「国に対し、マイナ保険証と原稿の健康保険証の両立を求める意見書の提出を求める陳情」に賛成する討論

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、「陳情第64号 国に対し、マイナ保険証と現行の健康保険証の両立を求める意見書の提出を求める陳情」の委員会決定不採択に反対し、陳情に賛成する立場で討論を行います。

 本陳情は、現行の健康保険証を廃止することなく、12月2日以降もマイナ保険証との両立を求めるよう国に意見書を提出するよう求める陳情です。板橋区議会には第二回定例会にも同様の陳情が提出され、その際には署名1744筆、本陳情には1714筆が集まっています。

 陳情に賛成する第一の理由は、マイナ保険証がまったく不便だからです。

 現行の保険証は期限がくると新しいものが送付されますが、マイナ保険証はマイナカードと一体化したため、5年に一回の更新に行かなくてはいけません。すでに医療現場ではマイナカードの電子証明書の有効期限が切れているため、保険証として使用できなかったケースがおきています。総務省によると、2025年度に更新が必要なカードは今年度の2.6倍の2768万枚あまりといいます。政府の度重なる推奨にもかかわらず、マイナ保険証は7月末時点でも全国の利用率はわずか約13%にです。それは、マイナ保険証だと本人確認や同意などが毎回必要になり受付に30秒かかることに対し紙の保険証であればわずか1秒で済むこと、さらに各医療券も提示する必要がある場合では、保険証だけがカードになっても手間が減るわけではないからです。紙の保険証の利用こそが、結局は一番手軽で、そして確実です。

 陳情に賛成する第二の理由は、マイナ保険証を推進してきたプロセスがブラックボックス化しており、保険者である自治体の業務量をいたずらに増やすだけだからです。政府が現行保険証の廃止の方針を示したのは、2022年10月13日です。河野太郎デジタル相が記者会見で、「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」と表明し、後に政府は2024年12月廃止と決定しています。東京新聞が今年6月、厚生労働省とデジタル庁に、「完全廃止」を決めるまでの政策決定のプロセスが分かる文書の開示を求めたところ、そのほとんどがホームページ上で公開されているものでした。政策決定のプロセスが開示できない、ということです。しかも関係大臣から首相への報告も記録はない、としています。現行保険証を廃止しマイナ保険証に一本化とすることは、法律上も任意であるマイナンバーカードの事実上の義務化であり、大きな政策転換です。その決定がいつどのように決まったのかが不明瞭であることは大変問題です。

 さらに、保険者である自治体への連絡が極めて遅いことも、指摘しなくてはなりません。政府は、2023年8月になってマイナ保険証の登録解除の機能を追加すると決めましたが、解除の申請を受け付ける健康保険組合や自治体には、2024年2月の文書通知を最後に8カ月近く詳しい説明がありません。2月の通知では、開始時期を「10月末めど」と案内されましたが、具体的な運用や注意点までは明らかになっていません。マイナ保険証の推進策だけは積極的に行う一方で、細かい検討をせず、記録もせず、保険者や医療現場に負担を押し付けるやり方は看過できません。

 第三の理由は、現行保険証を廃止することは、国民皆保険制度を壊すことにつながるからです。

 そもそも、新しい保険証の議論は「無保険者をゼロにできるか」という視点で始めるべきですが、マイナ保険証は無保険者をゼロにするための制度ではなく、デジタル化が目的となっています。そのため医療が受けられなくなるリスクについて十分に検討されていません。マイナカードの更新を忘れた場合や、マイナ保険証の登録解除などの情報が、リアルタイムで保険者に共有されず、タイムラグが生まれることで無保険状態になる可能性があります。

 また紙の保険証の廃止にともない、現在発行されている「短期証」がなくなります。今後、マイナ保険証で保険料滞納となった場合、保険者から事前通知があった後、10割負担で医療を受けることになります。短期証があれば3割負担ですんだものが、一気に10割負担となり、高すぎる保険料の支払いに苦慮する区民にとって、非常に負担が重い制度となります。保険者の納付勧奨にも影響が出てきます。短期証を廃止したことで、これまでより少額での督促が行われるようになり、新たな徴収強化となります。まさしく区民の医療を受ける権利を保障しない制度となり、国民皆保険制度の根幹に関わります。

 12月2日以降、現行保険証が廃止されたあとも、現行の保険証と全く同じデザインの「資格確認書」が保険者から送付されてきます。取得が強制ではないマイナンバーカードと、国民の医療を受ける権利を守るための健康保険証を一体とすることの矛盾が、国民の声と運動を大きくし資格確認書の送付までいたらせました。それはマイナ保険証が保険証として機能しないことのあらわれでもあります。また、厚生労働省は資格確認書の送付を行うのは「当分の間」としていますが、区は委員会質疑のなかで医療を受ける権利を保障するためにマイナ保険証が100%になるまで送付すると答弁もしています。現行保険証を廃止せずに使用すればすむことであり、新たな事務を増やす必要はありません。

 区民の命と健康を守るために、国民皆保険制度を守るために、いまこそ区議会として国に意見を上げるよう求めるべきと考え、本陳情の採択を主張し、わたしの討論を終わります。

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