2023年度当初予算に反対する討論

討論日:2023年3月23日

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第1号「2023年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号「同 国民健康保険事業特別会計予算」、議案第3号「同 介護保険事業特別会計予算」、議案第4号「同 後期高齢者医療事業特別会計予算」、議案第5号「同 東武東上線連続立体化事業特別会計予算」に反対する立場から、また議案第25号「同 一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論を行います。

 2023年度当初予算は、一般会計歳入歳出ともに2372億5000万円、前年度比3.2%の増、国保・介護・後期高齢・東武東上線立体化の4つの特別会計を合わせると総額3541億4200万円、前年度比2.8%の増となりました。

 歳入においては、労働人口の増や一部企業の法人住民税の増などにより、特別区民税26億円の増、特別区交付金50億円の増など大幅増収となっています。結果、財政調整基金からの繰り入れを行わないどころか、2021年度末から175億円もの基金の積み増しを行い、2022年度末では1144億円、過去最高の基金残高となりました。区は「収支均衡」の予算となったといいますが、区民生活に必要な予算を措置せず、基金に積み上げることを「収支均衡」とは言いません。

 区民生活はどうでしょうか。区の金余り状況とはまるで別世界が広がっているのではないでしょうか。区民生活の困難を解決することに真剣に向き合う予算になっているかが問われています。

 反対する第一の理由は、区民のくらしの実態に応えた支援策が打ち出されておらず、区民生活を支える体制が全く不十分で、さらに区民負担をふやす予算になっているということです。

 41年ぶりの物価高騰、大企業を中心に賃上げが発表されても、とうてい物価の上昇率には追い付かず、働く者の7割を占める中小企業で働く人たちの賃金は置き去りにされています。年金は下がるばかり、医療や介護の負担は増えるばかりです。区民生活への経済的支援の必要性は、コロナ禍前より一層深刻さを増していると言っても過言ではありません。区は「物価高克服」の対策事業を示していますが、全く不十分です。

 コロナ禍で現金給付事業が区民生活を支えたことがわかっていながら、「国がやらない」こと、そして「経営刷新計画」の方針を理由に打ち出そうとしていません。

 物価・原材料費の高騰、コロナ期の借入金の返済が始まる中小業者からの持続化給付金や家賃助成の継続を求める声に応えようとしていません。

 産業経済費が1%を超えましたが、その中心はいたばしpayの発行です。4億9277万円は区商店街連合会への負担金・補助金ですが、その内訳は、区民と店舗へのポイント還元で3億8000万円、残りの1億円強は、チャージ手数料を含めてデジタル地域通貨管理会社への支払いです。デジタル関連会社に多額の支払いが行われても、多くの区民は使えないサービスで、効果的な施策になっていません。

 生活困窮者対策が全く不十分です。コロナ禍で社協が実施した緊急小口支援金と総合支援金の返済が始まっています。減免手続きが約3割にとどまっており、手続した人も、手続きできていない人にも、厳しい暮らしの実態が広がっていることは間違いありません。区として相談体制の強化と現金給付事業など積極的な支援策が必要です。また、「住居確保給付金事業」はいつまで続けられるのか不明確です。家賃助成事業などに踏み切るべきです。

 喫緊の課題である自殺予防対策は、新年度増額するものの、この3年間の自殺者増加に対する反省や分析がありません。自殺者の「経済的な困窮」を把握しておきながら、新たな計画には「貧困対策」の視点はなく、直接的な支援策に踏み出していません。

 コロナ対策では、政府による「5類」への引き下げを容認する姿勢は問題です。区は診療報酬の引き下げや患者負担の増大によって、必要な人が必要な医療を受けられない事態が生まれる可能性があることを認めながら、今後のコロナ対策を「5類」前提で行おうとしています。昨年秋以降、発生届けの対象が絞られたことによって保健所職員の残業は減ったものの、それをもって体制が足りているとは到底言えません。感染症による医療崩壊という事態を生んだ教訓から学ぶことは、保健所の体制強化です。人員増を行わず、今後も部内調整や派遣に頼る方向に固執する姿勢は認めることはできません。

 医療や介護についてはどうでしょうか。

 国民健康保険では、保険料が高すぎて払えない実態が広がっています。国保加入者の83%以上が所得200万円以下で、低所得者・高齢者・障害者が多くを占めています。これ以上の保険料引き上げは無理です。区独自の保険料減免事業などを実施すべきです。また、非課税世帯の約4割の世帯とは連絡も取れないまま強制的に差し押さえを実施しています。命を守る国保が命を奪う原因を広げることは、人権侵害で許されず、ただちにやめるべきです。

 後期高齢者医療では、国の経過措置もなくなり、保険料負担が引き上がりました。昨年10月からの窓口負担2割への引き上げは、後期高齢者の約21%が対象となり、負担増によって医療費が抑制されることが新年度予算に表れています。区独自で75歳以上の高齢者に対する、負担軽減策を実施すべきです。

 マイナンバーカードの取得推進が、国の方針によって強力に進められていますが、個人情報の流出の危険や、認知症や入院などで取得できない環境にある人がいることがわかっていながら100%取得を目指すとし、保険証との一体化をすすめる国の方針を「便利になる」といって容認する姿勢は、弱者切り捨て、医療を受ける権利を奪うものです。

 介護保険では、一昨年の法改正で、「補足給付」の食費代が引き上げられ、レスパイトの役割をもつ「ショートステイ」の利用者が減少していることに、家族介護の深刻な事態が表れています。また、介護給付の減は、コロナの影響だけでなく、資材高騰などの影響を受け、介護施設整備が計画通り進んでいません。利用負担の大きさによる利用抑制も起きています。区として、利用料の軽減や施設整備への支援に背を向けていては、介護の安心はつくれません。

 介護給付費準備基金が今年度末で35億円となりました。これは、基金の積み立て額が予算を大幅に上回っての結果で、第8期の介護保険料は据え置くことができたことが明らかになりました。

 保育事業では、2022年4月入所分の保育園の実質待機児はゼロになったことを理由に、新規園を作る計画を後退させています。しかし、2023年4月入所の二次申し込みが終わった段階では、要支援児の入所希望児童全員の入所は決定していません。現在の保育士の配置基準が障害のない児童を前提としている上、定員未充足に対する支援策も十分にない中では、まず要支援児から待機児童になるという差別的な状況を作り出しています。待機児童の解消とインクルーシブ保育の実現のためにも、保育士の配置基準の引き上げと未充足へのさらなる財政的支援策が必要であり、区の姿勢はまったく消極的と言わざるを得ません。

   

 反対する第二の理由は、古い行革方針に固執し、駅前再開発事業を聖域にする姿勢が、基金ため込み優先の行財政運営を生んでいるということです。

 一般会計は3.2%の増で、主なものは、まちづくり事業の進展としています。4つのまちづくり事業に84億円が計上されています。

 JR板橋駅前では、B用地を定期借地権付きで提供し、ビル床の一部を区が賃貸料を払って公益施設にすると言いますが、区民要求が反映される保証はありません。

 大山駅前地区は、都市計画道路の道路用地を確保するための再開発を誘導し、商店街を分断。東上線大山駅は「地下化」を求める区民の声を封じて、高架化を前提に、区は駅前広場計画を強行しています。

 上板橋駅南口では、開発のために町区域を変更し、居住者は住所変更を迫られる事態になっています。商店街の人流は3割減としながら、にぎわいを維持する施策がありません。

 高島平では、駅前のUR二丁目団地と旧高七小跡など公共用地部分で地区計画づくりに着手する計画ですが、公共施設の計画が示されず、住民の声が反映されていません。

 区がすすめるまちづくり事業は、判を押したように、大手デベロッパー、ゼネコン主導で進む、タワーマンション頼みの再開発です。今まで板橋区を支えてきた住民が「住み続けられない」「営業が続けられない」まちづくりであり、住民主体のまちづくりになっていません。東武東上線連続立体化事業特別会計への繰り入れは、こうした住民不在のまちづくりを聖域化するものです。

 さらに、こうしたまちづくりは、人口減少といいながら、都心一極集中を呼びこみ、金融緩和政策なども影響して、都心部のマンションの価格を上昇させ、そのあおりで、貧困層がますます住宅から遠ざけられる事態を生んでいます。区は、公営住宅建設も低所得者への家賃助成も行わない中で、住宅格差が拡大しています。

民営化方針が、高齢者や子ども、障害者に対する公的責任の後退につながっています。

 特別養護老人ホームの待機者が、未だ1,000人以上いるというのに、区立の特別養護老人ホームを民営化するという区の姿勢は、待機者解消にも逆行するものです。

 区立弥生保育園の民営化では、初めて株式会社が受託することになりました。採算重視の経営の下で、区立保育園が果たしてきた公的責任の後退は必至です。

 不登校対策として打ち出された「学校における居場所推進事業」では中学校3校分がNPO法人に事業委託して行うことが示されました。「教員だけでは子ども一人一人の声にしっかり寄り添うことができない、学習支援においても子どもの多様なニーズに応えられないため」としていますが、教員不足の解消、少人数学級の早期実現に背を向けて、一人ひとりに向き合うことを民間になげ出す区教育委員会の姿勢は到底容認できません。

 福祉事務所では「再任用の退職不補充」を理由とした窓口の民間委託は問題です。生活しごとサポート事業の委託の拡大で窓口人員を確保するといいますが、くらしに困難を抱えた区民が、一番先に相談する窓口は本来公務員が責任を持つべきです。区民の個人情報保護という点でも問題です。貧困の相談窓口で、低賃金の官製ワーキングプアが拡大されるなど認められません。

 ケースワーカーは、志村福祉事務所で1名増にとどまりました。標準数である80:1で算出すると、板橋福祉事務所で4名、赤塚福祉事務所で5名、志村福祉事務所で5名、合計で14名足りません。執務面積も狭く、福祉事務所の増設も含めて検討すべきです。

 区営自転車駐車場に一括して指定管理者制度を導入する問題では、当日利用がなくなったり、駐輪台数が減らされるなど区民サービスの後退が生まれていることと合わせて、シルバー人材センターで働く高齢者の就労を5割以上も削減することになっていることは重大です。   

 こうした、徹底した民営化、民間委託の手法が、日本全体を「賃金が上がらない」国にしている最も大きな要因であることを、板橋区は自覚し、この方針を転換することが必要です。 

  

 区民生活にとって必要な事業の削減が行われていることは問題です。

 ホームレス生活サポート事業を廃止し、見守りやイベント事業は廃止になりました。区は、志村・赤塚の福祉事務所に分室をつくり、支援場所が増えるといいますが、委託事業者も変更になり、利用者は困っています。路上の人が安定するには長い時間が必要です。スクラップする必要はありません。

 板橋キャンパスの障害者施設の計画が予算に盛り込まれませんでした。区として、資材高騰などに対応せず、計画そのものが3年遅れになったのは重大な問題です。一方で、福祉園の民営化だけをすすめる姿勢は認められません。

 新たな学校統廃合である志村小、志四中の小中一貫校計画は、教育環境が後退することは明らかです。特別支援教育や少人数学級など、これからの教育に十分対応できない計画となっており、見直すべきです。

 こうした行財政運営によって、基金積み上げが優先されています。区は1144億円もの過去最高の基金の積み上げを「結果だ」いいますが、現金給付事業はやらない、民営化の推進、事業の縮小・統廃合、そして受益者負担主義による保険料や利用料の値上げなど、バブル崩壊期のリストラ・行革方針にいまだに固執し続けていること、そして、再開発と普通建設事業費の確保に固執し続ける姿勢が、ため込み優先の区政運営を作り出しているのです。区民の税金は区民のくらしのために、積極的に使うべきです。方針転換が必要です。

 反対する第三の理由は、SDGSをすすめると言いながら、重要課題についての取り組みが全く

重点に座っていないということです。

 ゼロカーボンシティ宣言をしたにもかかわらず、気候危機非常事態の認識と取り組みは全く不十分です。政府の原発回帰の姿勢を容認し、開発事業がもたらす環境負荷も軽視されています。再エネ・省エネ・畜電が必要とわかっていながら、区民への補助事業が行われていません。

 プラスチックの再資源化が始まるというのに、東清掃事務所で3人、西清掃事務所で5人の退職不補充による削減を行いました。正規職員が行うふれあい指導の後退は免れません。

 ジェンダー平等の取り組みがすすんでいません。特定事業主行動計画の目標も達成に程遠い状況です。女性管理職の比率は20.8%にとどまり、超過勤務360時間超の職員が目標20名に対し131名、未就学の子どもがいる職員は目標が5名に対し13名と異常な事態です。にもかかわらず、抜本的な定数改善が行われていません。

 板橋区平和都市宣言は、二度と戦争による惨禍を繰り返さないために、日本国憲法の立場から平和を発信していくことを宣言しています。政府が進める大軍拡方針は、憲法違反であり、専守防衛の方針を投げ捨て、日本に戦争を呼び込む危険なものです。板橋区の平和都市宣言の立場からも反対の声をあげるべきです。核兵器禁止条約を批准しない政府を「見守る」と言って、事実上容認している姿勢は問題です。

 最期に、予算修正についてです。

 小中学校の給食費無償化、シルバーパス購入費用の助成、産後1ヶ月児および産婦検診費用助成、公園公衆トイレの洋式化を推進するため、総額14億円の修正提案です。

 分科会審査では、予算執行の方法などについて詳細の具体化を求める質疑がありましたが、予算の議決は「款」「項」であることはご承知の通りです。「目」「節」にわたる事業執行のあり方は、執行機関が責任を負うものであって、その方法をしばるものであってはならず、提案者が「目」「節」まで示しているのは、執行機関とつまり長との調整の上で、算出根拠について示すためのものです。

 また、予算修正の度に「財政調整基金を取り崩すのでだめ」という議論がされ続けていますが、区長提案の予算もあくまで予算であり、「取り崩す」のではなく、「繰入額を確定する」ものであること、あくまで予算額を決めるものであるという点についてご理解をいただきたいと思います。今回は「収支均衡予算」を崩すからだめという意見が出されていますが、これは冒頭にも申し上げました通り、区民生活にとって必要な予算編成をすることこそが大事なのであって、基金を積み上げながらの「収支均衡」には意味がないということです。

 議員の予算修正提案は、議案提案権に基づき、地方自治法に定められた手続きに則って提出されています。その審議は、板橋区議会の議会ルールに基づき各事業ごとに所管の分科会に負託されて行われたものです。しかし、分科会審議において、議案の提出そのものに法的な疑義を呈するような発言があったことは問題です。分科会審査におけるこうした発言は、議員自ら議会の尊厳を貶め、板橋区議会を冒涜するものだということを、強く指摘しておきます。

 また、修正案が通ったら、提案会派は本案に賛成するのかなど、会派の表決態度を問う質問が行われましたが、「分科会審査では表決は行わない」としている議会ルールを無視したものであり、許されません。議会ルールに真摯に向き合う姿勢を強く求めておきます。

 今回の私たちの提案で、板橋区で小中学校の給食費の無償化を行うには13億円で出来ることが明らかになりました。一般会計予算の0.5%、基金総額の1%で実現できます。すでに北区や練馬区など9区で足を踏み出しています。板橋でも、是非実現させようではありませんか。

 議員各位におかれましては、議員の議案提案権に基づく予算修正の意義を十分にご理解いただき、ご賛同いただきたいと思います、

 今回の予算案には、子どもの医療費無料化を、所得制限なしで、18歳まで拡充することが盛り込まれました。長年にわたる区民の運動と、議会での議員の共同の力が大きな役割を果たしたと考えます。日本共産党板橋区議団は、切実な区民要求実現のために、今後とも区民と共に声を上げ、誠実に、ねばりづよく奮闘する決意を申し上げます。

 最後に、本年3月末日をもって退職されます149名の区職員の皆様の、長年のご苦労に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

 以上をもちまして、2023年度板橋区当初予算に反対する討論を終わります。

ご静聴ありがとうございました。

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