
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第90号「選択的夫婦別姓制度の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書」を政府および国会に提出することを求める陳情に賛成する立場で討論を行います。
本陳情は、板橋区議会より政府及び国会へ、選択的夫婦別姓制度の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書を提出することを求めるものです。
陳情に賛成する第一の理由は、夫婦同姓を強制している課題を解決できるからです。
選択的夫婦別姓制度は、婚姻の際、同姓を望む人は同姓に、婚姻後も生まれもった氏名を望む人は別姓の「どちらも選択できる」制度です。
昨年5月のNHK世論調査では、62%が「賛成」、「反対」は27%。60代以下の年代では70%が「賛成」しています。
海外ではアメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、タイ、スウェーデン、ロシア、フィンランドなど多くの国が夫婦別姓を認めています。
日本においても、現行法では、日本人と外国人の婚姻・離婚、日本人同士の離婚については、婚姻または離婚後の姓を選択できるのです。しかし、日本人同士の婚姻のみに夫婦同姓が強制されていることは、名字を変えたくない人が婚姻に際して改姓を強制され、不合理な二者択一を迫るものであり、両性の平等と基本的人権を掲げた憲法に反しています。希望する夫婦が婚姻後にそれぞれの婚姻前の姓を名乗ることも認め、個人の尊厳が尊重されるべきです。
第二の理由は、通称使用を拡大しても不利益を被るのは女性だからです。
戦後、家制度は廃止され、新憲法のもとで妻と夫は「平等」となりました。しかし、婚姻の際、今もなお95%の女性が姓を変更しています。そのなかには、名前を変えることが当たり前に強制されているため、違和感を口にすることができなかった女性も多くいます。
2019年11月から申出により、旧姓が併記できるよう整備され、その範囲は拡大されています。通称使用の拡大で十分とする主張もありますが、例えば、住民票、マイナンバーカード等は戸籍住民課、国民健康保険証は国保年金課など、区役所の各課へそれぞれわざわざ申出しなければなりません。パスポート、運転免許証とどこまで広がっても申出する負担が増えるだけです。
しかも、「海外では原則本名である戸籍姓しか通用しない」「ダブルネームでは税の手続きや銀行口座で使用できない」など、問題は解決されません。キャリアの中断、アイデンティティの喪失、名称変更の煩雑な手続きなど、いくら通称使用の範囲を拡大しても圧倒的に多くの女性が改姓によって不利益を被っている事実は変わりません。
昨年10月30日、国連女性差別撤廃委員会は政府に対し、「法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別であり、ただちに改正すべき」と民法の差別的既定の廃止について4度目の勧告をしています。
「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」に関わる人権問題と受け止め、人権侵害を速やかに是正すべきです。
第三の理由は、家族の一体感(絆)は同姓でなくとも得られるからです。
委員会審議の中で「親子別姓が生じることが日本社会にどれだけ許容できるか議論が必要」という意見がありましたが、再婚、国際結婚、事実婚の場合など、すでに親子別姓で暮らしている家族は多く、加えて、改姓した方の親、兄弟姉妹とは現行のもとでも別姓です。家族の一体感に関わる問題を指摘する意見も存在しますが、そうした捉え方をすること自体が特定の価値観の押し付けに他ならないと考えます。
2022年の最高裁決定で、裁判官の一人は、親と姓が違う場合に子が受ける恐れがある不利益は、姓が違うことが原因というより、家族は同じ姓でなければならないという価値観やこれを前提とする社会慣行に原因があると指摘しています。
2021年の内閣府による世論調査では、「夫婦・親子の名字・姓が違うことによる夫婦を中心とする家族の一体感・絆への有無」についての問いに「家族の一体感・絆には影響がないと思う」と答えた人の割合は61.6%に上り、「弱まる」と答えた37.8%を大きく上回っています。
親子同姓にこだわるのであれば、子を持たない再婚配偶者が、子を持つ再婚配偶者の姓に変更しない限り、親の再婚のたびに、子どもはその再婚相手の姓に変更しなくてはならないことにもなり、すでに自意識が芽生えた子にとっては、それまでの人生や人格を否定されたという意識にもつながりかねないとしています。国会審議を通して子への配慮を踏まえた具体的な検討を重ねることこそ必要です。
最後に、委員から「戸籍制度を維持していくという視点に立った場合、選択的夫婦別姓の導入は根幹を揺るがしかねない状況。拙速に導入に向けて進めるべきと表明することは適切ではない」という意見がありましたが、2021年の衆議院法務委員会において、仮に選択的夫婦別姓制度が導入されても戸籍制度との両立が可能であること、機能や重要性は変わらないことを法務大臣が答弁しており、世論に基づいた法制化が可能であると考えます。
また、陳情に反対した委員から「国会審議の推進という一方のみの視点に立った意見書の提出は板橋区議会としてなじまない」という意見がありましたが、6年前、ほぼ同趣旨の陳情が全会一致で採択され、板橋区議会として意見書を提出しています。加えて、今年1月30日時点で469件もの意見書が地方議会で「採択」されています。経済界などからも法改正の実現を求める共感の輪が広がり、国政選挙などでも主要なテーマになっています。国会は少数与党となり、民意に応えた国会運営が求められます。
板橋区議会として国会審議の推進を後押しし、意見書の提出を求める本陳情を「採択」することに改めて賛成し、私の討論を終わります。