議案第74号 東京都板橋区立特別養護老人ホーム条例を廃止する条例及び、議案第78号・79号の「建物の無償譲渡及び土地の減額貸付について」に反対する討論

討論日:2022/10/11

 ただいまから日本共産党板橋区議団を代表し、議案第74号 東京都板橋区立特別養護老人ホーム条例を廃止する条例及び、議案第78号・79号の「建物の無償譲渡及び土地の減額貸付について」に反対し討論を行います。


 本議案は2023年度から区内2か所しかない区立特別養護老人ホームみどりの苑といずみの苑の両施設を廃止し、民営化するものです。併せて、民営化後の施設を引き受ける民間事業者へ両施設の建物を無償譲渡し、土地は50年の定期借地権による貸し出しを行い、賃貸料を減額するものです。

 

 反対する第一の理由は、区の関与が遠ざかり、公的責任が大きく後退するからです。

 区立特養ホームは、利用者の平均介護度が4.2と高く、民間施設の平均介護度3.9と比較しても要介護4・5の方や身寄りのない人を受け入れるなど区立としての役割を果たしてきました。このことについて、区は「他の施設と同様に配慮を継続していただきたい」とお願いするだけです。

 また、区の承認が必要だった利用料金の日常生活費など保険外負担は、「自己負担額が増えないよう努力する」とされ、区として協議することもできません。災害時には、区の指示に基づく対応が義務付けされていましたが、今後は、区がお願いするにすぎません。区内経済への貢献として位置づけられた「区内事業者の活用」「区内在住者の雇用」「障害者雇用」の努力規定も、事業者の公募要件や諸条件には一言も触れられておらず、委員会質疑では、「これからお願いする」というものです。

 民営化によって、区の関与がなくなり、これまで守ってきた公的責任が大幅に後退することは明らかです。

 反対する第二の理由は、民営化によるコストの削減は、サービス低下につながるからです。

 区は、民営化の効果として「5年の指定期間から、期間を限定せずに継続したサービスが提供できる」といいますが、そもそも5年というのは区自身が指定管理者制度導入時に「競争性の担保」を売りにしてきたのではありませんか。

 しかも、すでに選定された事業者は、「いずみの苑」は現事業者が継続するものの、「みどりの苑」は、事業者の変更が生じます。議案可決後の約半年間で民間から民間への引継ぎです。民営化によって区が言う「サービスの継続」を断ち切る結果を招く責任は重大です。

 結果として、区が言う民営化の効果は「経費の抑制」だけです。両施設は、区が設計して建てたものです。老朽化が著しく、維持管理に巨額の経費が必要です。区が削減できるとする効果額は、施設の維持、土地の貸付料など2か所の合計を、年間約5,500万円から6,000万円と見込んでいます。それは、建物改修費用を最低かかる費用で見込んだもので、膨らむことも十分見込まれます。区は効果額といいますが、その額が毎年、民間事業者の新たな負担になるのです。今でさえ、コロナや物価高騰の影響を受けて、介護施設の運営は厳しい状態に置かれ、利益を出すことなど考えられない実態です。新たな負担が生じれば、人の配置や入所者への影響をもたらすことが懸念されます。区がコスト削減を見込んだ以上に、区民や利用者へのサービス低下を招きかねません。

 反対する第三の理由は、特養ホーム待機者がいるにもかかわらず、特養ホームの入所定員を減らしかねないからです。

 民営化の公募要件では、民営化後5年経過したら区と協議した上で利用定員を変更してもよいという規定です。健康福祉委員会で、待機者が減少していなくても「事業者の経営判断や建物の状況」で定員を減らすことに「了承することがありうる」と答えています。

 しかも、50年の定期借地といいながら、民営化後15年後は、土地の貸し付けを解除し、特養ホームそのものを廃止してもいいというものです。区は、15年後は高齢者の人口減に転じることを理由にしていますが、それは、団塊の世代が88歳から90歳という時期であり、むしろ介護の必要性も上がり、施設の必要量が増加することも十分考えられます。

 同時に、30年後には建て替えを余儀なくされるにもかかわらず、その20年後には定期借地権の解除で、更地で区に返すことが条件です。解体費用は使用期間で按分されることを含めれば、施設維持の限界は見えています。むしろ特養ホームの廃止を早める結果になりかねません。

 現在、特養ホームの待機者は、未だ1,024人です。在宅介護を行っている家族からは、悲痛な声が上がり続けています。今後、待機者がいても特養ホームの施設廃止につながる民営化を行うべきではありません。

 最後に、現在の待機者の約8割が非課税世帯の低所得者です。ユニット型個室や従来型個室の居室料が高いからです。中には、空きが生じても料金が高くて、特養ホームへの入所を諦めた人も生まれています。経済的な理由で入所を諦めることがないよう区としての補助対策も行わず、民営化を進めている場合ではありません。

 重ねて、区立特別養護老人ホーム廃止と民営化に反対し、討論を終わります。

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