ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して、「2022年度東京都板橋区一般会計補正予算第6号」、「同国民健康保険事業特別会計補正予算第1号」、「同介護保険事業特別会計補正予算第2号」、「同後期高齢者医療事業特別会計補正予算第1号」、「同東武東上線連続立体化事業特別会計補正予算第1号」に対する委員会における「認定」に反対し、討論を行います。
今年度はこれまで5回にわたり補正予算を行ってきました。そして、今回の補正予算は、今年度のいわゆる最終補正予算です。一般会計の歳入では特別区税、地方消費税交付金、特別区交付金で95億9965万5千円の増となり、執行残、契約差金等も含めて、基金へ約170億円の積み立てを行いました。結果、今年度末の基金残高は1144億円という過去最高額となりました。
まず、反対する第一の理由は、この補正予算が基金積み立てを優先しているからです。
区は「基金活用方針」に基づいて基金を積み立てているといいますが、そもそも積立優先となっている活用方針自体が問題です。それも1年間で175億円と、積み立て額も過去最高額です。
区は、基金積み立てが大きくなったことについて、想定外の入りがあったので、と言いますが、入りがあろうとなかろうと本来、物価高騰に苦しむ区民の暮らし、地域経済を支えるべく、基金を使って積極的に財政支援をすべきです。
第二の理由は、補正予算の基本的な考え方である、緊急かつ必要性が高い子ども、障害者、高齢者など、社会的弱者及び区内中小業者への支援策が実施されていないということです。
コロナ禍による地域経済への大打撃、さらに円安による資材、燃料、物価高騰は厳しい生活にダメ押しのような影響をもたらしました。年金も賃金も物価高騰に追いつきません。このような状況のもと、自治体による経済支援は何よりも求められた施策 でした。
低所得者対策では、何回か臨時の給付金支給事業が実施されてきました。しかし、物価高騰に追いついていない生活保護基準の引き上げは急務です。いま、フードバンクなどの取り組みでは、予約開始と同時に瞬く間に予約が埋まってしまう状況です。区独自の支援事業を実施するなど、経済的支援が急がれます。また、社協の特例貸付の返済が1月から始まっていますが、約3割が返済免除の申請をしているといいますが、免除の申請について周知を徹底すること、返済が迫られる区民に対し、区独自の経済的支援を行い、生活を支えることが必要です。
子育て世帯に対する就学援助については、対象世帯が減り、減額補正となりました。収入が引き上がったためといいますが、収入は物価高騰に追いついていないのにもかかわらず、就学援助の対象からもはずれることで、いっそう厳しい実態が広がっています。私費負担全体の軽減と併せて、基準そのものに物価高騰を反映させ、収入基準を引き上げるなど、実態に即した改善が求められます。
区内中小業者支援では、コロナ禍における融資の返済が、経済状況が好転しないにもかかわらず、始まっています。現金給付事業など直接支援を行い、地域経済を支える区の役割が必要です。
高齢者に対する施策では、後期高齢者医療特別会計で、昨年の10月からの窓口負担2倍の影響が補正予算にも現れました。影響額ははっきりしないとのことですが、自己負担2倍による医療給付の削減がはっきりと示され、区としての経済的支援の強化が求められます。
介護保険事業では、コロナの影響が前年に引き続き示され、減額補正となりました。また、介護施設整備は今年度も計画通りにできていません。未整備地区への対策も含め、必要な介護を受けられる整備を進めることはまったなしです。同時に保険料や利用料負担の重さに生活ができない、必要な介護を受けることができない状況への支援が急務です。今年度末時点で介護給付費準備基金35億円以上が積み上がっています。この基金の活用で次期保険料はせめて据え置くべきです。
第三の理由は、公的責任が問われる問題に区がきちんと対応していないということです。
区立にりんそう保育園は、運営委託経費過年度戻入として、3283万5千円計上されています。これは主に未充足によって生じた委託費の返還分です。にりんそう保育園では、定員未充足が続き、2020年、21年分も多額の返還金が発生し、指定管理事業者である社福法人から納入されてきました。区は事業者との契約に基づくものとしていますが、そもそも定員の決定権は事業者にはありません。事業者には定員に見合う職員体制を整える義務が求められており、であれば定員に合わせた職員配置については、返還対象とすべきではありません。契約の見直しや協議を行ってこなかった区の責任です。そのうえ、新年度以降区の直営にすることで、看護師の配置はなくなり、子どもたちの楽しみにしている行事は削減、保護者負担は増えるなど、保育水準の低下がもたらされます。さらに、その直営は2年ぽっきりで、その後は民営化へと、子どもたちへの影響は計り知れません。
にりんそうだけでなく、定員未充足の状況が保育園関連経費の減額に表れています。減額が大きくなるばかりで、保育士の処遇改善など、保育内容はほとんど改善されていません。仕組みに問題があることは明らかであり、その是正こそ進めるべきです。
次に、商店街振興組合連合会からの返還金についてです。
国の会計検査院の指摘で、すでに決算の認定が終わった令和2年度実施の臨時福祉給付金事業のうち、未利用の約5千万円が商店街振興組合の収入になっていたことが昨年5月に発覚しました。区と振連のかわした委託契約書には未利用分の返還方法の記述もなく、事業完了の際もその事実を区は認識をしていませんでした。にもかかわらず、区は一括返還以外は受け付けないという自らの責任をかえりみない姿勢を続け、いまだに振連との協議の折り合いがついていません。ところが今回の最終補正に一括返済を前提として返還金額を計上したのです。区は「調定行為」を行ったことを根拠にしていますが、事務的には協議が整うまで「調定行為」を見送る判断もできました。しかも、返還金は丸ごと区がすでに実施した事業の穴埋めとして活用され、国には返還されません。
これまで区内の地域経済をともに力を合わせて支えてきた商店街振興組合連合会との関係性を壊しかねないこうしたやり方は問題です。
次に、自転車駐輪場の指定管理者制度の導入強行です。補正予算では、指定管理者制度導入したために、不要な増額補正ともなりました。利用者にとっても、そこで働いてきたシルバー人材センターの方にとっても、サービス低下、就労先の削減という結果をもたらしています。ただちに指定管理者制度を中止すべきです。
障害者施策では、本来ならば板橋キャンパス跡地活用で、今年度は障害児者と家族から要望の強かった施設が建設される予定でした。ところが資材高騰などの影響に区がきちんと対応しなかったため、施設の供給に大きな後れを生じさせました。区のたてた計画通りにもできず、障害児者福祉施策への責任が問われています。
第四の理由は、公務労働のあり方が問題だということです。
まず、福祉事務所の体制です。臨時福祉給付事業と兼務と言いながら、結局は通年で各福祉事務所から2名ずつ生活支援課へ派遣状況となり、各福祉事務所は厳しい体制が続きました。本来、新たに正規職員を配置すべきであり、こうした部内調整はすべきではありません。また、短時間会計年度任用職員が期限が来て欠員となっても、そのあとの配置がされず、現場へのしわ寄せ、つまりは区民サービスの低下につながっています。区は福祉事務所を希望する人がいないと説明していると聞きますが、はじめから現場の要求でもある正規職員を配置すれば問題はおきません。その姿勢への転換こそ必要です。
保健所体制については、新型コロナ感染拡大が始まって以来の感染者数となった第7波、第8波に対応できる職員の配置とはならず、異常な超過勤務状況が見受けられました。保健所のように区民の命と健康にかかる組織については、臨時体制で乗り切るのではなく日常的にどんな状況下であろうと対応できる体制に改善すべきです。
子ども家庭総合支援センターで、支援課、援助課で時間外勤務が増加しました。特に援助課では、手帳申請者が想定より多いこと、そのために心理判定や事務量が増加したとのことです。心理士は児童福祉士の半数の配置基準でそもそも少ないのが問題です。配置基準を見直すべきです。
学校現場ではスクールサポート、副校長補佐、学校生活支援員で欠員が生じています。その状況にありながら募集しない実態があります。特に補佐業務は慣れるまで時間がかかり、容易に人材確保ができない課題があります。学校事務職員を増やすなど、安定した人材確保・育成を検討すべきです。
最後に、区の再開発事業の進捗の遅れが経費の減額になって現れています。合意形成に時間がかかっているということですが、コロナ禍でも再開発事業は住民説明会をしなくても進められてきました。まちづくりの基本は住民参画、住民合意です。大山、JR板橋駅西口、上板橋駅南口、高島平と、これからの開発経費の増大が見込まれ、再開発への税金投入のために、コロナに便乗して基金積立てを最優先にしていると言わざるを得ません。
コロナ・物価高騰という事態に対し、積み立て優先ではなく、区民の暮らしにこそ税金を振り向ける姿勢に立つことを求めて、討論を終わります。