
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第14号「東京都板橋区職員定数条例の一部を改正する条例」に、反対する立場で討論を行います。
本議案は、2025年度の職員定数を現在の3,610人から3,615人とするものです。定数増減の内訳は、増員42人に対し37人の減員で、差し引き5人の増員です。
本議案に反対する第1の理由は、現場の要求に応えず、37人もの定数削減は容認できないからです。
職員定数について、各部署から69人の増員要求がありましたが、査定により認められたのは42人です。慢性的に人員不足の声が上がっている福祉事務所の板橋・赤塚・志村の3つの福祉課で一人ずつ減員の上、会計年度任用職員まで同様に3人の減です。区は、生活保護世帯数の減少を理由にしていますが、福祉事務所の業務は、世帯ごとの案件も複雑で幅広い対応が必要となっています。しかし、ケースワーカーは経験年数の少ない職員配置も多く、経験のある職員への負担が高くなっているのが実態です。区は社会福祉法における標準数が面接相談員も現業員だからと、増員せずに数えなおしただけで、実際のケースワークに当たる人員で算出すると1対87のままです。人員減を行うことは、福祉事務所の仕事量や内容に見合った体制とは言えません。
児童相談所が設置されて、新年度は4年目を迎える「子ども家庭総合支援センター」の援助課心理係で1名の減は、国基準の人口と虐待件数見合いを理由としています。一方で、現場からは、チームを管理する係長級を5・6人に1人配置することが求められていますが、現状は18人のスタッフに対し、係長と副係長しか配置されておらず、人員増こそ必要です。保護課は、幼児の日勤配置が常時2名ですが、病児・要配慮児を受け入れた際に、その子どもに一人張り付くことになり、他の子どもへの対応が手薄になります。幼児と男子ユニットで各1名増員を現場は求めています。区人事課は、1名増員で1対10の国基準を満たしていると言いますが、板橋における「ユニット制」は全国的には稀な仕組みで、全国の国基準と同様でいいとすることは、あまりにも乱暴です。児童相談所に来る子どもは、様々な環境の中でなんらかの傷を負って一時保護所に来ています。一人ひとりに手厚く対応できるよう現場の声にこたえてもっと増員すべきです。
第2の理由は、公務労働における「官製ワーキングプア」をさらに拡大するからです。
定数削減の37人のうち、33人が民営化と委託化です。区立弥生保育園民営化により、保育士18人、看護師1人の減、ときわ台保育園とかないくぼ保育園の調理と用務の委託化で、7人の減です。34の区立保育園のうち、調理と用務が直営で残るのは、9園となります。学校用務の委託化が、蓮根・若木・板5・弥生・板7の5つの小学校で進められ、5人の減です。民営化や委託化で区として直接雇用する職員を減らしていくことは、そのスキルや経験値を手放すことになります。とりわけ、子どもや親と向き合う保育や学校という現場で貴重な職員のスキルを減らしていくことは、区としての機能を損なうことに他なりません。
土木サービスセンターにおける「道路維持補修等業務」の委託化による減員は、南部・北部で各1名ずつの2名です。これは、これまでの土木事務所の一部委託を実施した結果、「職員のスキルが継承されない」ことなどの課題が浮き彫りとなり、直営に戻してきた教訓を生かしておらず、委託化は行うべきではありません。
また、増減はないものの、納税課における「DXによる効率化検討」には、納税課の窓口も含めてさらなる委託化の検討を行うことが位置付けられていますが直接区民と向き合う窓口を委託することは、区民からますます遠ざかることとなり問題です。すでに、板橋区の人件費比率は、23区平均を下回り続けており、これ以上の委託化は区として蓄積すべき機能を失うものです。
第3の理由は、住民合意のない「開発優先」の姿勢を一層強化するからです。
区は、板橋口公益エリア整備で1名増と言いますが、そもそも住民にとって貴重な駅前区有地をJRに70年定期借地で提供し、高層住宅を建設し、4階以下を管理するアトレに区が4階部分を借りるというものです。JRからの定期借地料収入とアトレに払う公益エリア賃借料でプラスマイナスゼロになり得ると言います。6階以上は高層分譲マンションです。当時36億円で購入した区有地にもかかわらず、住民にとっても、区にとっても何のメリットもありません。
中板橋駅周辺まちづくりを進めることなどを理由に、鉄道立体化推進課に「東上線沿線まちづくり担当係長」を設置し、1名増員としています。東武東上線の立体化を進めることは、住民にとっても喫緊の課題です。しかし、それを進める手法が「高架化」であることは、大山駅の立体化で明らかになり、東上線沿線の住民からも疑問の声が上がっている実態です。さらに係長の名称を「まちづくり担当係長」とすることが「鉄道立体化を再開発とセットでしか進めない」という姿勢の現れだと言わざるを得ません。
区内で大規模なまちづくりが進められていますが、どのまちづくりでも、住民合意が得られているとは言い難く、住民要求に背を向けたまま、強権的にまちづくりを進める体制ばかりを強化し、福祉や教育の現場からは、実態に目を向けずに人員削減を行う姿勢は問題です。超過勤務時間数が360時間を超える職員数が、未だ100名を超えている実態からみても、とても「適切な定数配置」とは言えません。以上の理由で、本議案に反対し、討論を終わります。