「都立病院・保健医療公社病院の地方独立行政法人化の中止を求める意見書」を東京都に提出する陳情に賛成する討論

討論日:2020年10月13日

本陳情は、東京都が8都立病院と6公社病院を2022年度を目途に地方独立行政法人化にすると決定したことに対し、その中止を求めて東京都に意見書を提出してほしいという願意のもとに出されてきました。

そもそもこの都立病院・公社病院を地方独立行政法人化する方針は、昨年12月に素案として、そして今年の3月31日に発表された「新たな病院運営改革ビジョン」に示されてきたものです。このビジョンには、都立病院について行政的医療等に「最小の経費で最大のサービスを提供していかなければならない」と、公社病院についても「コストの見直しをさらにすすめ」「都の財政負担の軽減にもつながっていく」とあり、独法化の目的が東京都の財政支出の削減にあることが明らかとなっています。

本陳情を採択する第一の理由は行政的医療の水準を後退させてはならないということです。

「地方独立行政法人」とは「地方独立行政法人法」により、3年から5年の中期計画の期間ごとに業務の廃止や組織の廃止を含む見直しを行うことを定めています。つまり都立病院でいうならば行政的医療の役割りを小さくし、業務の廃止や民営化を進めるものだということが指摘されています。

中期計画が都議会の議論も経て決められるのだから大丈夫といいますが、その中期計画そのものが、議会にかかる前に、すでに法人が業務や診療を継続するかどうかを検討し、その時点で削られていっていることは、全国の独法化となった医療機関をみても明らかです。こうした見直しによって、不採算である行政的医療が縮小、廃止されていったりすることが想定され、都立病院・公社病院が今日まで担って築き上げてきた行政的医療の水準を後退させることにつながりかねません。東京都健康長寿医療センターは、こうした中期計画の見直しも受け、都立直営だった時に比べて患者の平均在院日数が18.8日から12.4日と短くなっています。これは採算性優先でベッドの稼働率を上げざるを得ない実態としても指摘されます。

第二の理由は独法化になることで患者の負担増大につながっているということです。

東京都健康長寿医療センターは、直営だった当時に比べ、入院ベッド数は711床から550床へと減りました。差額ベッド数は550床の内4分の1以上の141床へとふえました。これは都立病院の2.5倍です。さらに都立病院にはない「入院保証金」を差額ベッドの利用の場合は10万円の負担がかかるようになりました。このように患者の負担を引き上げ、採算性を上げていくことが優先され、いつでもだれでも安心してかかることのできる病院ではなくなっていきました。

第三の理由は、都民の声に耳を傾けず、独法化となればパブコメすらなくなり、都民は意見をいう機会を失うという点です。

昨年12月にこのビジョンの素案が示され、東京都はパブリックコメントを実施しました。そこに対して1511人もの都民が意見を寄せ、その多くが独法化反対の意見だったと東京都は報告しています。 ところがこうした意見に都は耳を傾けることなく、独立行政法人化の計画を決定しました。さらに独法化となると、都民の意見を聞く「パブリックコメント」の対象にならなくなります。都民が意見をいう機会が保障されないことも明らかとなっています。

コロナ感染拡大の事態を受け、いち早くその指定病院として立ち上がったのは、都内では都立病院、そして公社病院でした。板橋区内では豊島病院がいち早く受け入れてもらえて、本当に助かったと、委員会の中で区の答弁もありました。3月の時点で都内では12病院118床が新型コロナ対応病床でしたが、そのうち80床、約7割を都立・公社の4病院で担っていました。そして今ではコロナ対応病床の3分の1は都立・公社病院が担い、病床数は1000床にまで拡大しています。当然とはいえ、すべての都立・公社病院においてコロナ感染者を受け入れています。

7月10日、東京都医師会が開いた会見で猪口副会長がコロナ専門病院を設置する必要性を強調し、それは「都立か公社がその役割を担うべき」とする考えを示しました。そして多摩総合医療センターでは敷地内に100床のコロナ専門病院をまさに準備をして、その役割を担っていこうとしています。

国は約440の公立・公的等病院について「再編・統合計画」を進めていましたが、今回のコロナ禍を受け、「公立・公的等でなければ果たせない役割」を改めて再検証する」としました。そして「感染症対策の重要性」を踏まえて再整理を行うこととし、8月31日に厚労省は「具体的対応方針の再検証等の期限について」という通知を出しました。

コロナ感染拡大の事態を受け、国が再検証するというのですから、あらためていま、都立病院・公社病院も同じく再検証すべきではないではないでしょうか。  以上、いつでもだれでも安心してかかることのできる医療機関として、感染症や難病、小児、周産期、精神科など、いわゆる行政的医療を担って、コロナ禍のもとで最前線でがんばっている都立・公社病院を地方独立行政法人化にしないでほしいいと求めている本陳情の採択を求めて討論を終わります。

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