「志村小・志村四中小中一貫型学校建設工事の延期を求める陳情」に賛成する討論

 

討論日:2024年6月24日

 日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第60号「志村小・志村四中小中一貫型学校建設工事の延期を求める陳情」に賛成し、不採択とした委員会決定に反対する立場から討論を行います。

 本陳情は、志村小・志村四中 小中一貫型学校建設工事に必要な全体予算の再精査と区予算使途の優先順位の再検討を行い、工事着工の延期を求めるものです。

 本陳情に賛成する第一の理由は、そもそもの計画に無理があるからです。本計画では、2階部分は中学3年生(9年生)と小学校2年生が同じフロアで生活することになります。美術室、音楽室、体育館は小学校棟にあり、体型も発達段階もかなり異なる小学生と中学生が同じフロアを行き来することになります。動きたい、発散したい盛りの中学生と、小さな小学生が、共有する廊下や階段を行き来することは危険を伴うことだと考えます。児童生徒の成長・発達に応じて教育がなされるべきであり、計画には問題が多すぎます。区は小中一貫教育で「中一ギャップ」を解消するとしていますが、その効果は検証されていません。それどころか、板橋区の不登校児童・生徒は増える一方です。中学校の敷地に小学校を一緒にして、1000名もの大規模校を最初から作ること自体が、不登校を生み出す教育をさらに助長することになるのではないかということを大いに懸念します。しかも区は、普通学級だけで現在、志村小404人14学級、志四中463人14学級、合わせて28学級になるにもかかわらず、学校規模は小中それぞれ12~18学級が適正規模なので、大規模校ではないと言い張っています。しかし、特別支援学級を含めれば、37学級にもなるのです。学校規模に関する区の見解はまったく欺瞞に満ちています。無理な計画が推し進められていると言わざるを得ません。

 

 第二の理由は、近隣の住民や地元の理解が得られていないということです。隣接する住民からは、ベランダからすぐの所に校舎ができることになり圧迫感が高まり、教室から家が丸見えで、プライバシーが守られない、しかも、計画が決まってからの通告は寝耳に水で絶対に認められないという抗議の声が上がり続けています。区は敷地が2メートルセットバックし、歩道ができ緑化もされるといいますが、圧迫感、プライバシーの侵害を解決するものにはなっていません。大規模建築物指導要綱上の住民説明会が2回行われ、長時間に及んだにもかかわらず、なお理解が得られていないのが現状です。施工主が板橋区であるがゆえに、東京都の紛争予防条例による協議の斡旋も行われず、住民と施工主である板橋区の協議の道が絶たれている状態です。近隣住民の理解が得られないまま、計画を推し進めることは許されないと考えます。

 第三の理由は、現在の経済状況とこの間の板橋区が行っている建設事業の事情からも、予算は再精査されるべきだと考えるからです。

 区は総工費を100億円、工期は令和6年の秋以降から令和11年1月までの4年あまりとしています。しかしこの間、区営仲宿住宅の建設では、水分を含んだ残土の受け入れ先が決まらず当初の計画通りに進まない事態になっています。志村四中の土地も水分を含むという点では同様の問題が起きかねないと考えます。また、この間の資材や燃料費の高騰、設計労務単価だけにとどまらず、週休二日制の確保など労働環境の変化に伴う人件費のさらなる精査が求められています。総工費100億円との見込み通りに進むものなのか、改めて全体的に再精査されるべきです。また、本工事契約が、建物の建設も解体も、全体を一つの契約として行うことにも問題があります。学校の建設工事は、分離発注して地元業者に仕事が回るようにすることを基本に行われるべきです。一括発注で、ゼネコンにすべてを丸投げするというやり方でいいのか、十分な検討が必要です。

 第四の理由は、予算執行は立ち止まって見直すことができるからです。委員会質疑で、すでに予算は決定しているという意見がありました。しかし、志村小・志四中の小中一貫校の経費で、2024年度当初予算に計上されているのは計画全体の一部にすぎません。また、計画変更をすると国庫補助の再採択が困難になるという答弁もありましたが、党区議団が、文部科学省に問い合わせた際には、当該自治体の担当者によく事情を聞いて判断するとの見解が示されています。

 陳情者は、小中一貫校づくりよりも優先されるべき教育課題があると述べていますが、区は、教員不足への対応や、不登校対策などその他のさまざまな教育課題については、すでに予算化されていると言います。しかし、2024年度予算に計上できなかったものも山積みしているのではないでしょうか。魅力ある学校づくりプランの計画の俎上にも載っていなかった板橋第六小学校の改築問題が急浮上するなど、教育関係予算は再度見直しが求められています。

 志村小と志四中の教育環境を整備するためには、志村小は志村小のままで、志四中は志四中のままで建て替えることが、経費の面でも最もふさわしいと考えます。委員会審議でも指摘があったように、志村四中は建設当初から特殊な構造によって、雨漏りが多く発生し、早急に改築が求められていたことは、わが党議員団がかねてから取り上げ、求めてきたことです。志四中は自らの校庭を使って建て替えることで、短い工期で通常の経費で、生徒たちの安全も確保し、校舎、校庭などの位置を変えることなく建て替えができる学校です。早急にそういう計画に変更すべきです。

 また、志村小は、「城跡」という特殊な地形の中で、その時代時代の土木技術を使って改修を積み上げながら、120年の歴史を刻んできた学校です。その学校が、21世紀という先進技術が発達し、どんどん進化していく新しい時代の中で、土木技術的に工期がかさみ、6年かかるという理由で120年の歴史を閉じなければならないということを、どうして容認することができるでしょうか。

 不採択を主張する委員から、上二中のような最新式の学校で早く子どもたちを学ばせたいという旨の発言がありましたが、上二中は、生徒数448人14学級の学校です。小中一貫校でなくても、志村小、志四中をそれぞれに建替えてもできることです。また、委員会質疑で、校庭が狭くて運動会の時に保護者の観覧席が取れないという状況について、「保護者が日陰、校舎側で見られるのも大きなメリット」という発言がありましたが、校庭が北向きで日が当たらず、雪が降った時には雪がなかなか解けず、中学校の教室は1年中日が当たらないという教育環境になること、小中一緒での運動会はできない事などの状況を全く考慮しない発言です。また区は、校庭の狭さを、室内運動場を多くとってカバーしていると言いますが、そのために校舎の規模が大きくなって、近隣に圧迫感を与える建物になっていることも指摘しなければなりません。

 本計画はすでに、6月17日に入札が行われていますが、無理な計画を推し進めることはやめて、計画を見直し、教育予算全体を精査することを強く求めて、本陳情の委員会決定、不採択に反対する討論を終わります。

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