「板橋区都市づくり推進条例」に反対する討論

討論日:2020年10月13日

 日本共産党板橋区議会議員団を代表して、「議案第77号 板橋区都市づくり推進条例」に反対する立場で討論を行います。

 本条例は、板橋区の都市づくりビジョンを実現するための、区民等の都市づくりへの参画手続きと大規模土地取引行為等への区の関与について必要な事項を定めるためのものです。

住民本位のまちづくりをすすめるために、区民が参画する仕組みを作ることや、大規模土地取引に区が関与できる仕組みをつくることは必要であり重要であると考えます。パブリックコメントには11人の方から67件の意見が寄せられており、区民のみなさんの関心の高さがうかがえます。しかし、パブリックコメントに寄せられた意見で、「条例案の概要だけでは漠として要領を得ない」「条例案そのものに対しても区民の意見を述べて、行政と話し合う機会を設けてほしい」「パブリックコメントを募集する前に住民説明会を開催して欲しい」などの声にあらわれているように、区民の中にあるたくさんの期待や疑問などに十分こたえる機会をつくることが必要だったと考えます。自らが暮らす町に関わる、区民の権利や責務についての重要な条例ですから、内部の検討にとどめず、十分に専門家や区民を含めた検討が行われるべきであったということを、まず冒頭に申し上げます。

 その上で、反対する第一の理由について述べます。まず、目的、定義及び基本理念において、まちづくりに参画する主体としての区民の位置づけが明確にされていないことです。

条例案では、第4条で「区民等は、都市づくりの基本理念を理解し、その実現に向けて区に協力するよう努めなければならない」とされています。区民は、区がすすめる都市づくりの事業に協力をする役割をもつ存在として位置付けられています。

他区の条例などをみると、例えば世田谷区では「区民は・・自己に関するまちづくりに参加する権利と責任を有する」など、明確に主権者としての区民が位置付けられています。今回の条例案に示された「役割論」は、意見の違う区民や弱い立場の人を排除し、分断することにつながりかねないものです。区民が、自らが生活する地域の問題に主権者として参画していくという視点を明記すべきです。

反対する第二の理由は、この条例案では、土地所有者や開発業者が、優位に立ったまちづくりがすすめられることになりかねないという点です。

条例案では、区民等の発意による都市づくりの手続きとして、「届け出まちづくり協議会」「登録まちづくり協議会」「承認まちづくり協議会」の3つの協議会の設立と要件などが規定されています。

「届け出まちづくり協議会」は、構成員が活動区域内の5人以上の土地所有者等であることが条件となっています。「土地所有者等」とは「土地所有者と借地権者」とのことで、借家人は入っていないとのことです。都市計画法上、借家人は都市計画やまちづくりに参加する権利は限定されたものになっています。しかし、居住している人、賃貸住宅に住んでいる人にもまちづくりに参加する権利を明確にできるかどうかは、条例が誰のためのものかを見極める要になるのではないでしょうか。この条例案は、地主や不動産会社などにとって有利に働き、居住者にとっては弱いものになっていると言わざるをえません。

また、開発業者が土地所有者となることも十分想定されることが委員会質疑でも明らかになりました。大山のクロスポイント開発で大手不動産会社が、地権者として大きな役割を果たしていることを目の当たりにしているもとでは、こうした大山のような開発が「住民発意」の大義をもって、他の地域でも進められることが十分に想定されます。

また「登録まちづくり協議会」は、「活動区域の面積が5000㎡以上」となっています。これも居住者の発想からは遠いものと考えます。板橋駅板橋口開発や浮間舟渡の開発は5000㎡に満たないものですが、行政がすすめるならば合法です。しかし、区民発意のまちづくりでは、5000㎡以上という大きなものしか認めないというのはおかしいです。「区民発意」をうたうのであれば、区民目線で地域からの発想、居住者の発想で、中小規模の地域でのまちづくり計画も対象にすべきです。

反対する第三の理由は、開発事業者と区民との関係を調整する区の役割が明記されていないことです。

条例案では、区の役割を、計画立案、推進、情報提供、国や都への協力要請等としています。しかし、区に求められるのは、まちづくりに必要不可欠な、利害関係が対立する関係者間の調整機能ではないでしょうか。紛争予防条例があっても、「違法なことはしていない」と建築業者が住民に強硬な態度を取ることが区内で度々起きています。紛争予防条例に、計画変更を含めた住民との十分な協議や、合意事項の文書での確認を明記するなどの改正が求められていますが、せめて、今回の条例案に区の事業者と区民の間の調整機能の重要性を明記すべきだったと考えます。また、大規模建築物による近隣環境や公共的な需要におよぼす影響などについて区の関与を一層強化するためにも、大規模建築物指導要綱の改正も求められています。マンションが急増する江東区では、世帯用住戸30戸以上のマンションに、29戸を超えた戸数について1戸たり125万円の公共施設整備協力金を事業者に求め、駐車場の台数の十分な確保と電気自動車用の充電設備を備えることを求めるなどの条例が作られていますが、板橋区においても、こうした区の役割を積極的に果たしていくことが求められていると考えます。

 反対する第四の理由は、本条例が、大手不動産会社等による再開発事業を区内に呼び込む呼び水の役割を果たすことになりかねないと考えるからです。

条例案の第7条には「地域価値向上活動の促進」がうたわれ、必要な方策は規則で定めるとしています。区は都市再生特措法に基づく「都市再生推進法人」によるまちづくりの誘導を想定しているようですが、その内容は明確になっていません。

都市再生特措法によって、大企業、大手不動産会社やデベロッパーは、容積緩和や税の優遇を受けながら全国で大規模な再開発を展開しています。委員会の答弁でも、国や東京都の規模ではなく、板橋区ですすめる中小規模のものでも対応できるようにすることが必要という主旨の答弁がありました。板橋区内に再開発をさらに拡大していく呼び水になりかねないということを危惧します。「地域価値向上」などという、抽象的な文言を条例に書き込む必要はないと考えます。

 また、推進地区の指定について、他区では、議会の議決を必要としている区や、説明会の開催を明記している区もあります。板橋区はすでに「都市づくりビジョン」で決めていることなので必要ないとしていますが、「都市づくりビジョン」は議決をしているものではありません。推進していく各段階でも住民参加の視点は貫かれるべきです。その点でも、今回の条例案では、住民参加の視点が弱いと言わざるを得ません。

 板橋区は、今現在、大山駅前や板橋駅前、上板橋南口で再開発事業を進めています。また高島平のまちづくりも今後大きな事業になっていきます。そうした時に、必要なことは、大手企業の利益を守るための条例ではなく、住民の住まいの権利を守るための条例であることを申し添えて、私の討論を終わります。

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