議案第37号「東京都板橋区家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」に反対する討論

討論日:2022年3月2日

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、議案第37号「東京都板橋区家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」につきまして、委員会決定「可決」に反対し、討論を行います。

 本議案は、

1つは、家庭的保育事業者等に対して、設備等の向上に係る勧告を行う場合に、意見の聴取先をこれまで「児童の保護者その他児童福祉に係る当事者」としていたものを「児童福祉審議会」に改めること。

2つ目に、小規模保育事業所À型及び事業所内保育事業所における保育士の配置基準について特例を設けること。

3つ目に、家庭的保育事業者等における諸記録の作成、保存等に関し、書面に代えて電磁的な対応を可能とすることの3点を改正するものです。

 1点目は2022年4月から板橋区が児童相談所設置自治体となり、板橋区においても「児童福祉審議会」が設置されることから、必要に応じた改正と考えます。また3点目の記録媒体について電磁的な対応を可能にする改正については、業務負担の軽減や保護者の利便性の向上に資することは認めますが、データの保存や個人情報の保護が事業者任せにならないようにすることを求めておきます。

 問題は、2点目の小規模保育事業所À型及び事業所内保育事業所の保育士の配置基準に特例を設ける改正についてです。

 反対する第一の理由は、この改正によって設けられる特例とは、小規模保育所等において、朝の早い時間帯や土曜日などの利用児童が少ない時間帯には、これまで保育士2名以上の配置としていたものを1名とし、もう1名は「みなし保育士」の配置を可能にするというものと、さらに、全体の人員配置を弾力化し、必要保育士数のうち資格を持つ人を3分の2以上とするというもので、いずれも、保育士の配置基準を後退させるものだからです。

 板橋区においては、平成28年に保育施設における死亡事故があったこと、小規模保育事業所に配置すべき保育士がもともと少ないことなどによって、これまで導入してこなかったものです。区は、事故検証委員会の報告が一定終わったことなどを理由にしていますが、検証委員会の報告書は「子どもの安全を確保するためには、保育施設に十分な保育士が配置されていることが最も重要である」とし、「保育士の年齢別配置基準を引き上げること」を提言しています。今回の改正は、この検証委員会報告の精神に反するものです。賛成する委員からは「東京都との整合性を保つために、理にかなっている」という意見がありましたが、権限が区に移る時だからこそ、区として検証報告書の結果を生かす立場に立って、保育士の配置基準を後退させる改正を行うべきではありません。

 反対する第二の理由は、小規模な保育園だからこそ。資格を持った保育士を配置できるように財政支援等を行うのが区の役割であるにも関わらず、それをせずに、事業者の経営の安定のためにも必要と、事業者に責任転嫁している点です。

 区は小規模園等への助言指導を行っていく中で、保育の安全、質の確保が一定程度図られたことで、事業者からの要望を受け入れたと言います。しかし、事業者が求めているのは、土曜保育の事業者の負担を軽減する仕組みづくりや、定員未充足支援、何よりも正規保育士が配置できる財政的支援です。

 経営の安定のために資格を持たない保育職員を配置することもやむを得ないと基準緩和をするのは保育の質の向上とは真逆の方向であり、本末転倒です。

 反対する第三の理由は、保育士の処遇改善が不十分なまま、基準緩和を行おうとしていることです。区は、みなし保育士の導入を、保育士不足が解消するまでの「当分の間」としていますが、保育士不足の原因は、子どもの命を預かり、育てる責任の重さと、労働時間の厳しさ、なによりも賃金の低さなどに起因していることは明らかです。また区は「子どもの数が少なくなってくれば、必要となる保育士の数も少なくなっていくということになり、保育士の不足が解消される」と答弁していますが、人口減少を待つという区の姿勢は問題です。今すぐやるべきことは、保育士の処遇改善です。区は、私立認可園の保育士の労働環境の実態調査も、権限がないとして行っていません。対策が全く不十分なまま、保育士不足のつけを子どもの保育の質の低下にまわし、保育士の専門性の軽視につながるような、その場しのぎの対応で済ませていくことは許されません。

 児童相談所設置自治体として、保育に対する大きな責任を負うことなった今こそ、いままでの板橋区の保育水準をこれ以上低下させることなく、さらなる引き上げをしていくことを求めて、私の反対討論を終わります。

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