発言日: 2019年06月21日
ただいまから、日本共産党板橋区議団を代表して、陳情第23号「都心低空飛行問題についての陳情」、第24号「都心低空飛行に伴う環境悪化懸念に関する陳情」に賛成し、討論を行います。
本陳情は、羽田空港の機能強化を理由に、国際線発着便をふやすため、東京都心上空を低空飛行することに対し、不安を感じる住民から計画の見直しを求めて、国へ意見書を提出することを求めるものです。
国土交通省の計画によれば、新たな飛行経路での離発着は毎時90回とされ、板橋区上空は、今回の新ルートで約1,000から1,200メートル上空を飛行することになります。
賛成する第1の理由は、説明会が開催されるたびに区民の不安が膨れ上がっているということです。
板橋区で6月5日から13日まで行われた4回の説明会には、合計245人が参加し、区民の関心も非常に高い状況です。国土交通省は、オープンハウス型の説明会に固執してきましたが、ようやく板橋区でもこの6月に教室型の説明会が開催されました。その中でも、騒音、落下物、補償、資産価値などの質問が多く寄せられました。説明会会場で区民有志が行ったアンケート調査によると、回答した40名のうち、「国土交通省の説明に納得した」が2人、「納得できない」が38名で、「この計画に賛成」が7名で、「反対」が31名だそうです。到底納得できたと言える実態ではありません。
また、国土交通省の騒音における計算値は、実測値と大きな乖離があります。国土交通省も区も、予測値からすると板橋区上空は最大で68デシベルだから通常の話し声程度だと言いますが、江戸川区上空では、国土交通省が説明してきた70デシベルに対し、国土交通省自身が実際に測定した騒音は78デシベルだということが明らかになっています。8デシベルも違えば、板橋区では、幹線道路や騒々しい街頭と同じレベルです。
しかも、防音対策などへの補助制度は、板橋区は対象外で、騒音に対する対策も補償もないのが実態です。落下物への不安感は非常に高く、飛行機が板橋区上空を飛ぶ以上、落下物への危険は避けられません。住民の不安が解消されるどころか、広がり続ける不安にこそ正面から応えるべきです。
第2は、安全機能こそ強化すべきだということです。
国土交通省は、東京湾上空は大変混雑していると都心上空ルートの必要性を主張していますが、既に混雑した状況を都心上空で展開すれば、周辺住民の危険と負担は一層大きくなります。今月16日にも羽田空港で航空機の着陸寸前に別の航空機が滑走路を横切る問題が発生しています。国土交通省によると、2つの航空機とも管制官から着陸と滑走路横断の許可を受けたことがわかっています。さらに、都心上空ルートは、米軍横田空域の一部を通過するもので、米軍機や自衛隊機が訓練を行う空域において、着陸前の民間航空機の安全な運行を確保する方策は示されていません。航空機の運航や航空管制は、一歩間違えば大事故につながる危険性があります。増便・拡張を強行することよりも、現在起きているトラブルや事故続きの現状を改善し、安全強化こそ行うべきです。
第3は、一体誰のための計画かということです。
国土交通省は、オリンピック・パラリンピックに向けて、訪日外国人旅行客の増加を図るためとしていますが、政府の航空需要予測では、首都圏空港の空港処理能力が限界の75万回に達するのは、おおむね2020年代前半とされています。オリンピック後のことです。現状のままでもオリンピック需要に対応することは十分可能です。
また、政府は、アメリカと意見交換を行い、国際線の増加予定約50便のうち、約半数の24便が日米路線に割り振られ、その半数がアメリカの航空会社に配分されることになっています。訪日客4,000万人を達成するためと言いながら、現在の8割以上を占めているアジアからの路線ではなく、北米路線に半分を割り振ることは大変疑問です。羽田空港の機能強化は、オリンピックのためでもなく、アメリカのための増便と新ルートへの変更だと言わざるを得ません。
最後に、都心低空飛行は、海から入って海に出るとした、一定の生活環境を守ることを前提に許されてきた地元住民との約束をほごにするものだということです。羽田空港をめぐっては、1960年代から騒音や墜落の危険への抜本的な対策を求める声が広がり、江戸川区では、区が国を相手取って裁判を起こす事態に発展しました。1973年当時、運輸省航空局長と区との間で、海上での飛行コースを設定する合意を交わしています。品川区では、ジェット機の飛行による被害を区が公害と認識し、国と都へ働きかけ、滑走路の沖合への配置と、海の上を飛行するルートの運用を基本とする確認書を交わしているのです。都心低空飛行は、そうした近隣自治体との約束をほごにするもので、許されません。
不採択を主張した委員からは、「板橋よりさらに低い高度の大田区や品川区でも不採択になっている」という意見がありましたが、ことし3月、品川区議会、渋谷区議会では、計画見直しを求める決議や意見書が上げられています。
住民生活を犠牲にして、増便・拡張ありきで進める都心上空ルートは撤回すべきです。板橋区議会としても、ほかの区議会と連帯して計画の見直しを政府に求めるべきです。
以上の理由で、本陳情の採択を求めて、私の討論を終わります。