討論日:2023年10月6日
ただいまから日本共産党板橋区議団を代表し、陳情第20号「適格請求書」(インボイス)制度延期の意見書を政府に提出することを求める陳情の委員会決定、不採択に反対し、陳情を採択する立場から討論を行います。
本陳情は、第一項でインボイス制度延期を、第二項で国の全ての省庁においての消費税に関する説明の是正を求めるものです。
消費税は、収入が少なければ少ないほど負担が増える逆進性が大きい税であり、応能負担という税の大原則に、背くものです。また、消費税は赤字であっても、売上に課税され支払わなければなりません。国税で最も滞納が多いことからも、消費税が事業者を苦しめているものであることは明らかです。そして、消費税は社会保障のためという説明で導入され、税率の引上げが繰り返されてきましたが、年金、医療、介護などあらゆる分野で負担が増え、制度が後退しています。一方で、大企業へは減税が行われ、消費税はその穴埋めとして使われています。こうした現状を是正することなく、さらなる増税を行うことは許されません。
採択を求める第一の理由は、インボイス制度は、これまで消費税を免除されてきた年収1000万円以下の事業者にとって、新たな増税であり、大きな負担となるからです。たとえば年収200万から300万円の事業者も新たに20万から30万もの税金を払うことになります。事業の継続、生活そのものも死活問題となります。
また、税そのものの負担のみならず、納税するための経理、税務の業務が莫大になり、その負担に対応できないという事業者の声が上がっています。こうした業務が増大することに対しての事業者への支援も不十分であり、場当たり的な軽減策を設けたとしても、新たな負担となることは明らかです。今からでも撤回すべきです。そもそも複数税率をやめれば、インボイス制度を導入する必要はありません。
第二の理由は、政府がインボイス制度の導入を進める説明に大きな問題がある点です。政府は、インボイス制度の導入の理由の一つに益税の解消をあげていますが、この説明に問題があります。国税庁の発行する「適格請求書等保存方式の概要」というインボイス制度を解説するパンフレットでは、消費税について「最終的に商品等を消費し、又はサービスの提供を受ける消費者が負担し、事業者が納付します」と説明されています。これに対して、消費税法では第五条で消費税を納める義務があるのは、事業者であるとされていますが、消費者が消費税を負担するという趣旨の記載はどこにもありません。消費税法から読み取れるのは、事業者が消費税を納税する義務があるということだけです。益税は、消費者が納めた消費税が事業者の手元に残されていることだとされていますが、消費税が消費者の納めるものではなく、事業者が納税するものならば、益税は存在しません。益税が存在しないならば、インボイス制度の導入は必要がないということになります。
導入に際しての説明も不十分です。事業者のうち、誰が課税事業者なのか、免税事業者なのかということさえも周知が不十分であり、今後、より大きな混乱が予想されます。インボイス制度の相談窓口で、よくわからないまま必要がないにもかかわらず、登録を促されたという事業者もいます。
9月25日現在で、事業者を中心とする54万筆を超えるインボイス制度に反対する署名が集められたことは、インボイス制度への危機感が高まっていることの反映に他なりません。事業者の声に耳を傾けるべきです。また、フリーランスのアーティストが支える日本の文化芸術にも大きな影響を及ぼすことが懸念されています。導入されたら、アーティストの3割もの廃業を考えざるを得ないと回答したというアンケート結果があり、当事者が中止を求めて声を上げていることは受け止める必要があります。
多くの中小零細企業を抱える板橋区から声をあげることが重要であり、今からでもインボイス制度を撤回するよう国に求めるべきです。
以上の理由から本陳情の採択を求め、私の討論とします。