議案第7号2021年度板橋区一般会計補正予算、議案第8号同国民健康保険事業特別会計補正予算、議案第9号同介護保険事業特別会計補正予算、議案第10号同後期高齢者医療事業特別会計補正予算、及び議案第11号同東武東上線連続立体化事業特別会計補正予算に反対する討論

討論日:2022年3月2日

 ただいまから、日本共産党区議会議員団を代表して、議案第7号2021年度板橋区一般会計補正予算、議案第8号同国民健康保険事業特別会計補正予算、議案第9号同介護保険事業特別会計補正予算、議案第10号同後期高齢者医療事業特別会計補正予算、及び議案第11号同東武東上線連続立体化事業特別会計補正予算に反対する立場から討論を行います。

 本補正予算は、本年度の最終補正予算です。

 一般会計の歳入では、主に特別区税・地方消費税交付金・特別区交付金で見込みより約103億円の増です。当初予算で取り崩す予定だった義務教育施設整備基金・公共施設等整備基金・住宅基金の約17億円を丸ごと基金に残し、起債額は約18億円借りなくて済んだというもので、新たに基金へ積み立てたのは約155億円です。

 区が、当初から「景気回復の動きが続くことが期待される」と言い歳入が増える一方で、納税相談による「執行停止」は、1月末に2,430件で、年度末に向けてさらに増加することが見込まれ、支払い困難事例は高い水準が続いています。特別区税の一人当たりの納税額の増と言っても、区の言う「いわゆる中間層」の所得200万から550万円以下が減り、その上下の水準が増加しています。それは、格差と貧困が広がっていることを示しています。

 今年度はオリンピック・パラリンピックの強行で感染を広げた第5波の教訓を生かし、第6波へどのように準備したかが問われています。オミクロン株の発生で第5波より感染者は増え、政府が相変わらずの後手後手の対応に拍車をかける中、地方自治体の住民を守る役割がますます求められています。最終補正予算は、今年度10回目の補正で、年度末の係数整理にとどめず、感染拡大による区民の暮らしへの影響を分析し、命を守り、生活を支える緊急的な対応が求められた予算です。

 反対する第一の理由は、区の言う「新型コロナウィルス感染拡大の長期化に伴う緊急対策」とは言えないということです。

 第6波の感染拡大で、区内の自宅療養者は2月初旬には約5千人におよび、「症状があるのに検査が受けられない」といった状況が広がり、ついには検査もせずに「みなし陽性」などという対応まで始まりました。それは区のPCR検査センターを休止し、検査体制を見直さず「PCR検査は症状のある人」としてきた認識が招いたものです。

 都事業の無症状の人への無料検査も、板橋では開始が遅く、薬局以外の公共施設ではわずか3か所です。同じ時期に新宿では21か所で実施され、「無料PCR検査実施中」と共通のノボリも出してPRしています。板橋区の対応は周知もPRも十分とは言えません。

 自宅療養者への「24時間医療サポート事業」の対応医療機関が増加し、対応件数が伸びているものの、症状がなければ保健所からの連絡はメールが一通来るだけで、不安な思いを抱いたまま、家で過ごさなければならない状態は依然として変わりません。

 ひっ迫する医療機関への支援は待ったなしです。区内の医療機関でも医療従事者への感染や自宅待機者の発生による人員不足で、ベットは空いているのに患者を受け入れられないといった事態が起きています。それは、介護現場も同様で入所施設での人員不足、在宅介護では「ヘルパーが来ない」という状況です。区として医療機関や介護事業所などへの緊急の財政支援に踏み切るべきです。

 緊急事態宣言期間に区民相談を休止した経費を減額していますが、緊急事態宣言の時こそ、電話やオンラインなどによる相談対応が必要になるにもかかわらず、現時点で「今後の検討」というのはあまりにも遅すぎる対応です。

 長引くコロナ感染で、保育園が臨時休園、園児が濃厚接触者に特定された場合の保育料が減額されたものの、現在は「原則開所」としていることを理由に、自主的判断で登園を控える人には保育料の免除を行っていません。それはあいキッズも同様です。保育園やあいキッズから「お願い」のように強制はしていないというものの、実際には育休中やフリーランスの人などに事実上利用自粛のような働きかけが行われています。実態に合わない対応は問題です。

 さらに、困窮する生活への「緊急支援」という視点がありません。

 国が行った18歳までと住民税非課税世帯への10万円給付では、対象外となっている生活困窮者は置き去りのままです。区として、現金給付を行うべきです。

 中小業者の経営状況はコロナの影響を受け続けて限界に来ています。「中小企業事業継続支援金給付事業」の申し込みは、見込みの3千件を超えて3,870件で増額補正となっています。しかし、売上20%未満は対象外で、業種によっては売上が1割減ったら立ち行かなくなる事業者もあり、対象の拡大と給付額の引き上げが必要です。

 社会的弱者が加入者の多くを占める国民健康保険の高すぎる保険料は生活を圧迫しています。所得が昨年度よりさらに3割減少していないと保険料免除の対象とならないため、生活が厳しい人が減免につながらない状況です。区独自の減免拡充を行わないまま、資格証発行や差し押さえを続けるべきではありません。

 第二の理由に、非常事態に応える人員体制の抜本的な対策が図られていないことです。

 長期化するコロナ流行の下で、従前の業務量の増に加え生活困窮者自立支援金や非課税世帯向け臨時特別給付金業務など、事務量が増えています。保健所などへの応援で「兼務」という名の長期間の引き抜きによって、福祉事務所でも欠員状態が続いています。現場は、事務の遅れや病気休職発症の危険と隣り合わせで、新人を育成する環境も確保できないと言います。

 職員の時間外手当6461万2千円の増額に見られるように、長時間勤務が増えています。年度途中でも時間外勤務の状況をつぶさに把握し、例えば保健所などひっ迫した状況がある職場では目安の残業時間を超えたら職員体制を強化するなど、一定のルール化を図るべきです。そもそも、民間委託や民営化などアウトソーシングを進め、長年にわたり職員定数を減らし続けてきたことで、平時から職員体制が十分ではないことが根本にあります。その反省をしなければ、抜本的な体制拡充にはなりません。

 教育現場では、コロナ陽性者や濃厚接触者が出席停止になった場合の児童への指導支援のための学習指導サポーターは、仕事を指示する教職員の感染者や自宅待機者の発生によって十分活用できず、16名に留まりました。児童・生徒の感染者等に対する学習支援を現場任せにせず、教育委員会として必要な教職員を派遣するなどの、緊急対応こそ行うべきです。

 第三の理由は、必要な福祉施策に背を向けていることです。

 全産業の平均賃金と比べて10万円も低いケア労働者への処遇改善は、国の一人当たり9千円という賃金アップでは全く足りないどころか、その9千円すら満たさないものです。そもそも、一人当たりの賃金を支給額の3分の2まで下げてもいいとする制度そのものが問題です。しかし、区は「各事業者の支給額について意見を述べる立場にない」として、上乗せ支給など、区としての独自支援を検討するどころか、国へ意見もしない姿勢は「必要な保育を保障する」自治体としての責任を果たしているとは言えません。

 私立保育園や小規模保育所などで、定数に満たない「未充足」の運営費不足は、コロナで子どもの人数が減少していることもあり、今まで以上に厳しい実態です。特に待機児対策の受け皿として広げた小規模保育所では、これ以上子どもの数が減少したら運営が続けられないと言います。実質待機児が減少してきたら、あとは知らないという区の姿勢はあまりにも無責任で、財政支援に踏み切るべきです。    

 障害者福祉では、コロナなどで施設の休園、利用抑制によって、家族介護の負担増や、当事者の身体的、精神的な不安定などの懸念が広がっています。区として、代替の支援策や事業所支援の強化など、コロナ流行2年目となった今年度は様々な支援策を実施できたはずです。

 第四の理由は、再開発と基金積み立て最優先の行財政運営だからです。

 今年度末の基金残高は、969億円で過去最高額です。コロナ禍にもかかわらず昨年度末の851億円から1年間で118億円も基金を積み増したことは異常です。

 区は財政の厳しさを強調し、緊急財政対策を進めてきましたが、昨年8月の予算執行調査では契約差金を含め26億円の剰余金が生じることが明らかになっています。特別区民税や特別区交付金についても、昨年12月の段階で増収となることが把握できており、現金給付を含めて、追加の事業を予算化することや、緊急財政対策として削減した障害者団体や老人クラブなどの補助金も含め復活するなどの対応ができたはずです。

 介護保険事業は第8期の1年目で、取り崩し額よりはるかに多い額を積み増して、今年度末の基金残高は約34億3,600万円と過去最高額です。第8期の途中であっても保険料の引き下げやなんらかの軽減策に踏み切るべきでした。

 区の「公共施設の廃止と売却を優先する方針」が、火災時の罹災者受け入れの代替とならないまま、まちづくり推進住宅の廃止・売却に至ったことは問題です。焼け出された人に「費用対効果」などと言っている場合ではありません。

 区の再開発事業の進捗の遅れが、経費の減額になっています。板橋駅西口の再開発では、組合設立後の認可申請の段階で、地権者から東京都へ意見書が提出されたことを受けて、認可申請を延期しています。合意形成のために認可申請を見送ったことは重要ですが、そもそも、用地補償の詳細が見えないまま事業認可に進むという再開発の仕組みがこうした事態を生んでいます。用地買収にかかる費用が増えることを理由に東武東上線連続立体化事業基金に約20億円積み増ししています。しかし、大山駅付近の鉄道立体化や駅前広場の用地測量について境界線に合意できた件数などはほとんど明らかにされません。都施工の部分に至っては、「都の事業だから分からない」では、多額の税金を投入する行政として説明責任を果たしていません。

 大山、板橋駅西口、上板橋駅南口、高島平とこれからの開発経費の増大が見込まれ、再開発への税金投入のために、コロナに便乗して、基金積み立てを最優先にしていると言わざるを得ません。コロナという非常事態に区民の暮らしにこそ税金を振り向ける姿勢に立つことを求めて私の討論を終わります。

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