陳情第127号「夜勤規制と大幅増員で、安全・安心の医療・介護の実現を求める意見書提出を求める陳情」および、陳情第128号「安全・安心の医療・介護提供体制を守るため、すべてのケア労働者の処遇改善につなげる報酬10%以上の引き上げを求める意見書提出を求める陳情」に賛成する討論

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第127号「夜勤規制と大幅増員で、安全・安心の医療・介護の実現を求める意見書提出を求める陳情」および、陳情第128号「安全・安心の医療・介護提供体制を守るため、すべてのケア労働者の処遇改善につなげる報酬10%以上の引き上げを求める意見書提出を求める陳情」について、委員会決定不採択に反対し、陳情に賛成する立場から討論を行います。

 陳情第127号は、医師・看護師・介護職員などの、大幅増員と大幅賃上げを求め、さらに、「夜勤交替制労働」に関わる労働環境を抜本的に改善することを求めるものです。また、陳情第128号は、医療・介護などすべてのケア労働者の賃上げと人員増につなげるために、26年度の診療報酬を改定すること、及び1年前倒しで介護・障害福祉の報酬改定を各10%以上実施し、当面、25年度中に全額公費で賃上げ支援を行うことを求める意見書の提出を求めるものです。

 賛成する第一の理由は、医療・介護などケア労働者の労働実態が過酷であり、また低賃金であることから、人手不足が常態化しているからです。

 日本では、2日分の勤務をインターバルなしで一気に働く連続16時間を超える夜勤が半数の病院で行われています。これはILO看護条約・勧告などの「1日の労働時間8時間以内」「時間外含めても12時間以内」「勤務間インターバル12時間」という基準に反します。日本医療労働組合連合会・医労連の調査では、看護現場では5人に1人が16時間を超える夜勤をしている、介護施設では約9割の事業所で16時間前後の夜勤が常態化しているという結果が出ています。人員体制が確保できないことが根本原因です。日本の1病床当たりの看護師数は先進国で最低レベルです。1病床当たり、ドイツは1,6人、アメリカは4,1人、に比べて、日本は0,9人です。人手不足は解消するどころか、看護も介護も離職者が増え、入職者が減り続けるという深刻な事態です。

 しかも、2025年春闘の結果は、医療機関や介護施設での賃上げは平均2.07%(5,772円)にとどまり、民間主要企業の賃上げ率5,52%(18,629円)の3分の1、年間賞与は民間企業の2分の1という状況です。

 医労連が、全国の3万人以上の看護師を対象に行った調査では、看護職員の4分の3が辞めたいという気持ちを持っており、その理由は「人手不足で仕事がきつい」「賃金が安い」という悲鳴です。それでも患者さんのためにと頑張る医療現場の環境改善、賃上げなしに、安心・安全の医療は確保できないと考えます。

 賛成する第二の理由は、病院経営者側からも、医療崩壊の危機への対処を求める声が上がっているからです。区内の医療機関から、赤字経営が常態化しており支援を求める請願が板橋区議会2025年第1回定例会にも提出され、区内の実態が明らかにされました。また、東京都の独自調査でも、都内7割の医療機関が医業赤字となっていることが明らかになり、都知事が11月に、次期の診療報酬改定等に関して緊急提言を厚生労働大臣に対して行っています。同時に厚労省の全国調査でも7割の医療機関が赤字という結果が出されており、物価や人件費の高騰に見合う診療報酬引き上げは、避けて通れないものになっていると考えます。

 賛成する第三の理由は、医療・介護の現場を疲弊させ、安全・安心の医療・介護を危うくしているのは、政府の医療費抑制政策・社会保障費削減政策に最大の原因があり、国に対して、自治体から意見をあげていくことが必要だと考えるからです。

 陳情に反対する委員は、国において議論が行われており、新たな経済対策とR7年度の補正予算が閣議決定され、医療や介護職の労働環境の改善が盛り込まれていることなどを反対理由としています。国の経済対策とそれを裏付ける補正予算が、昨日衆議院を通過しました。18兆円にも上る最大規模の補正予算は財源の6割を国債に頼りながら、暮らしを守る柱が据えられず、防衛費のGDP比2%を2年前倒しで実施するなど、禁じ手ともいえる補正予算になっています。医療・介護については、合わせて1兆4千億円という大きな規模になっていますが、その中身を見ると、医療では1病床8.4万円の賃上げ分や、介護では1万円の賃上げが書き込まれていますが、詳細はまだよくわかりません。一方で11万床のベッド削減を3,490億円の予算で後押し、人手不足はICT活用などの内容です。日本医師会は、補正予算は「あくまで補正的措置」であり、「大量出血の状態にある医療機関に対し、まずは一時的に止血するもの」「大切なことは出血を止めた上で、令和8年度診療報酬改定で根治治療を行うこと」との見解を公表しています。

 政府による構造改革路線は、長期にわたって、さまざまな形で医療費抑制をすすめてきました。その結果として、病院経営が困難になり、大病院や医師会までもが経営赤字の悲鳴の声を上げる事態になっているのではないでしょうか。医療費抑制の構造自体を変えなければならないと考えます。

 また、委員会で、反対理由として、「人員基準や夜勤規制を一律に行うことは現場に混乱を招く」「報酬を10%以上一律にあげることは、事業規模の大小によって不公平を招く」との意見がありました。個別の事業にそれぞれに見合った対応をしていくことは大事なことと考えますが、陳情者が求めているのは、最低水準を引き上げていくという趣旨だと考えます。

 最後に、板橋区は、他の自治体に比べて、医療機関が多い自治体です。区民のみなさんが板橋区に住みたい、住み続けたいと思う理由や、板橋区の魅力に上げるのは、まさにその点です。板橋区にとって、区内の医療機関は、区民の医療や介護の安心だけでなく、地域経済にとっても、大きな役割を果たしています。区内の医療機関や介護事業所などの実態や医療・介護労働者の実態をつかみ、意見を言っていく特別に大きな役割があると考えます。区民の命の安全と安心を守るために、医療・介護・障害福祉などで働く労働者の労働条件の改善と賃金引き上げを板橋区からも大いに意見をあげていこうではありませんか。

 以上をもちまして、陳情第127号及び第128号に賛成する私の討論を終わります。

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