「陳情第120号 羽田新飛行ルートに関する陳情、陳情第123号 住宅密集地や繁華街での事故被害リスクを無くさせるために国土交通省に危険な都心低空飛行の中止を求め羽田空港機能強化策の見直しを要請する陳情」に賛成する討論

 只今より、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第120号 羽田新飛行ルートに関する陳情

陳情第123号 住宅密集地や繁華街での事故被害リスクを無くさせるために国土交通省に危険な都心低空飛行の中止を求め羽田空港機能強化策の見直しを要請する陳情に賛成し、委員会決定「不採択」に反対の立場から討論を行います。

 陳情第120号および陳情第123号は、3月より運行されている羽田空港新ルートによる区内への騒音や落下物・墜落の危険を取り除くために、運行を中止するよう国や東京都に区として意見を出してほしいというものです。

 陳情に賛成する第一の理由は、騒音・落下物の危険が引き続きあるからです。

 国は騒音について当初想定した値(59~68db)の範囲に収まっていると言いますが、それは平均値であり、北区立袋小学校の測定は9月速報値の最大が70dbと想定を上回っています。同様に豊島区立千早小学校でも9月速報値の最大が71.5dbと、推計値を上回っています。また10月の測定結果の速報によれば、赤塚二中での騒音は69.5dbを記録し、板橋区内において想定された最大値68dbを上回っています。さらにこれは、環境基本法第16条第1項に規定されている62.0dbを大きく上回っているものです。騒音は機体の大きさや天候等の条件によって変化しますが、推計された最大値を越える騒音が出ている事実は非常に重大です。

 千葉県に偏重していた騒音負担を平準化する必要があるとの意見がありました。しかし、騒音負担を平準化することを理由に、都心に新たな騒音の負担を押し付けて良いものではないと考えます。千葉県の騒音負担を減らすと言うならば、首都圏内の各空港に分散するべきであり、すでに容量がいっぱいで人口密集地や繁華街の上空を飛ばさなければならない新ルートを使ってまで羽田空港の発着枠を増やすというやり方はするべきではありません。

 また、2019年に報告された航空機からの落下物は主要7空港で928件、今年6~7月は220個であり、点検を強化しても落下物・部品欠落をなくすことはできていません。12月4日には那覇空港を飛び立った日航機が左エンジンに重大なトラブルを起こし、エンジンカバーが脱落し、那覇空港に引き返す事故が起こりました。今回は那覇空港を飛び立って10分後の事故であったために引き返すことができましたが、これが羽田着陸時に、板橋区上空で起こっていたと考えたら、大きなエンジンカバーが板橋区内に落下していた可能性が十分に考えられます。点検を厳しくし、幾重にも安全対策を講じていても、事故を100%防ぐことはできていません。

 落下物に対して補償制度があると言いますが、もしこうした事故で生命が失われるような事になったら、補償でどうにか済ませられるものではありません。

 そもそも、航空機の運用は経済効率よりも安全性を最優先にすべきものです。騒音も基準を上回り、また落下物・部品欠落もなくすことができない以上、都心上空は飛行すべきではありません。

 第二の理由は、飛ばす必要のない飛行機が飛んでいる状況は見直すべきだからです。

 国際的な新型コロナウイルスの感染拡大により、訪日する外国人観光客は大幅に減少しています。現在都心上空を飛んでいる飛行機の旅客数は、日本航空の10月実績で国際線は前年同月比95.6%減と大きく落ち込んでいます。全日空でも国際線の利用率は9月度で前年比96.2%減となっています。国内線も4割から7割減という状況が続いています。コロナ禍があけたあとの経済発展のために必要だとの意見がありましたが、新型コロナがいつ、どのように収束するかはまだ誰にもわかりません。いつあけるかわからないコロナ後のために新ルートを維持する必要はありません。

 また、首都圏空港機能の強化は国際競争力を向上させるために不可欠と言いますが、空港機能の強化は羽田空港だけで行うべきものではなく、成田空港を始め茨城空港などを活用し、羽田偏重を解消する方向にこそ進むべきではないでしょうか。また、国際競争力の向上を求めているのは経済界であり、そのために都心の住宅密集地や繁華街での安全性や騒音等の環境が犠牲にされて良いものではありません。

 そもそも羽田新ルートは需要の増加による増便に対応するものと説明されていたものであり、需要が失われ増便する必要性が失われた以上、新ルートの運用を見直すことは当然のことであると考えます。

 第三の理由は、国の政策が誤っている場合に自治体が声を上げることは当然だからです。

 品川区では11月9日に、羽田新ルートの是非を問う住民投票を求める署名が約23,000名分提出されました。これは住民投票条例制定の直接請求に必要な約6800名分の3倍であり、来春に住民投票が行われる可能性が高くなっています。港区議会では新飛行ルートの固定化回避を国に求める意見書を採択しています。それぞれ自治体として住民の声を国に届けるべく努力しています。

 国は新ルートの固定化を回避する「固定化回避検討会」を開催していますが、新ルートの廃止を検討するものではなく、現代の最新技術を使って何ができるか検討していこうとするもので、住民の願いを聞き入れるものとはなっていません。

 自治体の役割は住民の福祉の向上を図ることが第一であり、国や東京都の言いなりになることではありません。住民から寄せられた声を国や東京都に届け、その姿勢を正すべく意見を上げることこそ自治体に課せられた役割ではないでしょうか。

 以上の理由から、委員会決定「不採択」に反対し、陳情第120号および陳情第123号に賛成することを改めて表明し、討論を終わります。

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