技監を設置するため、職員の給与条例及び旅費に関する条例を改正する条例に反対する討論

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第43号職員の給与に関する条例の一部を改正する条例及び、議案第44号職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例に反対の立場から討論を行います。

 本議案は、区長及び副区長の補佐をし、高度な技術的見地から各組織への助言・指導を担う7級職の統括部長である「技監」を設置するため、職員の給与条例に関する条例の給料表及び等級別基準職務表と、旅費に関する条例の死亡手当の支給対象に7級職を加え、支給額を定めるものです。「技監」は、国土交通省の国家公務員を一旦退職させて、区職員として採用し、一定の時期に国土交通省に戻す「割愛採用」として設置するとしています。

 反対する第一の理由は、国からの出向人事は、法律的根拠もなく、「地方分権」に逆行するからです。

 中央省庁からの出向人事は、法律に明文規定もなく、1998年の閣議決定により進められてきました。他国では類を見ないものです。現在では、国と地方公共団体の人事交流と称して、政府省庁から地方自治体に出向しているのは、全国で1,769人にも及んでいます。そのうち今回板橋区で採用するものと同様の「部長級以上の役職への出向」は、422人で、国土交通省は最も多い171人です。

 経済学者などの専門家は、地方政府に対するコントロールができること、地方自治体の情報収集と意思疎通、官僚の研修の場、給与負担の回避という国にとってのメリットがある一方、地方自治体にとっては、年齢や役職の格差による自治体職員の士気の低下、部署内外からの反発、出向官僚の給与負担といったデメリットを指摘しています。さらには、人事権を国が持ったまま、同じ人が何年いるのかも分からないということが、国と地方自治体は「対等である」と位置付けた「地方分権」に逆行するのもので、区民や区職員にとってメリットどころかマイナスでしかありません。

 区は、区職員では経験のないような大規模な建築物を扱うからとしていますが、区職員には土木や建築職の職員もおり、板橋区以上に大規模な建築物を取り扱っている自治体は多くありますが、23区で「技監」を設置しているのは、現在、台東区だけです。

 また、区の東上線立体化に関する職場には東京都から職員が派遣され続け、URとは人事交流まで行ってきました。技術的見地からの助言や指導を行うための「技監」は、全く必要ありません。

 第二の理由は、住民合意を得ないまま、国や東京都と一体となって開発のスピードを加速させるからです。

 区は、「技監」設置理由を、東上線立体化において、常盤台駅と上板橋駅周辺の協議会が行われ、中板橋駅周辺でも協議会が始まること、高島平地域のまちづくりや、かわまちづくりの動きが進んできたことから、そうした取り組みを「円滑かつ着実に推進する」ために、「技監」の役割の一つとして、国や都、URや鉄道事業者など様々な主体との折衝や調整のスピードを上げることを担うとしています。

 しかし、委員会質疑でも、現在、うまくいっていないことはなく、スピードが遅れている事業はないと答弁しています。むしろ、課題となっているのは住民合意が得られていないということではないでしょうか。大山駅周辺高架化は、土地の取得も進まず、その他の駅も含めて、住民からは未だ「地下化」を望む声は絶えません。大山地域のクロスポイントも板橋駅西口再開発も住んでいる住民や、商売をしている人を追い出す結果を生んでいます。その反省もなく、高島平のまちづくりによる「地区計画案」は、地元自治会からの計画見直し要求に背を向け続け、住民の声に耳を貸す姿勢もなく、スピードを緩めることなく地区計画を決定しようとしているではありませんか。どのまちづくりでも、区は住民と合意形成を丁寧に積み上げるという姿勢がないまま進めてきたのが実態です。にもかかわらず、そのスピードを加速させるという考えよって、「技監」を設置することは容認できません。

 しかも、国の国土強靭化の名のもとに、大規模な再開発を次々と進めてきた東京都は、「土地収用制度適用基準」を大きく変更し、都が必要と勝手に判断すれば、土地所有者の意思に関わりなく強制的に土地収用手続きを、強権発動ができるように改定しています。さらには、特定整備路線の用地取得を進めるために「機動取得推進課」まで新設しています。

 国や東京都と一体になって、多額の税金を投入して大規模再開発ばかりを最優先してきた、住民無視のまちづくりは、根本から見直すべきで、国土交通省のキャリア官僚などに頼らず、区自身が、住民と正面から向き合い、住民参加でまちづくりを進めるべきです。 以上で、本議案に反対し、討論を終わります。

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