2024年度板橋区一般会計・4特別会計決算「認定」に対する反対討論

討論日:2025年10月28日 山内えり区議会議員

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、報告第1号「2024年度東京都板橋区一般会計」、第2号「同国民健康保険事業特別会計」、第3号「同介護保険事業特別会計」、第4号「同後期高齢者医療事業特別会計」、第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計」、5つの会計の歳入歳出決算の「認定」に反対する立場から討論を行います。

 2024年度区一般会計決算は、歳入2822億7000万円に対し、歳出2699億3600万円で、翌年度繰越額を除く実質収支は115億2900万円を上回りました。不用額は、77億9100万円にも上っています。財政調整基金は49億5200万円取り崩したものの、それを大きく上回る109億3900万円の積み立てを行っています。そのほか4つの特別会計も黒字決算です。

 決算の認定に反対する第1の理由は、物価高騰に苦しむ区民、中小零細業者への支援策が不十分で負担増を押し付けたからです。

食料品、光熱水費、資材などあらゆるものの長引く物価高騰は深刻で区民の暮らしを直撃しています。2024年度の物価高騰対策費は、国の交付金による低所得対策だけで、物価高騰に苦しむ区民全体への支援は行われず、7回の補正予算のうち、物価高騰対策はわずか3回で、区として直接的な経済支援に踏み出す姿勢もありませんでした。

 産業経済費における区が言う物価高騰対策は、ほとんどがいたばしPAYで、利用者、加盟店舗は増えているものの、利用できない区民、事業者は取り残されています。また、新型コロナウイルス感染症、または原油価格や物価高騰を背景に区内中小業者を対象に信用保証料の全額補助を行っていた経営安定化特別融資は、1億500万円も補正で減額し、コロナが沈静化したことを理由に年末で終了してしまいました。結果として、決算では産業経済費の構成比は前年度同様の1.6%に留まりました。

 一方で、国民健康保険料は、2018年の国保広域化以降最大で、1人当たりの保険料は前年度比年間1万1831円もの値上げ、最高限度額も2万円増で過去最高額となり、加入者のほとんどが値上げとなりました。保険料だけで年収の1割以上を占める異常な高負担です。

 差し押さえは865件行われ、非課税世帯にも行われています。高額の保険料をそのままにして徴収強化するのではなく、減額や負担軽減こそ図るべきです。2024年12月に健康保険証廃止に伴い、短期証も資格証も廃止になりました。新たな「特別療養費制度」が始まりましたが、丁寧な納付相談につながるかが疑問です。また、後期高齢者医療事業では、2024・2025年度分の改定が行われ、対2022・2023年度比で一人当たり保険料額は6514円もの負担増です。

 介護保険料は、1人あたり年間5800円もの負担増となりました。保険あって介護なしの実態がさらに広がっています。第9期介護保険事業計画の1年目で訪問介護の報酬引き下げが行われました。訪問介護の回数は、2024年度目標に及ばず、一方訪問型サービス事業所は、2024年度は6ヵ所廃止になっています。国の介護報酬引き下げの影響を調査することもなく、訪問介護の必要量は満たしているとして直接支援を行わない区の姿勢は問題です。介護給付費準備基金は、2024年度末で約40億円もの残高となっています。保険料の引き下げ、また、区独自の利用料軽減などを行うべきでした。

 2024年度の公共施設の使用料は、算出根拠も不適切で新たな減免の検討もなく、1.4倍もの値上げが強行されました。本来、住民参加で検討し、安価で利用しやすい料金にすべきです。

 反対する第2の理由は、区民の要求に応えていないからです。

 エアコン設置助成を前倒しで2024年度は400世帯を目標にしながら49件にとどまりました。対象をエアコンのない全世帯、生活保護世帯にも行うべきでした。がけ・擁壁助成について、危険度大146件、中514件の文書指導で、相談件数50件に対し、築造などの助成1件、専門家派遣4件で改善された場所は8件にとどまり、危険度の高いところを抜本的に改善させる必要がありますが、遅々として進んでいません。それは、対策にかかる費用が高額なため、現在の助成額上限では不足することが大きな要因になっています。制度の拡充こそ直ちに検討すべきです。住宅マスタープラン「未来の住まいビジョン」を策定するための調査を行った年です。区営住宅の単身向けに26倍、高齢者住宅けやき苑に62倍という需要があるにもかかわらず、区営住宅再編整備方針に固執し、国の推計プログラムによる「公営住宅は充足している」という結論を出したことは問題です。公園・公衆トイレの洋式化は20ヵ所実施したことは重要ですが、まだ洋式化されていない場所は58ヵ所も残されています。5500万円もの不用額を残したことを考えれば、もっと前倒しでできたはずです。事業者がいないと言いますが、区の計画そのものが遅すぎます。2024年度は、保育園の実質待機児童数はゼロになりましたが、入所保留者は存在しています。特養ホームの待機者は581人もいますが、区の施設整備は進んでおらず、入りたくても入所できません。

 2024年度の不登校児童生徒数は、依然として多い状況で少なくない子どもたちが学校に通い教育を受ける権利を行使できていない状況です。中学校3校で校内居場所事業を委託で始めましたが、最も要望の高いフリースクールの助成や学校給食費に相当する昼食代補助などの経済的支援は行いませんでした。さらに、「不登校の9割は親が解決できる」「3週間で再登校できる」とした株式会社スダチとの連携を模索した姿勢は問題です。

 反対する第3の理由は、職員不足が常態化し、公務労働の非正規化が進められてきたからです。

 保育園調理師の退職が年末にわかり、すぐに調理員を募集すべきであるにもかかわらず、退職不補充の方針が貫かれたことにより、2025年4月に弁当昼食になるという保育園を生みました。保育園調理の退職不補充の方針は撤回すべきです。土木作業員も退職不補充により現場の作業班が委託にされました。災害時の機敏な対応を可能とするためにも土木作業員の新規採用を行うべきです。

 「区保健所健康危機対処計画」(感染症編)が策定されましたが、必要な人員確保について、ひっ迫した状態を上回る計画にはなっていません。全庁的に感染症対策などの緊急事態を想定した職員定数の確保が必要です。また、保健師の不足により、育児相談や母親学級、女性歯科健診などが休止され、2024年度には女性歯科検診が、2025年度には母親学級が外部委託されたことは重大です。健康福祉センターの保健師を総動員して感染症対策に当たった経験を踏まえれば、事業を縮小するのではなく、保健師による業務を拡大することこそ必要です。

 2024年4月から障害サービス窓口の集約化が行われました。志村・赤塚地域では障害者生活支援係が福祉事務所から健康福祉センターに移されたうえ、一部の手続きについては本庁舎に行かなければならず障害者の窓口相談が後退しました。さらに、集約化を受けて、障害サービス課において、新たな委託化が検討されていることは問題です。障害者の窓口業務も含め、窓口業務の集約化、委託化は進めるべきではありません。

 ケースワーカーには、病欠による欠員への対応や経験年数などにより、法定の80件を超える120件を超えるケースを担当している職員も少なくありません。ケースワーカーは容易に代替できないことがわかっていながら体制を補強していないことは問題です。2024年度は、時間外勤務が年間360時間を超える職員が111人と昨年度比13人増となりました。20名以内とする区の目標とあまりに乖離があります。時間外勤務が常態化している職場には正規職員を増員すべきです。反対する第4の理由は、住民合意がないままに大規模再開発が優先され、基金積み立てに固執してきたからです。

 高島平のまちづくりでは、地区計画素案・原案の発表以降、住民から「見直し」の声が上がっているにも関わらず、一度も立ち止まることなく、住民に背を向け続けました。住民不在のまま高島平まちづくり推進経費は「実行期に伴う経費増」として1億円を超える委託費を執行しましたが、住民合意を図る努力も見られませんでした。

 板橋駅西口駅前広場計画では、2024年度、3回にわたってワークショップが行われましたが駅前広場へ進入する車道が1路線に減ることの説明はなく、住民から大きな反対の声が上がることになりました。

 東武東上線連続立体化事業と大山駅前広場事業は、ともに事業認可から4年が経過しますが、用地取得は連続立体化事業で鉄道付属街路の1件のみ、駅前広場で15%と住民合意には程遠い実態です。しかも、連続立体化事業経費は、都の事業に支出する区の負担金で約8700万円の執行残ですが、その金額は、内訳も示されず、区が減額の理由も内容も都に対して説明すら求めていないことは怠慢です。

 2024年度だけで133億円も基金総額に積み立てたことは異常です。コロナの時に行った年度途中に契約差金などを試算して活用することもせず、基金総額は1431億円と過去最高額です。基金積み上げ最優先の財政運営と言わざるを得ません。

 区は、持続可能と言い続けていますが、区民の暮らしは長引く物価高騰で破綻寸前です。思い切った財政支援を行う区政運営へ転換すべきと指摘して私の討論を終わります。

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