4,900万円の増額補正です。新型コロナウイルス対策関連経費が、5類への移行等により、歳入、歳出でともに大幅な減額となりました。歳入では、特別区交付金が46億5,140万円と大幅増額となり、歳出では、再開発事業経費の10億円の減額をはじめ、人件費、学校施設改修費、地域型保育事業経費、などを減額し、残る金額154億円を、基金に積立てるものになっています。基金は総額で、過去最高の1298億円となる最終補正です。
反対する第一の理由は、区の財政運営方針によって、柔軟な財政運営が行われず、基金積みあげが優先されたということです。「契約差金や事務事業の見直し等により発生した不用額については、原則として他の事業に転用しない」という方針のもとで、年度の当初から執行残が見込まれ、秋以降はほぼ不用額も見えてくるにもかかわらず、柔軟な財政執行に充てる方針が出されませんでした。2023年度は、物価高騰対策として、5度にわたる補正予算が組まれたものの、総額約113億円の内、区の一般財源は17億円しか充てられていません。今年度は、9月から小中学校の学校給食費の無償化が年度内という期限付きで実施されました。区民要求にこたえて、最終的には特別支援学校の子どもたちやお弁当持参の子どもたちにもさかのぼって適用されることになりました。学校給食費の無償化は、やる気になれば、年度途中であってもできる事業があることを明確に区民に示したものになりました。物価高騰に苦しむ区民生活を支えるためにできる事業はもっとあったはずです。「徹底した歳出縮減」と「厳しい財政状況」の強調、「基金積み上げ優先」の姿勢が、区民生活に必要な施策を、柔軟にかつ積極的に実施していくことにブレーキをかけていることは間違いありません。行政の硬直化を招いています。年間154億円にものぼる基金の積み上げは異常です。
反対する第二の理由は、区民生活の実態をつかまず、区民要求に応えていないということです。最終補正は「緊急かつ必要性の高い施策」を行うとしていますが、実際には、最終補正では、実績見合いで必要な増額をしたものはあるものの、それ以上のものは見当たりません。年度途中でも、区民生活の実態や要求、区の施策の課題が明らかになれば、そのための対策が行われるべきです。
中小業者支援が強く求められました。コロナに続く原材料費、燃料価格の高騰、さらに昨年10月からのインボイス制度の導入などで、多くの中小・零細業者が苦しんでいます。板橋区の景況調査でも、賃上げなどできないと回答している企業が7割を超えています。コロナ禍で実施されたゼロゼロ融資の返済が求められ倒産に追い込まれる企業も生まれています。区として行う経済対策が融資の延長と消費刺激策だけでは、とうてい足りません。直接的な経営支援が求められましたが、打ち出されませんでした。
児童福祉では、保育需要の変化の実態に合った施策が展開されていません。東京都や板橋区が待機児対策として広げてきた認証保育所や地域型保育事業は大きく減額補正となっています。区は、「待機児童がゼロになった」といいますが、希望する保育園に入れていない子どもたちは、昨年4月で428人います。保育園は、縮小ではなく、拡充、充実の方向にこそ向かうべきです。国の保育士への処遇改善加算が行われましたが、入所児童数でしか加算されないために、保育園の定員を維持できない、賃金引き上げにつながらないなどの事態が生まれています。区として、小規模保育園への助成が行われたものの、定員未充足に対する対策は大変不十分です。
あいキッズの委託費及び利用料が減額補正となっています。利用者の減少に合わせた委託費の削減は、支援員の確保を困難にし、処遇改善が行われないなどの問題を生んでいます。コロナ禍より徐々に利用者が戻ってきているとはいえ、子どもたちの「あいキッズ以外に行きたい」「自由に遊べる場所が欲しい」の声は引き続き上がり続けています。活動場所を学校内のみに求めることの限界が見えています。一方でキラキラタイムの利用者は増えており、学童保育クラブとしての機能充実が求められます。放課後児童クラブ事業と、放課後こども教室事業の「一体型」事業は見直すべきです。
介護保険事業特別会計では、保険給付費及び地域支援事業費合わせて10億円の減額補正となり、利用者の減少と計画通り事業がすすんでいないことが示されています。
介護の現場では、ホームヘルパーの人手不足は深刻です。ケアマネージャーから紹介があった方へのサービス提供を断った理由の9割が人手不足だという調査結果が報じられています。区として、介護事業所への支援が強く求められましたが、区としての独自施策は取り組まれませんでした。
また、看護小規模多機能型や認知症グループホーム、都市型軽費老人ホームなど、計画した介護施設は、採算性などが課題となって、事業者の手が上がらず、計画通り進んでいません。区として、具体的な手立ても打たずに来た姿勢は問題です。
国民健康保険事業特別会計では、「その他の一般会計繰入金」は3億6800万円余の増額補正となりましたが、さらなる繰り入れで、子どもの均等割り保険料の軽減の対象者を拡大することは十分に可能でした。
また、コロナ医療費の公費負担は、5類への移行により、当初16億円を15億円減額しました。その分、自己負担増や病院の経営に影響を生みました。
介護保険も、国民健康保険も、後期高齢者医療保険も、滞納者数が前年より増加傾向なのは、高すぎる保険料と厳しい生活実態の表れです。にもかかわらず、保険料の軽減ではなく、差し押さえなどによる徴収強化を進めたことは、医療を受ける権利を侵害するものです。
反対する第三の理由は、職員削減と民間開放によって、公的責任が後退しているからです。
4年間にわたるコロナ禍の下で、区民生活に関わる様々な分野で行政の在り方が問われました。区は保健所の体制強化を人材派遣にゆだね、当初1日10人配置を、新型コロナウィルス感染症が5類に移行され、5月は2名、6,7月は1名、8月以降は配置しませんでした。すべてがコロナ前に戻るのではなく、この間の教訓を生かした職員体制の強化が求められました。それは、直接担当する予防対策課の体制にとどまらず、行政のすべての分野で、公的責任を果たすことのできる人員体制の構築が求められています。欠員が補充されない、あるいは事業の継続性や専門性が求められるのに正規の職員が補充されないという問題は早急に解決する必要があります。保育園の看護師や、子ども家庭総合支援センターの心理司や福祉司などの専門職の育休代替が正規で補充されないのは問題です。抜本的な正規職員増が必要です。
学校用務の委託では、大規模校で、支援が必要な子どもに、委託の用務員がかかわらざるを得ない事例が生まれています。普通学級の人員体制が不十分であることはもとより、そもそも学校運営に直接かかわる学校用務を業務委託すること自体が問題です。
区営駐輪場において、西高島平駅前では利用者から当日利用をもっと増やしてほしいという声を受けて、区が増設を求めていますが、指定管理者が応じない事態となっています。5年間の指定期間で利益を生むことが前提の指定管理者制度は見直すべきです。
昨年4月から民営化した区立特別養護老人ホーム2ヶ所の運営費助成経費は、1167万円の減額です。それは民営化後の職員配置が助成条件を下回ったからです。民営化後の水準低下は生まないと言っていたにもかかわらず、支援するどころか減額すること自体が問題です。
解体工事現場での板橋区のアスベスト対策を点検、指導する体制が不十分であることが明らかになりました。区内の建築物の解体工事がこれからピークを迎えようとしている中で、板橋区の調査でも、区に報告されている現場の3割で、何らかの是正指導が必要になっていることが明らかになりました。国の飛散防止対策でも十分とは言えない中で、健康被害を未然に防ぎ、被害を最小限に抑えるためには、少なくとも、正しい情報公開が必要です。上板橋駅南口の再開発事業の現場でアスベスト対策が不十分であることが明らかになったにもかかわらず、国の対策で十分とする姿勢は、区民の命を軽視する姿勢として許されません。
反対する第四の理由は、人権擁護、民主主義、住民参加が区政運営に貫かれていないということです。
マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぎました。いずれも、個人の財産や命にもかかわる重大な問題です。カードの発行ありきで、ポイントを付与してまでデジタル化を急がせる国の言いなりになるのではなく、独自に危険性を区民に伝えるべきです。
小中一貫校建設問題では、近隣住民や区民、教育関係者の納得も、合意もえられないまま計画を強行しています。教育長や教育委員会による説明責任は果たされていません。
再開発関連では10億円の減額補正です。上板橋南口駅前地区では、約9億円の補助金を見込んだものの、国の内示率が低く4億4328万円の減となっています。大山町ピッコロスクエア周辺地区では、組合設立認可が半年ずれ込んで。4億8143万円の減額補正です。少なくない権利者が境界確定に応じていない中で、計画を推し進める区の姿勢は許されません。大山駅前広場等整備事業は、用地取得も解体も見込み通りには進まず減額補正です。住民合意のないまちづくり事業は立ち止まるべきです。
以上の理由から、本補正予算案に反対する、私の討論を終わります。