令和元年第3回定例会 討論 いわい桐子議員

発言日: 2019年10月11日

 ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表して、陳情第16号、17号、18号、19号、第20号第1項・2項・3項・5項、第21号第1項・2項・3項・4項・5項、第40号第2項、第44号第2項、45号、第53号第1項の陳情に賛成する立場から討論を行います。
 本陳情は、大山地域のまちづくりと駅高架化、駅前広場等に関して、住民の声を聞こうとしない区の姿勢に対する強い抗議として改選後の区議会に10本以上も提出されたものです。都市計画審議会に出された意見書の多くが拙速に進めないでほしい、と求めているにもかかわらず、区は、これまで今年度中としてきた都市計画決定を、今年中と前倒ししています。ますます住民は不安に感じています。
 陳情項目は、計画の見直しと白紙撤回、拙速な決定の中止と意見書の公開、住民合意、計画の経緯や検証内容の公開、経済効果の検証、地権者への補償など、多岐にわたっています。
 本陳情に賛成する第1の理由は、区の側に住民合意を形成する姿勢がかけらもないことです。
 10本以上という陳情の量とその内容が、住民の声を聞こうとしない区に対する住民の怒りとしてあらわれていることを区も議会も重く受けとめるべきです。
 東武東上線大山駅付近の高架化と側道整備・駅前広場計画は、昨年2月に突如発表され、関連する説明会は4回開催されてきましたが、それは意見を受け止めるものではなく単なる説明であり、反対意見に対してはご理解いただくというものにすぎません。そのありように、住民が怒りと不安を感じるのは当然です。
 都市計画案の公告・縦覧は昨年12月に行われ、意見書は東武東上線高架化について東京都に334通、その側道整備に805通、駅前広場計画に871通が板橋区に提出され、合計で2,000通を超える意見書が提出されています。
 ほぼ反対の意見書には、「住民の意見が反映されない」「納得が得られるよう協議をしてほしい」「住民無視だ」と記されています。しかし、区も、都も立ちどまるどころか、計画が微塵も修正されず、都市計画審議会に付議されました。
 しかも、意見書は今年9月12日の都市計画審議会までの約8か月間公開されることはありませんでした。審議会でも、有識者から「これだけの量の意見書を読み込むのに1週間では足りない。もっと早く配付を」と意見が出ましたが、区は、慣例どおり審議会まで公開を拒否し続けました。公開時期の明確なルールはなく、区の言うような公開する時期によって公平性を欠くことにはつながりません。むしろ、住民合意どころか住民の声に背を向ける姿勢だと言わざるを得ません。
 第2の理由は、区が説明責任を果たしていないことです。
 都市計画法第3条では、行政に対し都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならないと求めています。それは、住民に都市計画やまちづくりに参加を促すためだとされています。
 しかし、区は、鉄道立体化の高架化と地下化の検証過程も明らかにしようとしません。駅前広場に至っては、この間の陳情審議でようやく庁内内部で検討された2017年の駅前広場の設置場所3つの案の検討内容の資料が示されました。
 そこに示された用地取得費約70億円の根拠なども含めていまだ明らかになっていません。また、都が示した高架化は約340億円、地下化は約550億円とした総事業費の積算根拠は示されないどころか、区として東京都に根拠を示すよう一度も要求していません。それは、住民への説明責任を果たすつもりはないと言っているようなものです。
 鉄道立体化に対し、区の税金を高架化の場合でも約44億円投入する計画にもかかわらず東京都の事業だから何もわかりませんと他人事のように言っている場合ではありません。東京都に厳しく要求し、住民に対する説明責任を果たすべきです。
 第3の理由は、高架化ありきの検討と進め方です。
 東武東上線大山駅の立体化は、商店街や町を分断する高架化ではなく、地下化を求める声が高いにもかかわらず地下化の検証はほとんど行われていません。
 都が行った検証は、地形的条件・除却できる踏切と通行できなくなる踏切の影響・総事業費の3条件で、日影・騒音・振動・地下水などの環境的な影響について、地下と高架の場合の比較検証は示されていません。都が行った環境影響評価は、高架化した場合に、今と比べてどういう影響が出るかというものでしかありません。
 区は、2017年に検討した駅前広場の設置場所3つの案が、どれも高架化を前提にしたものであることを認めています。
 また、鉄道立体化の総事業費に対する負担割合は、協議の余地をつくらないため、高架化の場合のみ、国42%、都30%、区13%、鉄道事業者15%とするルールがあり、地下化の場合は協議するといったルールになっています。しかし、大山駅の立体化に対し、地下化の場合の負担割合について、協議すら行われていません。高架化ありきの計画だと言わざるを得ません。
 第4は、都市計画審議会の審議内容と結果を、正確に重く受けとめるべきだということです。
 本陳情に不採択を主張した委員は、都市計画審議会で了承されたことを根拠にしていますが、9月12日の都市計画審議会は、傍聴席が満席の中、開催され3人の委員から議論や調査の不足を理由に「今回は、判断できない」と意見が出されました。判断を見送る動議は反対8、賛成8の可否同数になり、会長判断で議決が実施されたものの、6人の委員が高架化と駅前広場計画に反対する異例の事態になっています。
 しかし、その審議内容について、区は本会議でも委員会でも異議なく了承したことを強調しています。区は異議なく了承することそのものが諮問だったと言いますが、その異議なく了承することに6人が反対したことを真摯に受けとめるべきです。結論のみを根拠に本陳情を不採択にすることは、退去を迫られる住民や商店、事業者に対し、あまりにも不誠実だと言うほかはありません。
 第5に、駅前広場や補助26号線計画に伴う地元地権者への代替地の補償について、何ら示されず、駅前広場に至っては、更地にしてよこせという対応です。長年暮らしてきた住民や商売、事業を展開してきた人たちにとって、現在と同水準の代替地の提供もなく納得できるはずはありません。
 そもそも、特定整備路線補助26号線は、計画そのものが必要かどうかの検証が必要です。2017年7月に国土交通省が示した都市計画道路の見直しの手引きでは、既に事業認可された路線も、着手された路線も廃止を含めた見直しを行った事例が示されています。しかし、東京都は事業認可された道路を見直し対象から外しています。70年も前の計画で、この70年間、発展してきたところに、突如、一方的に事業が推進されてきました。そうした経過から見れば、全国の自治体が道路建設の必要性に対し、認可済みも、未着手も見直しの対象として検討した姿勢は当然です。
 道路建設によって、板橋の顔とも言われるハッピーロード大山商店街の約40店舗が失われます。商店街は今回の計画で年商120億円のうち40%を損失すると指摘しています。一から計画を見直すべきです。
 最後に、東上線立体化を地下化していたらほとんどの陳情要求は解消されるということです。
 都も区も、地下化した場合の土地の価格や経済効果などの検証は全く行っていません。ほかの立体化事例では、地下化したことで土地の価格も上がっています。
 相模原では、高架と地下に150億円の差があったものの、地下化のほうが土地利用で一体的に考えられること、騒音は圧倒的に影響が小さいこと、地権者への影響が最小限に抑えられること等の理由で、地下化を決定しています。
 失ってしまう商店街や町の魅力はお金にはかえられません。高架化選択は、目の前の工事費や用地取得のコストのみを最優先するもので、商店街の歴史的、社会的価値を失うことになりかねません。駅高架化と補助26号線は、白紙撤回し、住民とともに新たな計画を検討すべきです。
 以上の理由で、本陳情の採択を求め、私の討論を終わります。

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