令和元年第3回定例会 討論 石川すみえ議員

発言日: 2019年10月11日

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第73号「東京都板橋区立保育所条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。
 この条例は、区立大山西町保育園を廃止するものです。板橋区は、これまで9園の公立園を民営化してきました。今後は、公立保育所の再整備方針のもとで民営化を進めていく方針で、既に第1期の計画は公表され、第2期の計画作成に入っています。
 今、保育士が足らない状況が広く報道されています。特に民間園での保育士確保が難しい状況があります。民間園では、その運営を維持するため、保育士の賃金を低く設定せざるを得ないからです。この状況で保育士が公務員として勤務できる区立園をあえて民営化することは、到底理解できません。
 区は公立保育園のあり方の中で、これからの公立園の役割を述べています。あり方によると、公立保育園はその地域の保育をリードし、地域の子育てネットワークの中心になることがその役割だとしています。では、大山西町保育園が民営化された後は、当該地域の保育をリードする役割はどの園が担うのでしょうか。近隣の公立園はみなみ保育園しか残っていません。しかも、みなみ保育園が地域の保育をリードしなければならない範囲はかなりの広範囲になります。
 現在板橋区には、大山西町保育園を入れて区立園が38園、これに対し私立園は90園あります。さらに、小規模園は45園、認定こども園は3園、事業所内保育所は6園、ベビールームは5園、家庭福祉員は37名いらっしゃいます。東京都福祉局のホームページを見ると、区内認証保育所は17園です。たった38園の区立園でこれだけの保育施設をどうリードしていくのでしょうか。区は自ら、公立園がいたばしの保育を実践し、地域の保育をリードしていくと説明していますが、公立園が減少させられる中では、公立保育園の役割の負担は増すばかりです。
 区は地域を分ける考え方として育ちのエリアを提唱しています。育ちのエリアは、保育所と小学校が連携し、中学へのスムーズな接続を図るために設定するとされています。しかし、区立大山西町保育園がなくなってしまうと、板橋第十小学校の学校区から公立園がなくなります。小学校区に公立園がなくなってしまうと、小学校への接続はできません。さらに言えば、育ちのエリアの範囲はまだ設定すらされていません。設定よりも先に民営化を進める区のやり方は区の政策と矛盾します。
 保護者の不安も解消されていません。4月からは新しい園舎で、先生たちはみんな入れかわってしまいます。保育が混乱することは必至です。通う子どもたちも不安を覚えます。特に現在4歳児クラスに通う子どもたちは、保育園最後の年が民営化1年目に当たります。就学前の大事な1年間です。この大事な時期を子どもたちも保護者も不安にさらしていいのでしょうか。
 現在の4歳児クラスの保護者には、保育園申し込みのときから民営化の周知はしていたと区は説明しますが、板橋区の待機児童は2019年4月は779名で、保護者が保育園を選べる状況には到底ありません。さらに、4月からは、これまでなかったゼロ歳児保育、延長保育が始まります。その引き継ぎについても不安の声が上がっています。
 これまで大山西町保育園で行われていた月1回のアレルギー対応の会議、要支援児の受け入れは法人に依頼するしかなく、保育の質は担保されません。それでもなお民営化を進める理由の1番に、区は財政上の理由を挙げます。しかし、自治体には必要な保育を保障する義務があります。
 また、板橋区への基金額は、この9月補正で707億円に上っており、区の財政上から見ても民営化の必要はありません。民営化は区の都合です。保護者や子ども巻き込むべきではありません。
 公立園に来ている保護者には、区立なら安心だという気持ちがあります。これは板橋区への信頼そのものです。区はなぜこの信頼をみすみす手放すのでしょうか。
 公立保育所の再整備方針第1期の民営化対象園のやよい保育園の保護者の方からは、「上の子は大山西町保育園に入れていた。そのときに民営化の話が出て、区立がいいと思ったので下の子はやよいに入れた。それなのに在園中に民営化になるなんて」と声が出ています。区はこの声や思いを受けとめるべきです。板橋区は、誰一人取り残さないという理念で子育て政策も行うと言いながら、保護者の不安の声には応えていません。
 8月に公表された重大事故検証委員会の提言では、保育所では十分な人員配置を行うこと、事故が起きた際に保護者に適切な情報提供を行うことが掲げられています。公立園なら区は直接責任を負うことができます。区が進めている公立園の民営化という方針は、提言を受けて大きく見直されるべきです。子どもの安心安全が保障される公立園を民営化し、公的保育を後退させることは、提言の意図に沿っていません。公立園の存在が民間園の保育の水準を引き上げるのです。23区のうちでも、待機児童対策として新たに公立園を新設する区も生まれています。板橋区も公立園を新設する方法に転換すべきです。
 庁舎建てかえの際に、公立園を民営化する現在の方針は、保護者の気持ちにも子どもたちにも寄り添っているとは言えません。改めて民営化方針の撤回を求め、本議案に対する反対討論を終わります。

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