「介護保険料を引き上げないことを求める陳情」に賛成する討論

討論日 2020年10月13日

ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して陳情第110号「介護保険料を引き上げないことを求める陳情」に対する委員会決定「不採択」に反対し、討論を行います。

 本陳情は、来年の4月から始まる「第8期介護保険事業計画」における介護保険料を引き上げないで下さいという願いのもと出されてきたものです。

 2000年に始まった介護保険事業は、当初、安心して必要な介護をさまざまなサービスから選択して受けることができ、家族介護や老老介護の負担が解消される、と、「バラ色の老後の暮らし」として描かれ、導入されていきました。ところが3年ごとの見直しのたびに、さまざまな改定が行われ、「保険あって介護なし」、保険料は払わされるが、必要な介護を受けることができないという事態が、次第に広がってきました。

経済的事情のため必要な介護を利用できないケースが後を絶たず、家族の介護を理由とする離職者は毎年10万人前後で推移している実態です。そして介護現場では深刻な経営難と慢性的な人手不足が続いています。このような状況のもと、コロナ禍でさらに深刻な実態が現場に広がっています。

 まず本陳情に賛成する第一の理由は、毎回引き上がる介護保険料が、区民の暮らしを厳しくしているという点です。

  板橋区における第一期の保険料額は本人非課税の標準保険料が3100円でした。それが今では5940円と、約2倍にまで膨れ上がりました。

第5期の時は4450円と、23区で板橋区は一番低い保険料額でした。ところが第6期で約2割の保険料引き上げとなり、この引き上げ率は23区で一番の上げ率でした。さらに第7期では第6期に比べて約1割以上の保険料額引き上げとなり、区民にとってこの6年間の保険料の負担の上がり方は非常に大きなものとなっています。

 そして、介護保険料だけでなく国民健康保険料や後期高齢者医療保険料も負担が引き上がる一方で、いっそう暮らしに厳しさが広がっています。たとえば年金収入200万円の一人暮らしで、社会保険料と税金を合わせた負担は老年者控除が廃止となる前の年、平成17年、今から15年前は8万8700円だったのが、今年度は21万3761円と収入の1割を超えた負担になっています。収入は変わらないのに2.4倍にまで税と社会保険料の負担が増え、日々の暮らしは厳しくなるばかりです。月14万円強の中から、医療にかかる負担や光熱水費、食費を払うと、残らないというより足りないのが現状です。まさにこれ以上の負担増は無理と言わざるを得ません。

 委員会で不採択をした委員は消費税が10%になった時に低所得者への介護保険料の軽減が拡大されたことを言っていますが、介護保険料を納められない所得階層は区の資料でみても第5、第6、第7と、課税世帯も多く、低所得者への軽減制度だけでは全く不十分だということがよくわかります。これ以上の負担増大は「介護難民」「医療難民」を広げることにつながりかねません。

 第二の理由は、介護保険料の引き上げを回避できる可能性があるということです。

 委員会における質疑で区の方からは、「介護給付費の増加が見込まれるので一定の保険料の上昇はやむを得ない、上昇を抑えるためにも介護給付費準備基金を活用する」というものでした。

 しかし、介護給付費準備基金は昨年度末ですでに残高約26億5千万円にもなっています。さらに今年度はコロナ禍の影響を受け、利用抑制が広がっており、当初の想定以上に基金は増えることが見込まれます。また国の改定の影響については、今後どのようになるかまだ判断できない状況です。

 委員会において、この陳情は区が第8期の介護保険料額に対して出されていることが冒頭説明されたにもかかわらず、今後ずっと保険料を引き上げないでいくと準備基金は枯渇していくのではないか、という質疑が行われました。この質問に区は、出し入れがあるのでと、答弁を行ったところ、今後1円も準備基金に積み立てをしないという前提で再度答弁を求められ、区の方からは5年間準備基金は持つことが答弁されました。つまり、この陳情が求める第8期の3年間は十分やっていけることが証明されていました。それも毎年準備基金に積み立てがないと仮定してです。そもそも準備基金に1円たりとも積み立てがされない年はありませんでした。充分介護保険料の引き上げを回避できる可能性が示されています。また、第1号被保険者の負担割合は現在の第7期と同じ23%で変わらないわけですから、可能性はさらに強まると考えます。

 この介護給付費準備基金は、毎年、被保険者がつまり区民が払っている保険料が余った場合に返さないで積み立てているお金です。国や東京都や区から出されたお金は使わなかった場合は返されていまが、被保険者には返していません。ですから、本来ならば余った保険料を積み立てているこの準備基金は全額保険料を引き上げないためにそそいで当然と考えます。

 さいごに、委員会における区の説明は、まだまだ未確定であること、現段階では保険料がどれぐらいになるかは判断材料がまだまだそろっていませんでした。ですから「継続」を主張する委員が3名いました。にもかかわらず継続を否決し「不採択」とすることは議会として「介護保険料引き上げありき」へ誘導することになるのではないでしょうか。

 以上、申しあげてきましたが、厳しさが広がる高齢者の暮らしに寄りそい、次期介護保険料を引き上げない、議会としての意思を示すべきであり、本陳情を採択すべきであることを訴えて討論を終わります。

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