発言日: 2019年10月11日
ただいまから、日本共産党区議会議員団を代表して、陳情第2号「『向原第二住宅地区 地区計画』策定に関する陳情」の委員会決定「採択」、陳情第25号「『向原第二住宅地区地区計画の策定』に関する陳情」の委員会決定「不採択」に反対する立場から討論を行います。
本陳情は、向原第二住宅の建てかえに伴う地区計画の都市計画決定を速やかに進めることと、十分な合意形成がなされるまで進めないことを求めるものです。
向原第二住宅は、昭和42年に建設された分譲住宅で、緑豊かな団地ですが、エレベータのない5階建ての住宅6棟です。50年以上が経過する中で、エレベータ設置を求める声は高く、耐震上も心配の声が上がっている住宅です。
2014年12月に管理組合から建てかえに伴う都市計画提案制度が3分の2の合意で提出されたものの、この提案に対する反対の署名が100名を超えて提出されたため、区は、一旦さらなる合意形成を進めることを管理組合へ求めてきました。
これまで、アンケート調査や意見交換会など、区としても合意形成が進むよう取り組んできましたが、建てかえを推進したい人たちと慎重に進めたい人たちの意見に乖離がある状態が続いています。
そのため、区は、都市計画提案を受領してから3年半を経過したことを理由に、都市計画決定の手続を進める方針です。
本陳情に対し、私は8月の都市建設委員会で「現段階で議会として判断すべきではない」として、継続審査を主張しましたが、採決を求められたため退席いたしました。その考えは、今も変わりませんが、改めて委員会決定に反対し、意見を述べさせていただきます。
反対する第1の理由は、まだ、合意形成の可能性があることと、建てかえの必要性について議会では情報が共有できていないということです。
6月には「民民の問題だから、合意形成を図るべき」として継続審査にしてきた案件ですが、6月の都市建設委員会から、わずか2か月半で同意率は80%から83%にふえています。まだ、合意形成を図る可能性があると考えます。しかも、都市計画審議会に付議されるのは11月7日です。これまで、「民民の問題だから、合意形成を図るべき」という理由で継続審査してきた問題を、この段階で、議会が結論を出す必要はありません。
また、耐震診断の結果について、区は個人情報だとして、Is値0.6を満たしていないということしか示しません。建てかえの必要性について私有財産であることを理由に、議会では一切明らかにならない状況で速やかに進めることを判断することはできません。
反対する第2の理由は、同意できない住民を置き去りにしたまま建てかえを進めるべきではないということです。
都市計画提案は、建てかえるために一団地指定の廃止、高さ制限、建ぺい率、容積率の緩和を行うものです。住民要求のエレベータ設置や安全性を確保するためには、この地区計画に基づかない方法も選択できるはずです。
しかし、この地区計画を行えば、現在の同意数で建てかえ計画を実施することができてしまいます。合意していない人たちは「エレベータだけ設置してほしい」「耐震補強して建てかえはやってほしくない」「今の住環境を変えてほしくない」と言っています。建てかえが進められれば合意していない17%の人たちが置き去りになるのです。計画が粛々と進み、工事が始まったら、嫌だと言っている人たちがどうなるのか、区は「明確に答えられない」としています。
地区計画の決定は、十分な合意形成や慎重に進めてほしいと願う人たちにとって、最後のとりでです。その人たちを押し切って地区計画を速やかに進めるという判断はできません。
同じ時期に次々と建てられた一定規模の集合団地が、向原第二住宅のように住宅を更新する方法などについて、合意形成が課題になってきます。建てかえ問題が浮上するたびに、住民間で意見がぶつかり合い、合意形成が進まないまま、耐震補強もままならず時間だけが過ぎるといったケースは少なくありません。
そこには、検討開始の最初の段階から、耐震診断結果や建てかえ、耐震補強などの方法に対する費用や影響といった科学的な情報の共有化や不安感に対する丁寧な対応が求められています。しかし、信頼関係の構築が難しく、最低限の情報を共有する前に、分断が生まれてしまうことも課題になっています。
板橋区でも、分譲マンション実態調査が行われ、実態に基づいた具体的な支援策が求められている段階です。メンテナンスや耐震補強などの対策を行えば、建物の寿命は延ばすことができます。そういった対応を行いながら、いつかは必要になる建てかえの時期や手法について合意形成を丁寧に図ることができるよう、行政としてもっと踏み込んだ支援策が必要となっています。
そして、住宅はそこに住む人の人生と生活がかかっています。最後まで丁寧な合意形成を進めるためにも、委員会決定に反対し、討論を終わります。