東京都板橋区立保育所条例の一部を改正する条例に反対する討論

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第56号 東京都板橋区立保育所条例の一部を改正する条例に反対する立場で討論を行います。

 本議案は、板橋区立弥生保育園、にりんそう保育園及びこぶし保育園を廃止するための条例改正です。この3園は2019年7月に策定した「公立保育所の再整備方針」に基づいて、2025年4月から民営化されることになっています。

 区が民営化を進める最大の理由は、財源の問題です。公設民営を含む公立保育園には国や都の補助金が入らず、区の一般財源で運営しなければならないからということです。これは、2004年の三位一体改革において、公立保育所の保育運営費及び整備費に対する国庫支出金が廃止になったことが背景にあります。しかし、区は区立保育所を維持するとともに、国に対して、自治体が児童福祉の拠点たる保育所を円滑に運営する補助を改めて行うよう求めるべきと考えます。

 区が直営で行う公立保育園は、板橋区の保育の質を低下させないために重要な役割をもっています。それは、職員の給与や待遇が安定しており、施設整備も区が直接責任を負うことができるからです。災害時の対応や、医療的ケア児や要支援児の受け入れなど、公的責任をもって対応する役割が果たせるのが公立保育園です。区立保育所の廃止は保育水準を低下させるものであり、認められません。

 弥生保育園は、同一敷地内で隣接していた母子生活支援施設「弥生荘」の廃止を機に、民営化計画がすすめられました。「区立保育所再整備方針」において、児童館などとの複合施設は、「基本的には単独設置していく方向性」が示されたことを受けて、弥生保育園に併設されていた児童館を切り離して、保育園だけを単独施設として建設し、民営化する条件が作り出されました。区は当初、同一敷地内での民営化なので、場所が変わらないことを理由に、提案から4年目の2022年に民営化を強行しようとしました。しかし、入園の際に民営化計画を知らされていなかった保護者から、入園するときに区立保育園として入ったのに、途中から運営主体が変わることは約束に反しており、途中で保育士が総入れ替えになることによる子どもの心身に与えるストレスは計り知れず、工事中の騒音、振動、アスベスト等の対策も含めて、強い反対の声が上がりました。結果、区は計画変更を迫られ、先延ばしとなっていました。その後区は、入園当初から民営化計画があることを知らせることで、保護者の理解を得たものとして民営化を推し進めていますが、事前に知らされているからと言って、子どもたちの最大のストレスである「保育士の総入れ替え」が解消されるわけではなく、民営化すべきでないことに変わりはありません。

 こぶし保育園は、区がURの建物を無償で借りて、指定管理者によって公設民営で運営されてきました。にりんそう保育園は、区が再開発ビルの一部を取得し区分所有者として所有しているものです。いずれも、施設の改築などの費用の補助が見込めるわけではありません。区が民営化の最大のメリットとしている、老朽化した施設の再整備に国や東京都の補助が見込めるとした財政効果はほとんどありません。保育所の施設自体が区の所有なのですから、区が運営するのは当然と考えます。

 また、弥生保育園、にりんそう保育園の二園は、公営から株式会社の運営となります。板橋区の公立保育園の民営化としては、はじめて株式会社が参入することになります。国は保育産業を育成するために、企業の利益を生むことができる仕組みづくりとして、委託費の弾力的運用の通知を2000年に行っています。委託費は人件費、管理費、事業費に分かれ、その区分について厳格に規定されています。しかし、通知によって、一定の要件を満たすと、区分を超えて委託費を弾力的に運用できるようにしたのです。2018年に23区の認可保育園を対象に行われた調査の結果では、株式会社経営の保育園と社会福祉法人が運営する保育園とでは、委託費全体に占める人件費の割合は10%も株式会社の方が低いこと、中には人件費が30%未満という会社が21ヶ所もあったことが報じられています。会社の業績の悪化、経営方針の変更などで保育所が閉鎖される事例も生まれています。低賃金や会社経営の不安定さの中で、犠牲になるのは子どもたちの命であり、成長発達です。公的責任を後退させる、公立保育園の株式会社への民間開放は認められません。

 最後に、板橋区は、2024年2月に示した「今後の保育施策のあり方検討の方向性」で、これまでの公立保育園の役割をさらに後退させ、9つの公立保育園の民営化を打ち出しましたが、板橋区の保育の公的責任を果たしていくために、改めて区立保育所の民営化計画の見直しを求め、本議案に反対する討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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