只今より日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第148号家賃補助制度創設等を求める陳情(公営住宅供給促進の件)の委員会決定「不採択」に反対し、陳情に賛成する立場から、討論を行います。
陳情第148号は、低廉な家賃の賃貸住宅の不足を解消するために、公営住宅の供給を促進するよう国に意見を上げてほしいという陳情です。
陳情に賛成する第一の理由は、実際に公営住宅が不足しているからです。
2020年度に行われた板橋区内の区営住宅の申込みは、家族向け10戸の募集に対し96名の申込みで9.6倍、高齢者住宅は単身者向け3戸に対し100名で33.3倍、世帯向け2戸に対し23名で11.5倍と大変狭き門となっています。都営住宅は更にひどく、5月期での募集は3戸、11月期は4戸と供給そのものが非常に少なくなっています。区議団に寄せられる相談では、人によっては何年も何十回も申し込んでいるが未だに当たらない、と言う声を聞きます。絶対的な供給量が不足しています。
区が行った「板橋区住まいの未来ビジョン2025」策定のためのアンケート調査では、現在の住宅費負担について「贅沢はできないがなんとかやっていける」が45.4%、「生活必需品を切り詰めるほど苦しい」という方も10.4%と言う実態が報告されています。年齢別では70代で「生活必需品を切り詰めるほど苦しい」が18.7%と多く、70代の40%、80代の46.2%が低廉な家賃の公営住宅への住み替えを希望しているとの調査結果が報告されています。
区は6月7日の都市建設委員会で、「区内の公営住宅は23区内で4番目に多い26,908戸」と説明しましたが、その公営住宅戸数には家賃の高いUR賃貸住宅が含まれていて、都営住宅などの低廉な家賃の住宅は約12,000戸であることが明らかになりました。その上で区は「住宅の家賃が払えないと言う相談が数多く生活支援課に寄せられている、コロナの影響もあってそういった方が増えている」「低所得の方の住宅という意味では確かに不足している」といった認識を示し、公営住宅が不足していることを認めています。公営住宅が不足していることを区として正面から認識するべきです。
第二の理由は、公営住宅が不足していることを知りながら増やそうとしていないからです。
国や東京都は公営住宅の供給について、現状維持として数を増やさないとしています。不採択を主張した委員は「高層化することで微増する」などと言いますが、板橋区も国や都に習い一戸も増やさない計画を継続するとしています。しかし、区は2019年に見直した人口ビジョンで、区内人口の高齢化率が上昇していくこと、低所得の高齢者が増えることを予想しており、高齢者における住宅困窮者が増えることを十分に予想できます。また「板橋区住まいの未来ビジョン2025」策定のためのアンケート調査によると、年齢別住宅に対する取り組みとして重要だと思う項目の設問に対し20代からの回答で最も多かったものは、「若い世代の住まい確保や家賃負担軽減への支援」が60.2%であり、若年層にとっても低廉な家賃の公営住宅が必要であることを示しています。
区は住宅困窮者について調査もせず、把握していないと言いましたが、人口ビジョンやアンケート調査結果などから、住宅困窮者が増えることや公営住宅が不足していることを知り得る立場にありました。知っていながら公営住宅を増やそうとしてこなかったことは重大です。
第三の理由は、区として国や都に対し意見を言う必要があるからです。
政府は今年3月に「住生活基本計画」を閣議決定し、「安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」を計画の中心に位置づけています。この中で「地方公共団体は低額所得者の住宅不足を緩和するために公営住宅の供給を行わなければならない」としています。しかし、公営住宅の供給量の9割以上が空き家募集であり、計画は見かけ上の供給を増やすために「空き家を作り出して増やすため、居住者の追い出しなどを積極的に行え」というものになっており、新規の公営住宅建設を促すものではありません。
この閣議決定に基づく東京都の計画はこれから策定される予定です。策定にあたっては「住民の意見を反映させるために必要な措置(パブコメ)の実施」と、「区域内の市区町村と協議しなければならない」とされています。東京都が計画を立てる今、国や都に対して意見を上げる必要があります。
公営住宅の整備・拡充は国と地方公共団体が協力してすすめるものであり、一方的に国や東京都がその供給量を決めるものではないことがわかります。連携するパートナーとして、地方公共団体である板橋区が国や東京都に対してしっかりと意見を上げる必要があります。
以上の理由から、陳情第148号家賃補助制度創設等を求める陳情(公営住宅供給促進の件)については改めて採択すべきであることを表明し、討論を終わります。