2021年度決算に反対する討論

討論日:2022年10月28日

 ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して、報告第一号「2021年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算」、報告第2号「同国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」、報告第3号「同介護保険事業特別会計歳入歳出決算」、報告第4号「同後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算」、報告第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計歳入歳出決算」に対する委員会における「認定」に反対し、討論を行います。

 

 2021年度一般会計決算は、実質収支125億3231万円で黒字でした。

当初、区は予算編成において、地方法人課税の税制改正、特別区交付金のさらなる減収、新型コロナ感染症拡大の影響による財源不足を理由に、「緊急財政対策」を実施しました。

 その新型コロナ感染拡大は、変異株が猛威を振るいだし、緊急事態宣言は第4波から第5波まで発令され、年明けからの第6波はまん延防止等重点措置が出され、飲食店はほぼ一年中休業、時短が余儀なくされ、区のイベントも花火、区民まつりを筆頭に多くの行事・講演、講座が中止となりました。緊急財政対策は結局、一般会計だけでも94億円の基金が新たに積み立てられ、一般会計の基金残高は839億円となりました。

 コロナ対策等で10次にわたる補正予算が組まれましたが一方、歳出面ではシーリングの実施のほか、補助負担金の見直し、実施計画事業の見直し等で歳出抑制が行われました。

 反対する第一の理由は、区の財政運営が再開発事業と基金積み立てが優先され、区民のくらしに寄り添っていないからです。

 2021年度に実施した「緊急財政対策」では合計183億8988万円の対策が行われました。しかし結局3月補正時には基金積立額は特別会計、運用基金を合わせ、総額969億円以上の基金残高となりました。過去最高額です。

 区は緊急財政対策として10%シーリングを強行し、その効果額は補助負担金も含めて17億円でした。

 まだ洋式化されいない公園のトイレは現時点でもまだ82か所あります。遅れに遅れている実態を放置して、なぜ公園のトイレ改築にシーリングをかけなければならなかったのでしょうか。また、老人クラブの清掃や障害者団体への補助金も削られました。補助金が来なくても、老人クラブのみなさんは町の清掃に汗をかいてくださっています。高齢者、障害者に対する補助金はシーリング対象にすべきではありません。その一方で、まちづくりにかかわる補助負担金は見直しの除外対象になっており、聖域です。緊急事態にこうしたハードな開発こそシーリング対象見直し対象とすべきです。

 さらに、その再開発事業に関する住民への説明会はコロナを理由に中止や、ポスト投函ですませるという、地域住民の意見を聴かずに強行し続けています。改めて見直しを強く求めておきます。

 教育の分野でも10%シーリングが実施され、各学校に配分される令達予算が削減されました。決算では執行残はあるものの、決して『足りた』というものではありません。前年に比べて小中ともに1校約100万円も削られています。令達予算が削減されれば、学校の備品購入や補修、しいては子どもたちの教育を受ける権利にも影響を及ぼします。シーリングという手法を教育の現場に用いるべきではありません。

 反対する第二の理由は、災害級ともいえる緊急事態に、一番対策が求められる子ども、障害者、高齢者など、社会的弱者や地域経済の要である区内中小業者への支援策が十分実施されなかったということです。

 区民の暮らしはコロナ禍のもと、どのようになっているのでしょうか。

 コロナ禍で立ち行かなくなった区内中小業者、区民は、生きていくために政府推奨の社会福祉協議会が実施した特例貸付事業をたよりにしました。令和3年度の貸付件数は、緊急小口が2803件、総合支援資金が6751件と、前年度よりは減ったとはいえ、今なお厳しさが続いていることを示しています。しかし、来年の1月からその返済が始まろうとしています。破産宣告が大幅に増えることが危惧されています。

 「住居確保給付金事業」も受給延べ人数2888人と、依然、家賃の支払いが困難な状況が続いています。

 平成26年度4月の生保世帯数は1万4111世帯、令和4年8月の世帯数は1万4406世帯と、全体の世帯数は微増で推移しています。ところが高齢者世帯を見ると、平成26年4月からみると令和4年8月は7310世帯と、1815世帯も増えているのです。逆に母子世帯は大きく減っています。平成26年4月より令和4年8月は652世帯と、375世帯も減っています。高齢者世帯の増の理由は、年金は減る一方、介護や医療の保険料は上がり続け、生活保護を受けなければ暮らしていけないからです。母子世帯の減は、生活保護基準の改定により、たとえば 母親40歳、中学1年生と小学4年生の3人家族でみると、2万4千円以上も基準が引き下げられているのです。生活保護も受けられず、多くの母子世帯の暮らしは逼迫した状況だと考えられます。

 こうした緊急事態の時に区が実施すべき緊急財政対策とは、緊縮財政ではなく、区民の暮らし、営業を支え守る思い切った財政運営の実施こそです。

 保健所の事業ではコロナ感染拡大を理由に、事業の縮小、あるいは中止をした事業が前年度に引き続き見受けられました。コロナ禍において、引きこもりがちになる社会的弱者への施策がどうあるべきなのかが問われています。自殺者が増えていることも気になります。こうした緊急事態における心のケアをどうすれば実施できるのか、あるいは感染対策をとりながらの社会参加をどう保障できるのか、今年度は再開、あるいは少しずつ拡大へと推移していますが、今後再び感染が拡大することを見据え、当事者の意見を把握もし、実施できる事業の在り方など、創意工夫が求められています。

 また、区は独自で「中小企業者事業継続支援金給付事業」を実施しました。「事業収入の減少」に着目した画期的な事業でした。その時の評価や効果を現在に生かすべきです。

 高齢者への支援はどうだったでしょうか。

 コロナ禍の下、介護事業所、介護施設でも例外なくコロナ感染者の拡大が発生しました。利用機関ではないので、できうる感染対策は実施してもクラスターを防ぐことはできませんでした。こうした状況下にあって、事業の縮小、休止、施設の利用縮小などにより、大きな減収が生じました。事業所、施設からは「減収への補填の実施」を求める声に背を向け続けています。介護水準を低下させないためにも、各施設、事業所への財政支援は急務です。

 また、8月からは介護保険制度の改定を受け、高額介護利用料の改定による影響額が5千万円、介護施設に入所している入所者の食費の引き上げなどで1億5千万円もの負担増が生じています。2021年度からは介護保険料も引き上がり、何重にも負担が重なる事態となりました。介護給付費準備基金は2021年度末で約34億円もの残高となっています。保険料の引き下げ、また区独自の利用料の軽減制度の創設など、改善が求められています。

 また、国民健康保険事業、介護保険事業、後期高齢者医療保険事業では、いわゆるコロナ減免が引き続き行われましたが、前年比で収入3割減が前提条件となるため、しだいに軽減を受けられない状況が広がっています。国に対し、改善を求めると同時に、協力金や給付金が収入認定となったがために保険料、税金、医療機関における窓口負担などが大に負担増となっています。社会的弱者が多くを占めるこれら3特別会計において、区として何らかの対策を実施することを強く求めてきます。

 また、国民健康保険料は5.6%の負担増でした。納付金を保険料に反映するのを前年と同じに据え置いたとはいえ、そもそも高すぎる保険料御引き下げる国・東京都・板橋区の取り組みがひるようです。「いのちも金次第」の実態改善が必要です。

 第三の理由は、公的責任の後退です。

 まず保育園管理運営経費のうち、公設民営の運営事業者に支払った委託費の一部3283万5,832円が返還されないという事態が生じました。これは、入園児童が定員に満たなかったために発生したものですが、公設民営園とはいえ「区立園」であり、他の私立園以上に管理監督責任が問われます。ところが、区は保育園の運営に支障をきたすと認識しながら、契約書に基づく指導検査さえ行わず、法人との協議も不十分なまま委託契約を継続してきました。本来であれば、区立園として区の水準を保障する契約に改めるべきであり、そうした見直しもせず漫然と継続してきた区の責任こそ重大です。区内全ての保育施設で、安定した保育が行えるよう、公的責任の拡充・強化を求めておきます。

 区立いこいの家は2021年度をもって廃止となり、2021年度は今後について区民への説明会が行われ、区議会では区民からの陳情が審議されるなど、存続を求める声が続きました。高齢者の地域における活動を支える重要な役割を果たしてきた施設をなくすことは、高齢者の引きこもりにもつながります。長年、地域の、社会の、板橋区の発展のために寄与してきた高齢者に対して、地域における居場所を奪うことは自治体としてあるまじき姿勢です。改めて強く抗議をしておきます。

 また、昨年度は区立特別養護老人ホームの民営化の準備が進められました。その結果、一法人が撤退するなど、水準の後退をもたらす結果となっています。そもそも区は千人以上の特養ホームの待機者問題に向き合あっていません。法制度の改悪のたびに自己負担が増やされ、今では国民年金では特養ホームすら入れなくなりました。公的責任を後退させないため、民営化の中止と独自の負担軽減策を実施すべきです。

 2021年度は「子ども家庭総合支援センター」の整備がすすめられました。合わせて「ひとり親家庭生活実態調査」が実施されましたが、育児支援ヘルパーの利用拡大だけでなく、家事援助など具体的な支援策を実施すべきでした。

 志村小・志村4中の小中一貫型学校(施設一体型)の施設整備方針が策定されました。小中一貫校の設置については、大規模化への懸念や運動場など必要なスペースが確保できない、また災害時の対応など様々な課題が払しょくできず、設置を見送るべきとの意見が少なくありません。こうした意見に耳を傾けず、決めたこととして粛々と進める姿勢は問題です。

 区の住宅施策はどうでしょうか。増やさず、統廃合で強行していこうとしている区の住宅施策は「住まいは人権」から逸脱するもので、許されません。公営住宅を一戸も増やさない、家賃助成もしない姿勢は大きな問題です。

 「生活保護の申請は国民の権利です」。しかし、その生活保護の申請に福祉事務所へ来所する区民に対してハードルとなっているのが「扶養紹介」です。扶養紹介を強制することがないよう、生活保護のしおりの改善も含めて、申請用紙の改善などの対策が必要です。

 第四の理由は、公務労働のあり方が問題だということです。

 コロナ感染拡大の下、特に保健所と生活支援課、そして福祉事務所における職員の配置の強化が求められていました。

 まず福祉事務所は、常時職員を生活支援課へ派遣されており、そもそも足りない人員数のため、さらに過重な負担が生じています。会計年度任用職員が配置されているとはいえ、経験と専門性を兼ねた職員に代われるものではなく、状況改善とはなっていません。部内で解決するために、そもそも足りない福祉事務所から配置するのではなく、当初から、生活支援課にきちんと体制強化を図り、応援なしで業務が実施できるよう改善すべきです。

 また、保健所業務では、昨年度、衛生監視職員が兼務発令で、平均残業時間が年間872.5時間、平均休暇取得日数は年間6日という異常な勤務状態であることが判明しました。過労死ラインも超える状況です。このように部内解決でなんとかしようという対応は限界となっています。抜本的に、専門職含め、職員の配置増を求めておきます。

 戸籍住民課における残業実態も異常でした。午後10時以降の勤務を16名の職員が実施していました。月80時間を超える残業、月45時間を超えて3か月連続で残業している実態など、マイナンバーカードの申請受け付け、出張申請などに土日勤務の職員、振替できない実態、日中の事業終了後の内部の仕事が遅くまでかかるなど常態化していました。勤務の改善が急務です。

 土木サービスセンターは、2021年度からの組織改正で南部・北部の2か所とも、多くの係が入りました。直接雇用の必要性が認められたことは一歩前進ですが、会計年度任用職員ではなく、正規職員を増やすべきです。

 以上、述べてきたように、コロナ禍の中で浮き彫りとなった様々な問題を踏まえ、さらに今、物価高騰も追い打ちをかける状況の下、新年度予算については、区民の命とくらしに寄り添った現金給付事業をはじめ、思い切った予算編成とすることを求めて討論を終わります。

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