議案第78号「東京都板橋区乳児等通園支援事業の設備及び運営に関する基準を定める条例(誰でも通園制度)」に反対する討論

討論日:2025年10月14日本会議 石川すみえ区議会議員


 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、「議案第78号 東京都板橋区乳児等通園支援事業の設備及び運営に関する基準を定める条例」に対する委員会決定可決に反対する立場で討論を行います。
 
 本条例は、いわゆる「こども誰でも通園」の来年4月実施にむけたものです。国は、こども誰でも通園は、『全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため、現行の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付』としており、その理念は否定するものではありません。しかしながら、国が示している内容も、区が上程した本議案も、この理念を実現しうるものではないと考えます。
 
 反対する第一の理由は、現在示されている内容では保育といえないからです。月10時間までの預かりでは、保育者と乳児の関わりがあまりに薄く、保護者のリフレッシュにはなりますが、それは一時保育事業で十分その意義を果たせます。短い預かり時間では、通常の保育で行われている子どもの発達保障まで行うことはできません。区は、こども誰でも通園制度を区立園で行わない理由として「一時保育事業の定員がすでに満員に近いため」と説明しています。そうであるならば、区はこども誰でも通園ではなく、一時保育事業や、病児病後児保育の拡充、板橋区ではまだ未実施の休日保育の実施などに力を入れるべきです。
 
 反対する第二の理由は、区の保育の質を下げ、子どもの安全を脅かすことにつながりかねないからです。保育でいちばん重要なことは、こどもの命と安全を守ることですが、4月から実施にも関わらず実施園への巡回支援の詳細も決まっていません。本条例の第19条には、苦情対応について記されており、事業者は保護者からの苦情に迅速かつ適切に対応することが義務づけられており、区からの指導または助言に従う旨も示されています。委員会質疑のなかでは、保護者からの求めがあれば区が事業者へ指導に行くことができるが、その詳細についてはまだ未定と答弁がありました。こども誰でも通園制度では、行政の関与ができず、重大事故となりかねないことが最も懸念されています。加えて、本議案で示されている保育士の配置基準は通常の保育士の約半分であり、誰の目からみても質が下がることは明らかです。区が責任をもち、利用する乳児の安全を守る制度とすべきです。
 
 反対する第三の理由は、国がアピールしている『スマホで予約し、0歳から近くの保育園に預けられる』とはならないからです。板橋区でこども誰でも通園制度を実施するのは、そのほとんどが私立幼稚園であり、1歳から利用できるのは2園、他は2歳児からの利用です。これらの幼稚園はすでにある「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を行っており、4月からはこども誰でも通園を実施しなければ従来得ていた事業の補助金を得ることができません。また、保護者が自治体を超えて予約することのできる国の総合支援システムを使うかどうかも、まだ未定であるということです。国の当初の目論見は、まったく外れていると言わざるを得ません。
 
 反対する第4の理由は、さまざま課題のある本事業について、区は消極的な姿勢を示しながらも国に意見すらあげていないからです。保育の実施主体は市区町村であり、こどもの命と発達保障の権利をまもる責任は板橋区にあります。自治体の立場で実情を伝え、制度改善や抜本的な保育の質向上のために保育士の配置基準の向上などを要望すべきです。
 
 最後に、国がいう『全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する』ためには、本事業を実施しなくても、保護者の状況に関わらず保育所に入所できるよう、保育の必要性の事由を変更すればいいだけです。たとえ保護者が働いていなくても、希望する、あるいは必要がある
すべての子どもに保育を提供することこそ、真に“こどもまんなか”な児童福祉施策と考えます。以上の理由により本議案に反対し、わたしの討論を終わります。
 
 
 
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