討論日:2022年6月21日
ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、「陳情第211号 都立高校入試への英語スピーキングテスト導入に関する陳情」および「陳情第213号 都立高入試への英語スピーキングテスト導入に関する陳情」に賛成する討論を行います。
東京都教育委員会は、株式会社ベネッセコーポレーションと協定を結び、2023年春の都立高校入試から民間資格・検定試験を活用した「中学校英語スピーキングテスト」を導入するとしています。申し込みは来月7月7日から始まり、実施は11月27日です。
本テストを入試に活用することについて、保護者や関係者から多くの懸念が示されており、本陳情では板橋区教育委員会が都教育委員会に対しテスト導入の見送りを求めること、本テストを幅広く周知することを求めています。
陳情に賛成する第一の理由は、本テストは入試に活用されるにも関わらず、公平性の担保がなく、実施は見送るべきと考えるからです。
区教育委員会は、都教育委員会から「あくまでも入試に影響、という説明はうけていない。スピーキングテストの目的は、ふだんの授業力の向上と授業改善、そしてテストの結果を子どもたちが受けとって、英語力がどのくらい身に付いたかを知り、今後の自分が英語力を向上させる意欲につなげていくこと」と説明されている、と言っています。本テストは都立高校入試の際に20点加点されます。なぜ都立高入試に加点されるのに、入試に影響がないという説明に納得できるのか、理解に苦しみます。
また教育格差という点でも問題です。陳情に反対する委員からは「英会話学校や学習塾に通える子どもが有利で、経済的に通えない生徒と一定の差が生じるのは事実だが、経済力による教育格差で今回の導入を見送るのは論理の飛躍である」という意見も出されました。コロナ禍で家庭の経済力には大きな格差がうまれています。公教育は、その格差を広げてはならないのです。
加えて、本テストの採点者が、ベネッセの家庭用学習教材・進研ゼミや、ベネッセの英語テストの採点者と同一人物であった場合、入試の公平性・中立性は大きく損なわれることも指摘されています。しかし区は、こうした問題点について都教育委員会の説明をうのみにし、積極的に明らかにしようとしていません。公教育の根幹を揺るがしかねないテストの導入に対し、きちんと都教育委員会に意見を述べるべきです。
陳情に賛成する第二の理由は、幅広い周知は全く行われていないからです。委員会質疑のなかで、本テストが中学校3年生以外にはほとんど知られていないこと、また区教育委員会としての周知も図っていないことがわかりました。入試に加点されることは、子どもの人生に大きく影響します。にも関わらず、周知でさえも都教育委員会任せで甚だ不十分な対応と言わざるを得ません。
陳情に賛成する第三の理由は、このスピーキングテストを受けても、英語の会話力は身につかないからです。本陳情に反対した委員からは、「英語のスピーキング能力が低いと言われる日本において、スピーキングテストの導入によって、英語全般の能力の向上にもつながる」、「経済的な格差が機会の差をうまないためにも、公立中学校で実践的な使える英語を身につける機会を与えていただきたい」と意見が出されましたが、日常の授業では特段の変更がなく、会話力のレベルアップを保障する体制が新たに作られるわけではありません。ただテストの導入と、そのテスト対策が授業で行われるだけです。日本の子どもたちの英語力で課題といわれている実践的な会話が身につくものではないことは、すでに専門家から多くの指摘がでています。
陳情の審査を通じて改め感じるのは、都教育委員会も区教育委員会も子どもたちへの影響を真剣に考えているのか、ということです。都教育委員会は学校現場の状況を踏まえず一方的に導入を強行しようとし、区教育委員会は「都がやることだから」と意見も述べていません。本当に日本の子どもたちのスピーキングの力をつけようとしているとは、到底思えません。
会話力を向上させるには、なんといっても少人数の授業です。体験を重ねることが重要だからです。世界には多様な英語があり、それぞれの母語による訛りがあること、ひとつの事象を伝えるのにたくさんの言い回しがあることを実感できる学習にするためには、少人数での授業展開こそ必要です。小学校では、国において5年かけて35人学級にすることが決まっていますが、中学校では少人数学級を進める計画さえもありません。
都教育委員会に対し、区教育委員会としてスピーキングテスト導入を見送るよう求めるべきです。以上で私の討論を終わります。