平成31年第1回定例会 討論 大田伸一議員

発言日: 2019年03月22日

 議案第1号「平成31年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号「国民健康保険事業特別会計予算」、議案第3号「同介護保険事業特別会計予算」、議案第4号「同後期高齢者医療事業特別会計予算」、議案第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計予算」に反対し、議案第36号「平成31年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論

 ただいまから、日本共産党板橋区議団を代表して、議案第1号「平成31年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号「国民健康保険事業特別会計予算」、議案第3号「同介護保険事業特別会計予算」、議案第4号「同後期高齢者医療事業特別会計予算」、議案第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計予算」に反対し、議案第36号「平成31年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論を行います。

 第一に、消費税増税と国保料負担の増大は、区民の暮らしに関わる区政の喫緊の重大問題であるという問題です。
平成30年度の課税標準額が200万円以下の構成比は、60.1%17万5062人となり、4年前より約1割も増えています。生活が厳しい、将来が不安だという声が6割を超えるのは当然です。低所得者層の区民は、新たな負担増に暮らしと心を追い詰められ、我慢と自己責任論のはざまで苦しんでいます。政治の責任が問われているのではないでしょうか。
 安倍内閣は社会保障費を7年間で4.3兆円も削減する一方で、軍事費は5年連続過去最高を更新しています。昨年12月に発表された中期防衛力整備計画では、今後5年間で27兆4700億円を投じるとしています。その額と消費税税率を10%に引き上げて得られる5年分の税収が一致しています。区長答弁のような社会保障のためではないことは明らかです。東京商工リサーチによれば、増税の影響は、零細中小業者には リーマンショックなみの打撃になると試算されており、区の行財政運営にとっても深刻な影響を与えずにはおきません。消費税10%増税反対こそ、区長の政治責任です。
 低所得者の区民にとって、とくに深刻なのは医療保険料の負担増です。高すぎる国保料のために滞納せざる得なくなり、毎年度督促状は23万件以上送付され、平成29年度の分納誓約は2万4,589件でした。さらに、正規保険証を取り上げるという滞納者への厳しい制裁は、生命をも脅かしています。医療機関の調査では、経済的理由による手遅れ死亡事例のうち47.7%が「無保険・資格証明書・短期保険証」という状況です。だからこそ、全国知事会や、全国市長会など多くの自治体は、国庫負担の増額による財政基盤の強化と加入者の負担軽減、子どもの均等割の軽減措置を国に求めています。しかし、安倍政権は自治体の要望に応えず、昨年4月から国保の「都道府県化」を強行しました。これに合わせて区市町村の「一般会計からの法定外繰り入れ」の解消さえ求めています。加えて国保料と医療費を連動させる仕組みをつくり、「高い保険料が嫌なら、医療費を抑えろ」という露骨な受診抑制策をとっています。これ以上の引き上げは、被保険者にとって耐えがたいにもかかわらず均等割を引き上げようとするものです。賦課総額の基礎となる納付金総額を昨年度から1%減らし5%分だけを激変緩和措置として繰り入れるものです。区長会で決めた6年間で繰り入れ措置をなくす第1年目ということです。国による繰り入れ解消の要求は、地方自治体の自治権に抵触するため、厚生労働省は「自治体で判断すべきこと」と回答しています。国に負担軽減の国費投入を求めながら、他方で、多額の基金をもつ23区が繰り入れ解消に向かい、2019年度特別区基準国保料率の所得割率を引下げ、均等割額を引き上げる結論を出しています。つまり、単身で高所得の世帯ほど値下げになる一方、低所得の多人数世帯ほど値上げとなる案となり、1人あたり保険料調定額では10万5520円と今年度比5254円5.2%に負担増になります。低所得者向けの国保料の減額・免除制度を拡充しなければならないのに、全く逆行しているではありませんか。

 第二に、区民施策の改善を求める問題です。
 予算案を福祉と子育て、暮らし優先の区政になっているかという視点でみると、
 保育施策では、区は認可保育園への入園を求める親の需要を、正確に把握しないまま推移してきました。親の要求は、確実に入所できることと、子どもの権利条約第3条「子どもの最善の利益」を実現するような保育の質を保障する保育所であってほしいことです。待機児は2020年4月時点でのゼロをめざすとしていますが、2019年4月入所第一次選考では994人が不承諾となっています。しかし、区は待機児の解消を規制緩和と公立民営化によってすすめようとしています。新年度からの算定基準見直しでは、14園で保育士が1名削減となり、要支援児加算の正規保育士は必要数ではなく、保育士定数の上限によって決めています。区自身の要綱にも反する運用になっています。区内の企業型保育園では、2年連続保育士の大量退職という異常な事態が生まれています。企業型保育の退職理由の多くは、「給料が不安」、定員割れやずさんな経営もあり、区の審査・指導もありません。「育児育成協会」の調査では76%で保育計画に不備があるとされています。「東京都保育士実態調査」によれば、認可保育園で就労している保育者の約2割強には退職の意向があります。その理由は、助成保育士の平均月給は、女性小学校教諭の66.6%であるように「給料が安い」だけでなく、「仕事量が多い」「労働時間が長い」などとなっています。賃金や労働条件の改善なしに、保育の質を上げることはできません。公立保育園民営化方針は、運営費の安上りをめざすものであり、保育士の労働条件に直結するものです。それは、子どもの保育環境に直結しています。区が認可保育園の増設を規制緩和によらず、公設公営増設、民間認可保育園への区の支援策の強化などを積極的に行うべきです。

 介護保険利用料2割負担は2015年8月から導入されましたが、この時、安倍政権の「2割負担になるのは余裕のある人たち」という都合のいいデータそのものが、ねつ造であることが発覚し国会で大問題になりました。その後、厚生労働省の委託調査でも、2割負担の利用者で介護サービスを減らした人の35%が「介護に係る支出が重い」ことを理由に挙げていました。データねつ造は、利用抑制が広がったことで事実の問題として証明されることになりました。1人暮らし高齢者年収340万円以上などの人の3割負担も介護保険法改悪に基づくものです。利用抑制はますます広がっていくことは間違いありません。負担増によって引き起こされた事態を、区が検証すれば利用負担増こそ制度そのものの存続に関わることがわかるはずです。「制度存続のために」「区独自の軽減はできない」とか、「将来の財政負担を考えると」できないとか区は答弁していますが、本当に介護が必要な区民が介護制度を利用できない苦しさを、なんとか改善しようと思わないのでしょうか。負担軽減に乗り出すべきです。

 区の高齢者の福祉は後退し続けています。高齢者にとって、人とつながっていることを実感できることが認知症の予防にもなり、元気の源です。ふれあい館を有料化し利用者を減らし続けていることを、なぜ高齢者の生きがいの場所の削減問題として認識されないのでしょうか。入浴事業の利用激減もいこいの家のお風呂の廃止も、区の高齢者への尊厳を欠いたものです。介護が必要になって、特養ホームに入所できたとしても、食費・部屋代補助の制限があり、年金収入だけでは退所を余儀なくされかねません。家での介護は無理という悲鳴と、蓄えが尽きたらどうしたらいいのかという不安が、区長には届かないのでしょうか。区立の特養ホームを民営化すれば、実態はますますわからなくなります。区立の水準を引き上げ、民間にも可能な支援をすることが必要です。後期高齢者医療制度においても、均等割額の軽減特例を国が廃止すると決めて、広域連合議会がそのまま受け入れるならば、区独自にでも対抗策をとって負担増の防波堤になるべきです。

 子どもの教育環境における衛生管理においても、迅速な取り組みが必要です。平成21年に文科省から告示された「学校給食衛生管理基準」では、食品を取り扱う場所では、内部の温度及び湿度管理が適切に行える空調等を備えた構造とするよう努めることとされ、調理場は、換気を行い、温度は25℃以下、湿度は80%以下に保つよう努めることされています。しかし、エアコンは小学校では39.2%、中学校では半分しか整備されていません。今後の計画も明らかではありません。現場からの強い要求があるにもかかわらず、こうした現状を改善がすすまないのは、一つは「衛生管理基準」を軽視していること、二つは働く人の労働環境の改善を真剣に考慮した予算措置を行ってこなかったからです。学校給食施設は、設計段階で保健所等の助言を受けることとなっており、洋式トイレの普及が当たり前になった今日では、保健所が改善を求めるのは非常に重要な指摘です。「学校給食衛生管理基準」の趣旨を受け止めて、ただちに改善すべきです。
 学校教育環境では、外壁改修と屋上防水改修の遅れが深刻です。小学校では、改修年度から20年以上35年経っているのは51校中26校、中学校では、20年以上28年まで経っているのは26校中10校です。老朽化の進行と補修予算経費の整合性がない結果ですが、そもそも補修経費が少ないのは、教育予算が少ないからです。義務教育整備基金は200億円ありますが、この基金を見直して年度予算に回し、計画的な補修による長寿命化で学校間の学習環境格差をなくすことが、必要です。20年以上も老朽化対策をしない学校に通ようという問題を改善することを、優先課題とすべきです。

 生活基盤として住居の安定は、福祉の基礎です。しかし、区営住宅の応募倍率は、過去5年間でも10倍以上を下がったことがありません。国民年金は、持ち家のローンが終わったころから支給開始するという制度設計であったため年金額そのものが低く、そもそも民間借家で暮らしている高齢者には、年金者になって居住水準を改善できる余力はありません。都営住宅と区営住宅への応募倍率の高止まりは、住宅施策が貧困だからです。板橋区は居住支援協議会を通じて、民間の斡旋を紹介するだけで、区民の住宅人権を保障するための施策をもったこともなく、他区のように家賃補助制度を充実するなどの施策を検討することもありません。貧しい住居から脱出するのは自分の甲斐性であり、できない場合はあきらめよということと同じです。居住水準の改善は、人権問題として日本も国連人権規約に署名しています。区民の居住水準の改善を人権の問題として捉えなければ、人間らしい住居に住む権利を奪っていることにも気がつきません。人権保障としての住宅政策こそ必要です。この重要性が端的に現れているのが、区営住宅の建て替え問題です。現在18億円の住宅基金は、「平成31年度から37年度までに想定される区営住宅の改築経費」の控除額を44億円とし、20億円を積み立てるというものです。これは、敷地が高度利用できる区営住宅に再編集約し、集約できない区営住宅を廃止して跡地活用を図るための基金積み上げです。再編集約高度化によって、区営住宅に入居できる区民が増えるわけではないことは、すでに都営住宅の再編集約高度化で実証されています。結局、住宅デベロッパーの新たな儲け口に、多額の税金を積み増すことになります。

 企業に新たな儲け口を提供し、公共性を失う危険がある公募設置管理制度(Park-PFI)に予算計上したことも予算の特徴の一つです。国交省は、「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン」を昨年の8月に改正しましたが、内容は、飲食店、売店等の設置と、当該施設から生ずる収益を活用してその周辺の園路、広場等の一般の公園利用者が利用できる特定公園施設の整備・改修等を一体的に行う公園をつくることを可能にするためのものです。その公園を「特定公園施設」とし、民間事業者に公園の管理運営を任せるものです。区民や利用者の要望が反映されなくなる可能性があり、経営理念からの公共施設等の設計・整備・運営が行われる可能性があり、事業経営の失敗は区民が被ることになりかねません。区民の財産を民間企業に長期にわたり貸与し、営利活動に利用させるものですが、区はコンサルを選定し5月に決定する予定です。そもそも公園まで企業の儲け口にしていいのか。区民の意見を聞かずに進めることは許されません。付け加えるなら、公園の公衆トイレのバリアフリー化整備は、231か所のうち190か所も残されています。今後8年間の整備計画は43か所です。このペースで整備するなら全て完了するまで実に35年計画となります。大都市における公園は、防災も含めてかけがえのない公共空間です。民間活力を言う前に、急いでやるべきことは明らかです。

 次に予算案を防災とまちづくりの観点からみると、防災の最も重要な課題は、人の命をどう守るかです。災害対策基金約18億円は、震災直後1週間のための積み立てと説明されています。災害対策基金は、災害を防ぐためのものではありません。阪神大震災、東日本大震災でも最も多く犠牲になったのは65歳以上の高齢者でした。板橋区内の65歳以上の一人暮らし高齢者は2月現在で、4万7,741人、65以上の高齢者のみの世帯は2万2670世帯です。家具転倒防止器具取付助成の対象者総数でもあります。区は家具転倒防止器具取付助成が必要な世帯の数を、調査したことがありません。予算案での取り付け見込み件数は60件です。29年度の実績は40件でした。取り付け必要数の調査は、災害時の高齢者の危険度調査です。危険度をきちんと把握して事実に基づく必要数を予算化し普及していくことが必要です。障害者世帯の家具転倒防止器具取付助成では、東日本大震災の平成23年度に助成対象を寝室のみから居室・家具に拡大し、周知とアンケート調査を行い54世帯の申請あった以降は、年0件から2件程度で推移しています。東京消防庁による全体の「防止対策を実施していない」状況抽出調査では、平成30年度23.6%とされていますが、家具転倒防止器具を取り付けていない数はわからず、区も把握していません。まず、正確な実態を把握して、防災対策を支援すべきです。

 災害対策基本法の「地域並びに住民の生命、身体及び財産を災害から保護する」という本旨からすると、建物の耐震化やがけ・擁壁の安全対策、感震ブレーカーの普及、家具転倒防止器具普及は、予算もかけて予防対策として全力をあげるべき施策です。一つだけ感震ブレーカーの普及についていえば、震災火災に備えるには炎上火災を少なくするというターゲットを絞る必要があります。たとえば、通電火災を5年以内に2分の1にするという計画をたて、その達成に努め、進んでいなければ普及の方法を変更しなければなりません。他の施策も計画のたて方、普及の方法の改善を伴う見直しを続ける努力が必要です。それでもなかなか普及が進まないという場合があります。しかし、普及がそうならないのは、未然に防止するという問題を区民と情報を共有するという区の消極性が、総合的に予防防災を妨げているためです。住民の高齢化、町会・自治会の加入率の低下、勤労区民の地域離れ、介護や育児の負担増の進行など課題が山積するなかでも、住民の孤立感をなくす地域コミュニティを充実する施策が、予防防災にとっても重要です。公共施設個別整備計画は、区のいう財源不足対策という面からしか将来像を見ておらず、公共施設の活用の活性化によるコミュニティの可能性を見ていません。震災の重要な教訓は地域コミュニティの力にありと知りながら、区民の意見をじっくりと聞かずに公共施設の統廃合をすすめるべきではありません。同時に、応急対策は災害発生時の公務員の最前線の業務であり、被災直後の混乱と最も困難な仕事は公務労働の力にかかっています。しかし、職員の削減がすすみ必要迅速な対応ができるのかが危惧されます。特に土木事務所は、退職不補充が続き増員されず一部委託化が進んでいます。人員不足を補うために公園事務所との一体運営を検討するとしていますが、まるで震災など全く想定しない定数管理と言えます。人が命を救うのだから、人の配置を安上がりにしてはなりません。
 
 職員定数削減は、区の財政支出圧縮の大きな柱ですが、一方で巨額の財政支出を駅前再開発に投入する計画は、大山駅前再開発事業においても防災の名によって進められてきました。すでに延焼しない不燃化領域率70%を超えている地域で、都市計画道路の見直し拡幅をすべきではないとされる区内で最もにぎわいのある商店街で、延焼遮断帯のために拡幅が必要といい、関係住民の意見を無視してにぎわいを創出するといい、営業が続けれられる保証もなく、住み続けられる保証もなく、計画だけが進んでいます。東京都とデベロッパーの共同企画に板橋区も相乗りして、鉄道を高架化して駅前広場までつくる計画をすすめ、立ち退きを迫られる区民の生活再建に区は責任をもたず、コンサルに委託する計画です。各駅停車の駅前再開発事業と揶揄されるまでもなく、全国で本当に成功したと住民が喜んだ駅前再開発は、デベロッパー主導の開発事業ではほとんどありません。住んで営業している区民を押しのけて巨額な区民の税金を使うことの意味が問い直されなければなりません。住民不在の駅前再開発は、どんなににぎわいを強調しても不要不急の大型開発です。本当のにぎわいとは、家計の豊かさや地場商店・産業の豊かさがいっそう発展できる環境をつくる施策でしか実現できません。だからこそ、中小零細業者への力強い支援策が必要であり、公契約条例の制定など働く人の人件費保障する施策こそ必要です。

 第三に、予算編成における基金積み立て優先の区政運営の転換を求める問題です。「いたばしNO.1実現プラン2021」の経営革新計画では、その理念として、「行政サービスの種類や量を増やすのではなく、よりコストを意識し、量より質に着目した選択と集中により、最適なサービスの水準を見極めます」と述べています。もともと量の概念と質の概念はどちらかを選択する概念ではなく、どちらも重要であり、地方自治体には量も質も行政サービスを充実するという理念が求められています。すでに述べてきたように、区民生活の負担感の切実性や待機児問題、住宅問題、防災問題など区民サービスの量的施策の不足は、施策の実効性の欠如とも相まって明らかです。その量を増やすのではなく、質の着目という名で福祉園や保育園までも民営化し、公平な負担の徹底という弱者切り捨ての徹底を追及するというのは、住民福祉の向上、充実という地方自治の理念からさらに遠ざかる理念に他なりません。区民が望む住民福祉の向上のために、今後どの程度の行政サービスの量と質が必要なのかという真剣な議論が行われていないことの現れです。行政サービスの量を増やさず、民営化をさらに進めれば、区民サービスのコストは下がり、さらにカネ余り状態になります。そのうえ、予算に計上したのちに使い残すことの無いようにすべき補正予算の段階で、これまで同様に基金積み立てと事務事業の確実な執行見通しのみの事業に絞れば、年度末には多額の不用額が生まれるのは当然です。区民サービスに使うべき予算計上額をこうして浮かせ、基金積み立て額に転化してきました。
 特に財調基金の積み立ては、区の説明も他区と同様に、財政運営の予見が困難な状況のもとでは、自ら基金の積み立てによる年度間調整をせざるを得ないという理由です。総務省の地方財政審議会では、歳入歳出の対応は基金での対応が基本であり一定の基金は必要という見解ですが、東京都と23区は除外しています。「一定」の範囲を超えているからです。そもそも財調基金を多額にため込まなければ、地方自治体が破たんする危険があるのかといえば、民間とは異なりはるかに健全な段階で財政健全化の法的枠組みがあり、破たんすることはありません。むしろ、実質収支黒字額は、標準財政規模の3%から5%が適正水準としてきたことからすると、それ以上の財調基金の積み立てはなぜ必要かという説明があるべきです。大都市であるがゆえの将来の財源不足に備えると言いながら、鉄道立体化基金に45億円も転用できるなら、すでに財調基金額は過大な額であるということです。他の目的基金への積み増しも、財調基金取り崩しで可能ということであり、財調基金の目的も可変的でありうることになります。私たちは、来年度予算案について予算修正動議により約1億6800万円の増額修正を、財調基金などを取り崩して提案しましたが、何の問題もないということを区自身が示しています。修正動議の内容は、本来区が予算化すべき内容であり、基金積み立てありきの区の行財政運営による施策の欠如を補うものです。金額は少なくても、区民要求に誠実に沿った提案です。
 真の自治体財政の健全化への道は、国の地方財政計画を実態にあった内容に変えさせることによってしか実現しません。区民に必要な公共サービスを削減し、不安と困難な中にいる区民生活の実態を見ないで実現しようとする自治体財政運営で、区民にとってはどんな未来になるのかが、来年度予算案においても問われています。憲法は、権力の暴走を食い止める国民の権利によって構成されています。その第8条に地方自治があります。地方政治においても住民こそ地方自治の主人公であることを示唆しています。このことから、地方自治は、企業の儲けのためにあるのでもなければ、企業のようにコスト優先して福祉を安上りにしてもいいというものではありません。区民の世帯所得の格差を是正し、不安を取り除く取り組みこそ、福祉の向上であり、地方自治における民主主義の実現といえるものです。以上をもって討論とします。

一覧へ

検索