陳情第167号 陽性者の「自宅療養」をやめ、国の公的責任で臨時病院の病床増で入院治療を求める意見書提出についての陳情の賛成討論

討論日:2021年10月12日

 ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して 陳情第167号 陽性者の「自宅療養」をやめ、国の公的責任で臨時病院の病床増で入院治療を求める意見書提出についての陳情に対する委員会決定「不採択」に対し、「採択」を求めて討論を行います。

  本陳情は、新型コロナウイルス感染が急拡大する中、自宅療養ではなく公的責任のもとで臨時病院の病床増での入院治療などの対策強化を意見書として国にあげることを求めるものです。

 その内容に「臨時病院の設置」「医療従事者の人材確保」「検査の徹底」など、3点について意見書に入れることを求めています。

 賛成する第一の理由は、自宅療養ではなく、臨時病院の設置など、必要な医療体制を整備し、軽症者・無症状者も含めて入院治療を図るべきだからです。ようやく第5波が収まってきましたが、一時は医療現場や保健所に危機的な状況をもたらし、その上政府は国民へ「自宅療養」というコロナ対策に自己責任を押し付けました。現在の日本の政治のあり様を浮き彫りにしました。
 感染症に詳しい、けいゆう病院(横浜市)の菅谷(すがや)憲夫(のりお)医師は「現在のワクチンは接種から半年ほどたつと感染予防効果が弱まる。接種が早期に始まった英国や米国では感染者が激減したが、行動制限の緩和もあり、急激なリバウンドが起きている。接種時期から考えると、日本では12月ごろに第6波が始まり、来年1~2月にピークを迎える恐れがある」と警鐘を鳴らしています。さらに、この冬は昨年の冬に流行しなかったインフルエンザに対しても「免疫がない人が多く、重症化しやすい高齢者や子どもは特に危険である」と言われています。こうしたことを想定するならば、医療機関の体制強化は待ったなしで求められています。

 陳情に反対した委員から「無症状者までの入院は現実味がない」という意見が出されていました。しかし、この間感染を広げている要因のひとつが、無症状者の感染拡大だと指摘されています。また当初、『原則自宅療養』の方針が押し付けられるもとで自宅療養中に体調が急変し、コロナの在宅死が8月だけで250人にのぼり、まさしく人災と指摘されました。医療崩壊を二度と起こさないための政治の対応が不可欠です。

 区長も、症状の程度にかかわらず、できるだけ入院療法、入院治療もしくは宿泊療養を勧めており、自宅療養は難しさがあると述べており、自宅療養を是とはしていません。

 第二の理由は、医療従事者の確保については、国の政策でしっかり確保すべきだからです。

 日本の医師数は人口1000人当たり2・4人、OECD(経済協力開発機構)加盟36カ国中32位、加盟国の平均(人口1000人当たり3・4人)に対し、14万人少ない水準です。これは、医師や看護師など医療従事者を、自公政権が増やしてこなかったからです。さらに病院の数は、一番多かった1990年から1796も減りました。感染症病床は、一般病床とは区分され、病室の空気が外部に漏れないようにする空調構造を備えた陰圧隔離病床でなくてはなりませんが、その数は、1996年に9716床あったものが、2019年には1758床へと激減しています。そのため、圧倒的に病床が不足しているために指定医療機関ではない、感染症の施設整備のない医療機関でも、コロナ感染症患者の入院、治療を受け入れざるを得ない状況をもたらしてきました。だからこそ今、医師と看護師の育成、人材確保、そして感染症患者のための医療施設の増設が必要なのです。

 8月23日には、区長会は都知事に対して「新型コロナウイルス感染症に関する緊急要望」を提出し、あらためて医療体制などの強化を求めています。議会としても求めるべきと考えます。

 第三の理由は、感染者が減っている今だからこそ、第6波に向け、社会的検査を徹底し、可能な限り検査の強化により感染者を把握し、そのうえで必要な手立てを実施することが不可欠だと考えるからです。

 現在、ワクチン接種が進んだことで無症状の陽性者が増加し、市中感染を防ぐ上でも検査の拡大が必要であることが、全国の医師会等、関係者から指摘されています。

 最後に、コロナなどの感染症対策には抜本的に感染症関連の予算の大幅増額が必要と考えます。「平時の感染症関連予算」は、米国5300億円、中国2600億円、イギリス283億円に対し、日本はわずか74億円と、アメリカの72分の1、中国の35分の1にすぎません。平時から感染症対応の基盤を強化し、流行時には緊急対応・臨時的な増強をするため、予算の大幅増額こそすべきであることも申し添えておきたいと思います。

 以上、述べてきましたように、公的な責任の下、なによりも一人一人の命を守る医療体制の強化の実施を行えるよう、本陳情の採択を強く求めて討論を終わります。

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