討論日:2023年3月23日
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第28号「東京都板橋区国民健康保険条例の一部を改正する条例」に反対する立場で討論を行います。
本議案は、2023年度の国民健康保険料を引き上げるものです。この改定により、新年度の医療分の一人当たり保険料は、119,665円で前年度比9,771円もの負担増です。給付減による介護分の引き下げを入れても、最高限度額は2万円の引き上げで、介護納付金保険料と合わせれば104万円と過去最高額です。今回の改定で、ほとんどの加入者の保険料が引き上げです。
本議案に反対する第一の理由は、高すぎる保険料をさらに引き上げるからです。国民健康保険料は、どの医療保険よりも高く、例えば35歳夫婦10歳の子どもがいる3人世帯で年収300万円の場合、新年度の国保料は、296,721円で、協会けんぽの保険料148,600円と比べても2倍もの保険料負担です。保険料の計算方式が住民税方式だった2010年度と比べても収入が変わらないのに、約2倍に引きあがっています。
社会保険への移行も増え、国民健康保険の加入者は減少しています。加入者は、高齢者、障害者、無職の人や自営業、非正規雇用などの社会保険などへの加入が難しい人で構成されています。板橋区では、国保加入者の約84%が年収200万円以下の世帯で、低所得者が多く、これ以上の保険料負担増を行うべきではありません。
反対する第2の理由は、国保料を引き上げない努力はもっとできたからです。
特別区区長会は、国の言うがまま国保会計への繰入額を6年かけてなくす計画に固執してきました。今回の改定で、特別区区長会が、6年間かけて進める法定外繰入削減の今年度分1.3%の負担増を据え置いたこと当然です。本来なら、据え置きではなく、次年度の大幅な負担増につながる法定外繰入を削減する計画そのものをやめるべきです。
さらに、国や東京都が負担すべき新型コロナ感染症による医療費増の分を、特別区区長会として公費を投入して、保険料引き上げの抑制を行いました。しかし、高齢化や低所得のため、医療を必要としている人が多く、その医療費の半分も負担させること自体が保険料を引き上げてしまうのです。
健康福祉委員会で値上げに賛成した委員は「高すぎることはわかるが国の制度だから国が解決すべき」と言いましたが、保険事業の運営主体である保険者は東京都と板橋区です。その保険者としての姿勢が問われています。
今回の改定による負担増の影響額は約8億8千万円です。多くの基金残高を抱える板橋区です。区が影響額を繰入れれば、コロナや物価高に苦しむ国保加入者に新たな負担を押し付ける必要はありません。区として保険料引き上げを回避すべきです。
反対する第3の理由は、医療を受ける権利が保障されないからです。
現在、保険料を払うことができず、資格証が発行されている世帯は、1,305世帯で、連絡が取れていない世帯にも資格証を発行しています。国会でも答弁されているように、自治体が資格証を発行できるのは、滞納世帯に「特別の事情」がないと明確に判断できる場合に限られるべきです。
区は「10割払えば医療を受けられる資格証は、医療を受ける権利を保障している。」と言いますが、保険料が払えない世帯が、10割の診察料を払って医療を受けることが難しいことは明らかです。少なくとも、長引くコロナや物価高で生活が厳しい状況からも、資格証の発行は見送るべきです。
しかも、非課税世帯に対して差し押さえを行っているのは3特別会計の中でも国民健康保険だけです。非課税世帯の実情把握は6割に留まり、4割は連絡が取れないまま一方的に差し押さえています。区内でも、個人タクシーの運転手が保険料を払えなくなり、資格証の発行、差し押さえで医療機関に掛かれないまま、末期がんとなったケースが発生しています。生きる権利も医療を受ける権利も奪う資格証発行や差し押さえは見直すべきです。
反対する第4の理由は、子どもの保険料軽減を拡充していないからです。
国民健康保険だけが、収入のない子どもからも保険料を徴収しているため、子どもが多い世帯ほど保険料が高い「不公平」な仕組みです。昨年から未就学児の均等割り額が半額に減額されていますが、その対象は、2,748人で国保加入者のわずか2.56%です。対象拡大は待ったなしの課題です。しかし、新年度はその拡充がありません。少子化対策と言いながら、こうした子どもへの不公平な負担を解消する努力は全く不十分です。
健康福祉委員会で、「28号に反対するのは無責任だ」という意見がありましたが、あまりに高すぎる国保料は問題です。2月24日の国保運営協議会でも私を含め3人の委員が値上げに同意していません。国の制度だから保険料負担増は仕方ないという方が、区民の命や健康を守る役割に対して無責任だと言わざるを得ません。
最後に、今回の改定に盛り込まれた出産育児一時金の支給額8万円引き上げは否定するものではありません。しかし、あまりにも高すぎる国民健康保険料のさらなる負担増を認めるわけにはいきません。
以上で、私の討論を終わります。