討論日:2024/06/24
ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、【陳情第56号 エアコン購入費及び設置費等の助成を求める陳情】に賛成し、委員会での『不採択』に反対の立場から討論を行います。
本陳情は、エアコンがないもしくは故障等により使用できない世帯に対し、エアコンの購入費及び設置費用への助成と高齢者・障害者・低所得者に対しエアコンの電気料金への助成を求めるものです。
賛成する第一の理由は、命を守るためにエアコンが必要だからです。
消防庁が公表した今年5月の熱中症による救急搬送人員は2799人で、直近の6月は16日までの半月ですでに3,000人を超えています。年齢区分では65歳以上の高齢者が5割から6割を占め、発生場所は住居が約3割と最も多くなっています。東京都監察医務院によると、2020年の調査で、都内での不審死の内、熱中症で亡くなった200人中、65歳以上の高齢者が全体の89%を占め、屋内で亡くなった人の約2割がエアコンのない部屋で亡くなっていたと公表されています。特に、高齢者の発症は命の危険にも直結することが示されています。
区の公式ホームページでは熱中症の予防法として『室内でも要注意です。エアコンを適切に使用しましょう。寝ている間も注意が必要です。』と呼びかけています。現に、本庁舎1階を始め区内公共施設にクーリングシェルターを設置し、一時休憩所としての利用も促しています。区としてもエアコンの効いた場所で過ごす必要性を認め提供しているわけです。しかし、この対策はあくまでも一時しのぎに過ぎません。長時間過ごせる場所ではありませんし、区が呼び掛けているように、夜間も注意が必要なのです。猛暑日が2ヶ月以上も続くような気候では自宅にエアコンがなければ生活もままならないということはもはや常識であり、命を守るためにもエアコンは必須です。
第二の理由は、特に経済的に厳しい世帯で設置が困難だからです。
内閣府の消費動向調査によると2022年3月末時点でのルームエアコンの普及率は二人以上の世帯で90%を超えており、1世帯の保有率も約3台と、2021年比で2.7台も増加しています。近年の酷暑などの影響で住居の個室にも設置することが当たり前になりつつあります。しかしながら、ひとり世帯を含めると、設置率は90%を下回り、全体で1割以上の世帯でエアコンが設置されていないと見られます。また、年収が750万円から950万円の世帯で95.4%であるのに対し、300万円未満の世帯では82.7%と10ポイント以上の差が生じています。独居かつ経済的に厳しい世帯で設置できない状況があることは明らかです。
区はエアコンの購入及び設置費用への助成について、陳情では対象者が絞られていないとし、『全世帯を対象とすることは難しい』と答弁しています。しかしこの中には当然、経済的に厳しい世帯が含まれており、その支援にも背を向けるものです。区は、生活保護制度では上限67,000円の購入助成があること、その他低所得世帯に対しては、貸付制度があるとしています。しかし、エアコンの購入や設置に対する貸付制度はなく、返す当てのない方は借りられません。区は、そもそも、エアコンは自ら購入し設置すべきとしており、対象が絞られていないことが助成しない理由ではないのです。本陳情について、対象が絞られていないことを理由に不採択とすることは、経済的に厳しい世帯にさえも助成の必要性を認めない区の姿勢を容認することに他なりません。
都内でも購入や設置費用への助成を行っている自治体が広がっています。お隣の練馬区では、購入及び設置費用として10万5千円を上限に独自に助成しており、生活保護を利用している方も設置費用の申請が可能となっています。いまや当たり前になっているエアコンの設置が経済的に厳しい世帯で叶わないという現実を受け、助成に踏み出すべきです。
第三の理由は、エアコン使用による電気代への補助は恒常的な支援が必要だからです。
エアコン使用に伴う電気料金の負担について、区としても家計に負担があることは理解していると答えています。一方で、エアコンの購入や設置も含め、この間の給付金で対応すべきとも述べています。しかし、物価の高騰は今も続いており、一時的な給付金で解消されるものではありません。たとえ給付金でエアコンが購入できたとしても、電気代が心配で使えなければ意味がないのですから、エアコンの使用を保障するためにも継続した電気代への補助が必要と考えます。
最後に、先進国と言われる日本において、お金がないために、エアコンも使えず熱中症で亡くなるような事態を放置していていいのでしょうか。気候変動の影響で今後ますます猛暑・酷暑が深刻化すると言われています。その影響や被害は社会的弱者へと集中することは明白です。国や都に対し、社会保障として支援するよう働きかけることと同時に、区にも命を守ることに正面から向き合い助成を行うよう区議会として求めることを皆さんに呼び掛けたいと思います。改めて、陳情の採択を求め、私の討論を終わります。
ありがとうございました。