インボイスに反対する討論

討論日:2023年6月23日

 ただいまから日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第10号「『適格証明書』(インボイス)制度延期の意見書を政府に提出することを求める陳情」及び陳情第11号「消費税率の引き下げの意見書を政府に提出することを求める陳情」につきまして、委員会決定「不採択」に反対し、陳情に賛成する立場から討論を行います。

 消費税は、経済的弱者のほうがより負担が大きくなる逆進性という性格をもち、能力に応じて税を払うという租税原理から外れている税です。法人税や所得税と異なり、赤字の事業者であっても消費税を支払わなければならず、応能負担の原則から外れています。そのため、滞納が最も多い税となっています。消費税が中小・小規模事業者の営業を圧迫していることは明らかです。こうした国民の負担の現状を軽減するのは政治の役割ではないでしょうか。

 採択を求める第一の理由は、くらしと営業を守る経済対策として、消費税を減税すべきだからです。コロナと物価高騰以前から、日本経済は低迷を続けてきました。物価高騰が長引き、賃金のアップも期待できないなかで、消費税の減税は可処分所得をふやすことになり、大きな経済効果があることが期待できます。ドイツでは消費税減税により16兆円の経済効果があり、また世界103か国が消費税などの付加価値税の減税を行いました。なによりも物価高騰に苦しむ区民と区内の業者の負担を軽減するためにも消費税の減税が必要です。

 第二の理由は、インボイスの導入は、年収1000万円以下の業者にとっては死活問題となるからです。本年10月に予定されているインボイス制度の導入によって年収1000万円以下の事業者は、このまま免税事業者でいるか、あるいは適格請求書発行事業者として登録し、課税業者となるかという二つの選択を迫られます。免税事業者で居続ければ、取引先から消費税分の負担を求められるか、または免税事業者であるがゆえに取引を打ち切られるというリスクを負うことになります。課税業者となれば今までは免除されていた消費税が重くのしかかります。これは事業者にとって新たな増税です。

 俳優、アニメーター、声優の二割がアンケートで、インボイス制度が導入されたら廃業を検討せざるを得ないと回答しています。ある小規模事業者の方は、仕入価格の割合が高く、利益が低いため、借金をしなければ、消費税を払いきれないと言っています。それでいつまで商売を続けられるでしょうか。ささやかであっても自分の仕事に誇りをもっている小規模事業者、個人事業主を廃業に追いこむ、弱いものいじめ以外の何物でもありません。

 第三の理由は、区民生活にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されるからです。事業者が課税分を価格に転嫁せざるを得なくなり、それは価格の上昇を招きます。ただでさえ物価の高騰がとどまらないところに、さらなる物価高騰を招く懸念があります。インボイス制度の導入が区民を苦しめることになることは明白です。

 第四の理由は、制度の周知が十分ではないなかで導入を行うべきではないからです。6月14日には、国会前で、また全国12か所で俳優、声優、アニメーター、漫画家などのクリエイターが中心となって呼びかけた、STOPインボイスの大きな集まりが行われました。SNSでも導入に反対する声は日増しに高まっています。今まで政治に関心がなかった方が、インボイス制度の導入により身にふりかかる被害があまりに膨大でたまりかねて声を挙げ始めました。インボイス制度を知れば知るほど怒りがわきあがってくるという方もいます。

 企画総務委員会で陳情を不採択とした委員からは、相談窓口の設置と周知が必要という意見が出ました。インボイス制度がそれだけわかりにくいということをよくご存じということではないでしょうか。周知が不十分な状態で導入を強行しても、大きな混乱がおこることが懸念されます。新たな増税であるインボイス制度の導入自体問題ではありますが、少なくとも延期を求める声にこたえるべきです。

 区議会の意志として国に意見をあげるため、改めて陳情の採択を求めて討論を終わります。

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