ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して陳情第130号「コロナ対策として医療・感染予防体制の充実や経済的困窮者・感染者への補償を求める陳情」第1項、第2項、第3項、第4項、第5項に対する委員会決定「不採択」に反対し討論を行います。
本陳情は、コロナ感染拡大が11月中旬に「第3波到来」と報道された状況の中、提出されてきた陳情です。
まずこの点からも、第3波の状況において、ひとつひとつの項目がどうであるかを審議したうえで、議会としての判断が求められていることを最初に述べておきたいと思います。
まず第1項目は、コロナウイルスの検査をいつでもだれでも何度でも無料で受けられるようにできる体制と、介護、医療、保育、学校など、人にかかわる職場、集団感染が起きやすい職場で働く職員に対して定期的に検査を実施することを求めています。
区は、現在区内88カ所の医療機関及び板橋区PCR センターで検査が実施されていることを、そして、検査は感度7割であることから、検査そのものに限界があるので無症状かつ接触歴のない方への適用は慎重であるべきと述べています。
この区の説明は たとえば100人の感染者を検査すると30人は陰性(偽陰性)になるということを指しています。しかしこれは、あくまでも臨床診断を目的としたものです。区の説明は、症状が出て病院に来た人が検査を受けた、その結果が7割程度の感度になっているので正確性に欠けるから検査拡大については慎重であるべきというものです。たしかに感染から発症、症状の進行の過程で唾液や咽頭などの上気道部にウイルスが大量に存在する時期と、そうではない時期には変化があります。発症から2週間以上も経過すると、多くの患者ではPCR検査は陰性になります。ですから、1回ぽっきりのPCR検査の感度は7割程度といえます。しかし、いまいわれているPCR検査等の拡大目的は、診断目的ではなく、無症状者の感染力を確認し、保護、隔離する為です。感染力を測定する防疫が目的なのです。
そもそもPCR検査はごく微量のDNAサンプルから酵素の働きで対象となるDNAを増幅させて分析するもので、少量のものを検出・感知するという点では非常に感度は高いということはご承知の通りです。検査目的を「感染力」を測定する「防疫検査」としては、ごく少量でも検知が可能ですから、100%に近い感度を持っています。
さらに感染していない人を正しく陰性と判断できる特異度の確率は90%から99%であるといわれています。日本医師会の有識者会議特別チームでは、精度管理をしっかりやることで99.99%以上、ほぼ100%に近いところまで特異度を高めることができるとしています。検査抑制論を主張する感染症の専門家の中には、検査の専門家が少ないため、こうした検査の本質が知られていないという問題が指摘されます。また、検査拡大にブレーキをかけているのは世界で日本だけといわれています。
感染拡大はできるだけ早期に抑え込むのが原則です。 それは無症状感染者をPCR検査の拡大により、早期に発見して保護することが感染拡大をおさえるカギだということです。
初期の頃は日本だけでなく海外でもこの無症状感染者は重視されていませんでした。特にこの日本では「無症状の人は感染を広げない」という間違った情報まで流されていました。
しかし実際は40%以上の感染は無症状感染者から起こっていることが、さらにウイルスの排出量は症状の出る直前がピークだということがわかってきました。無症状者は症状もなければ感染の自覚もない、ですから集団感染の経路追跡も難しいという問題が立ちはだかっています。
そして、クラスター対策だけでは感染拡大は減らないことは、すでにこの間の感染者数の急増をみても明らかです。
また、板橋区も第6号補正予算において、高齢者、障害者の事業所、施設等への検査費用が盛り込まれましたが、医療機関や学校、保育など、人と人が接触する現場、特に社会的弱者の人が集まる施設等で働く人や利用者、子どもたちへの定期的な検査は集団感染を予防するうえでも当然必要です。
第2項は保健所の職員体制の強化についてです。現在第3波へ入ったといわれる状況にあり、区は必要に応じて人員配置に努めていくと委員会において答弁しています。現在充分であるという体制でもなければ、兼務という緊急対応の体制を残したままです。さらにここにきて、兼務職員を増やしています。つまり体制強化の必要性が増しているということです。新年度に向け、兼務ではなく、緊急時に対応できる保健所の体制が求められていることはいうまでもありません。いついかなる状況になっても保健所がしっかりと対応できるように体制を強化すべきです。
第3項は感染者と濃厚接触者への見舞金の支給と、外出が許されない濃厚接触者への買い物代行制度の実施を求めています。感染者は入院して治療に専念していながら、重症患者以外は公的負担の補償は10日目までで、11日目からは3割の自己負担が求められます。そのため、多くの入院患者が11日目に退院をせざるを得ない事態となっています。こうした問題を解決するためには、区独自の見舞金の支給は必要な支援と考えます。さらに、買い物代行制度については、文京区や港区、青梅市など、各自治体での取り組みも広がっています。本区としても実施すべきと考えます。
第4項は、収入が減った時に利用できる事業として、区民に対する給付金支給事業の実施を求めています。この間臨時特別給付金が実施されて以降も、少なくない区民が現金給付事業を必要としていることはいうまでもありません。それは社会福祉協議会が実施している「緊急小口資金」「総合支援資金」への申請が約1万件にもなる状況を見てもわかります。年末年始の時期を迎えようとする今、区として区民の暮らしに寄りそった対応が求められています。また、陳情は世帯主支給ではなく個人支給を求めていますが、DVなど、ひとりひとりの実情に対応できるようにするためにも、またジェンダーの観点からも世帯主ではなく一人一人個人に支給できるようにすることは当然と考えます。
第5項 は、バイトの打ち切りなどで、収入減が余儀なくされ、アパート代の支払い、食費、さらに学費を支払うことが困難となっている大学生に対する生活費や食料への支援を求めています。
ようやく国から財政支援が行われていますが、その事業の対象とならない学生も多く、他の自治体では、国の対象外の学生への支援を独自で実施などの取り組みが行われています。こうした他の自治体の取り組みにも学び、区内で暮らす学生の実態把握にも努め、ひとりひとりが学び続けることができるよう必要な支援を行うべきです。
以上、述べてきましたが、板橋区においても現在第3波の深刻な事態が広がるなかで、国や東京都に対して対策の強化拡充を求めつつも、コロナ災害から区民を守るために、自治体として、さまざまな施策の強化拡充、新規事業の創設等を実施することを強く求めて討論を終わります。