発言日: 2019年10月29日
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、2018年度板橋区一般会計決算、及び同国民健康保険事業、同介護保険事業、同後期高齢者医療保険事業の各特別会計の歳入歳出決算の認定について、反対する立場から討論を行います。
2018年度決算は、歳入歳出差引額46億700万円で、実質単年度収支では、49億5,700万円の黒字となっています。
基金は、全体で、2017年度末、585億円から106億円を積み上げ、691億円へと過去最高となりました。
財政調整基金は、59億2,800万円積み立て、基金活用方針による30年度末目標210億円を大きく超え264億4,600万円となっています。
一方で区民の暮らしはどうでしょうか。区は歳入増の理由を区民税がふえたからとしていますが、課税標準額200万円、300万円以下がふえ、区の納税義務者の77%を占めています。暮らしが楽になったとは言えません。
産業分野では、総事業所数は3年間で843件減少、従業員数は4,234人減少、建設業・製造業・卸売り小売業全てで減少しています。
2018年10月からの生活保護の制度改正により生活扶助費が引き下げられました。そのため生活保護世帯は、ほとんどふえていません。しかしながら、低年金のため高齢者世帯がどの世帯よりも増加しています。
区民生活や地域経済の実態に向き合っていたのかが問われています。
第一に、負担の増加が拡大していることです。2018年度は、国保、介護で大きな国の制度改正が行われました。2018年度から国民健康保険事業が広域化となり、都道府県単位となりました。この制度改革にあわせて一般会計からの繰り入れは解消すること、そのために収入確保の一層の強化が行われています。昨年度も非課税世帯を含めて差し押さえは672件となっており、4世帯に1世帯が滞納している状況が続いています。こうした状況にもかかわらず、2018年度の国保料は給与収入年300万円の4人世帯で31万4,886円であり、収入の1割を超える負担となっています。それは、2009年度の国保料の約2倍です。せめて、子どもの均等割額を軽減するなどの緊急対策が求められています。
介護保険制度は、2018年度から第7期事業計画が始まり、利用料の3割負担が導入されました。利用者の負担がふえたためにレスパイトで月に1回利用していたショートステイを3か月に1回に減らすなど、家族介護への一層の負担が広がっています。生活援助中心型サービスは10月1日から訪問回数の上限が導入され、実績は半減となり、必要な訪問回数が保障されていない事態をもたらしています。
後期高齢者医療制度では、これまで一度も差し押さえしてこなかった区が、2018年度は初めて9件の差し押さえを実施しました。75歳以上は有病率が高く、継続して医療を受けることが大切です。このような強制的な差し押さえにより暮らしが一層厳しくなるような事態をもたらすことは許されません。
無償化を前に、保育料の値上げが行われました。2017年度比で3億1,644万円増となっており、値上げは利用者の約9割に影響を与えました。
債権管理条例によって実施された、徴収一元化は、153件が所管課から納税課へ移管されました。一方、相談窓口への案内件数は、わずか3件です。生活を脅かすような徴収はあってはなりません。徴収を目的とするのではなく、生活再建を目的とした相談体制を整えるべきです。
舟渡斎場の有償貸し付けに伴い、2018年度から葬儀の利用料が1万9,300円も値上げされました。
第2に区民の切実な要求に応えていないということです。
住環境の改善を求める声は切実です。板橋区の実態調査では、公的住宅の整備が多くの方から求められています。しかし、公営住宅の集約・統合を推進し、公営住宅をふやさない姿勢は問題です。入居を希望しながら入れない区民が多い一方で民間の住宅はあいているにもかかわらず賃借料が高く入居する選択肢を持てない実態があります。板橋区においても家賃助成を行うべきです。
保育園の待機児対策では、今年4月の時点で希望する保育園に入れない待機児童数は779人であり、実質待機児童数も108人います。
区は、2020年度までに待機児ゼロにするという計画の下で認可保育園等の整備を行ってきました。しかし、3・4歳児の待機児童が増加するなど待機児ゼロにはほど遠い実態です。2016年に起きた乳児の死亡事故の検証が第三者委員会によって、ようやく行われました。提言では、保育士の年齢別配置基準が不十分なことを指摘しています。さらに、保育士の確保定着も困難な状況にあることも明らかになっています。区として責任を果たすべきです。
あいキッズについても、子どもたちの放課後の居場所として、生活の場としての質の担保は全くされないままです。きらきらタイムに登録している児童数分のロッカーさえ確保できていない学校が51校中16校もあります。さんさんタイム登録の児童数のげた箱も足りておらず、夏休みになると子どもたちは過密状態となり、室温が30度を下回らない実態があります。男女共有トイレも残されたままであり、環境整備も不十分です。放課後から5時までの間の放課後児童健全育成事業の基準は、守られていません。まずは、児童の放課後の生活の場として、機能させるように整備環境に努めるべきです。児童館から追い出され、小学生たちは、行き場を失っています。改めて、子どもの放課後の居場所のあり方を見直すべきです。
特別支援教室については、2018年度から小学校全校実施となりましたが、拠点校13校で、残りの38校は巡回校になっています。小・中学校ともに特別支援教室を希望する児童は増加しており、拠点校の数が適正であるか検証が必要です。今後の需要も踏まえ、拠点校をふやすとともに、対応可能な教員の増加も必要です。区は、2021年度に中学校でも全校実施を行うとしていますが、拠点校の数、教員の増員についてもしっかりと検証し全ての児童に対して適切な対応が求められます。
公園・公衆トイレの洋式化、バリアフリー化が大きく遅れています。2018年度も計画どおり、4か所のトイレが整備されたものの全体の17.3%です。それは、国が求める2020年度までに都市公園の45%という目標には、ほど遠く計画そのものが、間に合っていません。直ちに計画の見直しが必要です。
地域センター、集会所の維持管理経費はあわせて約2,000万円使い残しています。しかし、施設にある備品や設備などは、老朽化したものが多く存在し、修繕や改修が十分ではありません。
第3に区民の実態や現状に即した制度になっていないことです。
台風19号への対応で、避難所や避難所運営のあり方など策定すべき計画が未着手となっているなど、区の防災計画が区民の実態や現状に、即した制度になっていないことが浮き彫りになりました。備蓄や避難運営マニュアルは、国の新たな指針を反映したものに改めるべきです。
応急福祉資金貸付事業の拡充が求められています。応急福祉資金の貸し付け相談は157件あったにもかかわらず、貸し付け実績はゼロ件でした。特に84人が真に必要としている実態であったにもかかわらず、貸すことができませんでした。セーフティネットの役割を果たせておらず、需要があるにもかかわらず、貸し付けできていない問題の解決のために、さまざまな要件緩和など抜本的な改善策が急務となっています。
産業経済費は、予算額16億5,800万円、0.79%に対して決算額では15億1,000万円、0.71%となっており、ここ数年は15億円程度から伸びていません。不用額5,700万円の主な事業は、にぎわいのあるまちづくり1,462万円、産業融資958万円などです。産業融資については、大田区では件数が板橋の2.5倍。利子補給では、7倍もの差があります。板橋区での取組みは、あまりに弱いと言わざるを得ません。
がけ・よう壁について、2018年度は35件の相談件数でしたが、助成件数については3年連続でゼロでした。
木造住宅耐震化推進助成制度についても5,750万1,000円の当初予算に対して2018年度の決算は3,705万2,188円となっています。ともに区民にとって利用しやすい制度設計になっていません。
第4に民営化や委託化の拡大により、行政水準の低下を招いています。
公立保育園の民営化について、保護者への説明は全く不十分であると言わざるを得ません。区は「公立保育園の役割は、地域の保育をリードすること」としていますが、そうであれば保育をリードする公立保育園を減らすべきではありません。また、板橋の保育についてのガイドラインを作成するとしながら、その内容については区民に公開されていません。住民に必要な保育環境を整備することは自治体の義務です。公立保育園の民営化は、自治体の義務を放棄することにほかなりません。
自転車駐車場の一括委託事業は、当初は4年かけて行う予定でしたが、計画の前倒しを行い2018年度までに区内全域で実施しました。委託事業者からシルバー人材センターへの再委託という二重構造により利用者の声も、働く人の実態も区が把握しづらい状況をつくったことは問題です。
委託化によって土木作業や保健所の検査業務など、区の専門的なスキルが低下することは避けられません。職員削減を優先し、行政の質の低下を招いていると言わざるを得ません。
第5に職員の働き方が改善されていないことです。
職員の働き方改革と言いながら、2018年度1か月の時間外労働が80時間を超えた人は39名。100時間を超えた人が16名となっています。過労死ラインを超えるような働き方を容認する区の姿勢は問題です。直ちに人員増を図るべきです。
区内の小・中学校では、教員の欠員状態が続き、その補充方法についても疑問の声が上がっています。教職員の学校在校時間をICカードで管理する制度が始まり、4月には週当たりの在校時間が60時間を超える教職員が区立幼稚園では2人、小学校で300人、中学校で166人に上りました。教職員が、より働きやすい環境をつくるために具体的な施策を行うべきです。
福祉事務所で働くケースワーカーの実態も深刻です。社会福祉法に定められている80ケースに1人の基準になっておらず、87ケースに1人となっています。また2018年度は勤続3年未満の職員が78%配置されており、バランスのとれた職員配置とは言えません。職員定数をふやし、職員の経験年数など配置のバランスを改善させることは急務です。
第6に大型開発優先と区民不在の公共施設整備のあり方です。
大山駅周辺では、東武東上線高架化と駅前広場計画が急速に進められました。立体化は、東上線全体の安全対策が検討されず、ハッピーロード商店街を分断する都市計画道路補助26号線計画とクロスポイントなどの再開発計画にあわせて、高架化を急ぐというやり方で進められています。地下化の検討を求める住民の声を聞き入れず、側道の地権者への事前説明さえ行われていません。駅前広場計画では、地権者や営業している人たちから同意も得られていないまま、計画決定されています。住民合意のないまちづくり計画は白紙に戻すべきです。
板橋駅前B用地を活用した再開発ビル計画は、区の財産を活用するにもかかわらず、住民の要求は聞き入れられていません。
高島平ではアーバンデザインセンターへの1,500万円の委託費は、その活用方法が不透明であり、まちづくり計画に生かされているとは言えません。
公共施設の再整備計画では、旧保健所跡地を中心として区役所周辺の再整備計画が進められました。
区民や職員の声をわきに置いて、民間事業者によるPPP、PFI事業への活用の可能性についてのサウンディング調査が優先されました。
区民の財産である公共施設の再整備を民間企業の利益優先で進める姿勢は許せません。
最後に基金と区の方針についてです。
2018年度は、いたばし№1プラン2018の最終年であり2021計画を準備した年でした。
自治体の財政は、住民の暮らしに寄り添っているか、住民の福祉の向上が第一になっているかが基本に貫かれるべきです。しかし、スクラップ・アンド・ビルドの考え方は、各部署は何かを削らなければ新たな事業に取り組むことはできません。サンセット方式は、3年で終ることを前提にしなければなりません。この原則では、区民生活にとって必要な施策を生み出すことができません。
新公会計システムによる財務諸表が示されましたが、コスト計画を最優先させ、区民負担増やサービス低下を一層強化する材料としないことを求めます。
区は、基金の積み立てを優先するものではないと言いながら結果として計画を上回る額が積み上げられました。貧困格差と区民生活の困難が広がる中で、基金を積極的に活用するべきです。区民生活を守ることに全力を挙げることを強く求め、討論を終わります。ありがとうございました。