核兵器廃絶に向けた取り組み強化を求める陳情、核兵器禁止条約への署名・批准を政府に求める件に賛成する討論

討論日:2023年10月6日

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第13号 核兵器廃絶に向けた取り組み強化を求める陳情 第2項 核兵器禁止条約への署名・批准を政府に求める件に賛成する立場から討論を行います。

 本陳情は、日本政府に対し、核兵器禁止条約への署名・批准を区議会として働きかけるよう求めるものです。

 広島・長崎への原爆投下から72年目の2017年7月、人類史上初めて、核兵器を違法化する核兵器禁止条約が国連会議で採択され、2021年1月に発効、2022年6月23日には、初の締約国会議が開催されました。条約への参加は、9月19日時点の最新数で署名93か国・地域、批准69か国・地域と着実に増加しています。

 国際社会における法的拘束力を持つ条約の発効は、被爆者や遺族の方々を始め、核廃絶を求める人々の悲願でもありました。一方で日本政府は、世界で唯一の戦争被爆国でありながら、条約への署名・批准を拒否し続け、締約国会議へのオブザーバー参加さえ行わず、国内外から失望の声が上がり続けています。

 岸田首相は第1回の締約国会議への不参加を表明した会見の中で「核保有国は一国も参加していない。唯一の同盟国である米国との信頼関係の下、現実的な核軍縮・不拡散を進める」と述べています。これは、いわゆる「核の傘」論であり、「核抑止」論を前提とした発言に他なりません。また、被爆地である広島で開催されたG7広島サミットでは、ロシアによる軍事侵攻や核兵器使用の威嚇を繰り返していることに強い批判をする一方で、核兵器がいかに非人道的かという批判や告発もなく、禁止条約にも一切触れず、存在そのものを無視する姿勢を露わにしました。世界に向けて核兵器の非人道性を訴え続けてきたサーロー節子さんは「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難することを被爆地から発信することは許されない」と強い憤りを示しています。何が核廃絶の足を引っ張っているのかという本質を突く発言です。

 「核兵器はなくすべき」といいながら、自らは放棄せず、どうして他国に放棄を求めることができるのでしょうか。核兵器の非人道性を世界に訴えるべき国が、いざとなったら使うことも辞さないということをどうして受け入れるのでしょうか。岸田首相が成果としている広島ビジョンにも記念式典でのあいさつにもその答えは示されていません。

 一発の原子爆弾によって、一瞬にして亡くなった方、水を求めて苦しみながら亡くなった方、かろうじて生き延びた方も後遺症に苦しみ、社会的・経済的な差別を受けてきました。そしてその苦しみは78年たった今も続いています。そうした苦しみや怒りが世界の人々を動かし、条約の発効につながったことは言うまでもありません。日本政府が条約に背を向け続けることは、被爆者の苦しみや怒りに背を向けることになるのです。

 陳情に反対する委員から、中国などの軍拡を背景に「隣国が一斉に核根絶の動きをしない状況で日本だけが逆行することはあり得ない」との意見がありました。この発言は、現在の日本政府の立場同様、核抑止論そのものです。今年8月に行われた平和祈念式典では広島でも長崎でも核抑止論を否定し、その依存からの脱却を強く訴えられました。被爆者・被爆地の願いは、これから先も誰一人として同じ被害を受けないこと。そして核兵器の恐怖から完全に逃れるために核兵器をなくすことです。「核根絶自体は願っている」というなら、核廃絶のためのプロセスが明確に示されている核兵器禁止条約への署名・批准こそ政府に求めるべきではないでしょうか。

 板橋区は平和都市宣言の中で、「再び広島・長崎の惨禍を絶対繰り返してはならないことを強く全世界の人々に訴え・・」とあります。絶対に繰り返さないために必要なことは、核兵器を肯定することではなく、完全に否定し、悪であると位置づけ、その廃絶のためにあらゆる努力を行うことです。

 宣言の制定以降、区と区議会は一体となって平和事業に取り組んできました。それは、絵に描いた餅ではなく、実効性あるものとして活かし、具体的行動を取り続ける決意の表れであると思います。その立場からも、区議会として政府に署名・批准を求めることは何ら矛盾しないものであり、区としても声を上げることができるよう区議会が積極的にその意思を示すべきです。。

 以上の理由から、区議会として核兵器禁止条約への署名・批准を政府に求める陳情に賛意を表し、討論を終わります。

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