2022年度決算に反対する討論

討論日:2023年10月24日

 ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、報告第1号「2022年度東京都板橋区一般会計」、第2号「同国民健康保険事業特別会計」、第3号「同介護保険事業特別会計」、第4号「同後期高齢者医療事業特別会計」、第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計」5つの会計の歳入歳出決算の「認定」に反対する立場で討論を行います。

 2022年度区一般会計決算における実質収支は101億5300万円と大幅黒字です。同じく、4つの特別会計も黒字決算です。

 2022年度は、新型コロナウィルス感染から3年目という疲弊状態に、物価高騰の打撃がのしかかった経済状況の中、区民の暮らしや区内経済に対して、板橋区がどういう姿勢で取り組んできたかが問われた1年です。

 反対する第1の理由は、基金ため込みと大規模再開発優先で、コロナと物価高に困窮する区民生活への支援が十分ではなかったからです。

 区は、2022年度も緊急財政対策として、21億円の削減目標を掲げ、8%シーリングを行い、11億7,700万円の予算削減を行いました。しかし、取り崩した51億円をはるかに上回る226億円を積み立て、基金総額は、前年より175億円も積み増しし、過去最高の1,144億円という異常な結果です。老人クラブの清掃活動費や障害者団体の補助金までカットした緊急財政対策は全く必要ありませんでした。年度途中で財政に余裕があることが分かっていながら、さらなる区民生活への支援を行いませんでした。
 その一方で、4つの大規模再開発は、緊急財政対策の対象外とし、粛々と進めてきました。東武東上線立体化の土地買収の遅れ、上板橋駅南口再開発の不十分なアスベスト対策など、住民との合意形成が十分ではないまま開発優先を強行してきた歪(ひずみ)が現れています。

 区民生活は深刻な厳しさで、物価高による値上げが次々と続き、月を追うごとに苦しくなりました。区は、国の非課税世帯への給付金に加え、住民税均等割世帯への給付金支給、18歳までの子どもに2万円の給付金を支給しましたが、物価高の実態には追い付かず、社会福祉協議会の特例貸付も終了し、今度は返済が迫りました。
 住居確保給付金の利用は、対象が狭まり、この2年で794件も減少していますが、住宅を失いかねない人の状況は未だ厳しい実態です。しかし区は新たな家賃助成の検討も「次期住宅マスタープランで検討」などと先送りです。それどころか、「区営住宅再編整備基本方針」に固執し、徳丸・前野・高島平の高齢者住宅「けやき苑」を廃止し、志村坂下住宅への統合を強行したことは問題です。 
区は、生活保護を案内するポスターを掲示したものの、フードパントリーを行うことを理由に、年末年始の福祉事務所窓口設置も取りやめてしまいました。経済状況が反映した福祉作業所などの工賃減に対する対策の検討すら行っていません。
 医療も介護も現場はひっ迫し、診察や健康診断の抑制も止まらず、医療機関の運営も厳しく、小さな開業医は後継者不足も相まって閉鎖が相次ぎました。医療機関への財政的な支援が求められましたが、区は「国や都の役割だ」として、現場のひっ迫する事態に背を向けました。介護現場でもデイサービスの閉鎖、ヘルパー派遣ができないなどの事態に対し、区として必要な介護を保障する対策は行われませんでした。
 中小業者の経営は、コロナと物価高の二重苦で厳しい状況でした。しかし、区内経済を支える「産業経済費」の構成比は、前年比0.3%減です。それは、前年の支援金などが継続されなかったためです。2022年度の区内業者への調査では、人材確保でも、事業承継でも助成金と補助金を求めています。それは、区の「エネルギー価格高騰対策設備更新助成」の、2700件の利用に現れています。しかし、その事業は2022年度中に終了し、残ったのは融資制度しかなく、設備更新の余力がない業者や融資には手が出ない業者は、支援を受けられませんでした。

 区は「6回の補正予算で対策を講じた」と言いますが、2022年度のコロナ・物価高対策の198億円のうち、157億円が特定財源で、区の財政支出は41億円です。もっともっとできることがあったはずです。それは、2020年からのコロナ3年間で、苦しむ区民お構いなしに332億円も基金総額を増やした結果に現れています。
 
 年度当初の依命通達で「経済の下振れリスク」と煽り、「コストの縮減」と「契約差金や事務事業の見直しによる不用額は他の事業に使わない」と、ことさらに強調したことが、緊急事態に積極的な財政出動とならない結果を生んでいます。
 また、その依命通達では、税と保険料、保育料などにおける徴収強化も強調してきました。特別区民税の1世帯当たりの負担額は、10年間上がり続け、差し押さえは3,782件です。低所得者の多い国民健康保険では、高すぎる保険料をさらに引き上げ、2億円の負担増です。保険料を払えない世帯に、前年比290件増の693件もの差押えです。そのうち131件は非課税世帯で、コロナや物価高であえぐ低所得者に保険料を払えと迫ったことは、困窮する区民生活をさらに追い込んだものに他なりません。
介護保険は、給付減による余剰金を積み上げ、基金は35億円です。ニーズ調査でも、利用者意向調査でも、保険料と利用料金の負担が高いと声が上がっています。しかし区は、さらなる軽減策には背を向け続けました。その上、差押え件数は、前年比約2倍です。それは、後期高齢者医療保険でも同様です。
 保険料や税金の徴収や差押え強化よりも、生活実態をよく聞き、区民に寄り添って考え、むしろ、生活再建に向けた支援こそ行うべきだったのです。

 第2の理由は、子どもの権利保障への責任が果たされていないからです。

 保育園の実質待機児が初めてゼロになりましたが、希望する保育園に入所できていない子どもは、今年の春に未だ428人です。小規模保育園などの定員割れで保育事業者の経営を圧迫する中、定員未充足支援が始まったものの、その財政支援は条件が厳しく十分とは言えません。それが、公設民営のにりんそう保育園における「未充足保育分の返還ができない」という事態を生み、運営法人の撤退という大きな不安を子どもや保護者に与えました。経営状況を把握しておきながら十分な指導や対応を行ってこなかった区の責任は重大です。
 子ども家庭総合支援センターが4月に開所し、7月から児童相談所機能も始まりました。児童相談所職員一人当たりの対応件数はおおよそ30から80件で、経験のある職員が件数を多く抱えています。また、一時保護所の職員は夜勤があり、週一回以上の夜勤は若い職員にとっても負担です。開設前から児童相談所の人員体制への懸念が指摘されていましたが、十分な体制のスタートとは言えません。
 増え続ける不登校の子どもたちにオンライン授業を実施していても、対応が学校によって違い、出席扱いとなる基準は厳しく、高いハードルです。何よりも、小中学校で18校21人もの教員の欠員が補充されていないことは問題です。
 教育費の不用額は約8億円で、小中学校の改修経費における契約差金は、約3億円です。
 各学校からの施設改善要望は、1校4つまでという条件をつけた上、187件のうち38%が対応されていません。大規模改修や改築にならなければ老朽化した施設は改善されません。義務教育施設整備準備基金に新たに96億円も積み上げる前にやるべきことがあったはずです。

 第3の理由は、住民不在の公共施設再編整備とアウトソーシングをすすめてきたことです。

 区は、残っていた「いこいの家」を全廃し、ウェルネススペースや他の事業に置き換え、いこいの家を利用していた高齢者が、いま、どこで過ごしているのか把握もしていません。高齢者にとって身近な居場所を奪い、社会参加する機会を減らした責任は重大です。
福祉事務所の一本化の検討は、2021年、2022年と29回も行われていたのに、その検討過程は、議事録どころか、次第も報告書も資料と呼べるものは何も作成していないとして、区民にも利用者にも、議会にもその検討過程は何一つ明らかになりません。№1実現プラン2025で「施設のあり方検討」を2022年度に「結論」としている施設の検討過程は、ほとんど議会に報告されず、区は、「方向性が決まったら」としています。それは、住民参加で公共施設のあり方を検討する姿勢とは言えません。
 住民不在の公共施設再編整備の矛盾の象徴が、学校統廃合の小中一貫校建設です。2022年度は、基本構想と基本計画の策定を進めてきましたが、志村小の土地をめぐって、「地権者に返す」という前提が崩れ、検討期間に、近隣住民には一度も説明が行われず、内容が明らかになるにつれて住民の怒りとして噴出しています。その進め方に対する教育委員会の反省は、かけらもありません。
 区立特別養護老人ホーム2か所の民営化、28か所の区営自転車駐車場への指定管理者制度導入でアウトソーシングをすすめ、区営自転車駐車場では、総台数は増えたものの、8か所は受け入れ台数が減り、2か所は当日利用がゼロです。働くシルバー人員も大幅に減らし、回数券まで廃止で、区民にとって利便性向上とは言えず、むしろ自転車を止められなくなったと苦情が相次ぎました。さらに、区立福祉園の民営化方針を掲げ、検討を進めてきたことは、利用者の理解を得られているとは言えません。保育園民営化では「育ちのエリア」という考えさえも投げ捨てて、公立保育園の役割を後退させる姿勢は問題です。

 第4の理由は、人件費抑制に固執し、ジェンダー平等の視点で、必要な人員配置を行ってこなかったことです。
 
 コロナ対策の中心を担う「感染症対策課」は、異常な超過勤務が続き、3年目の2022年度は、派遣の看護師を20人配置したものの、派遣職員は病状の聞き取りはできても、入院などの決定の判断は区職員しかできない上、競争入札により、前年度と会社が変わり、対応が一から必要になりました。結果として月80時間を超えた職員が10人で、22時以降も勤務していた職員は12人です。
 福祉事務所のケースワーカーの年度途中の病欠などに対し、会計年度任用職員で対応していますが、ケースワーク業務は、正規職員にしかできません。さらに、2022年度は、臨時給付金などの緊急対応として、各福祉事務所から2人ずつ兼務で応援態勢に入り人員不足が深刻でした。そもそも、福祉事務所は、知識も経験も必要な業務にもかかわらず、189人中83人が2年未満の職員です。ケースワーカーによっては、年度当初から100件を超える担当世帯を抱える状況で、年度末にはさらに担当件数が引きあがっています。職員の人員配置や経験値のあり方、欠員状態が、「適切な人員配置」とは言えません。
 区は、特定事業主行動計画で、超過勤務が年360時間を超える職員を20名以下にする目標を掲げていますが、 2022年度は、132名となり過去最多を更新しました。児童相談所の開設などで職員定数を増やしたものの、計画がスタートした2005年度の職員定数と比較すると412名も削減されています。結果的に、業務過多の状況が広がり、職員が疲弊する事態を招いていることは否定できません。男性の育児休業取得率は、女性の半数にも届いておらず、女性の管理職の割合も、区における障害者雇用の法定雇用率も目標を下回ったままです。正規職員の増員以外に解決策はなく、人件費抑制ばかりでは、行政の役割は果たせません。

 「持続可能」と言い続けて、もはや区財政は過去最高額です。区民の暮らしこそ緊急事態だと認識し、思い切った財政支援を行う区政運営へ転換すべきと指摘し、私の討論を終わります。

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