「東京都板橋区立住宅条例を廃止する条例」および「東京都板橋区高齢者住宅条例の一部を改正する条例」に反対する討論

討論日:2020年10月13日

只今より、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第72号東京都板橋区立住宅条例を廃止する条例、および議案第73号東京都板橋区高齢者住宅条例の一部を改正する条例に対し、反対する立場で討論を行います。

議案第72号は中丸町の区立住宅を廃止するものであり、これをもって区立住宅のすべてが廃止されてしまいます。

区立住宅はバブル期の住宅価格高騰を受けて、中堅所得者層ファミリー向けに民間の優良住宅を区が借り上げて提供するもので、優良な住宅の提供に努めてきたものです。入居者には収入に応じて家賃の減額制度があり、礼金や更新料、仲介手数料が不要という利点があり、経済的に潤沢ではない中堅所得者層を板橋区に定着してもらうことも狙いの一つとされました。しかしその家賃が15万円超と高額であり、募集に対して応募が少ない実態もありました。

区は、条例が住宅の借上げ期間を20年としており、この借り上げ期間が満了したこと、また住宅ストックが量的に充足したことを区立住宅廃止の理由としています。

本議案に反対する第一の理由は、区立住宅の役割は終わっていないということです。

従来の中堅所得者層と言われる所得階層は減少し、子育て世代においても低所得者層と言われる人達が増えています。バブル崩壊後には就労条件が悪化し、正規で働くことができず非正規で働かざるを得ない状況が続きました。現在では労働者の4割近くが非正規労働となっており、その結果、低所得者層の割合は増えています。

そうした中、公営住宅の申し込み倍率は、都営では最大で200倍以上、区営では9.6倍と高い状況が続く一方で、区立住宅は空き家が多くなっていました。これは、区の住宅政策が経済状況を反映せず噛み合っていなかったことのあらわれです。

住民が求めているのは、生活収入に見合った家賃の住宅です。近傍同種を理由に、バブル期から所得が大幅に下がってきた状況に応じた区立住宅の家賃設定を行ってこなかった区の姿勢こそ問題です。

本来ならば、区立住宅の利用率低下をもって区立住宅を廃止するのではなく、民間住宅よりも安価な家賃設定にして、住みやすい住宅を提供することこそ行うべきです。

反対する第二の理由は、若年層への支援が途切れてしまうことです。

区立住宅を廃止することにより、区の新婚・子育て支援対策も終了し、代替策も示されていません。新婚子育て支援対策事業はこの6年間で59世帯が利用していますが、支援終了後には22世帯が区外転居しています。区基本計画2025が若年層の定住化をうたっていることからも、区立住宅が若年層への支援としての役割を果たすべきです。

区はその人口ビジョンで2035年頃をピークに人口が減少に転じると言っています。高齢化率も2040年前後には40%程度になると予想しています。区として人口減少を防ぎ、年齢構成のバランスを取るためにも、若年層世帯の取り組みをする必要があるのではないでしょうか。

議案第73号は、中丸町けやき苑を、契約期間満了を理由に廃止するもので、区立高齢者住宅の廃止はこれが初めてのものとなります。

区立高齢者住宅は、住宅に困っているお年寄りが、安心して生活できるよう配慮された民間住宅を区が借り上げて提供しているもので、区営住宅と比べても手すりやエレベーター、生活協力員や生活援助員の配置が行われています。

反対する第一の理由は、高齢者住宅への需要がまだまだ高いことです。

区立高齢者住宅の申込み倍率はH27年度で23.4倍、H28年度で21.3倍、H29年度で16.2倍と下降傾向を示してはいますが、倍率は高く、需要に対して供給が十分とは言えません。まして板橋区は今後高齢者人口が増え、将来的には40%に迫る高齢化率になると予想されており、高齢者が暮らしやすい住宅への需要が増えることは明らかです。その需要に応えるには、区営住宅への統合ではなく、高齢者住宅の総量を増やす方針を持つべきです。

反対する第二の理由は、区営住宅では高齢者住宅の代替にはならないことです。

区は中丸町けやき苑の住人を、区営小茂根一丁目住宅に受け入れるとしています。しかし、高齢者住宅で実施されていた介護事業者等による生活援助員や生活協力員といった施策が、区営小茂根一丁目住宅では、その費用の一部が共益費に上乗せするとされています。その結果、中丸町けやき苑で3000円だった共益費がおよそ7000円に跳ね上がる大幅な負担増となっています。代替と言うならば、けやき苑と同等の介護事業者等による支援が保証されるべきだし、共益費も従来と同額とするべきではないでしょうか。これではとても代替とは言えません。

そもそも条例の目的である住宅に困っているお年寄りが、減少するどころか、このコロナ禍を受けて更に増えることが想定されること、将来的に区内人口の高齢化率が大きく高まることが予想されている中で、区立高齢者住宅を拡充することこそ行うべきではないでしょうか。

区は「住まいの未来ビジョン2025」において、子育て世帯・高齢者が住んでみたいと感じる住環境の形成をテーマに掲げ、住環境の整備や支援の充実に取り組むとしています。しかし低廉な家賃を求める声や、高齢者にとって安心して住み続けられる住宅への願いに応える施策は、貧弱だと言わざるを得ません。あらゆる世代が住みたくなる板橋区にするためには、住宅政策の抜本的な見直しが必要です。

以上の理由から、議案第72号および議案第73号に反対し、討論といたします。

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