(質問日 2021年9月22日)
引き続き、日本共産党板橋区議会議員団の一般質問を行います。
1 財政運営に対する基本姿勢と補正予算について
⑴ 区民の命・暮らしを守る大胆な経済的支援を
初めに、財政運営に対する基本姿勢と補正予算についてです。
新型コロナウイルス感染症はいまだ収束の見通しが立たず、国民生活に大きな影響を与えています。8月に発表された今年4月から6月までの国内総生産は、2期ぶりにプラスに転じた一方で、GDPの半分以上を占める個人消費は伸び悩みが見られ、感染拡大による緊急事態宣言等の影響を示しています。経済の専門家からも「行動制限がある限り、個人消費は回復しない。感染の抑え込みと医療体制の拡充が欠かせない」と指摘されています。コロナを封じ込めるという目標を明確にし、本気の対策が必要です。
区には、補正予算編成に当たり、区民の暮らしの実態にどれほど寄り添えているかが問われます。
まず、区民の命・暮らしを守るための大胆な経済対策についてです。
個人消費の伸び悩みは、外出自粛の影響だけではありません。そもそもコロナ前から厳しい消費不況が続く中で、前政権下での2度の消費税増税強行は国民の暮らしを圧迫しています。私たち区議団が取り組んでいる区政アンケートには4,500件を超える返信があり、「仕事が減り収入が激減した」「預金を崩して生活している」など切実な声が寄せられています。
GDPが上向いていても、区民の暮らしがよくなったわけではなく、むしろ厳しい人がより厳しくなっていると考えます。区長の認識をお答えください。
この間、生活支援策として、低所得の子育て世帯に対する給付や生活困窮者自立支援金支給が実施されてきましたが、支援の対象が狭過ぎます。特に生活困窮者自立支援金は要件が厳しく、区内で僅か3,716世帯しか対象になっておらず、多くの方々に届いていません。
年金生活の方やそもそも貸付けを利用できない方など、支援の範囲を抜本的に拡大し、区としても生活支援金等の支給を実施すべきです。見解を伺います。
⑵ 消費税5%減税の実施とインボイス制度の撤回を求めて
次に、消費税5%減税とインボイス制度の撤回についてです。
消費税は逆進性が高く、所得の低い人ほど負担が重くなる不公平税制です。にもかかわらず導入から32年の間に税率は3%から10%へと引き上げられました。その結果、2020年度の国の一般会計では、消費税の収入が最も多く、制度導入以来初めて所得税や法人税を超えました。消費税はお店で買うおにぎりにも光熱水費にも、生きるために必要な最低限のものにまで課税されています。消費税を導入している他の国や地域では、コロナ禍の経済状況を踏まえ、消費税の減税を実施しています。
国に対し、消費税率を当面5%へ引き下げるよう求めていただきたい。また、コロナ禍で経営が苦しい中小事業者にも追い打ちをかけています。昨年支払分は特例措置により1年猶予されましたが、政府が延長しなかったため、今年2年分を支払わなくてはなりません。消費税の支払いについては、納期をさらに細分化し、分納を認めることや納税猶予を適用するよう求めていただきたい。区長の見解を伺います。
2023年10月1日より取引における消費税の仕入れ税額控除方式が適格請求書等保存方式いわゆるインボイス制度へと変わり、今年の10月からは事業者登録が始まります。導入によってこれまでの免税事業者も課税事業者になるよう迫られ、課税事業者にならなければ取引から排除される可能性があると指摘されています。個人タクシーや運送、建設の下請業者、文化・芸術関係者なども対象で、全国で500万社に影響があります。多くの中小事業者を淘汰させる制度だとし、導入の撤回や凍結を求める意見が相次いでいます。
区長はインボイス制度の導入について、事業者の廃業や産業の衰退に拍車をかけるとの指摘に対しどのような認識をお持ちでしょうか。また、地域経済への影響からも区として撤回を求めるべきと考えます。見解を伺います。
⑶ 財政運営について
次に財政運営についてです。
東京都は、都が実施する事業に対する10%シーリングや自治体への2分の1補助事業の見直しを示唆しています。直近の景気動向によると企業の景気は回復傾向との指標もあり、減収幅は縮小されることも考えられます。先走って都民の命や暮らしに関わる事業も含め一律的な歳出削減の見直しが行われれば、区民生活に影響を及ぼしかねません。
東京都に対し、10%シーリングや2分の1事業の一律的な見直しを行わないよう求めていただきたい。また、同様に、区としても、今年度予算編成に向けて実施した一律10%シーリングを改めるよう求めます。見解を伺います。
毎年、9月補正時点では、前年度決算における歳計剰余金が計上されるものの、既に入札が終了している契約案件で生じた差金や執行が見込めない事業などの現状は不明です。現在各事業の執行状況については最終補正の段階まで明らかにされませんが、安易な歳出削減につながらないようにするためにも、現状を把握する財政運営が必要と考えます。
現状の執行状況を明らかにした上で、今、必要な事業にしっかりと予算を振り向けることができるよう、基金や起債も活用し、積極的な財政運営を進めるべきと考えます。見解を求めます。
2 生活困窮者支援と生活保護制度について
⑴ 生活保護制度について
次に、生活困窮者支援と生活保護制度についてでございます。
まず、生活保護制度についてです。
生活保護制度は、日本国憲法第25条いわゆる生存権の規定に基づく制度であり、制度を利用することは国民の権利です。一方で、必要な人の6割から8割が利用できていない状況となっています。にもかかわらず、生活保護を利用することは恥と思わせる差別や偏見、バッシングが繰り返され、事もあろうに政権与党の国会議員までもがあおるといった許し難いことが横行しています。最近でも著名なテレビタレントが生活保護を利用する人やホームレスとなっている人について、必要のない命などと言い、社会からの排除や抹殺まで示唆する発言を行いました。
一連の発言は、差別を扇動しヘイトクライムを誘発する悪質なものであり、命への冒涜にほかなりません。繰り返される差別に対し、断じて許されないという強いメッセージを表明するよう求めます。また、生活保護は権利であること、生活に困ったときは迷わず相談をということを学校や地域などあらゆる機会を通じて広報するよう求めます。見解を伺います。
2021年6月25日に開かれた厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会において、生活扶助の地域区分を6から3とする級地の見直しや自治体の級地区分の指定を入れ替える案が示されました。部会では、これらの案を採用した場合、全体として基準額が引下げとなり、特に都市部での引下げが懸念されるとして、結論に至っていません。ところが厚生労働省は今回の級地の見直しだけは、部会による最終報告書を待たずに、先行して検討に入るとしています。
生活保護基準は2013年から3回にわたって連続して引下げが行われてきました。現状でも生活するだけで精いっぱいという金額でしかなく、とても健康で文化的なと言える水準ではありません。また、就学援助や最低賃金など様々な制度と連動しており、区民全体の生活にも影響を及ぼします。
区長は、現状の基準について、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものと考えているでしょうか。また、基準引下げとなる級地の見直しを行わないよう国に意見すべきと考えます。見解を求めます。
今年1月28日の参院予算委員会の中で、田村厚生労働大臣は扶養照会は義務ではないと認め、2月26日には、厚労省から各自治体に対し、生活保護の扶養照会の運用を改善する通知を送付しました。しかし、別冊問答集を見ると、著しい関係不良の場合の例として20年以上音信不通を10年程度とする改正にとどまっています。支援団体等からもこうした手引きを用いることで、扶養照会は義務ではないということが周知されず、抜本的な改善に至らないと指摘されています。板橋区では、2020年度実績で1,597件の新規申請に対し、扶養照会は493件行っています。そのうち、実際に支援が受けられたのは僅か10件です。こうした実態からも扶養照会は、原則本人の希望によるとすべきです。
親族への扶養照会について、通知後に区としての取扱いが変わったのかどうか、また本人が希望しない限り扶養照会を行わないという運用に改めるよう求めます。区長の見解を伺います。
政府は、生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化について、令和3年度中に結論を得るとし、積極的に外部委託化を進める方針を示しています。
現行法では、ケースワーク業務の外部委託は認められていません。しかしながら、これまでケースワーカーの負担軽減を理由に、業務の一部を切り取って外部委託化が進められてきました。中野区ではさらに踏み込んで高齢者世帯の訪問業務の一部を業務委託していますが、ケースワーカーの負担軽減にもなっていないと厳しく批判されています。
ケースワーカーは家庭訪問や関係機関との連携や様々な調査を通じてその人の生活や人生を知って初めて、どのような支援が必要なのか、どのように関わるのかが見えてきます。このようなケースワーク業務を切り分けて外部委託化することは、生活保護制度そのものをゆがめるものであり、実施すべきではありません。
ケースワーク業務の外部委託に対する認識と質向上のためには専門職としての職員育成・抜本的増員によって解決すべきとの考えについて、区長の見解をお答えください。
後期高齢者医療保険制度における医療費の窓口負担を2割に引き上げる法改正が強行され、怒りが広がっています。加えて、今回の改正と合わせて、生活保護制度の医療扶助についてもマイナンバーカードによる資格確認が原則となりました。そのため医療扶助を利用する方はマイナンバーカードを取得することが求められます。しかし、そもそもオンラインでの資格確認もマイナンバーカードの取得も任意で行われるものです。
生活保護制度を利用する方に任意であるオンライン資格確認やマイナンバーカードの取得を強制することは明らかに差別です。制度導入の撤回と区として実施しないよう求めます。見解を伺います。
⑵ 暑さから命と健康を守るために
次に、暑さから命と健康を守るためにです。
ある70代の方は、年金月額10万3,500円で3万円の家賃を支払い生活しています。家にある唯一の冷風扇が故障し買換えを希望していました。福祉事務所や社会福祉協議会にも相談しましたが、借入れは手続や決定までに時間がかかり諦めざるを得ず、生活保護の基準にも1,300円足りません。結局、次の年金で返す条件で知人からお金を借り、中古品を購入しました。現在、こうしたケースでエアコンの設置のために使える制度はありません。他の自治体では、命に関わるとして設置費用や電気代を助成しているところもあります。経済的な理由によって命や健康が脅かされる事態を招くべきではありません。
高齢者や障がい者世帯、低所得世帯に対し、エアコン設置費用及び電気代への助成を行うこと、また、生活保護制度利用世帯に対しても、エアコンの買換えへの費用及び夏季加算の支給を求めます。見解を伺います。
3 豊かな学校教育のために
⑴ コロナ対策と教育委員会のあり方について
次に、豊かな学校教育のためにです。
まず、コロナ対策と教育委員会の在り方について伺います。
2学期始業を前に、東京では緊急事態宣言が延長となり、事態は災害級と言われる状況となりました。板橋区は予定どおり2学期が始業となりましたが、私たちのところにも不安の声が寄せられ、登校自粛を選択する家庭もありました。子どもたちへの感染の広がりを考えると、夏休みが始まった段階で分散登校の実施や登校自粛への対応を検討すべきだったのではないでしょうか。教育委員会でも議題として議論されておらず、学校現場や保護者からも教育委員会としての役割が見えないとの意見が寄せられています。
教育長は、災害級、フェーズが変わった、という危機感を持っていたのでしょうか。2学期始業に当たり、なぜ教育委員会の議題として分散登校の実施や登校自粛への新たな対応を検討しなかったのでしょうか。見解を伺います。
区立小中学校でもオンラインによるリモート授業が実施されています。しかしながら、始業式当日自宅からオンラインで参加したが、ダウンして見られなかった、参加できる授業が限られているなど、様々な問題が報告されています。本格運用が9月からだったとはいえ、コロナ禍での活用を前提に、より水準を引き上げるべきです。
教育委員会は学校やクラスによって格差が生じている状況を認識しているのでしょうか。また、いつまでにどのような改善を図るのかお示しいただきたい。
また、リモート授業が正式な授業として認められないのは問題です。教育委員会は、出席した日数の中で評価するため、出席停止扱いでも不利益にはならないとしています。しかし、オンラインで授業を受けていながら、その時間が評価されないということ自体が不利益です。現在不登校や病欠などで長期に欠席している児童・生徒について、リモート授業を受けた場合、出席扱いとし、成績の評価を行うという新たな取組が進められています。寝屋川市などほかの自治体ではこの制度を活用し、感染予防のため欠席している児童・生徒も対象にしています。寝屋川市長は「学校に来ていても来ていなくても頑張りを適切に評価してあげたい」と述べています。様々な事情で学校に来ることができない子どもたちにもひとしく学ぶ権利を保障すべきです。
板橋区においても、リモートでの授業参加を出席とし、適切に評価するための手だてを講ずるよう強く求めます。見解を伺います。
⑵ 小・中全学年への少人数学級の拡大を求めて
次に、小中全学年への少人数学級の実施についてです。
長年の国民的要求であった少人数学級が小学校全学年で実施されます。既に35人以下学級となっている小学校1年生を除き、今年から段階的に全学年に拡大していくこととなっています。一方で、中学生が排除されていることや完了までに5年かかること、また30人以下ではなく35人以下にとどまっていることに対し、既に見直しを求める意見が出ています。少人数学級の効果は明白であり、欧米では20人以下学級が当たり前となっている中で、政府の姿勢は問題です。OECD加盟国で最低水準の教育予算を抜本的に増やし、少人数学級の拡大をはじめ、教育環境の改善が求められています。
現在の計画では、今年の小学校3年生は中学校入学まで40人規模のままということになります。これでは時間がかかり過ぎます。計画を前倒しし1学年ずつではなく、2学年、3学年と可能な限り拡大すべきと考えます。また、中学校での少人数学級の実施についても早急な対応を求めます。見解を伺います。
⑶ 教職員の増員と働き方の改善を
次に、教職員の増員と働き方の改善についてです。
区教育委員会が実施した調査によると、夏休み等の休校期間を除き、月80時間以上の時間外在校等時間の教職員が、毎月二桁以上、多いときには200名近い状況となっていることが分かります。教職員の働き方改革推進プラン2021では、在校時間週60時間を超える教職員をゼロにすることを目標に掲げていますが、教職員からは「仕事量が変わらない」「早く帰れと言われ持ち帰り仕事が増えた」などの声が上がっています。意識改革を中心とした取組から脱却し、教職員定数の増員や時数の軽減、仕事量の見直しなど、抜本的な改善に取り組むべきです。
学校現場では「早く帰るように」と繰り返し指導されるなど、パワハラと思われる声も聞いています。教育委員会として不適切な対応となっていないか調査し、是正すべきと考えます。見解を伺います。
抜本的な対策としては、教職員を増やすのが一番の近道です。少人数学級の全学年への適用まで5年かかる上、35人以下学級のため、大幅な学級増にはなりません。現在検討されている働き方改革推進プラン2025には、教職員の業務量を減らすこと、必要な人員を増やすことを明確に盛り込むよう求めます。見解を伺います。
4 ジェンダー平等社会の実現のために
⑴ 男女平等推進センターの機能強化を
次に、ジェンダー平等社会の実現のためにです。
コロナ禍で社会のゆがみが浮き彫りとなり、あらゆる差別を許さないという世論が大きなうねりとなっています。差別があることを認め、なくすための具体的な取組が求められています。区として板橋区男女平等参画基本条例に基づく取組が行えているかどうか、深刻さが増している今の困難を解決するための手だてがとられているかどうか改めて検証し、改善を図るべきです。
まず、男女平等推進センターの機能強化についてです。
板橋区における男女平等・ジェンダー平等を推進する拠点となるのが男女平等推進センターです。センターでは相談室・団体交流室・情報資料センターが設置されていますが、現在その機能は分散化されています。また、相談業務も民間委託されており、DVなど深刻な相談が寄せられますが、相談業務のノウハウを区として蓄積することはできません。また、相談から支援につなぐ体制も不十分です。センターが男女平等・ジェンダー平等の礎となるよう、直接困難に寄り添い解決へと導くことができる役割を果たすべきです。
男女平等推進センターについて相談業務を委託せず、専門職員を配置育成し、解決まで寄り添う支援ができるよう充実を求めます。また、そうした新たな役割を担うことを含め、センターの運営に多様な意見が反映されるよう運営委員会を設置することを求めます。見解を伺います。
⑵ ジェンダー平等の視点に立った区職員の働き方・人事定数管理のあり方へ
次に、ジェンダー平等の視点に立った区職員の働き方や人事、定数管理についてです。
区の特定事業主行動計画にも課題があります。男性職員の育児休暇取得率は、目標を超えたものの対象の僅か20%です。そのうち1か月以上の休暇取得は56%ですが、1年以上は僅か2名しかいません。また、360時間を超える超過勤務となっている職員は98名に上り、20名以内に抑えるという目標と大きな乖離があります。女性管理職の割合に至っては、来年度以降さらに後退するという見通しです。区自身が改善できずに、どうして区民への意識啓発や民間事業者への指導ができるでしょうか。女性差別撤廃・ジェンダー平等を進める行政の責任として、自ら模範を示す本気の取組が求められています。
職員の働き方や人事に関わる業務は、全て人事課が担っています。同時に、定数管理も担っており、その枠の中でのやりくりにとどまってしまうのではないかという懸念があります。区の特定事業主行動計画を検証する会議体を設置し、外部委員なども加えて、客観的な取組の評価を行うよう求めます。
区が公の責任として働く人の権利を保障し、健康に働き続けることができるようにするためには、業務量に見合った正規職員の増員が必須であると考えます。また、賃金格差や官製ワーキングプアの問題解決の観点からも会計年度任用職員の正規化とさらなる処遇改善を求めます。見解を伺います。
5 子どもや子育て家庭への支援について
次に、子どもや子育て家庭への支援についてです。
コロナ禍で、外出自粛や学校・保育施設の休校等への対応により女性労働者の家事労働やストレスが増大し、女性の自殺率も高まっています。家庭でのストレスからくる暴力が、立場の弱い子どもや女性に集中していると指摘されています。特に子どもや子育て家庭を取り巻く状況を踏まえ、区が義務を負う保育及び子どもの権利保障について質問いたします。
⑴ 保育の質の向上のための公的保育の充実を
まず、公的保育の充実についてです。
板橋区は公立保育所のあり方の中で、その役割を地域保育施設間のネットワークの中心保育をリードし保育内容を充実させるとしています。保育水準を明確にし、私立園を含め全体の水準を引き上げていくことは重要です。問われているのは、そのための保障です。
1つは、要支援児保育についてです。
区立保育園では、支援が必要な子どもの受入れを行ってきました。要支援児保育は一人ひとりの特性に応じた対応が求められます。また、療育機関に通う児童もおり、施設との連携も求められます。しかし、職員の加配は、児童3人に対して職員2人、実際に対応する職員は正規の保育士とは限りません。保育資格がない場合もあります。区は、研修を通じて、障がい児保育について研さんを図っているとしていますが、区立園には障がい児保育の専門職員が配置されているわけではなく、現場での対応に任されています。この間の議会答弁では、療育と保育は別物であり、保育園では療育は行わないと答えています。しかし、子どもは全て日常の中で発達すると言われ、保育園での生活も重要な成長・発達の場所です。だからこそ、保育園での一人ひとりの発達をどう保障していくのかが問われているのです。専門機関である療育施設との役割分担はあったとしても、区立園における要支援児保育の在り方として療育という視点を持つことが必要であると考えます。
障がい児保育に関する区の考えを示すことと保育園における療育をどのように位置づけているのか見解を伺います。
2つ目には、保育環境の改善です。名城大学の蓑輪明子准教授が加わった愛知県での調査では、独自加配で保育士が多く配置されている自治体ほど保育士の時間外労働が少ないことが分かったと報告しています。また、保育士の時間外労働が少ないほど就業継続意欲が高いことも明らかになっています。板橋区では独自基準により手厚くしていると言いますが、それでも足りていません。コロナ禍で登園自粛が増加し出席する子どもの人数が減ったとき、感染予防対策の困難さはあっても、一人ひとりに寄り添う保育を体現できたとの意見も聞きました。
現在の児童1人当たりの面積基準と保育士1人当たりの受持ち人数を見直し、空間や人員にゆとりある保育が行えるよう基準の引上げを求めます。見解を伺います。
3つ目には、公立園の廃止では保育の質は守られないという問題です。
保育士の処遇は保育の質と直結します。改善のための加算も行われていますが、私立園の運営費に占める人件費比率もほとんど改善しておらず、公立と民間との給与格差も解消していません。このことは公立園を廃止しても改善しません。むしろ、低い処遇でも保育できるという誤った認識を広げることになるのではないでしょうか。
区は、保育の質や保育士の処遇改善について公の役割をどのように認識しているのでしょうか。保育の質向上のためにはさらなる公立園の廃止計画を撤回すべきです。併せてお答えください。
⑵ 子どもの権利保障を前面にした「(仮称)子ども家庭総合支援センター」へ
次に、子どもの権利保障を前面にした(仮称)子ども家庭総合支援センターについてです。
区が2022年度開設を目指す(仮称)子ども家庭総合支援センターは、子どもの最善の利益を最優先とし、希望に満ちた未来の実現を目指す施設と位置づけられています。では、そのための準備は整っているでしょうか。
虐待の相談や対応件数は増加の一途をたどり、子どもが犠牲になる痛ましい事件が各地で繰り返されています。これから児童相談所を運営する上で、子どもの命や未来を守り抜くという区の決意を示すことが求められています。
まず、子どもの権利条例の制定についてです。
現在、板橋区のホームページでも子どもの権利に関わる特段の表記はありません。児童相談所で働く職員をはじめ、全ての区職員及び区民や地域、事業者、私たち議員の中にも子どもの権利とは何か、区として子どもの命や生活をどう守るのかという考えを広げていく必要があります。子どもの権利条例の制定は、それらの理解を深め、社会的養育など様々な支援の在り方にもつながるものと考えます。
児童相談所開設を機に、区として子どもの権利条例を制定するよう求めます。見解を伺います。
次に、児童相談所における体制強化についてです。
区の計画では、児童相談所に配属される児童福祉司は40名、児童心理司は20名と聞いています。全国の児相での調査によると、各職種の経験年数は10年以上の児童福祉司が15%、児童心理司は22%と他職種と比べても低い実態となっていて、特に心理司は全体として人材が少なく、確保や育成が課題となっています。心理司は、被虐待児や思春期の子どもへの心理的ケアを担う役割ですが、区として特に思春期の子どもとの関わりが少ないことから、今後の育成も見据えると、現在の体制では不十分と考えます。
子どもたちへのケアをより充実させるため、児童心理司の増員を図り、思春期の子どもへの対応について専門性の構築を求めます。見解を伺います。
6 孤立させない介護のあり方へ
⑴ 家族介護の現状と課題について
次に、孤立させない介護の在り方についてです。
介護保険制度が始まり今年で21年目となりましたが、保険あって介護なしの深刻な実態が広がっています。介護を担う人材は重労働・低賃金という過酷な労働環境の下で深刻な人手不足です。また、コロナ禍で収入が激減し、事業所の倒産や休業も相次いでいます。
今求められているのは、介護保険と現実の介護との矛盾や乖離をなくし、本当の意味での安心の介護にすることです。
まず、家族介護の現状と課題についてです。
政府は介護離職者ゼロを掲げ、介護の受皿を2020年度初頭までに50万人分増やすとしていますが、毎年10万人以上の介護離職者の受皿として足りていません。また、特別養護老人ホーム待機者は52万人いるにもかかわらず、解消の対象者を自宅待機の15万人に限定しています。結局、家族が介護の多くを担わざるを得ず、介護者が精神的にも肉体的にも追い詰められるケースは後を絶ちません。介護離職の増、子育てや仕事などとのながら介護、老々介護など、介護保険制度はこうした家族介護の現状の受皿になり得ているとは言えません。
家族構成が多様化し、家族介護を前提とした介護の在り方を根本から改めるべきと考えます。区長の認識を伺います。
介護保険制度では、同居家族がいる場合、原則生活援助サービスを利用することができません。日中独居の場合や介護者の体調悪化の場合などは例外的に認められていますが、限定されています。同居家族がいるかいないかにかかわらず、本来当事者に必要な介護は希望すれば受けられるよう保障すべきと考えます。見解を伺います。
介護保険料や利用料の負担が重く必要な介護が受けられない実態があります。この8月からは施設やショートステイを利用する方の食費・居住費について低所得者世帯に行われてきた補足給付の見直しが行われ、負担が増える世帯が増加しました。食費の日額では、年金収入120万円を超えた人が施設入所している場合、これまでの倍以上もの負担増となります。預貯金の基準も引き下げられ、負担限度額認定申請者の実に51%に影響を及ぼします。こうした経済的負担は、介護を担う介護者の困窮にもつながってしまいます。負担を増やすのではなく、生活を維持しながら必要な介護が受けられるように負担を減らすべきと考えます。
区長は、経済的負担の軽減の必要性についてどのように認識していますか。また、高過ぎる介護保険料を引き下げるよう求めます。併せて見解を伺います。
区は現在2か所にある区立特養ホームの民営化を予定しています。区立では、単身の重度者など民間ではなかなか受け入れられない方々を多く受け入れている実績があります。民営化した後もこうした実績を維持できる保証はありません。現実に区立特養が果たしている役割を考えれば、民営化するのではなく、むしろ、充実こそすべきです。
区長は区立としての意義についてどのように認識しているでしょうか。また、改めて民営化の撤回を求めますが、見解を伺います。
⑵ 「ケアラー支援条例」の制定を
次に、ケアラー支援条例の制定についてです。
日本ケアラー連盟が今年3月に行った緊急アンケートによると、感染拡大の影響で介護者の負担が一層重くなっていることが分かりました。また、経済的にも深刻で、仕事が減った人は14.6%、収入が減った人は全体の16%で、そのうち6割以上が半分以下になったと答えています。特に代わりに介護を担う人がいないと答えた人は50%を超えており、コロナ禍でいかに日常の介護が介護者に重くのしかかっていたのかということが表れています。また、国が初めて調査した18歳未満のいわゆるヤングケアラーについて、中学2年生の5.7%、高校2年生の4.1%が家族のケアに関わっていることが分かりました。政府はさらに調査対象を広げ、支援の在り方を検討するとしています。一方で、専門家からは、支援の対象を年齢で区切るのではなく、全てのケアラーへの支援を見据えた取組が必要との指摘もあります。18歳を超えてもケアが続くケース含め、そもそもの家族介護の在り方を見直すことが求められています。それは家族介護を否定することではなく、介護する者・される者いずれにとってもよりよい選択ができるよう支援することです。
埼玉県では、ヤングケアラーを含む全てのケアラーへの支援を行うとして独自に条例を制定し、既に実態調査を実施しています。区としても、介護者を孤立させず、安心の介護を明確に示すため、ケアラー支援条例の制定を求めます。見解を伺います。
7 高島平グランドデザインとUR高島平2丁目団地建て替え問題について
最後に、高島平グランドデザインとUR二丁目団地の建て替え問題についてです。
現在、高島平地域都市再生実施計画の策定が進められており、7月には骨子案についての住民説明会が区内6か所で行われました。今定例会の都市建設委員会において素案が報告される予定となっています。一方で、UR賃貸住宅高島平二丁目団地では、団地の一部建て替え方針が示され、自治会役員向けの意見交換会が行われています。意見交換会では、URが区に代わって実施計画の説明をし、団地再生のイメージが示されますが、建て替えで家賃がどうなるのか、住み続けられるのかといった具体的な疑問や不安に答えるものにはなっていません。
高島平団地は建設から50年が経過し、入居者の多くが高齢となっており、不安が募っています。区は、建て替えはURが行うこととしており、住民の不安に寄り添う姿勢を全く感じません。建て替えの事業者はURですが、区の計画に位置づけられており、区は関係ないということにはなりません。それとも現在の居住者の多くが住み続けられなくてもいい、仕方がないと考えているのでしょうか。
URが行う意見交換会や区の説明会で両者がそろい、居住者の不安を受け止める機会を持つべきです。区長の認識をお答えください。
その上で、建て替えに関する居住者の不安に応えるため何ができるか、URとも協議していただくよう求めておきます。
以上で、日本共産党板橋区議会議員団の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手する人あり)
◎区長 それでは、竹内 愛議員の一般質問にお答えいたします。
最初は、区民の暮らしの実態についてのご質問であります。
新型コロナウイルス感染症の長期化に伴い、度重なる緊急事態宣言の発出などによりまして、区民の暮らしは大きな影響を受けていると認識しております。総務省の7月の家計調査においては、消費支出は前年同月比で実質0.7%の増加となった一方において、勤労者世帯の実収入は実質2.2%の減少となり、厳しい生活実態が示されております。今後とも国の指標等を参考としながら、コロナ感染症拡大の影響による区民の生活実態の把握に努めていきたいと考えています。
次は、生活支援金の給付についてのご質問であります。
生活困窮者自立支援金は、主に緊急小口資金等の特例貸付けが上限額に達した方を対象に給付を行い、状況に応じて就労による自立や生活保護の受給へ円滑につながることを目的としております。新型コロナウイルス感染症による生活困窮者に対しましては、これまで住居確保や子育て世帯への給付のほか、区では臨時福祉商品券給付事業も行ってまいりました。現時点において区が独自に新たな給付事業を行う考えはないところでありますが、国の動向を注視しながら適切に対応していきたいと考えています。
次は、消費税5%減税等についてのご質問であります。
消費税の減税や免除等につきましては、その影響の範囲が広いため、今般の情勢を踏まえ国レベルで議論すべきものと考えています。今後とも国の動向を十分に注視していきたいと考えています。
次は、インボイス制度の撤回についてのご質問であります。
インボイス制度につきましては、複数税率下で適正な課税を確保するためには、必要な制度であると認識しております。本制度が導入されることによりまして、事業者の事務負担が増えることとなりますが、廃業や産業の衰退に直ちに結びつくものではないと捉えております。制度の導入に向けまして混乱が生じないよう、国税庁など関係所管や団体と連携をして、事業者への広報、周知に努めていきたいと考えています。
次は、東京都の予算編成についてのご質問であります。
東京都は、不透明な財政環境を踏まえ、令和4年度予算の見積りに当たりまして、シーリングの実施や補助金の見直しに関する取組を示しております。シーリングにつきましては、事業実績が目標を大きく下回る事業などに限定し、また補助率2分の1を超える補助事業については、必要性などの検証が指示されておりまして、それぞれ一律に見直し等は考えられないと考えています。しかしながら、区に影響を及ぼす事業見直しに際しましては、事前の情報提供など十分な調整を東京都に要望していきたいと考えています。
次は、板橋区の予算編成についてのご質問であります。
令和3年度予算編成においては、183億円の巨額の財源不足が見込まれたために、緊急財政対策の一環として事業経費の精査を目的に、10%削減の予算要求シーリングを実施いたしました。令和4年度当初予算フレームにおいては、119億円の財源不足が見込まれる厳しい財政状況のため、昨年度に続き緊急財政対策の取組を継続する方針といたしました。そのため来年度予算編成におきましても、財源不足の縮減に全庁を挙げて取り組むことから、8%削減の21億円を目標に予算要求シーリングを行う考えであります。
次は、積極的な財政運営についてのご質問であります。
令和4年度予算編成に当たり、令和3年度の事業中止や契約差金などの不用額を次年度予算に活用するため、予算執行状況調査を行っておりまして、必要に応じて予算の執行状況は把握しているところでございます。補正予算編成に必要な財政は、国、東京都支出金等の特定財源を確保し、財政調整基金を活用する方針であり、契約差金等の不用額につきましては、最終補正予算においての整理を原則としていく考えであります。令和2年度及び3年度を通じまして、新型コロナウイルス感染症対策を中心とした度重なる補正予算編成は、区民の生命、財産を守るため積極的な財政運営を行ってきたあかしであり、今後ともこの方針を継続していきたいと考えています。
次は、生活保護制度の正しい認識についてのご質問であります。
板橋区では、区のホームページや区設掲示板などを活用し、生活保護制度についての説明や案内を行っております。生活保護の申請は、国民の権利であることは厚生労働省もうたっておりまして、区のホームページでも説いております。引き続き、生活保護制度への正しい理解を区民に促していくとともに、適切な生活相談や生活保護の申請につなげていきたいと考えています。
次は、生活保護基準についてのご質問です。
生活保護の基準は、生活保護法に基づき厚生労働大臣が定めることとされておりまして、一般国民の消費実態との均衡上の妥当な水準を維持するように設定がされております。また、定期的な検証結果を踏まえて基準が改定されていることからも、現状の基準につきましては、健康で文化的な生活水準を維持するために妥当なものであると考えています。級地区分の見直しをはじめ、今後の基準改定につきましては、国の動向を注視していきたいと考えています。
次は、扶養照会についてのご質問です。
令和3年2月の厚生労働省からの事務連絡には、扶養義務の履行が期待できないと判断される扶養義務者への照会は行わないなどの取扱いが示されております。区では、これまでも要保護者に対しまして、扶養の可能性について丁寧に聞き取り、要保護者の了解を得るよう努めながら扶養照会を行ってまいりました。引き続き、厚生労働省からの事務連絡により示された運用を行うとともに、要保護者の意向を尊重した扶養照会を行っていく考えであります。
次は、ケースワーク業務の委託についてのご質問であります。
区では、ケースワーカーの機能や能力を補完するため、就労支援業務や健康管理業務の一部を専門性の高い事業者へ委託し、一定の効果を上げております。一方、生活保護受給者の自立の助長に当たり、適切な支援につながらない外部委託は行わない考えであります。また、今後もケースワーカーの能力向上を目的とした研修の実施をはじめ、専門職である福祉職の採用による人材確保、実態を踏まえた適正な人員配置に努めていく考えであります。
次は、マイナンバーカードによる資格確認についてのご質問であります。
医療扶助におけるオンライン資格確認の導入については、医療券発行事務の省力化や誤った診療報酬請求等の事故防止につながり、関係機関の事務負担が軽減されるものであります。生活保護受給者にとりましても、医療券を福祉事務所の窓口に取りに行く手間が省け、診療時に必要な情報を閲覧できることによって、より適切な医療サービスを享受できるものと考えます。一方、オンラインによる資格確認がとれない場合につきましては、必要な受診に支障がないよう、医療券を併用するなどの措置が国において検討されているとも聞いており、その動向を注視していく考えであります。
次は、エアコン設置費用及び電気代の助成についてのご質問であります。
エアコンにつきましては、基本的に個人の所有物であり、高齢者、障がい者、低所得者に対し、一律に設置費用を助成することは膨大な財政措置が伴い、困難であります。また、電気代につきましては、光熱水費として個人が生活費の中から支出するものであり、公的資金による助成はなじまないと考えます。暑さ対策につきましては、広報やホームページを通じました注意喚起、クールスポットとしての区施設の開放、民生・児童委員による見守り活動なども行っておりまして、今後も誰一人取り残すことがないよう取組を進めていきたいと考えています。
次は、生活保護制度上のエアコン設置と夏季加算についてのご質問であります。
生活保護制度上においては、保護開始時や転居時に高齢者や障がい者等、熱中症予防が特に必要とされる方がいる世帯に、5万4,000円の範囲内で冷房器具が支給されております。一方、冷房器具が故障した場合の修理費支給や電気代などの夏季における特別な需要に対する加算は行っていないところであります。区では、近年の熱中症等の健康被害を防止する観点からも、生活保護受給世帯に対する冷房器具の支給や夏季加算の新設について、東京都を通じて国に要望しているところであります。
次は、男女平等推進センターの機能強化をとのご質問であります。
民間事業者による相談においては、その対応の質、関係機関との連携確保が十分担保されていることから、業務委託に支障はないものと考えています。一方、男女平等推進センターにおいては、年3回センター登録団体をメンバーとする連絡会を開催し、意見や要望をいただく場を設けて運営に生かしているところでございます。
次は、特定事業主行動計画を検証する会議体の立ち上げについてのご質問であります。
区では、特定事業主行動計画に基づき、区職員の働き方に関する指標と目標値を掲げておりまして、ジェンダー平等を進める観点からも、その取組状況の見える化とご意見をいただく機会の確保は欠かせないものと考えています。今年度から、各種指標の達成状況について定期的に公表することとし、改善を図りながら目標達成に向けて取組を着実に進めていきたいと考えています。
次は、正規職員の増員についてのご質問であります。
正規職員の配置につきましては、限られた人的資源を真に必要な事務事業に効率的、効果的に配分するため、全ての課においてあらゆる角度から業務量を厳密に算定しております。令和4年度におきましても、いたばし№1実現プラン2025で掲げました計画の着実な推進や社会経済情勢の変化に柔軟に対応できる職員配置と定数の適正化に努めていきたいと考えています。
次は、会計年度任用職員の正規化とさらなる処遇改善についてのご質問であります。
会計年度任用職員制度の導入に当たりましては、特別職、非常勤職員及び臨時的任用職員の任用要件が厳格化されたことに伴い、様々な観点で検討し、職の再設定を行ったところであります。職の再設定に当たりましては、新たな職の必要性や正規職員が担うべきかどうかにつきましても検討をし、新設、廃止、統合や正規職員化を行っております。会計年度任用職員の処遇改善につきましては、地方公務員法にのっとり、国や東京都、他自治体の動向を注視し、適切に対応していく考えであります。
次は、障がい児保育についてのご質問です。
保育園は、児童福祉法に基づき保育の必要性のある児童に対し養護と教育を提供する施設であり、療育機関ではございません。一方で、保育園での要支援児の受入れに当たりましては、療育機関との連携や専門職による巡回支援指導などを実施し、個別の児童の状況に応じた保育を実施しております。要支援児の受入れに当たりまして、一律の指針やガイドラインを作成することはなじまないと考えますが、今後ともそれぞれの児童に適切な保育が提供できるように取り組んでいきたいと考えています。
続いて、基準の見直しについてのご質問です。
既に板橋区では国基準を上回る職員の配置基準を設けておりまして、現在のところさらなる基準の上乗せは考えていないところでございます。また、面積基準を上乗せした場合、現状を下回る保育定員を設定することとなりまして、待機児対策にも影響が出ると考えます。さらに保育事業者に厳しい条件を課すこととなり、私立保育所の新規開設にも影響が懸念されることから、現行基準の見直しは考えていないところであります。
次は、保育士の処遇と公の役割についてのご質問です。
保育従事職員の処遇改善につきましては、国による公定価格の見直しのほか、国や東京都の補助事業と併せ、処遇改善や定着促進のための各種補助金を交付し、私立園を支援しております。さらに、私立園の保育士を対象としたキャリアアップ研修を実施し、区として区内保育園全体の質の向上にも取り組んでいるところでございます。
続いて、公立園の廃止計画についてのご質問です。
保育所の運営に伴う財政負担の増大や今後多くの公立保育園の再整備が必要になることを踏まえて、令和元年に公立保育所の再整備方針を策定いたしました。再整備方針では、民間活力の活用による公立保育所の民営化、統合や閉園、改築等の手法を検討するとともに、保育の質の維持、向上に努めていくことを定めております。引き続き、在園児への影響や保護者の不安に配慮しつつ、持続可能な保育サービスの提供を行うため、方針に基づく取組を行っていく考えであります。
次は、子どもの権利条例についてのご質問です。
子どもが健やかに成長するためには、全ての区民が子どもの権利について理解を深めることが重要と考えます。区では、(仮称)板橋区子ども家庭総合支援センターの設置に当たり、児童養護施設に入所している児童等の権利擁護の仕組みを検討しております。条例制定の検討に入る前に、まずは子どもの権利を保障する仕組みや周知、啓発について取り組んでいきたいと考えています。
次は、児童心理司の増員と専門性の構築についてのご質問であります。
令和4年度に設置する(仮称)板橋区子ども家庭総合支援センターの児童心理司につきましては、児童福祉法等に基づく配置基準数を上回る20人とする予定であります。思春期の子どもへの支援を効果的に行うため、児童相談所派遣研修を実施するとともに、心理職として経験豊かな職員が講師となり、毎週スキルアップ研修を実施しております。引き続き、有識者による研修や特別区職員研修所が実施する研修を積極的に受講するなど、職員の専門性を構築していく考えであります。
次は、介護の在り方についてのご質問であります。
区が実施しました介護保険ニーズ調査によりますと、要介護3から5の同居者を介護する約4割以上の方は、介護者への支援を希望しておりまして、大変なご苦労があるものと考えています。介護に共助、公助の要素を加えた介護保険制度の意義からも、家族への支援につきましては、その必要性を認識しておりまして、引き続き制度の活用による支援を充実していきたいと考えています。
次は、介護の保障についてのご質問であります。
同居の家族等の介護者が、障がいや疾病、就労等のほか、やむを得ない事情により家事を行うことが困難な場合においては、同居している場合においても生活援助を利用できる場合がございます。家族や高齢者による介護に際しましては、個々の事情に適したサービスの周知や活用を通じまして、介護者への支援を引き続いて行っていきたいと考えています。
続いて、保険料の引下げについてのご質問であります。
後期高齢者人口の増加等による、将来の介護給付の増加が想定されますが、持続可能な介護保険制度運営のため、保険料基準額の引下げは困難なものであると考えています。消費増税に際する、政令に基づいた保険料負担の軽減や区独自の生計困難者減額の実施、新型コロナウイルス感染症拡大による減収への保険料減免措置を実施しております。第8期計画期間における保険料基準額算定と同様に、次の第9期計画期間に向けまして、介護給付費準備基金の活用による保険料上昇抑制を可能な限り検討する考えであります。
次は、区立特養民営化についてのご質問であります。
区立特別養護老人ホームの運営法人が、区立施設としての使命感を持って低所得者や重度者などの積極的な受入れを行っているものと認識しております。また、社会福祉法人の運営する民営施設においても、利用者の負担軽減制度などを活用し、区立施設と同様に利用者の受入れを行っております。区立施設と同様に施設を運営している社会福祉法人の理念に期待をし、区立特別養護老人ホームの民営化検討を引き続き進めてまいり、誰もが利用できる施設の整備に当たっていきたいと考えています。
次は、ケアラー支援条例の制定をとのご質問であります。
本年2月に第8期介護保険事業計画を策定し、7つの重点分野の推進や地域包括支援センターの機能強化など、板橋区版AIPの深化、推進に取り組んでいるところであります。地域包括支援センターは、高齢者とその家族を支える相談窓口でありますが、世帯の状況や家庭環境など必要に応じて子ども家庭支援センターや福祉事務所などと連携をし、本人及び介護者の支援を行っております。ケアラー支援条例につきましては、制定の必要性も含めて今後検討してまいりたいと考えています。
最後になります。高島平グランドデザインとUR高島平二丁目団地建て替え問題についてのご質問であります。
板橋区は、高島平地域全体を対象に策定を進めております高島平地域都市再生実施計画の内容について、地域の住民に説明をし、都市再生の取組への理解を得ていく考えであります。団地の再生に関する居住者への説明につきましては、団地を管理するUR都市機構が行うべきものと考えます。
残りました教育委員会に関する答弁は、教育長から行います。
◎教育長 それでは、竹内 愛議員の教育委員会に関する一般質問にお答えします。
初めに、2学期に向けての対応に関しまして、危機感についてのご質問ですが、新型コロナウイルス感染症につきましては、国内で感染が発生した段階から強い危機感を持っており、保健所等区の関係部署との調整や国及び都からの通知への対応等、児童・生徒の安全を第一に考え、学校の運営に当たっております。
次に、分散登校等の検討についてのご質問ですが、教育委員会では、感染力が強い変異株による感染拡大や緊急事態宣言延長を受け、分散登校や休校措置等の感染症対策の必要性について検討を行ってきたところです。適宜、教育委員には報告、相談を行い、2学期からの始業について検討を重ね、意思統一を図りました。児童・生徒の安全・安心を第一とし、学びを止めないことの重要性や児童・生徒の居場所づくりの必要性等を総合的に勘案した結果、オンラインを取り入れた通常登校といたしました。
次に、格差が生じている状況についてのご質問ですが、2学期よりネットワーク等の環境が整った一方で、学校によって活用方法、内容、頻度等が異なる状況であることは認識しております。現在全ての小中学校におきまして、オンラインで授業の様子を配信しており、そのうち教員と児童・生徒間の双方向の学習を取り入れている学校は約6割であります。今後も一人一台端末の活用状況を把握し、全ての学校でオンラインによる授業の充実を図れるよう、指導室や教育支援センターが積極的に学校と関わり、推進してまいりたいと思います。
次に、リモートでの授業参加についてのご質問ですが、本区では、板橋区立幼稚園・小中学校感染症予防ガイドラインに基づき、感染症不安により登校を控えている場合は、欠席ではなく出席停止扱いとしております。学校では、オンライン等により自宅で学習を行った際のプリントやワークシート、レポート等から学習状況を把握するよう努めています。今後もオンラインで授業に参加している児童・生徒に対して細やかな配慮をするとともに、国の動向を注視し、出欠席の取扱いも含め、学びの保障を進めてまいりたいと思います。
次に、小・中全学年への少人数学級の拡大を求めてについてのご質問ですが、少人数学級につきましては、令和4年度の3年生から令和7年度までの期間で35人学級に対応するため、検討を進めるとともに、教育長会等を通じて国や都に対し必要な予算、人員の措置を求めているところであります。教室の不足、少人数学級編制を可能とする教員の確保、ICT機器や備品等の整備など人的、物的課題が多く、区が独自に少人数学級を前倒し実施することは困難であると認識しています。中学校の少人数学級についても同様の課題があり、国の動向も踏まえ、引き続き検討してまいります。
次に、教職員の増員と働き方の改善に関しまして、残業抑制の現場調査についてのご質問ですが、今年6月、区立小・中学校の全教職員を対象として、働き方改革に関する電子アンケートを実施しました。この調査により、次のような状況を把握しているところです。在校時間システムに記録される、時間外での業務や仕事の持ち帰りをしている教職員が一定程度いる一方、働き方改革に意識的に取り組んでいるとする回答が約半数ありました。引き続き、教員が本来の業務に専念できるようにし、教育の質を高めるという働き方改革の目的に資するよう、教職員の意識啓発と効果を見極めた有効な対策を進めてまいりたいと思います。
最後に、次期プランでの事務量減と人員増についてのご質問ですが、アンケート調査の結果から、資格職やサポート人員の配置など、人的支援策を講じることが学校における働き方改革の有効な施策の1つであると捉えております。次期プランにおきましても、人員体制の強化とデジタル化の推進による業務改善等を検討してまいります。また、教員の増員につきましては、特別区教育長会等を通して、引き続き東京都へ強く要望していきたいと思います。
いただきました教育に関する質問の答弁は、以上でございます。