討論日:2025年10月14日本会議 石川すみえ区議会議員

ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第102号 東京都教育委員会に対し、都立高校の夜間定時制課程の生徒募集停止計画を見直すことを要求する意見書の提出を求める陳情、陳情第114号 都立大山高等学校と都立北豊島工科高等学校の夜間定時制課程の廃止についてその見直しを行い、働きながら学ぶ生徒や、不登校を経験し、学び直しを希望する生徒が引き続き安心して教育を受けられるよう進路と学習環境を保障することを求める陳情に対する委員会決定不採択に反対し、陳情に賛成する立場で討論を行います。
本陳情は、都立大山高等学校と都立北豊島工科高等学校の夜間定時制課程を廃止しないよう、東京都に意見書を提出することを求めるものです。
最初にわたしが強調したいのは、まちに学校があるということは、そこに通う生徒とその保護者だけでなく、まちの未来を豊かにするものだということです。学校の統廃合や、学級規模の話がでると、「全体をみたときにどこかを削って必要な部分に充てる」「少人数だと集団を通した指導ができない」という議論になりますが、時代や地域によって学校に求められる姿や学校が果たしている役割は異なるものです。全体のバランスや適正規模といった言葉に惑わされず、まずは、いまそこにある子どもたちの困難さに目を向けるべきと考えています。委員会質疑のなかでは、現在は昔と違い、夜間定時制高校には不登校や外国ルーツの生徒がおり、ニーズの変化があることが確認できました。こどもの困難さは、社会情勢の変化に引きずられ移り変わっていきます。今後、不登校や外国ルーツだけではないあらたな教育課題が生まれてくる可能性は十分あります。そのときになくした学校をまたつくるには、とんでもないコストが生じ、時間もかかり、その間に取り残されていく生徒たちがうまれてしまいます。「あのとき、夜間定時制をなくすべきではなかった」とあとから後悔しても、後の祭りです。時代に応じた多様なニーズにす素早く応えるためにも、選択肢を減らすべきではありません。
また、チャレンジ校を充実させても、今ある課題が全て解決するわけではありません。チャレンジスクールの倍率は1倍を超えており、それは不合格となる生徒がいることを意味します。不登校を経験し、やっとの思いで「高校ではがんばろう」「高卒資格をとろう」と入試までたどり着いた生徒にとって、どれだけ落胆することでしょう。多様なニーズに応え、そして誰でも学びなおすことのできる教育環境が必要です。日中通学することに困難がある生徒にとっては、夕方からの通学が適している場合もあります。そもそもチャレンジスクールは全日制に近い学校で、授業時間が異なっている夜間定時制の代わりにはなりません。授業時間が異なるチャレンジスクールを、夜間定時制の代替であるとすることは、教育行政の誤りです。
東京都は「稼げる東京」と言いますが、教育行政は、人間らしさを大切にすべきです。そのためにも、夜間定時制の生徒数が減って教育集団として成り立たないというならば、まずは受験する生徒がふえるよう、それぞれの区に対し夜間定時制について周知するよう協力を求めるべきです。今回、東京都教育委員会が示したチャレンジサポートプランは、現在の夜間定時制の意義を捉えずに決定を押し付けるもので、廃止ありきの拙速なプランと言わざるを得ません。
委員会質疑では、陳情に反対する委員からも、夜間定時制のニーズについて把握できているのか、周知を行えているのかを問う場面もありました。夜間定時制のこれからを考える際には、高校入試を考える生徒だけでなく、生徒、卒業生、教職員、住民の声も聞き丁寧に進めていくべきです。東京都が行ったパブリックコメントの中には、夜間定時制に通っている高校生たちは、電車移動ではなく自転車移動するとありました。家から比較的近く、自転車で行ける距離というのが彼ら、彼女たちにとって本当に大切であり、そうしないと無理という困難さがその子たちにあるといいます。夜間定時制の少人数指導、親身な教職員の指導が、つらい体験をしてきた生徒たちにとって、社会の信頼を取り戻していく機会になります。絶対になくすべきではありません。
最後に、質疑のなかで区教育委員会として、都教育委員会の示したチャレンジサポートプランに対してほとんど意見を言っていないことがあきらかとなりました。不登校児童生徒数が増え続けているにも関わらず、中学校卒業後の選択肢が減ることに、危機感をもつべきです。今年4月には、108名の区立中学校卒業生が定時制に進学しています。108人それぞれの困難さがあり、きちんと寄り添い、解決するための支援について、区教育委員会が責任を持つべきです。少なくとも、板橋に新しくチャレンジスクールを新設すべきということを、板橋の子どもたちのために求めるべきではないしょうか。
現在の教育課題に向き合い、なにより板橋区の子どもたちに寄り添うよう東京都教育委員会に求めることを区議会全員で行うことを呼びかけ、わたしの討論を終わります。