「志村小学校の存続と、志村地区での施設一体型小中一貫校建設計画の再検討を求める陳情」に賛成する討論

討論日:2023年6月23日 

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第9号「志村小学校の存続と、志村地区での施設一体型小中一貫校建設計画の再検討を求める陳情」に対する、委員会決定「不採択」に反対し討論を行います。

 本陳情は、板橋区が現在進めている、志村小学校と志村第四中学校の施設一体型小中一貫校建設計画について、志村小学校の現在地での存続と一貫校建設計画の再検討及び、再度の住民説明会の開催を求めるものです。

 本陳情に賛成する第一の理由は、これまで行った区の説明会で、住民や関係者から疑問や不安、反対の声が出され続けているということです。

 3月に3会場で行われた説明会は「基本計画案」についての説明会に私も参加しましたが、区の報告書によれば、のべ71人が参加し、合計で178項目の質問や意見が出されています。また意見書は15名から提出され、53項目の意見があがっています。こうした意見や疑問に対して、区は「学校運営ができないとは考えていない」「詳細は設計の段階で」とか、「教育委員会や議会に報告しすでに決定したこと」「検討経過はホームページで」という説明を繰り返しています。「議会に報告し決定した」という言い方は、あたかも区議会も計画に賛成しているかのような印象を与え、誤解を広げるものです。区議会では計画に反対の立場からの質問も行われています。基本計画案が議決されたわけでありません。こうした姿勢にも、不信感が膨らみ続けている状況です。

 区民から反対の声が上がり続ける計画を「決まった事」として、推し進めることは許されません。区の計画は現在のところ、基本設計案の作成段階であり、再検討は十分にできる段階です。

 また区は、令和2年度に行った保護者や入学予定の保護者などへのアンケートで7割が好意的な回答であったといいますが、このアンケートは、8割が「教育内容については知らない」と答えているもので、しかも計画図面などは全く示されていない段階での不十分なものです。その後行われている説明会でも、アンケートに回答した保護者から、「よくわからず回答した。この結果であたかも保護者が賛成したかのように言われるのは困る」という声が出されています。しかも、このアンケートの自由意見で出されていた「校地面積に余裕はあるのか」「中1ギャップはなくなるのか」等々の疑問は、その後も出され続け、全く解消されていません。再度の住民説明会はどうしても必要です。

 第二の理由は、現在の計画は、学校の大規模校化を一層押しすすめるものであり、教育環境を後退させるものだからです。

 基本計画案は、校庭を北側に配置し、校舎を校地のまん中に5階建てで建設するというものです。現在示されている基本設計案では、学校のメイングラウンドの面積が現在の志四中の7000㎡から4800㎡へと減らされ、トラックは150m、直走路は80mがぎりぎりです。

 運動会での観覧席や児童・生徒の応援席などを配置するスペースの余裕はありません。文科省の学校設置基準では、小学校の校庭は720名以上では、7200㎡、中学校では8400㎡です。この文科省の基準は大事な教育環境を守る基準であると考えます。志村小、志四中の一貫校は児童・生徒数だけで900名を超える大規模校です。しかし、区は、国が小中一貫校の校庭の面積基準を示していないこと、また、学校設置基準の但し書きで「地域の実態その他に特別の事情」がある場合などの条文を理由として、設置基準を下回ることを問題なしとしています。しかし、基準がないところで新しい学校を作るのであれば、最善の環境を用意するのが当然です。しかも、校庭は北側で、南側に建つ5階建ての校舎によって常に日が当たらない場所になるという点でも、校庭としての環境は後退するものと言わざるを得ません。また、小学生にとって大切な自然との関わりを作る場所や遊具などの設置スペースも取れていません。中学生の部活動と小学生のあいキッズの活動など全体を見ても、活動場所は狭く、限られたものになることは想像に難くありません。校庭面積、校舎の大きさ、位置は、基本設計の段階で固めてしまったら後戻りができません。無理のある計画は、今こそ、立ち止まって、計画そのものを見直すべきです。

 また、大規模校での、小中一貫教育や教科センター方式の検証が十分に行われていません。品川区では大規模な小中一貫型学校で定員割れが起きているという報道もあります。また教科センター方式については、板橋区が令和2年に取りまとめた検証報告書でも、大規模校になると、教員が生徒全体に目が届かなくなるなどの指摘がされています。これらの検証が行われないまま、この計画がすすめられることは問題です。さらに、今後の少人数学級や、インクルーシブ教育へと向かう学校教育の将来像に応えるものになりません。

 第三の理由は、志村小学校の現在地での建て替え計画が真剣に追求されていないということです。現在地での建て替えは「6年かかる」ということが最大の根拠として、志四中との統合がすすめられていますが、示されているプランは、全面改築で西側に新築するというものしか示されていません。志村小はもともとお城があった場所に建っており、周辺道路が狭隘であることは当然ですが、最も安全な場所であることも明らかです。大事な史跡を残すこと、学校を残すことを最優先して計画を検討するならば、もっとたくさんの可能性や選択肢が生まれるはずです。

 志村小の改築計画が、「小中一貫教育の推進を踏まえ」という教育委員会の方針が示されたことで、志村小の現地での存続が真剣に追求されることなく、小中一貫校のモデル校づくりを誘導していると言わざるを得ません。

 第四の理由は、施設一体型の小中一貫校づくりは、公共施設の再編計画の一環として行われている統廃合計画だからです。

 板橋区がすすめている公共施設の再編計画は、国が進める「公共施設等総合管理計画」に沿って、施設の数や延床面積等を減らすことを目標に、学校も再編の対象にしています。学校には、固有の教育的価値やコミュニティーに果たす役割がありますが、国が進める計画では、それらは無視されて簡単に廃止対象になっているのです。加えて、文科省が学校統廃合の基準を改正し、小中一貫校(義務教育学校)が法制化されたことも、全国の学校統廃合に拍車をかけています。

 板橋区における施設一体型小中一貫校づくりも、こうした計画にそったものであり、板橋区の将来と子どもたちの将来、板橋区の教育の将来に大きな禍根を残すものになりかねないと考えます。今こそ、最大の知恵をしぼって、子どもたちにとって、また地域にとって安全で大事な場所である志村小学校は現地で存続させるための計画を作ること、志村四中は災害に強い建物として改築する計画を作ることを強く求めるものです。

 以上をもちまして、私の討論を終わります。

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